【大師匠は大嘘つき】〜俺はデタラメの剣術を教えたはずなのに、今や妹は剣聖と呼ばれています〜

鳥羽フシミ

文字の大きさ
24 / 96
修行編

第24話 剣聖への道 〜真剣〜 その5

しおりを挟む
俺が山に入る時に、妹が天気の事を口にする様になったのは夏の頃からだったろうか。

山の天気は変わりやすく、俺も常日頃から山に入る日の空模様には細心の注意を払っている。とは言ってもこの世界には天気予報なんて便利な物は無い。だから出来ることといえば昔からの村の言い伝えを参考にすることぐらいしか無い。

例えば、村から見て西の山々が霞んで見えれば天気は下り坂。逆に山の先にアマルカの霊峰まで望む事が出来れば次の日まで天気は崩れない。

まぁ、そんな程度の簡単な言い伝えである。

だからアマルカの霊峰がくっきりと見えた今日は1日中晴れの予定だった。


でも、今日はどうしてだろうか。さっきまでは秋空が綺麗に広がっていたというのに、いつもの谷を二つ超えた辺りから何だか怪しい雲行きになってきた。奇しくも、妹のなんちゃって天気予報が当たってしまいそうな予感である。

ただ、そうは言ってもまだまだ日は高い。このまま薬草のあまり入っていない軽い籠を背負って家に帰るのも、もったいない話だ。

俺は家まで峠をあと一つ。

と?ここで俺はいつもの帰り道とは違う岩場の多い道を進むことにした。この道は足場が悪く、めぼしい薬草もあまり生えてはいない。そのため、めったに通ることは無いのだが、それでもこの道は以前一度だけ『千年霊芝《せんねんれいし》』と言われる超高級なキノコを見つけた道である。

家に戻るには少し遠回りにはなってしまうが、久しぶりに一獲千金を狙ってみるのも悪くはない。昼で仕事を終えた今日ならちょっとしたお遊びにはちょうど良い機会だ。

俺は、程よい岩に手をかけながら辺りの木々を見渡して、霊芝の生えていそうな古木を探した。この道は木々に紛れて辺りに俺の背丈程の岩がゴロゴロと突き出ししている。どれもこれもが、妹の修行に使えそうな岩ではあったのだが、それも「今さら」と言うべきだろう。

もう妹は、修行に飽きてしまっているのだ。

あいにく、霊芝は最高級キノコと言うだけあってそう簡単には見つからない。それだからこそ高級霊薬として取引されるのである。

しかし、俺はそんな霊芝よりも、先程からずっと気になっている事があった。

俺が、この道を使うのはおよそ一年以上ぶりなのだが、はたしてこんなに歩きやすい道だっただろうか……。というのも、俺の記憶ではもう少し大きな岩が行く手を阻み、それを何個も乗り越えなければならなかったはずなのだ。

しかし、今はどうだろう。その大きな岩が何かの衝撃で砕けでもしたかのようにバラバラになっていたり、はたまた2つに割れていたり……。

自分の記憶が不確かな為に自信は無いのだが。どうにも不自然なのだ。辺りの巨岩と言う巨岩が、家に近付くに連れどれもが真っ二つに割れていたり砕けていたりしているのだ……。しかもその断面は調べるまでもなく真新しい……。


妹の言った通りに雨は次第に小雨から本降りへと変わっていった。家路へと急ぐ俺の脳裏に一つの仮説が浮かんだ。

――この道に点在する不自然に破れた岩の数々。これはもしかして妹が砕いたものではないだろうか……。

しかしそれは、俺の希望的仮説に他ならない。何故なら、あれだけ強くなろうとした信念を、俺は今の妹から一つも感じとる事が出来なくなっていた。

どうにも口惜しいがこの修行ごっこも、そろそろやめ時なのかもしれない――



さて。

第三層の修行を初めてから、二年。

妹と共に巨岩と向き合ったあの雪の日に、俺は一つの間違いをおかしていた。それは実直な妹の性格ゆえの誤解だったのだが――その誤解が妹をさらなる高みへと導いてしまった事に、この時の俺はまだ気が付いていない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...