異世界・魔法薬の魔女

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魔女の仕事、挑戦してみました。

銀の森

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 舞台は異世界、銀の森。
 突然のイバラに襲われて、そこから行方不明になった魔法の本。
 彼は無事か?それとも、まさか・・・・・・
 たった一つの真実見抜く!見た目も大人!頭脳だって大人!
 その名も・・・・・・
「いえ、最後まで言わせませんからね?」
 さすがに、私の回想にまでツッコミ入れなくてもいいんじゃないかしら、トム。
 冒頭2分もたっていないツッコミに、私は思わず笑った。
 すっかり存在を忘れていたトムを探すべく、私はメリアローズを抱えて作業小屋に戻って来ていた。
 地下は思っていた通り滅茶苦茶で、何が何処にあるか分からないほどだ。
 イバラの蔓のせいで、瓶は割れ、本棚は倒れ、足の踏み場もない。
 まるで、事件の犯行現場のようなその場所に、ついつい出来心で有名なフレーズのナレーションをしてしまっても、私は悪くないと思う。うん。
 それでも、声には出さずに心の中でだけで我慢したのに、トムには分かったらしい。万能か。
 そんな、張り切って探索にきた私達を裏切るくらい、早いスピードで見つかったトムだけど、その姿はまさに悲惨だった。
 まだあの時の日本人男性の姿だったけど、無残にも色んな魔法薬を被り、身体中がカラフルな色に染まっている。
「凄いわねー、トム。何かこう、生き物として間違った色してるわ」
 どこをどう被ったら、こうなるのか。
 髪は半分赤色で、顔も顎から下は黄色。
 身体の下半身は青と、一人で信号が出来そうだ。
 それにしても、私が作っていた魔法薬は全て飲み薬だったのだが、皮膚にかかるとこうなってしまうのか。
 迂闊にこぼしたり出来ない。
「私の場合は、生き物じゃないですからね。魔法同士で反応したんでしょう」
「普通の人間が被っても、本当ならそこまでならないってこと?」
「魔法薬を被った人間などみたことないですが、恐らくは」
 なんなら試してみますか?と言われて、丁重にお断りすると、ボロボロになったトムが漸くメリアローズに気がついたようだ。
 その瞬間、トムはあからさまに嫌そうな顔をし、メリアローズもまた顔を顰める。
「魔法のバラ様がどうしてここに?コノハ女史とのご契約は如何なされた?」
「魔力の塊の癖に、ワタシに楯突くつもり?
 コノハとの契約など、とっくに果たしたわ」
 おやおや、知り合い?
 それにしても険悪なムードだなぁ、とぼんやり思っていると、トムとメリアローズはさらに睨み合った。
「なら、貴女がマスターにちょっかいを出す必要もないでしょう。
 早々にお引き取りを」
「お生憎様!この森はワタシの森よ。出て行くなら、貴方達の方よ。
 あぁ!でもセラサクヤは別よ。なんて言ったって、ワタシが直接!祝福したんだから!」
「それでしたら、私だってマスターの所有物なので出て行く訳には行きませんので。
 大体、貴女の森かもしませんが、だからといって個人の所有地に無断で入るのはどうなんですか?」
「あら?ちゃんとノックはしたわ!気付かない貴方がいけないんではなくって?」
 おぉー、スパークしてんな。
 カラフルな男(中身は魔法の本)と、ちっちゃな人形のような幼女(中身は魔法のバラ)がケンカとは、中身を考えれば何ともファンタジーで微笑ましい。
 バチバチと火花を散らしそうな二人は、どうやらお互いの標的を変えたらしい。
 つまり、傍観者であり、第三者である人物。
「マスター!これはどういうことでしょう?魔法のバラに取り憑かれたとは本当ですか!?」
「取り憑くなんて、失礼ね!ワタシが欲しいってセラサクヤ自身が言ったのよ!
 ワタシがキレイだから!!」
 ね?と言われて、思わず頷くと、トムは目を見開いて私に突っかかってきた。
「幾らこの世界のことを知らないとはいえ、考えなしにも程があります!魔法のバラですよ、マスター!」
「いや、ちゃんと自己紹介も受けたし知ってるよ?」
「魔法のバラは、この世界の五つの柱の一つでグリンダ様の系列に属すんです!」
 わぁ、何かトムが怒ってる理由が分かっちゃった。
 「言っておくけど、全ての植物がグリンダ様の子供よ。ただ、ワタシが一番最初の子供だったってだけ」
「・・・・・・それってつまり、メリアローズも神様ってこと?」
「いいえ、彼女はこの森の主です」
「は?」
 こんな小さな女の子が、魔物が出ると噂の鬱蒼とした森の主?
 マジマジと腕の中のメリアローズを見ると、ちょっとモジモジし始めた。
「本体はね、森の奥で眠ってるの」
「本体・・・・・・」
 また、斬新な響きですね。
 
 
 
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