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異世界、始めてみました。
初めてのお買い物
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「あれほど、非常に効率的な方法は中々ないんですよ?」
マスター、聞いてますか?
と、トムは謝った後も、やっぱりすこし納得してないらしく、唇を尖らせながら私の横を歩いている。
ごめんなさいと無理矢理言わせた後も、トムは少年の姿になったまま、私の後をついて来ていた。
何でも、本の姿はあまりに目立つからだという。
確かに、プカプカと浮いてる本と話しながら買い物というのは、あまりにも奇妙な組み合わせかもしれない。
けど、こちらの世界でも本が浮いてると目立つという意識がある方がビックリだ。
まぁ、美少年の姿になったトムを引き連れて買い物というのも、結果としておおいに目立ちそうなので、あんまり意味はなかったかもしれない。
「そもそも、箒というのはスピード重視の乗り物でして、マスターの徒歩の速度を考えればこれが一番」
「ごめんなさいは?」
「・・・・・・ごめんなさい」
箒の効率を語っているトムを黙らせると、私達は町の中心部にゆっくり歩いて行った。
「そういえば、この町の名前はなんて言うの?」
「この町は、シルバという町です。首都へ向かう街道の側にある町の一つで、色々な品物が集まります。
あまり珍しい物は首都に集まっているのですが、ある程度の生活用品は揃えられるかと」
最も基本的な質問に、トムはまだ少しだけ剥れながら答えてくれた。
「シルバ・・・・・・」
素敵な名前の響きだ。
私はさっきまで死にそうになったのも忘れて、賑やかな市場へグングンと進んで行った。
歩けば歩くほど、町は異国情緒溢れる様式に変わっていく。
そもそも異世界なのだから、異国情緒もなにもないのだけど。
トムは迷子にならないように私の鞄に捕まって貰いつつ、市場の屋台を一つずつ回って行った。
まず最初に驚いたのは、この世界には小麦やお米が存在しているということだ。
何度も何度も言ってるかもしれないけれど、よくあるラノベではまずこのお米問題がだいたい発生する、ような気がする。
そして、なんと。
醤油や味噌が存在しているということ。
さすがにこの辺りは割高らしいけど、ちゃんと調味料として流通しているらしい。
けど、よく考えたらそれも当たり前なのかもしれない。
コノハさんは、色んな世界から移住者を探していると言っていた。
その色んな世界には、私の住んでた世界の食料や調味料があったって不思議じゃないし、とっくに普及していても可笑しくない。
穀物類や調味料は重たいので買い置きだけして、他のお店を回ってみても、種類や品数は少ないものの、石鹸やフライパンみたいなのも揃っていて、あちらとほぼ同じレベルの生活を送れそうだ。
元々、人の出入りが激しい町なのか、新参者の私が珍しそうに買い物していても、特に不審がられることもなく、愛想よく対応してくれる。
この世界ではポピュラーな野菜や肉も買い、石鹸もとりあえず一つだけ買った。
本当は生活用品だけと思っていたのに、思わず美味しそうなクッキーも見つけて買ってしまうと、両手に食材と背中にフライパンと鍋を背負ったトムが嫌そうな顔をした。
「お嬢さん」
嫌そうな顔をしているトムに、無理矢理クッキーを食べさせていると、不意に後ろから声をかけられて、思わず振り返る。
そこには、胡散臭そうな男が私のように真っ黒なローブを着て、怪しげな籠を持って立っていた。
「なにか?」
私の代わりに、すかさずトムが言う。
クッキーのせいで、少しだけモゴモゴしてるのはご愛嬌だ。
「私はね、旅の魔法使いなんだ。魔法薬はいらないかと思ってね」
「旅の魔法使い・・・・・・?」
おお、やっぱり旅とかするのね、この世界。
ちょっとだけ感動してると、男は籠の中身を取り出して見せてくれた。その籠には色とりどりの薬が入っていて、一目で私が作ったような魔法薬だと分かる。
けど、その色はどこか不自然にくすんでいて、あの鮮やかな色は感じられない。
「疲れを癒すし、病気も治す。美容にだって良いものもある。
良ければどうかな?」
「マスターも魔女の端くれ、魔法薬なら間に合ってます」
「そうか、それは失礼した。もし万が一何か用があれば、私は暫く滞在しているから声をかけてくれたまえ」
トムと男が勝手に会話し、勝手に終了して、男は去っていった。
トムは少しだけ怒ってるらしく、何だか機嫌が悪い。
「マスター、あの男にバカにされたんですよ。まさか、魔法薬を売りつけようなんて!」
どうやら、同業者・・・・・・この場合、魔法使い同士での魔法薬の売買は、あんまり褒められたものではないらしい。
「つまり、お前が作るより俺のがもっと良い魔法薬作れるぜ!って言われたってこと?」
「そうですよ!しかも、あんな粗悪品!!マスターの魔法薬に比べたら天と地ほどの差です!」
プンプンと憤りながら、トムが言う。
やっぱり、あのくすんだ色はあまり品質的によくないようだ。
怒ってくれたトムに感謝しつつ、私はバカにされたことより、目下、重要なことに気づいて途方に暮れていた。
それはつまり、この二人とも両手一杯の荷物をどうやって家まで運ぶかということだ。
マスター、聞いてますか?
と、トムは謝った後も、やっぱりすこし納得してないらしく、唇を尖らせながら私の横を歩いている。
ごめんなさいと無理矢理言わせた後も、トムは少年の姿になったまま、私の後をついて来ていた。
何でも、本の姿はあまりに目立つからだという。
確かに、プカプカと浮いてる本と話しながら買い物というのは、あまりにも奇妙な組み合わせかもしれない。
けど、こちらの世界でも本が浮いてると目立つという意識がある方がビックリだ。
まぁ、美少年の姿になったトムを引き連れて買い物というのも、結果としておおいに目立ちそうなので、あんまり意味はなかったかもしれない。
「そもそも、箒というのはスピード重視の乗り物でして、マスターの徒歩の速度を考えればこれが一番」
「ごめんなさいは?」
「・・・・・・ごめんなさい」
箒の効率を語っているトムを黙らせると、私達は町の中心部にゆっくり歩いて行った。
「そういえば、この町の名前はなんて言うの?」
「この町は、シルバという町です。首都へ向かう街道の側にある町の一つで、色々な品物が集まります。
あまり珍しい物は首都に集まっているのですが、ある程度の生活用品は揃えられるかと」
最も基本的な質問に、トムはまだ少しだけ剥れながら答えてくれた。
「シルバ・・・・・・」
素敵な名前の響きだ。
私はさっきまで死にそうになったのも忘れて、賑やかな市場へグングンと進んで行った。
歩けば歩くほど、町は異国情緒溢れる様式に変わっていく。
そもそも異世界なのだから、異国情緒もなにもないのだけど。
トムは迷子にならないように私の鞄に捕まって貰いつつ、市場の屋台を一つずつ回って行った。
まず最初に驚いたのは、この世界には小麦やお米が存在しているということだ。
何度も何度も言ってるかもしれないけれど、よくあるラノベではまずこのお米問題がだいたい発生する、ような気がする。
そして、なんと。
醤油や味噌が存在しているということ。
さすがにこの辺りは割高らしいけど、ちゃんと調味料として流通しているらしい。
けど、よく考えたらそれも当たり前なのかもしれない。
コノハさんは、色んな世界から移住者を探していると言っていた。
その色んな世界には、私の住んでた世界の食料や調味料があったって不思議じゃないし、とっくに普及していても可笑しくない。
穀物類や調味料は重たいので買い置きだけして、他のお店を回ってみても、種類や品数は少ないものの、石鹸やフライパンみたいなのも揃っていて、あちらとほぼ同じレベルの生活を送れそうだ。
元々、人の出入りが激しい町なのか、新参者の私が珍しそうに買い物していても、特に不審がられることもなく、愛想よく対応してくれる。
この世界ではポピュラーな野菜や肉も買い、石鹸もとりあえず一つだけ買った。
本当は生活用品だけと思っていたのに、思わず美味しそうなクッキーも見つけて買ってしまうと、両手に食材と背中にフライパンと鍋を背負ったトムが嫌そうな顔をした。
「お嬢さん」
嫌そうな顔をしているトムに、無理矢理クッキーを食べさせていると、不意に後ろから声をかけられて、思わず振り返る。
そこには、胡散臭そうな男が私のように真っ黒なローブを着て、怪しげな籠を持って立っていた。
「なにか?」
私の代わりに、すかさずトムが言う。
クッキーのせいで、少しだけモゴモゴしてるのはご愛嬌だ。
「私はね、旅の魔法使いなんだ。魔法薬はいらないかと思ってね」
「旅の魔法使い・・・・・・?」
おお、やっぱり旅とかするのね、この世界。
ちょっとだけ感動してると、男は籠の中身を取り出して見せてくれた。その籠には色とりどりの薬が入っていて、一目で私が作ったような魔法薬だと分かる。
けど、その色はどこか不自然にくすんでいて、あの鮮やかな色は感じられない。
「疲れを癒すし、病気も治す。美容にだって良いものもある。
良ければどうかな?」
「マスターも魔女の端くれ、魔法薬なら間に合ってます」
「そうか、それは失礼した。もし万が一何か用があれば、私は暫く滞在しているから声をかけてくれたまえ」
トムと男が勝手に会話し、勝手に終了して、男は去っていった。
トムは少しだけ怒ってるらしく、何だか機嫌が悪い。
「マスター、あの男にバカにされたんですよ。まさか、魔法薬を売りつけようなんて!」
どうやら、同業者・・・・・・この場合、魔法使い同士での魔法薬の売買は、あんまり褒められたものではないらしい。
「つまり、お前が作るより俺のがもっと良い魔法薬作れるぜ!って言われたってこと?」
「そうですよ!しかも、あんな粗悪品!!マスターの魔法薬に比べたら天と地ほどの差です!」
プンプンと憤りながら、トムが言う。
やっぱり、あのくすんだ色はあまり品質的によくないようだ。
怒ってくれたトムに感謝しつつ、私はバカにされたことより、目下、重要なことに気づいて途方に暮れていた。
それはつまり、この二人とも両手一杯の荷物をどうやって家まで運ぶかということだ。
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