27 / 96
修行編
第27話 剣聖への道 〜真剣〜 その8
しおりを挟む
それはあまりにも突然な出来事で、俺は思わず言葉を失った――
もう妹は修行に全く身が入っていなかったはずだ。あの日。俺が妹に与えた剣も、今では暖炉の横に立て掛けられたまま。まるでその存在すらも忘れてしまったかのようなのに――
「なのに。この妹の剣幕はなんだ?」
両の手を力いっぱいに握りしめて、今にも涙が零れ落ちそうな潤んだ目で俺を見据えて。なんで、そんな事を言うの?と問い詰めんばかりに、その視線を俺の目から離そうとはしない。
「私。絶対に止めないから……」
妹のその言葉は、もはや断言と言っても良かった。そして。もちろんそこには、俺に対する怒りが込められている。
でも……。俺。そんなに酷いことを言ったか?
毎日一生懸命に修行に打ち込んでいたなら、俺だって簡単にそんな事は言わない。でもレイラ。ここ最近のお前は剣の修行なんて全くしていなかったかじゃないか……。
「なぁレイラ。お前はどうしてそんなに剣術の修行がしたいんだ?」
今さらな質問だった。でも俺には、もう妹にそんなことしか尋ねることが出来ない。
しかしそれは、信じる者と騙し続ける者。そんな関係を四年も続けてしまった俺達兄妹の心の溝だったのだろう。この時の俺は、妹がどれほど真剣に『俺がデタラメに考えた剣の修行』に打ち込んでいたのかを、本当の意味で理解できていなかったのだ。
「そんなの。お兄ちゃんと一緒にドラゴン退治がしたいからに決まってる」
半分べそをかきながら、しかし迷うこと無く口にした妹の答えは、たったそれだけだった。
そう。それは、あの日から……
それはまさに物語の主人公のように、妹はただひたすら、俺と一緒にドラゴン退治の旅に出る夢を、その小さな胸に抱き続けていたのだ。
ならば、修行を突然止めてしまったのは何故?
いや。実際、妹は修行を止めてなどいなかったのだ。
それどころか、妹は、第三層の『絶対分析』を修得するためにありとあらゆる可能性を試していた。
ただ遊んでいたように見えた妹は、実はその時。
分析する能力。それを磨き上げる為に、日夜『水の流れ』を知り、『雲の動き』を読み、『太陽の暖かさ』を感じ『雪の冷たさ』をその身に刻んでいたのだった。
だから……。妹が今日の雨を言い当てたのも、それを知った今なら理解出来る。俺の知らないところで妹は――いつの間にかその意識を気温や湿度、そしてその変化に対する環境の変化にまでに巡らせていたというわけだ。
それでは――1日中、鳥を追いかけて遊んでいたのはどう言う意味があったのだろう。魚釣り、薪割り、他にも色々やっていたはずだ。
しかし俺はもうそれ以上考えることを止めた。そこに妹がたゆまぬ努力を続けていたと言う事実があれば良いではないか。
あらゆる方法で『自然を知ろうとすること』とは、言い換えれば『この世界の理《ことわり》を知ろうとすること』である。それはまさに日本の剣豪達が行き着く先。『禅』の精神に通じる修行だったと言うわけだ。
今。俺は――
ずっと忘れていたとても大切な事を思いだした。
「この『第三層』の修行には、剣を振るう必要など一切無かったのだ」
もう妹は修行に全く身が入っていなかったはずだ。あの日。俺が妹に与えた剣も、今では暖炉の横に立て掛けられたまま。まるでその存在すらも忘れてしまったかのようなのに――
「なのに。この妹の剣幕はなんだ?」
両の手を力いっぱいに握りしめて、今にも涙が零れ落ちそうな潤んだ目で俺を見据えて。なんで、そんな事を言うの?と問い詰めんばかりに、その視線を俺の目から離そうとはしない。
「私。絶対に止めないから……」
妹のその言葉は、もはや断言と言っても良かった。そして。もちろんそこには、俺に対する怒りが込められている。
でも……。俺。そんなに酷いことを言ったか?
毎日一生懸命に修行に打ち込んでいたなら、俺だって簡単にそんな事は言わない。でもレイラ。ここ最近のお前は剣の修行なんて全くしていなかったかじゃないか……。
「なぁレイラ。お前はどうしてそんなに剣術の修行がしたいんだ?」
今さらな質問だった。でも俺には、もう妹にそんなことしか尋ねることが出来ない。
しかしそれは、信じる者と騙し続ける者。そんな関係を四年も続けてしまった俺達兄妹の心の溝だったのだろう。この時の俺は、妹がどれほど真剣に『俺がデタラメに考えた剣の修行』に打ち込んでいたのかを、本当の意味で理解できていなかったのだ。
「そんなの。お兄ちゃんと一緒にドラゴン退治がしたいからに決まってる」
半分べそをかきながら、しかし迷うこと無く口にした妹の答えは、たったそれだけだった。
そう。それは、あの日から……
それはまさに物語の主人公のように、妹はただひたすら、俺と一緒にドラゴン退治の旅に出る夢を、その小さな胸に抱き続けていたのだ。
ならば、修行を突然止めてしまったのは何故?
いや。実際、妹は修行を止めてなどいなかったのだ。
それどころか、妹は、第三層の『絶対分析』を修得するためにありとあらゆる可能性を試していた。
ただ遊んでいたように見えた妹は、実はその時。
分析する能力。それを磨き上げる為に、日夜『水の流れ』を知り、『雲の動き』を読み、『太陽の暖かさ』を感じ『雪の冷たさ』をその身に刻んでいたのだった。
だから……。妹が今日の雨を言い当てたのも、それを知った今なら理解出来る。俺の知らないところで妹は――いつの間にかその意識を気温や湿度、そしてその変化に対する環境の変化にまでに巡らせていたというわけだ。
それでは――1日中、鳥を追いかけて遊んでいたのはどう言う意味があったのだろう。魚釣り、薪割り、他にも色々やっていたはずだ。
しかし俺はもうそれ以上考えることを止めた。そこに妹がたゆまぬ努力を続けていたと言う事実があれば良いではないか。
あらゆる方法で『自然を知ろうとすること』とは、言い換えれば『この世界の理《ことわり》を知ろうとすること』である。それはまさに日本の剣豪達が行き着く先。『禅』の精神に通じる修行だったと言うわけだ。
今。俺は――
ずっと忘れていたとても大切な事を思いだした。
「この『第三層』の修行には、剣を振るう必要など一切無かったのだ」
10
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる