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修行編
第40話 剣聖への道 〜萬寿香(マンジュコウ)〜 その7
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このだだっ広い山を、おそらく妹は『千年九剣第一層』の『絶対なんちゃら』を使って捜査中だ。あちらへこちらと跳ね回りながらも、時々ものすごい集中力で周囲を見渡しているのが分かる。
では、この俺は?
もちろん俺の武器は、日頃の経験と知識だよ。前にも言ったけどこの辺りの山々は俺の庭も同然だからね。知らない物なんて何一つ無い。だったら俺が見たことない物、初めて見る物を探せば良い。
つまりこれが俺のイニシアチブ。そして勝負は対等。
ここは兄の威信をかけて『千年九剣』なんていうデタラメな剣術には負けてはいられないのである。
しかし――
恐るべきは『千年九剣』。
妹の、その捜索スピードたるや常軌を逸していた。お得意の『絶対空間認識』ってやつを使っては、あっちへピョンピョンこっちへピョンピョン。これじゃまるで野ウサギだ。
一方で俺は、長年の経験とカンってやつでえっちらおっちらと――山を登るにも妹が前を歩いてないと途端にスピードが落ちる。
一箇所二箇所と俺がもたもたしている間に、妹はさっそく何かを見つけた様だ。
「お兄ちゃ~ん。このムニムニしたやつは?」
「違う。これはクワガタの幼虫だ……そこら辺に捨てておけ」
「じゃぁ、フワフワしたこれは?」
「それは――ガガイモの種だ、それも捨てておけ」
「こっちの虫みたいな変なのは?」
「それは冬虫夏草だ。それも捨てて――いやそれはとっておいてくれ」
とまぁ、妹は次から次へと初めて見るものを俺の所に持ってきては、またすぐに新しい物を探しに山の奥へと飛んでいく。そんな事を何回も繰り返し――そして気がつけばお日様も真上へと登って、ワクワクのお弁当タイムである。
しかし、おかしい。さっきまで元気に飛び回っていたと思っていた妹が一言もしゃべらないではないか。それどころか朝からルンルンで作っていたサンドイッチにもまったく手をつけようとしない。
もしかしてしゃぎすぎて体調を崩たのかもしれない。
「どうした気分でも悪いのか?」心配になった俺は、むろん妹にそう尋ねた。しかし妹は俺から視線を逸らすようにそっぽを向いて何時までも黙ったままである。
だが、もう俺には何となくは分かっている。大好物の玉子サンドに手を付けない理由も、俺に目を合わせようとしない訳も――
そう。今の妹は少々お憤《むづか》りのご様子なのである。
理由は何かって?そんなの俺に分かるわけ無いじゃん。でももうすぐに分かるよ――だって妹はバカ正直だから、すぐに口から出ちゃうんだ。
「面白くない……」
妹は開口一番、思いっきりふくれっ面で俺を睨みながらそう言った。
「全然面白く無い!」
「なんだよ、やっぱりお前拗ねてるのか?」
「拗ねてなんか無い……」
「いや、それってむっちゃ拗ねてるじゃん。だって仕方ないだろ。そう簡単に萬寿香なんて見つかるはずがないんだからさ~」
俺もどうせこんなことだろうと思っていたんだ。手に入らないから駄々をこねる。もしくは期待が大きい分だけ落胆も大きい。 そんなことだろうと思っていたぜ。てな感じで――俺は何時ものごとくお兄ちゃんぶったしたり顔でもって妹をなだめてみた訳ですけれども。
逆にそれが妹の怒りを増幅させちゃったみたい。
妹は突然立ち上がると、顔を真っ赤にしてこう言った。
「全然違う!私は怒ってるの!」
だって。
「な、なんだよ怒るって。お、俺がお前に何かしたか?」
予想外の攻撃に俺は焦ってしまってしどろもどろに答える。もちろん妹がなんで怒っているかなんて分かっているはずもなかった。
しかし、ここに来て事態は相当に悪化していた。それに俺はただ気がついていなかっただけなのだ。
「してないから怒ってるの! だってせっかくの勝負なのに、お兄ちゃんが全然本気を出してくれないじゃない!」
妹は烈火のごとく俺を責め立て始める。
「ほ、本気だって? いや、出してるだろ俺だってお前に負けないぐらい薬草とか――」
そう言いながら俺は午前中に採取した袋いっぱいの薬草を妹に見せるのだが
「全然違うって言ってるの。だって、お兄ちゃん朝からずっと千年九剣の第一層も第二層も全然使って無いでしょ!」
まぁ、ここまで言われれば誰にだって分かる。妹は萬寿香を探しながら俺と本気の勝負をしたかったのだ。もちろんそれは過去に俺が「共に学ぼう」と言った『千年九剣』を使っての話である。
確かに今までの修行では、俺が妹に課題を出し妹が一人でその課題に立ち向かってきた。しかし第四層に入り剣を手にした今、妹はたった一人の修行では飽きたらなくなっているのだ。
しかし、はっきり言ってこれはまずい展開である。
本気の勝負をしたいだなんて――そんな事言われてもどうすりゃ良いのさ。だって俺は『千年九剣』なんてまったく修行してないんだぜ。
では、この俺は?
もちろん俺の武器は、日頃の経験と知識だよ。前にも言ったけどこの辺りの山々は俺の庭も同然だからね。知らない物なんて何一つ無い。だったら俺が見たことない物、初めて見る物を探せば良い。
つまりこれが俺のイニシアチブ。そして勝負は対等。
ここは兄の威信をかけて『千年九剣』なんていうデタラメな剣術には負けてはいられないのである。
しかし――
恐るべきは『千年九剣』。
妹の、その捜索スピードたるや常軌を逸していた。お得意の『絶対空間認識』ってやつを使っては、あっちへピョンピョンこっちへピョンピョン。これじゃまるで野ウサギだ。
一方で俺は、長年の経験とカンってやつでえっちらおっちらと――山を登るにも妹が前を歩いてないと途端にスピードが落ちる。
一箇所二箇所と俺がもたもたしている間に、妹はさっそく何かを見つけた様だ。
「お兄ちゃ~ん。このムニムニしたやつは?」
「違う。これはクワガタの幼虫だ……そこら辺に捨てておけ」
「じゃぁ、フワフワしたこれは?」
「それは――ガガイモの種だ、それも捨てておけ」
「こっちの虫みたいな変なのは?」
「それは冬虫夏草だ。それも捨てて――いやそれはとっておいてくれ」
とまぁ、妹は次から次へと初めて見るものを俺の所に持ってきては、またすぐに新しい物を探しに山の奥へと飛んでいく。そんな事を何回も繰り返し――そして気がつけばお日様も真上へと登って、ワクワクのお弁当タイムである。
しかし、おかしい。さっきまで元気に飛び回っていたと思っていた妹が一言もしゃべらないではないか。それどころか朝からルンルンで作っていたサンドイッチにもまったく手をつけようとしない。
もしかしてしゃぎすぎて体調を崩たのかもしれない。
「どうした気分でも悪いのか?」心配になった俺は、むろん妹にそう尋ねた。しかし妹は俺から視線を逸らすようにそっぽを向いて何時までも黙ったままである。
だが、もう俺には何となくは分かっている。大好物の玉子サンドに手を付けない理由も、俺に目を合わせようとしない訳も――
そう。今の妹は少々お憤《むづか》りのご様子なのである。
理由は何かって?そんなの俺に分かるわけ無いじゃん。でももうすぐに分かるよ――だって妹はバカ正直だから、すぐに口から出ちゃうんだ。
「面白くない……」
妹は開口一番、思いっきりふくれっ面で俺を睨みながらそう言った。
「全然面白く無い!」
「なんだよ、やっぱりお前拗ねてるのか?」
「拗ねてなんか無い……」
「いや、それってむっちゃ拗ねてるじゃん。だって仕方ないだろ。そう簡単に萬寿香なんて見つかるはずがないんだからさ~」
俺もどうせこんなことだろうと思っていたんだ。手に入らないから駄々をこねる。もしくは期待が大きい分だけ落胆も大きい。 そんなことだろうと思っていたぜ。てな感じで――俺は何時ものごとくお兄ちゃんぶったしたり顔でもって妹をなだめてみた訳ですけれども。
逆にそれが妹の怒りを増幅させちゃったみたい。
妹は突然立ち上がると、顔を真っ赤にしてこう言った。
「全然違う!私は怒ってるの!」
だって。
「な、なんだよ怒るって。お、俺がお前に何かしたか?」
予想外の攻撃に俺は焦ってしまってしどろもどろに答える。もちろん妹がなんで怒っているかなんて分かっているはずもなかった。
しかし、ここに来て事態は相当に悪化していた。それに俺はただ気がついていなかっただけなのだ。
「してないから怒ってるの! だってせっかくの勝負なのに、お兄ちゃんが全然本気を出してくれないじゃない!」
妹は烈火のごとく俺を責め立て始める。
「ほ、本気だって? いや、出してるだろ俺だってお前に負けないぐらい薬草とか――」
そう言いながら俺は午前中に採取した袋いっぱいの薬草を妹に見せるのだが
「全然違うって言ってるの。だって、お兄ちゃん朝からずっと千年九剣の第一層も第二層も全然使って無いでしょ!」
まぁ、ここまで言われれば誰にだって分かる。妹は萬寿香を探しながら俺と本気の勝負をしたかったのだ。もちろんそれは過去に俺が「共に学ぼう」と言った『千年九剣』を使っての話である。
確かに今までの修行では、俺が妹に課題を出し妹が一人でその課題に立ち向かってきた。しかし第四層に入り剣を手にした今、妹はたった一人の修行では飽きたらなくなっているのだ。
しかし、はっきり言ってこれはまずい展開である。
本気の勝負をしたいだなんて――そんな事言われてもどうすりゃ良いのさ。だって俺は『千年九剣』なんてまったく修行してないんだぜ。
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