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魔女の仕事、挑戦してみました。
サンプル品は如何でしょうか?
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「お話の前に、実はこのヨモナの魔法薬の他にもう一つ魔法薬を用意してあります」
そう言って取り出したのは、月の光をそのまま閉じ込めたような淡く光る、月光袋の魔法薬だ。
店主は少なからず驚いたのか、少しだけ眉を動かしたけど、そこは商売人。すぐに笑顔に戻り、月光袋の魔法薬を手に取った。
「これもまた、素晴らしい手際で作りましたね。光が残るなんて、難しかったでしょう?」
「見ての通り、月の光を宿したままの月光袋の魔法薬ですが、通常の倍以上は効果があると思います」
「ほう、倍以上とは」
店主は改めて月光袋の魔法薬をじっくり見ると、納得したかのように頷いた。
「確かに、これだけの出来ならばそれほどの効果がありそうですね。
しかし、貴女のような新人さんが作れる代物とも思えません」
店主の疑いは、ある意味で想定内だ。
例え移住者として祝福を受けていたとしても、月光袋自体レアな薬草だし、素人が作れるような物ではない。
これらは全てトムのおかげと、メリアローズのおかげなのだけど、そこはまぁ言わなくてもいいことなので、黙っておく。
「勿論、全て私が作った物ですが、新規の取引先である私には何の信頼も保証もないのは事実です。
そこで、このヨモナの魔法薬です」
そうして、店主の目の前にヨモナの魔法薬をよく見えるように動かしながら、さらに続ける。
「先ほど仰られたように、この魔法薬はただのヨモナの魔法薬ではありません。私の世界の薬草の入った、私だけが作れる魔法薬です」
「異世界の薬草ですか」
「私にとっては、馴染みのある地元の薬草ですが、この世界にないことは既に調べてあります」
私じゃなく、トムが、だけど。
一瞬、私の方をチラリとトムが見たけれど、気にせず先に話を進める。
「このヨモナと月光袋の魔法薬は、効能自体は一緒なのはご存知でしょう?
どちらも体力を回復させる魔法薬ですが、その効果は天と地ほど差がありました」
通常の月光袋の魔法薬が仮に一日分の疲労回復だとしたら、ヨモナの魔法薬はせいぜい四分の一ほど。
けれど、私が作ったヨモナの魔法薬は、その効果を倍以上にさせた一日分の回復力。これは、月光袋の魔法薬に比例する。
「あくまで、当社比・・・・・・私自身が実験したので、移住者とこの世界の人達と身体の構成が違わなければ、ですが、私の特性ヨモナミックスは、少なくとも通常の月光袋の魔法薬と遜色ない効果を発揮出来ます」
しかも、スプーン一杯で、と付け加えると店主は目を見張った。
「それでは、このヨモナの魔法薬一瓶で、月光袋の魔法薬より効果があると?」
「私の作った物に限りですが、月光袋の魔法薬もスプーン一杯で二日は寝なくても平気です」
健康に悪いので、あまりオススメ出来ないが。
店主は更に眉を顰めながら、二つの魔法薬を見比べた。
「この月光袋の魔法薬と、ヨモナミックスは一瓶ずつ貴方に差し上げます」
「え?」
「お試し、ですよ。使って見て、信用に値するのもなら、他のお預けした商品を売って頂きたい。
値段は、本来の一般的なヨモナや月光袋の魔法薬の値段で構いませんので」
驚いたように、店主が私を見つめる。
「私が全て使ってしまうかもしれませんし、高値で売って嘘をついて、貴女に少ない金額を渡してしまうかもしれませんよ?」
「それなら、それです。私の見る目がなかったということでしょう」
私は笑いながら言ったが、確かにそのリスクはある。
私だって、彼との取引は初めてだ。彼を信頼しているかと言われると、誠実な印象はある、という程度のものしかない。
それでも、悪い人ではなさそうだし、もし悪い人でも、さっきも言ったとおり、私に見る目がないだけだ。
「・・・・・・サクヤさんは、中々厳しいことを仰るんですね」
「誠実であるだけですよ」
「それが商売で一番、難しいとご存知でしょう?」
そう言って、店主はやっと笑った。対面的な笑顔ではなく、面白そうに、誰かに良く似た笑い方で。
「お話、確かに承りました。
せっかくなので、試させて頂きますが、もし、その効果を体感出来なければ、商品はサクヤさんにお返しします。
勿論、効果があれば貴女のご希望の金額でお売りして、その後、利益をお渡しするという形でよろしいですか?」
「勿論です。ありがとうございます」
差し出された手を、少しだけ息を吐いてからそっと握る。
これで、魔法薬の交渉は成立だけど、まだまだここで終わらない。
まだまだブレンドティーやヒマワリなど、店主に買ってほしい物は用意してある。
「さぁ、次は私の世界の物なので、まずはそこから説明させて下さい」
「これはまた、面白そうですね」
私と、店主の商談はまだまだ終わりそうもない。
いい加減、ヒマワリをずっと抱えたトムが飽きてるのも気づかないフリをして、私は用意したブレンドティーを店主に差し出した。
そう言って取り出したのは、月の光をそのまま閉じ込めたような淡く光る、月光袋の魔法薬だ。
店主は少なからず驚いたのか、少しだけ眉を動かしたけど、そこは商売人。すぐに笑顔に戻り、月光袋の魔法薬を手に取った。
「これもまた、素晴らしい手際で作りましたね。光が残るなんて、難しかったでしょう?」
「見ての通り、月の光を宿したままの月光袋の魔法薬ですが、通常の倍以上は効果があると思います」
「ほう、倍以上とは」
店主は改めて月光袋の魔法薬をじっくり見ると、納得したかのように頷いた。
「確かに、これだけの出来ならばそれほどの効果がありそうですね。
しかし、貴女のような新人さんが作れる代物とも思えません」
店主の疑いは、ある意味で想定内だ。
例え移住者として祝福を受けていたとしても、月光袋自体レアな薬草だし、素人が作れるような物ではない。
これらは全てトムのおかげと、メリアローズのおかげなのだけど、そこはまぁ言わなくてもいいことなので、黙っておく。
「勿論、全て私が作った物ですが、新規の取引先である私には何の信頼も保証もないのは事実です。
そこで、このヨモナの魔法薬です」
そうして、店主の目の前にヨモナの魔法薬をよく見えるように動かしながら、さらに続ける。
「先ほど仰られたように、この魔法薬はただのヨモナの魔法薬ではありません。私の世界の薬草の入った、私だけが作れる魔法薬です」
「異世界の薬草ですか」
「私にとっては、馴染みのある地元の薬草ですが、この世界にないことは既に調べてあります」
私じゃなく、トムが、だけど。
一瞬、私の方をチラリとトムが見たけれど、気にせず先に話を進める。
「このヨモナと月光袋の魔法薬は、効能自体は一緒なのはご存知でしょう?
どちらも体力を回復させる魔法薬ですが、その効果は天と地ほど差がありました」
通常の月光袋の魔法薬が仮に一日分の疲労回復だとしたら、ヨモナの魔法薬はせいぜい四分の一ほど。
けれど、私が作ったヨモナの魔法薬は、その効果を倍以上にさせた一日分の回復力。これは、月光袋の魔法薬に比例する。
「あくまで、当社比・・・・・・私自身が実験したので、移住者とこの世界の人達と身体の構成が違わなければ、ですが、私の特性ヨモナミックスは、少なくとも通常の月光袋の魔法薬と遜色ない効果を発揮出来ます」
しかも、スプーン一杯で、と付け加えると店主は目を見張った。
「それでは、このヨモナの魔法薬一瓶で、月光袋の魔法薬より効果があると?」
「私の作った物に限りですが、月光袋の魔法薬もスプーン一杯で二日は寝なくても平気です」
健康に悪いので、あまりオススメ出来ないが。
店主は更に眉を顰めながら、二つの魔法薬を見比べた。
「この月光袋の魔法薬と、ヨモナミックスは一瓶ずつ貴方に差し上げます」
「え?」
「お試し、ですよ。使って見て、信用に値するのもなら、他のお預けした商品を売って頂きたい。
値段は、本来の一般的なヨモナや月光袋の魔法薬の値段で構いませんので」
驚いたように、店主が私を見つめる。
「私が全て使ってしまうかもしれませんし、高値で売って嘘をついて、貴女に少ない金額を渡してしまうかもしれませんよ?」
「それなら、それです。私の見る目がなかったということでしょう」
私は笑いながら言ったが、確かにそのリスクはある。
私だって、彼との取引は初めてだ。彼を信頼しているかと言われると、誠実な印象はある、という程度のものしかない。
それでも、悪い人ではなさそうだし、もし悪い人でも、さっきも言ったとおり、私に見る目がないだけだ。
「・・・・・・サクヤさんは、中々厳しいことを仰るんですね」
「誠実であるだけですよ」
「それが商売で一番、難しいとご存知でしょう?」
そう言って、店主はやっと笑った。対面的な笑顔ではなく、面白そうに、誰かに良く似た笑い方で。
「お話、確かに承りました。
せっかくなので、試させて頂きますが、もし、その効果を体感出来なければ、商品はサクヤさんにお返しします。
勿論、効果があれば貴女のご希望の金額でお売りして、その後、利益をお渡しするという形でよろしいですか?」
「勿論です。ありがとうございます」
差し出された手を、少しだけ息を吐いてからそっと握る。
これで、魔法薬の交渉は成立だけど、まだまだここで終わらない。
まだまだブレンドティーやヒマワリなど、店主に買ってほしい物は用意してある。
「さぁ、次は私の世界の物なので、まずはそこから説明させて下さい」
「これはまた、面白そうですね」
私と、店主の商談はまだまだ終わりそうもない。
いい加減、ヒマワリをずっと抱えたトムが飽きてるのも気づかないフリをして、私は用意したブレンドティーを店主に差し出した。
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