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修行編
第26話 剣聖への道 〜真剣〜 その7
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俺の言葉を聞いて、妹はがっかりしただろうか?それとも喜んだのだろうか?少し首を横に捻れば隣りに妹がいる。なのにそれを確かめる勇気が、今の俺には無かった。
「俺は――」
剣聖だとか世界最強だとか――いったい今日まで何を考えていたのだろうか。どうして妹が、そんなに大それた存在にならなきゃいけなかったのだろうか。
たまたまゲームみたいな異世界に転生して、そんな俺がなれもしない存在に憧れたか?自分が無理だったからって、まさかその夢を妹に託しでもする気だったか?
突如浮かんできたいくつもの言葉に、俺は必死で頭《かぶり》を振った。『憧れ』だとか『夢』だとか……。これは、そんなに格好良い問題じゃない。
自分を格好良く見せようとするのは俺の悪い癖だ。
もともと、俺のそんな癖が原因だろ?嘘を妹に謝れ無かった俺の弱さが、そもそもの始まりだったじゃないか。そして、今はただその嘘が行き詰まってしまったから。ただそれだけの理由で俺がみっともなくそれを放り投げようとしているだけではないのか。
「分かってるよ……。そんな事。」
だったら――
妹が修行に飽きてしまった今が、ちょうど止め時だろう。俺だって、これ以上ハッタリの師匠を演じ続けるのは辛かったんだ。
「お兄ちゃんが悪かったよ。だからもうやめようぜ――こんなことさ……」
風が扉を叩く音。そして暖炉の薪《まき》がパチパチと弾ける音。頭の中で渦巻いていた言葉の数々が、諦めた途端に静けさの中へと消えて行った。
もしかして俺は今の心の声を、言葉にしていたのだろうか……。
そんな疑問を感じるほどに、辺りは静まりかえって……。その分だけ隣りに座っているはずの妹を、俺は怖いほどに意識してしまう。
妹は、俺の言葉を聞いて、がっかりしたのだろうか?それとも喜んだのだろうか?
俺にはそれを確かめる勇気が無い。
だが、その時である。
「……………だ」
静けさを割って、小さく唸るような言葉が隣りから聞こえた。
それでも、俺は振り向け無かった。だって。もし妹が隣で泣いていたりしたら優柔不断な俺は――また妹に嘘をついてしまうかもしれない。
「嫌……だ」
今度はさっきよりも大きな声で――
その言葉は、もちろん俺にもはっきりと聞こえた。
その声は泣きべそなんかかいてはいない。もちろんがっかりしているわけでも、喜んでいるわけでも……。
俺は、この妹の声を良く知っている。いや。知りすぎている。この唸るような、そして腹の底から絞り出す様な声。
これは、怒っているのだ。
そして……次の瞬間――
まさに雷でも落ちたかの様に、妹の大きな声が家中に響き渡った。
「嫌だ――――!修行を止めるなんて絶対に嫌!私、決めてるんだもん、私は絶対にお兄ちゃんみたいに強くなるんだって――そう決めてるんだもん」
「俺は――」
剣聖だとか世界最強だとか――いったい今日まで何を考えていたのだろうか。どうして妹が、そんなに大それた存在にならなきゃいけなかったのだろうか。
たまたまゲームみたいな異世界に転生して、そんな俺がなれもしない存在に憧れたか?自分が無理だったからって、まさかその夢を妹に託しでもする気だったか?
突如浮かんできたいくつもの言葉に、俺は必死で頭《かぶり》を振った。『憧れ』だとか『夢』だとか……。これは、そんなに格好良い問題じゃない。
自分を格好良く見せようとするのは俺の悪い癖だ。
もともと、俺のそんな癖が原因だろ?嘘を妹に謝れ無かった俺の弱さが、そもそもの始まりだったじゃないか。そして、今はただその嘘が行き詰まってしまったから。ただそれだけの理由で俺がみっともなくそれを放り投げようとしているだけではないのか。
「分かってるよ……。そんな事。」
だったら――
妹が修行に飽きてしまった今が、ちょうど止め時だろう。俺だって、これ以上ハッタリの師匠を演じ続けるのは辛かったんだ。
「お兄ちゃんが悪かったよ。だからもうやめようぜ――こんなことさ……」
風が扉を叩く音。そして暖炉の薪《まき》がパチパチと弾ける音。頭の中で渦巻いていた言葉の数々が、諦めた途端に静けさの中へと消えて行った。
もしかして俺は今の心の声を、言葉にしていたのだろうか……。
そんな疑問を感じるほどに、辺りは静まりかえって……。その分だけ隣りに座っているはずの妹を、俺は怖いほどに意識してしまう。
妹は、俺の言葉を聞いて、がっかりしたのだろうか?それとも喜んだのだろうか?
俺にはそれを確かめる勇気が無い。
だが、その時である。
「……………だ」
静けさを割って、小さく唸るような言葉が隣りから聞こえた。
それでも、俺は振り向け無かった。だって。もし妹が隣で泣いていたりしたら優柔不断な俺は――また妹に嘘をついてしまうかもしれない。
「嫌……だ」
今度はさっきよりも大きな声で――
その言葉は、もちろん俺にもはっきりと聞こえた。
その声は泣きべそなんかかいてはいない。もちろんがっかりしているわけでも、喜んでいるわけでも……。
俺は、この妹の声を良く知っている。いや。知りすぎている。この唸るような、そして腹の底から絞り出す様な声。
これは、怒っているのだ。
そして……次の瞬間――
まさに雷でも落ちたかの様に、妹の大きな声が家中に響き渡った。
「嫌だ――――!修行を止めるなんて絶対に嫌!私、決めてるんだもん、私は絶対にお兄ちゃんみたいに強くなるんだって――そう決めてるんだもん」
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