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異世界、始めてみました。
移動手段は大事な問題
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「いや、これは参ったわ。どうする、これ」
「どうするもこうするも、マスターが買いすぎなんです」
トムくんプンプン事件(笑)のあと、私達は取り敢えず買い置きさせて貰った穀物類を取りに行き、一杯だった両手を更に一杯にさせて、トボトボ歩いていた。
「こっちの世界じゃ、大量の荷物ってどうやって移動するの?」
「大抵は、浮かすか召喚するか、或いは馬車などの乗り物での移動ではないでしょうか」
「浮かす?」
浮かすって、どうやって?
と、聞こうとして、さっきまで空を飛んで死にそうになった体験をいっきに思い出した。
私の死にそうな顔を、大きな荷物の隙間から見たトムは、少し困り顔だ。
「先程のようなことではありませんよ、マスター。つまりは、本当に浮かべるだけです」
折角だからやってみますか?と問われて、私達は道の端っこに行き、そこに荷物を一度置いた。
「朝のような召喚魔法と違い、物を動かすような魔法は生活魔法といいます。
召喚魔法のように、物そのものをイメージするのではなく、その物をどうしたいかをイメージしてみて下さい」
言われた通り、何となく手をかざして、私の買った米やら果物やら何なやらの荷物が浮くイメージをしてみる。
けど、荷物はウンともスンともいわない。
思わず横にいるトムを見ると、トムは難しそうな顔で頷いた。
いや、頷いてるだけじゃ分かんないから、アドバイスとか欲しいんだけど。
「マスター、物を浮かべるイメージで手を動かしてみては?」
言われるがままに、荷物を持ち上げるように手を動かしてみる。
その時、ほんの少しだけ荷物が浮いたように思えたけど、一瞬のことですぐに荷物はドサリと落ちた。
私、魔法の才能ないのかもしれない。
「では、声に出してみて下さい」
「声に?」
私がちょっとだけ落ち込んでる横で、トムはまだ難しい顔のまま言った。
声に出す、というのはどういうことなのか。呪文とか、その類のことなど知らない。
でも、トムが早くやってみろと視線で促してきたので、とりあえず私は少し声を張って荷物に向かって言った
「浮かべ!」
すると、どうだろう。驚いたことに、荷物が私の目線の高さまでフワリと浮いた。
さっきのように、落ちることもない。本の姿のトムのように、プカプカと浮いている。
「マスターはどうやら、音の魔女に属するみたいですね」
「なにそれ?」
「簡単に言うと、動きで魔法を使う方が得意な人と、音で魔法を使う方が得意な人が、この世界にはいるんです。
無言だったり、無動作でも魔法は使えますが、動きや音でより発動しやすくなるんです」
どちらがよりイメージしやすいか、という点での個人差なので、これから何か魔法を使う時は声に出してみて下さいね。
トムのアドバイスに、私は思わず自分が厨二バリバリの呪文を唱えている姿を想像した。
言霊を信じる日本人な者ですから、言葉にするのは確かにイメージしやすいけど、何か恥ずかしいよねやっぱ。
今度からはなるべく小さな声でやろうと決心して、私は自分が浮かべた荷物を見た。
結果として魔法は成功して荷物は浮いてるけど、ここから先はどうすればいいのかしら?
「で、これどうするの?」
「このまま、連れて帰ります」
「いや、連れて帰るって犬猫じゃあるまいしね?」
このフヨフヨと浮いた大荷物を引き連れて、あの巨木ばかりの森を歩くなんて考えたくもない。
一時間くらい歩くのはこの際別に良いんだけど、さっきから風に吹かれて荷物があっちへフラフラ、こっちへフラフラと落ち着かなくて、目が離せない。
そんな状態で魔物が出るらしい森を歩くなんて、真っ平ごめんだ。
だからと言って、召喚魔法というのもいちいち買った物を全てイメージするのは大変だし、面倒だとトムに言われ、じゃあ馬車を借りるか買おうって言ったら、買うほどお金はないし、そもそも馬車じゃ森の中を通れないとか言われた。
なにそれもう無理じゃん。
ゲンナリして項垂れる私に、トムは頻りに箒を進めてきた。
いや確かに早いかもしれないし、便利かもしれなけど、マジで絶対乗らないからね。ほんと、トラウマです。
トム曰く、空の移動が一番早くて便利らしいけど、この世界での空の移動手段が一つしかないってどうなの?
飛行機とか言わないけど、せめて竹トンボ的な道具とか、金色の雲とか、もういっそ、天女の羽衣とかないのかな。
と、そこまで考えて、私はフと物凄い閃きをしてしまった。
ついつい、この世界が私の世界でいうヨーロッパ風な雰囲気だったから忘れていたけど、私の世界には色んな地域に、色んな魔法使いが存在していた。
「トム、今すぐ絨毯を買いに行くわよ」
「絨毯、ですか?」
何のために?と言うように首を傾げるトムに、私は笑いを抑えきれなくてニヤニヤしてしまった。
私の世界の、遥か西。
砂漠に隠された、魔法のランプの話。
その話に出てくるのは、そう!
皆が大好き、魔法の絨毯!
空を飛ぶのに、箒なんて必要ない。
安心、安定、安全の三拍子が揃ってた気がする魔法の絨毯を手に入れようじゃない。
「僕を信じて!」
「いや、マスター。それ、本当にギリギリアウトだと思いますよ。私は見たことないですけどね」
異世界のネタだと言うのに、トムは理解したらしく溜息をついたけど、私はその発言に思わず声を出して笑ってしまった。
「どうするもこうするも、マスターが買いすぎなんです」
トムくんプンプン事件(笑)のあと、私達は取り敢えず買い置きさせて貰った穀物類を取りに行き、一杯だった両手を更に一杯にさせて、トボトボ歩いていた。
「こっちの世界じゃ、大量の荷物ってどうやって移動するの?」
「大抵は、浮かすか召喚するか、或いは馬車などの乗り物での移動ではないでしょうか」
「浮かす?」
浮かすって、どうやって?
と、聞こうとして、さっきまで空を飛んで死にそうになった体験をいっきに思い出した。
私の死にそうな顔を、大きな荷物の隙間から見たトムは、少し困り顔だ。
「先程のようなことではありませんよ、マスター。つまりは、本当に浮かべるだけです」
折角だからやってみますか?と問われて、私達は道の端っこに行き、そこに荷物を一度置いた。
「朝のような召喚魔法と違い、物を動かすような魔法は生活魔法といいます。
召喚魔法のように、物そのものをイメージするのではなく、その物をどうしたいかをイメージしてみて下さい」
言われた通り、何となく手をかざして、私の買った米やら果物やら何なやらの荷物が浮くイメージをしてみる。
けど、荷物はウンともスンともいわない。
思わず横にいるトムを見ると、トムは難しそうな顔で頷いた。
いや、頷いてるだけじゃ分かんないから、アドバイスとか欲しいんだけど。
「マスター、物を浮かべるイメージで手を動かしてみては?」
言われるがままに、荷物を持ち上げるように手を動かしてみる。
その時、ほんの少しだけ荷物が浮いたように思えたけど、一瞬のことですぐに荷物はドサリと落ちた。
私、魔法の才能ないのかもしれない。
「では、声に出してみて下さい」
「声に?」
私がちょっとだけ落ち込んでる横で、トムはまだ難しい顔のまま言った。
声に出す、というのはどういうことなのか。呪文とか、その類のことなど知らない。
でも、トムが早くやってみろと視線で促してきたので、とりあえず私は少し声を張って荷物に向かって言った
「浮かべ!」
すると、どうだろう。驚いたことに、荷物が私の目線の高さまでフワリと浮いた。
さっきのように、落ちることもない。本の姿のトムのように、プカプカと浮いている。
「マスターはどうやら、音の魔女に属するみたいですね」
「なにそれ?」
「簡単に言うと、動きで魔法を使う方が得意な人と、音で魔法を使う方が得意な人が、この世界にはいるんです。
無言だったり、無動作でも魔法は使えますが、動きや音でより発動しやすくなるんです」
どちらがよりイメージしやすいか、という点での個人差なので、これから何か魔法を使う時は声に出してみて下さいね。
トムのアドバイスに、私は思わず自分が厨二バリバリの呪文を唱えている姿を想像した。
言霊を信じる日本人な者ですから、言葉にするのは確かにイメージしやすいけど、何か恥ずかしいよねやっぱ。
今度からはなるべく小さな声でやろうと決心して、私は自分が浮かべた荷物を見た。
結果として魔法は成功して荷物は浮いてるけど、ここから先はどうすればいいのかしら?
「で、これどうするの?」
「このまま、連れて帰ります」
「いや、連れて帰るって犬猫じゃあるまいしね?」
このフヨフヨと浮いた大荷物を引き連れて、あの巨木ばかりの森を歩くなんて考えたくもない。
一時間くらい歩くのはこの際別に良いんだけど、さっきから風に吹かれて荷物があっちへフラフラ、こっちへフラフラと落ち着かなくて、目が離せない。
そんな状態で魔物が出るらしい森を歩くなんて、真っ平ごめんだ。
だからと言って、召喚魔法というのもいちいち買った物を全てイメージするのは大変だし、面倒だとトムに言われ、じゃあ馬車を借りるか買おうって言ったら、買うほどお金はないし、そもそも馬車じゃ森の中を通れないとか言われた。
なにそれもう無理じゃん。
ゲンナリして項垂れる私に、トムは頻りに箒を進めてきた。
いや確かに早いかもしれないし、便利かもしれなけど、マジで絶対乗らないからね。ほんと、トラウマです。
トム曰く、空の移動が一番早くて便利らしいけど、この世界での空の移動手段が一つしかないってどうなの?
飛行機とか言わないけど、せめて竹トンボ的な道具とか、金色の雲とか、もういっそ、天女の羽衣とかないのかな。
と、そこまで考えて、私はフと物凄い閃きをしてしまった。
ついつい、この世界が私の世界でいうヨーロッパ風な雰囲気だったから忘れていたけど、私の世界には色んな地域に、色んな魔法使いが存在していた。
「トム、今すぐ絨毯を買いに行くわよ」
「絨毯、ですか?」
何のために?と言うように首を傾げるトムに、私は笑いを抑えきれなくてニヤニヤしてしまった。
私の世界の、遥か西。
砂漠に隠された、魔法のランプの話。
その話に出てくるのは、そう!
皆が大好き、魔法の絨毯!
空を飛ぶのに、箒なんて必要ない。
安心、安定、安全の三拍子が揃ってた気がする魔法の絨毯を手に入れようじゃない。
「僕を信じて!」
「いや、マスター。それ、本当にギリギリアウトだと思いますよ。私は見たことないですけどね」
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