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武術大会編
第49話 敗北を知りたい妹 〜ドーマ=エルドラド〜 その2
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ただし……。この黒い女がレイラにとっては因縁の女だったとしても、
この女は、そんな事などこれっぽちも知りはしない。むしろそれどころか、レイラにとって自分が『良き理解者』だとすら思っているだろう。
ドーマ=エルドラド。
遥か南方の失われた王族の末裔……。あの日。自らそう名乗った彼女は、口先ばかりがよく回る女だった。
そして今……。
予選での彼女は、その驚異的な身体能力を遺憾なく発揮して、次から次へと勝利を勝ち取って行く。
実際。瞬発力、跳躍力、そしてスピード。この三日間、レイラは彼女のことをずっと見ていたが、そのどれ一つをとってもその能力においてこの会場で彼女に敵う者はひとりもいないだろう。
二本の曲刀を用いた二刀流の剣技こそ大雑把だが、彼女の身体能力はそれを補って余りある物だ。
――あの女がこんなに戦えたとは……
以前、彼女がレイラに近づいて来た時には、そんな素振りを一切見せなかったと言うのに。いや、以前の彼女はこんな戦い方はしなかった。
今もまた会場に大きな歓声が上がった。舞台の上ではちょうど黒い女が重装備の大男の頭上を飛び越えてわざと観客を湧かせているのだ。
「凄いですね~。彼女……」
つい先ほど自らの試合を難なく終えたアイシア。今はレイラの横に立って、黒い女の試合の成り行きを共に見守っていた。
「確かに、あのスピードは驚異的だな」
そんなレイラのそっけない言葉に、アイシアは驚いた様に聞き返す。
「団長でも、そう思うんですか?」
「あぁ。あのようなすばしっこい動きをする奴は初めて見たよ」
――だが勝てないわけでは無い。この時のレイラにはもういくつかの勝ち筋が見えていた。
しかしアイシアは違う。
もし今の自分が、この黒い女と立合ったとして……。
順当に行けば明後日からの本戦第一試合で、アイシアはこのドーマと言う得体のしれない女と当る。
しかし、彼女にはまだ勝ち筋が見えてはいない。女の何もかもが異次元すぎる、そして情報がまったく足りない。
「団長は彼女とお知り合いだそうですね」
「以前少し。まぁ色々とね。だが私は彼女がこの様な戦い方をする姿を初めて見たよ」
「でもあの跳躍力。人間ってあんなに高く飛んだり跳ねたりできるものなのでしょうか?」
「さぁ……。私にも分からない。」
そう。分かる訳がない。なんせレイラ自身も、この様なドーマの戦い方を今回の予選で初めて見たのである。それでもしかし。今も相手をおちょくる様に飛んだり跳ねたりと立ち回るその姿はいかにも彼女らしいではないか。
そして、ドーマとて、ここまでの身体能力を獲得するためには、血の滲むような努力をしてきたに違いないのだ。それはまさに感嘆に値する努力である。
アイシアはいつまでも相手のスピードにこだわっているようだった。
「ちなみに団長は?」
おそらくアイシアは跳躍力のことを言っているのだろう。
「せいぜいあの半分だな。出来て私はあの大男の頭を超えるくらいだろう。それに跳ねるよりも横に避けたほうが楽だしな」
レイラは端的にそう言葉を返す。
つまりあの女は自らの身体能力に頼り切った闘い方をし過ぎている。それにアイシアは気が付かねばならない。
「私……勝てますかね……」
心細げな言葉にレイラは端的に答えた。
「諦めずに良く見ることだよ。今のところ隙は沢山ある」
この女は、そんな事などこれっぽちも知りはしない。むしろそれどころか、レイラにとって自分が『良き理解者』だとすら思っているだろう。
ドーマ=エルドラド。
遥か南方の失われた王族の末裔……。あの日。自らそう名乗った彼女は、口先ばかりがよく回る女だった。
そして今……。
予選での彼女は、その驚異的な身体能力を遺憾なく発揮して、次から次へと勝利を勝ち取って行く。
実際。瞬発力、跳躍力、そしてスピード。この三日間、レイラは彼女のことをずっと見ていたが、そのどれ一つをとってもその能力においてこの会場で彼女に敵う者はひとりもいないだろう。
二本の曲刀を用いた二刀流の剣技こそ大雑把だが、彼女の身体能力はそれを補って余りある物だ。
――あの女がこんなに戦えたとは……
以前、彼女がレイラに近づいて来た時には、そんな素振りを一切見せなかったと言うのに。いや、以前の彼女はこんな戦い方はしなかった。
今もまた会場に大きな歓声が上がった。舞台の上ではちょうど黒い女が重装備の大男の頭上を飛び越えてわざと観客を湧かせているのだ。
「凄いですね~。彼女……」
つい先ほど自らの試合を難なく終えたアイシア。今はレイラの横に立って、黒い女の試合の成り行きを共に見守っていた。
「確かに、あのスピードは驚異的だな」
そんなレイラのそっけない言葉に、アイシアは驚いた様に聞き返す。
「団長でも、そう思うんですか?」
「あぁ。あのようなすばしっこい動きをする奴は初めて見たよ」
――だが勝てないわけでは無い。この時のレイラにはもういくつかの勝ち筋が見えていた。
しかしアイシアは違う。
もし今の自分が、この黒い女と立合ったとして……。
順当に行けば明後日からの本戦第一試合で、アイシアはこのドーマと言う得体のしれない女と当る。
しかし、彼女にはまだ勝ち筋が見えてはいない。女の何もかもが異次元すぎる、そして情報がまったく足りない。
「団長は彼女とお知り合いだそうですね」
「以前少し。まぁ色々とね。だが私は彼女がこの様な戦い方をする姿を初めて見たよ」
「でもあの跳躍力。人間ってあんなに高く飛んだり跳ねたりできるものなのでしょうか?」
「さぁ……。私にも分からない。」
そう。分かる訳がない。なんせレイラ自身も、この様なドーマの戦い方を今回の予選で初めて見たのである。それでもしかし。今も相手をおちょくる様に飛んだり跳ねたりと立ち回るその姿はいかにも彼女らしいではないか。
そして、ドーマとて、ここまでの身体能力を獲得するためには、血の滲むような努力をしてきたに違いないのだ。それはまさに感嘆に値する努力である。
アイシアはいつまでも相手のスピードにこだわっているようだった。
「ちなみに団長は?」
おそらくアイシアは跳躍力のことを言っているのだろう。
「せいぜいあの半分だな。出来て私はあの大男の頭を超えるくらいだろう。それに跳ねるよりも横に避けたほうが楽だしな」
レイラは端的にそう言葉を返す。
つまりあの女は自らの身体能力に頼り切った闘い方をし過ぎている。それにアイシアは気が付かねばならない。
「私……勝てますかね……」
心細げな言葉にレイラは端的に答えた。
「諦めずに良く見ることだよ。今のところ隙は沢山ある」
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