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合宿の夜
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保住てめぇーーー!
…キャラが崩壊してしまった。
だけど、そんなの仕方ないと思う。だって、普通に考えておかしいもん。
男子と2人で学校合宿!
こんなのが、許されるのはアニメの世界だけだ。なのに、私の前には相変わらず仕事を続けるみなっちの姿がある。
頼むから、夢であって欲しい。現実から全力で逃避したい。
「おい、ボケっとしてないで仕事しろよ」
みなっちの声に、仕方なく作業を再開した。
(そう、これは仕事のための合宿…)
自己暗示でもかけないとやってられるはずがない。ブツブツと考えながらやっているうちに、合宿の夜は更けていった…
―数時間後―
「これで、最後だよな!?」
「他のやつは、最終確認まで全部終わってる!」
みなっちの問いかけに全力で答える。長かったこの時間も、ようやく終わりが見えたのだ。
「これで、よし!」
最後の書類がファイルされ、どちらともなく顔を見合わせた。
「「終わったー!!」」
夜の学校に響き渡る歓声と、ハイタッチの音。これで、ようやく寝られるんだ。
と、ふと気がついてしまった。この学校には、宿泊施設など完備されていない。あるのは、宿直の先生が泊まっていくための部屋が、1つ…
「さー、さっさと寝ようぜ」
お気楽な言葉に
「え、どこで寝るの?」
「そりゃ、宿直室…」
聞き返すと、口が止まった。どうやら、部屋がひとつしかないことに気がついたらしい。
「どうすんだ、これ」
珍しく困惑したみなっちの言葉に、返す言葉がみつからない。
「とりあえず、宿直室行くか…」
「そうね…」
なんとも言えない微妙な空気の中、宿直室に並んで向かう。
案の定、ベットはひとつ、布団もなければソファーもない。
「俺、生徒会室戻るわ」
ため息をつき、部屋を出ようとするみなっち。私は咄嗟に腕を掴んでいた。
「え…どうした?」
少し慌てたようにきいてくるみなっちに
「あ、いや、その…保住先生!保住先生に聞いてみたら何とかなるんじゃないかなぁと思って!」
私はわたしで、慌てて言葉を紡ぐ。なんで、今みなっちを呼び止めたのか、自分でも分からない。
だからこそ、止めようとした理由が咄嗟には思いつかなかった。
「あぁ…それもそうだな。とりあえず電話するか。」
何故か少し残念そうに携帯をだすと、みなっちは保住先生に電話をかけ始めた。
「あ、もしもし……はい、終わりました。……いや、大丈夫っす。………はい、それなんですけど……はい!?」
ちらっとこちらを見て、困ったような表情を浮かべると
「いや、さすがに……え?生徒会室のロッカー?……はいわかりました、失礼します。」
電話を切るなり、困ったような顔をしながら、
「いや、安全管理上、宿直室以外で寝てもらう訳にはいかないから、生徒会室のロッカーから、寝袋取ってけって。」
「え、生徒会室になんでそんなのあるの?」
「さあ、俺に聞かれてもわからん」
「だよね…」
とにかく、話しを要約すると、みなっちは寝袋で、私はベッドで寝るということらしい。先生がいない状況で、宿直室以外で寝かせる訳には行かないとのこと。
同じ部屋で寝るのは、さすがに多少の抵抗感はあるが、まあ仕方ないのか…
「俺、とりあえず寝袋とってくるから、寝るなよ!?」
「さすがにそこまで薄情者じゃないから!」
さすがに、ベッドで寝かせてもらえるのに、先に寝るほど私は冷たい人間じゃない。
みなっちが、部屋から出ていった。と、まるでそれを見計らったかのように、私の携帯が鳴り出した。
「もしもし?」
「ああ、愛夏氏、保住です」
「どうしたんですか?」
「いやー、大変な感じにしちゃったなぁと思ってね、申し訳ない」
「そう思ってるなら、一刻も早く帰ってきて欲しいんですが。」
「そういう訳にも…わかってくれよ」
「はあ、分かってますよ、言ってみただけです。」
「それはそうと、みなっち困ってたよ?藍沢は女子なんだから、こういうの嫌がるだろって。」
その言葉を聞いて、少し胸が苦しくなった。
「そう、なんですか。大丈夫ですよ。みなっちがなにかするとも思いませんし」
言葉を返しながらも、一応みなっちが私のことを女子扱いしてくれている事が、嬉しかった。
「じゃあ、またこっちが落ち着いたら様子見に行くから。ほんとにお疲れ様!」
「あ、はい、お疲れ様でした!」
電話のきれたスマホの画面をみつめながら、ベットに寝転んだ。が、当然寝られるはずもなく。
意味もなくゴロゴロしているうちに、誰かが戻ってくる足音がした。といっても学校内にいるのはみなっちだけなので、当然みなっちが戻ってきたのだが。
「お、寝袋あったんだ」
「驚くことにほんとに入ってたよ…」
困惑した表情で寝袋を床に放り投げる。そして
「お前、ほんとに大丈夫?」
「え?なにが?」
突然の問いに思わずそう返した。
「…いや、いいや。もう寝るだろ?明日学校ないとはいえ」
時計を見ると、いつの間にか3時を過ぎていた。普通に考えて、この時間に学校にいる生徒なんて日本中探してもわたしたちぐらいだろう。この学校、やっぱりやばいな。
「そうだね(笑)寝ようか」
「俺はまだいいよ、携帯で遊んでるわ」
「そう?じゃ、私は寝るね……って寝づらいんだけど」
こっちを向いたままでいるみなっちにそう言うと
「わ、わるい」
と焦ったように返し、背を向けた。
(そういう反応されると、余計に気になるなぁ…)
そんなことを思いながらも、だんだんと眠くなり、いつの間にか私の意識は手放された…
(あいつ、もう寝たか?)
そっと振り返ってみると藍沢は、布団にくるまって微動だにしない。にしても、今日は疲れた。藍沢が好きだということを気づいてしまって、その後にそいつと2人で泊まりときたもんだ。冷静さを保つのが精一杯で、まともに寝られやしない。
と、藍沢が寝返りをうち、顔がこちらへ向いた。
(…かわいい)
不覚にも、そんなことを思ってしまう。こんなに至近距離で好きな子が寝ているのだ。何も思わない方がおかしい。そう自分で勝手に納得するとしばらく藍沢の顔を眺めた。
でも、俺は知っているのだ。藍沢には彼氏がいることを。それでも、好きになってしまったものは仕方ない。噂によれば、藍沢自身はその彼氏のことを、そこまで好きではないらしい。なら、ワンチャン狙ってもいいよな?
「みなっちふざけないでちゃんとやって…」
急に聞こえた声に慌てて顔を上げるが
「なんだ、寝言か…」
寝言で、俺の名前が出てくるとは…やばい、こいつは、俺の冷静さを無くしに来てるのか?
幸せそうに眠る藍沢の手が、ベッドからはみ出してしまっている。気づかれないようにそっとベッドに載せようと手を掴むと、きゅっと握ってきた。
こいつは…
「お前のせいだからな」
そっとその手にキスをすると、その手をベッドにのせ、
「おやすみ」
声をかけると背中を向けて寝袋に入った。
そのうち、眠くなり…俺の意識は途絶えた。
…キャラが崩壊してしまった。
だけど、そんなの仕方ないと思う。だって、普通に考えておかしいもん。
男子と2人で学校合宿!
こんなのが、許されるのはアニメの世界だけだ。なのに、私の前には相変わらず仕事を続けるみなっちの姿がある。
頼むから、夢であって欲しい。現実から全力で逃避したい。
「おい、ボケっとしてないで仕事しろよ」
みなっちの声に、仕方なく作業を再開した。
(そう、これは仕事のための合宿…)
自己暗示でもかけないとやってられるはずがない。ブツブツと考えながらやっているうちに、合宿の夜は更けていった…
―数時間後―
「これで、最後だよな!?」
「他のやつは、最終確認まで全部終わってる!」
みなっちの問いかけに全力で答える。長かったこの時間も、ようやく終わりが見えたのだ。
「これで、よし!」
最後の書類がファイルされ、どちらともなく顔を見合わせた。
「「終わったー!!」」
夜の学校に響き渡る歓声と、ハイタッチの音。これで、ようやく寝られるんだ。
と、ふと気がついてしまった。この学校には、宿泊施設など完備されていない。あるのは、宿直の先生が泊まっていくための部屋が、1つ…
「さー、さっさと寝ようぜ」
お気楽な言葉に
「え、どこで寝るの?」
「そりゃ、宿直室…」
聞き返すと、口が止まった。どうやら、部屋がひとつしかないことに気がついたらしい。
「どうすんだ、これ」
珍しく困惑したみなっちの言葉に、返す言葉がみつからない。
「とりあえず、宿直室行くか…」
「そうね…」
なんとも言えない微妙な空気の中、宿直室に並んで向かう。
案の定、ベットはひとつ、布団もなければソファーもない。
「俺、生徒会室戻るわ」
ため息をつき、部屋を出ようとするみなっち。私は咄嗟に腕を掴んでいた。
「え…どうした?」
少し慌てたようにきいてくるみなっちに
「あ、いや、その…保住先生!保住先生に聞いてみたら何とかなるんじゃないかなぁと思って!」
私はわたしで、慌てて言葉を紡ぐ。なんで、今みなっちを呼び止めたのか、自分でも分からない。
だからこそ、止めようとした理由が咄嗟には思いつかなかった。
「あぁ…それもそうだな。とりあえず電話するか。」
何故か少し残念そうに携帯をだすと、みなっちは保住先生に電話をかけ始めた。
「あ、もしもし……はい、終わりました。……いや、大丈夫っす。………はい、それなんですけど……はい!?」
ちらっとこちらを見て、困ったような表情を浮かべると
「いや、さすがに……え?生徒会室のロッカー?……はいわかりました、失礼します。」
電話を切るなり、困ったような顔をしながら、
「いや、安全管理上、宿直室以外で寝てもらう訳にはいかないから、生徒会室のロッカーから、寝袋取ってけって。」
「え、生徒会室になんでそんなのあるの?」
「さあ、俺に聞かれてもわからん」
「だよね…」
とにかく、話しを要約すると、みなっちは寝袋で、私はベッドで寝るということらしい。先生がいない状況で、宿直室以外で寝かせる訳には行かないとのこと。
同じ部屋で寝るのは、さすがに多少の抵抗感はあるが、まあ仕方ないのか…
「俺、とりあえず寝袋とってくるから、寝るなよ!?」
「さすがにそこまで薄情者じゃないから!」
さすがに、ベッドで寝かせてもらえるのに、先に寝るほど私は冷たい人間じゃない。
みなっちが、部屋から出ていった。と、まるでそれを見計らったかのように、私の携帯が鳴り出した。
「もしもし?」
「ああ、愛夏氏、保住です」
「どうしたんですか?」
「いやー、大変な感じにしちゃったなぁと思ってね、申し訳ない」
「そう思ってるなら、一刻も早く帰ってきて欲しいんですが。」
「そういう訳にも…わかってくれよ」
「はあ、分かってますよ、言ってみただけです。」
「それはそうと、みなっち困ってたよ?藍沢は女子なんだから、こういうの嫌がるだろって。」
その言葉を聞いて、少し胸が苦しくなった。
「そう、なんですか。大丈夫ですよ。みなっちがなにかするとも思いませんし」
言葉を返しながらも、一応みなっちが私のことを女子扱いしてくれている事が、嬉しかった。
「じゃあ、またこっちが落ち着いたら様子見に行くから。ほんとにお疲れ様!」
「あ、はい、お疲れ様でした!」
電話のきれたスマホの画面をみつめながら、ベットに寝転んだ。が、当然寝られるはずもなく。
意味もなくゴロゴロしているうちに、誰かが戻ってくる足音がした。といっても学校内にいるのはみなっちだけなので、当然みなっちが戻ってきたのだが。
「お、寝袋あったんだ」
「驚くことにほんとに入ってたよ…」
困惑した表情で寝袋を床に放り投げる。そして
「お前、ほんとに大丈夫?」
「え?なにが?」
突然の問いに思わずそう返した。
「…いや、いいや。もう寝るだろ?明日学校ないとはいえ」
時計を見ると、いつの間にか3時を過ぎていた。普通に考えて、この時間に学校にいる生徒なんて日本中探してもわたしたちぐらいだろう。この学校、やっぱりやばいな。
「そうだね(笑)寝ようか」
「俺はまだいいよ、携帯で遊んでるわ」
「そう?じゃ、私は寝るね……って寝づらいんだけど」
こっちを向いたままでいるみなっちにそう言うと
「わ、わるい」
と焦ったように返し、背を向けた。
(そういう反応されると、余計に気になるなぁ…)
そんなことを思いながらも、だんだんと眠くなり、いつの間にか私の意識は手放された…
(あいつ、もう寝たか?)
そっと振り返ってみると藍沢は、布団にくるまって微動だにしない。にしても、今日は疲れた。藍沢が好きだということを気づいてしまって、その後にそいつと2人で泊まりときたもんだ。冷静さを保つのが精一杯で、まともに寝られやしない。
と、藍沢が寝返りをうち、顔がこちらへ向いた。
(…かわいい)
不覚にも、そんなことを思ってしまう。こんなに至近距離で好きな子が寝ているのだ。何も思わない方がおかしい。そう自分で勝手に納得するとしばらく藍沢の顔を眺めた。
でも、俺は知っているのだ。藍沢には彼氏がいることを。それでも、好きになってしまったものは仕方ない。噂によれば、藍沢自身はその彼氏のことを、そこまで好きではないらしい。なら、ワンチャン狙ってもいいよな?
「みなっちふざけないでちゃんとやって…」
急に聞こえた声に慌てて顔を上げるが
「なんだ、寝言か…」
寝言で、俺の名前が出てくるとは…やばい、こいつは、俺の冷静さを無くしに来てるのか?
幸せそうに眠る藍沢の手が、ベッドからはみ出してしまっている。気づかれないようにそっとベッドに載せようと手を掴むと、きゅっと握ってきた。
こいつは…
「お前のせいだからな」
そっとその手にキスをすると、その手をベッドにのせ、
「おやすみ」
声をかけると背中を向けて寝袋に入った。
そのうち、眠くなり…俺の意識は途絶えた。
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