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魔女の仕事、挑戦してみました。
地味に難しいコントロールの仕方
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興奮気味のメリアローズの頭を撫でながら宥めてやると、効果はバツグンだったみたいで、大人しく私の膝の上に座った。
緑の髪はサラサラだけど、やっぱりどこか人間の髪とは違う感触。
メリアローズが落ち着いたので、私は改めて、自分の魔力と向き合ってみた。
全身に纏わりつき、轟音を立てながら流れる魔力は、意識すればするほど大きくなる。
その大きな魔力に触れたからか、イバラたちがザワザワと音を立てながら、私の周りで蠢いている。
肌がネットリと締め付けられる感覚は、魔法薬の為に集中していた時と一緒だ。
「ニンゲンって不思議よね。普段は気にしないことでも、気がつくとずーと気になるんだもの」
メリアローズは、私に撫でて貰いながらウットリしている。お人形の様に可愛らしいその姿に、思わず胸がときめいた。
「魔力は常に側にあるわ。
ニンゲンに流れる血と一緒。
植物に流れる水と一緒。
けど、貴女の場合は無意識にその力を意識しないようにしてるのね。
そうでもしないと、絞め殺されそうだもの」
それは、魔力に絞め殺されるってことだろうか?
意識してしまった私の力は、私をジワジワと圧迫していく。
「大きな力だけど、貴女の力よ、セラサクヤ。
貴女が支配者。貴女が源流。それを忘れずに、その流れを断ち切ればいいの」
川の流れを塞きとめるだけよ。
彼女はそう言うと、蛇口を捻るような仕草をして笑った。
私は、イメージする。
魔法の力は、無限の可能性を秘めているようで、私がうっかり蛇のようだと思った魔力の流れが、そのまま大蛇の姿になり、私の身体に巻き付いた。
その私を守るように、イバラが私を支える。
「貴女なのよ。貴女しか出来ない。
望めば、こんな世界、簡単に支配できるわ。
でも、望んでないでしょう?
セラサクヤ、貴女の趣味の散歩はどう?
ガーデニングを一緒に楽しみましょう?
こんな力は、早くコントロールしてしまって?
便利なだけの力よ。
だから、怖がらないで」
メリアローズが、歌うように言う。
そう、私はこの世界にガーデニングをしに来たんだ。
楽しんでいいって言われたんだもの。
生きてく為に作った魔法薬も、ハマれば面白かった。
これからの生活を、私なりに楽しみにしていたんだ。
だから、こんな所で、こんな便利なだけの力に、振り回されてる場合じゃない!
大蛇は口を大きく開けて、私を威嚇している。
けど、これは私の魔力だ。
「止めればいいだけなのね」
メリアローズがした、蛇口を捻る仕草。
そうだ。ようは、蛇口を締めればいい。
私は、自分の何処から魔力が溢れてるのか感覚を研ぎ澄ませ、探し出す。
目の前の大蛇は、私を睨み付けたままだ。
でも、それがなんぼのもんじゃい!
「こっちだって、伊達にガーデニングが趣味じゃないんだからね!
爬虫類怖くて土いじり出来るか!」
まぁ、ベランダにまず蛇は出ないけどね。トカゲとかなら頻繁に出たので、爬虫類なんかはどちらかというと親近感さえある。
けど植木を乗せる木のスタンドに、ビッシリとヤモリの卵が付いてたときは、さすがに悲鳴をあげたっけなぁ。
「ちゃんと、集中してる?」
メリアローズに違うことを考えていたのがすぐにバレて、私は慌ててもう一度、自分の魔力の出口を探した。
足元から順番に、頭の先まで。
身体を満遍なく覆っている魔力だけど、その出先は私のちょうど、喉の辺りから循環しているようだった。
見つけた箇所に手を当てて、私は目を閉じた。
直に触れた場所から、確かな流れを確かに感じて、その手応えに思わず微笑む。
「従いなさい」
一言だけど、ハッキリと。
けれど、それだけで充分だった。
魔力の流れそのものを断ち切ると、後で魔法薬や生活魔法を使うのに困るので、大きすぎる魔力をちょっと仕舞うだけ。
ただ、それだけが本当に難しい。
言葉を放ったことで、大蛇の姿を模った魔力は、今はまた大きなうねりとなって私の周りに纏わりつく。
身体から溢れた魔力のやりどころに困っていると、下の方からちょいちょい、と引っ張られた。
見ると、誇らしげに微笑むメリアローズが、ペンダントを指差している。
あぁ、そっか。元々、メリアローズから貰った祝福だし、ペンダントに力を込めればいい。
ペンダントを手に取り、祈るように白いバラの部分を握りしめる。
そうすると、まるでスポンジが水を吸うようにスルスルと魔力が吸い込まれていくのが分かった。
「だから、ワタシを身につけなさいって言ったのよ」
嬉しそうに笑う彼女をみて、そもそも大きな力を安易に授けないでくれ、という文句は言えなくなった。
「これで、力が安定するわ。
もう、コントロールも出来るでしょう?」
ある程度、魔力をバラに収めたところで、私は祈りの仕草を解いた。
いまでは、薄いヴェールのように身体を覆う魔力は、さっきの暴力のような力と違い、羽のように軽くて心地いい。
試しに、ほんの少し魔力を解放してみた。
といっても、バラのペンダントに向かって命令するだけだ。
「ちょっとだけ、多めに解放!」
すると、薄いヴェールがシルクくらいの分厚さになった気がする。
「おぉ、ついにコントロール出来たのね私!」
「おめでとう、セラサクヤ!」
「ありがと!メリアローズ、あなたのおかげよ!」
メリアローズが自分のことのように喜んでくれてるので、私も思わず破顔した。
地味なのに、以外と大変だった魔力のコントロールを、ここまで何とか無事に終えたのは確実に彼女がいてくれたからだ。
さぁ、ここからはまた魔法薬作りと、生活魔法の練習ね。
ガーデニングまで道のりは遠いけど、働かざる者食うべからずってね。
と、そこまで考えてフと思い出した。
トム、どこ行った?
緑の髪はサラサラだけど、やっぱりどこか人間の髪とは違う感触。
メリアローズが落ち着いたので、私は改めて、自分の魔力と向き合ってみた。
全身に纏わりつき、轟音を立てながら流れる魔力は、意識すればするほど大きくなる。
その大きな魔力に触れたからか、イバラたちがザワザワと音を立てながら、私の周りで蠢いている。
肌がネットリと締め付けられる感覚は、魔法薬の為に集中していた時と一緒だ。
「ニンゲンって不思議よね。普段は気にしないことでも、気がつくとずーと気になるんだもの」
メリアローズは、私に撫でて貰いながらウットリしている。お人形の様に可愛らしいその姿に、思わず胸がときめいた。
「魔力は常に側にあるわ。
ニンゲンに流れる血と一緒。
植物に流れる水と一緒。
けど、貴女の場合は無意識にその力を意識しないようにしてるのね。
そうでもしないと、絞め殺されそうだもの」
それは、魔力に絞め殺されるってことだろうか?
意識してしまった私の力は、私をジワジワと圧迫していく。
「大きな力だけど、貴女の力よ、セラサクヤ。
貴女が支配者。貴女が源流。それを忘れずに、その流れを断ち切ればいいの」
川の流れを塞きとめるだけよ。
彼女はそう言うと、蛇口を捻るような仕草をして笑った。
私は、イメージする。
魔法の力は、無限の可能性を秘めているようで、私がうっかり蛇のようだと思った魔力の流れが、そのまま大蛇の姿になり、私の身体に巻き付いた。
その私を守るように、イバラが私を支える。
「貴女なのよ。貴女しか出来ない。
望めば、こんな世界、簡単に支配できるわ。
でも、望んでないでしょう?
セラサクヤ、貴女の趣味の散歩はどう?
ガーデニングを一緒に楽しみましょう?
こんな力は、早くコントロールしてしまって?
便利なだけの力よ。
だから、怖がらないで」
メリアローズが、歌うように言う。
そう、私はこの世界にガーデニングをしに来たんだ。
楽しんでいいって言われたんだもの。
生きてく為に作った魔法薬も、ハマれば面白かった。
これからの生活を、私なりに楽しみにしていたんだ。
だから、こんな所で、こんな便利なだけの力に、振り回されてる場合じゃない!
大蛇は口を大きく開けて、私を威嚇している。
けど、これは私の魔力だ。
「止めればいいだけなのね」
メリアローズがした、蛇口を捻る仕草。
そうだ。ようは、蛇口を締めればいい。
私は、自分の何処から魔力が溢れてるのか感覚を研ぎ澄ませ、探し出す。
目の前の大蛇は、私を睨み付けたままだ。
でも、それがなんぼのもんじゃい!
「こっちだって、伊達にガーデニングが趣味じゃないんだからね!
爬虫類怖くて土いじり出来るか!」
まぁ、ベランダにまず蛇は出ないけどね。トカゲとかなら頻繁に出たので、爬虫類なんかはどちらかというと親近感さえある。
けど植木を乗せる木のスタンドに、ビッシリとヤモリの卵が付いてたときは、さすがに悲鳴をあげたっけなぁ。
「ちゃんと、集中してる?」
メリアローズに違うことを考えていたのがすぐにバレて、私は慌ててもう一度、自分の魔力の出口を探した。
足元から順番に、頭の先まで。
身体を満遍なく覆っている魔力だけど、その出先は私のちょうど、喉の辺りから循環しているようだった。
見つけた箇所に手を当てて、私は目を閉じた。
直に触れた場所から、確かな流れを確かに感じて、その手応えに思わず微笑む。
「従いなさい」
一言だけど、ハッキリと。
けれど、それだけで充分だった。
魔力の流れそのものを断ち切ると、後で魔法薬や生活魔法を使うのに困るので、大きすぎる魔力をちょっと仕舞うだけ。
ただ、それだけが本当に難しい。
言葉を放ったことで、大蛇の姿を模った魔力は、今はまた大きなうねりとなって私の周りに纏わりつく。
身体から溢れた魔力のやりどころに困っていると、下の方からちょいちょい、と引っ張られた。
見ると、誇らしげに微笑むメリアローズが、ペンダントを指差している。
あぁ、そっか。元々、メリアローズから貰った祝福だし、ペンダントに力を込めればいい。
ペンダントを手に取り、祈るように白いバラの部分を握りしめる。
そうすると、まるでスポンジが水を吸うようにスルスルと魔力が吸い込まれていくのが分かった。
「だから、ワタシを身につけなさいって言ったのよ」
嬉しそうに笑う彼女をみて、そもそも大きな力を安易に授けないでくれ、という文句は言えなくなった。
「これで、力が安定するわ。
もう、コントロールも出来るでしょう?」
ある程度、魔力をバラに収めたところで、私は祈りの仕草を解いた。
いまでは、薄いヴェールのように身体を覆う魔力は、さっきの暴力のような力と違い、羽のように軽くて心地いい。
試しに、ほんの少し魔力を解放してみた。
といっても、バラのペンダントに向かって命令するだけだ。
「ちょっとだけ、多めに解放!」
すると、薄いヴェールがシルクくらいの分厚さになった気がする。
「おぉ、ついにコントロール出来たのね私!」
「おめでとう、セラサクヤ!」
「ありがと!メリアローズ、あなたのおかげよ!」
メリアローズが自分のことのように喜んでくれてるので、私も思わず破顔した。
地味なのに、以外と大変だった魔力のコントロールを、ここまで何とか無事に終えたのは確実に彼女がいてくれたからだ。
さぁ、ここからはまた魔法薬作りと、生活魔法の練習ね。
ガーデニングまで道のりは遠いけど、働かざる者食うべからずってね。
と、そこまで考えてフと思い出した。
トム、どこ行った?
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