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武術大会編
第55話 帰ってきた兄 その2
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でもでも……いくら『気』が使えるからって、私に過度な期待はしないで下さいね。
残念ですけど、今の私では『気』の力で空を飛んでみたり――超宇宙人的な必殺技、チョメチョメ波なんて……間違っても出来るはずありませんから。
ほんと、私にそんなことが出来るなら、こんなに息を切らせて走ってはいませんよ……。だって俺は今、妹のレイラ=バレンティンから全速力で逃げている最中なんですから。
「ねぇ。なんで俺までおっさんと一緒に逃げなきゃなんないの?」
背中から聞こえて来るのは、相変わらず不満気なエデン少年の声。まったくこの小僧は何度同じことを言わせるんだ。それにいつまでも俺のことをおっさんおっさんと……。
だから俺も不機嫌気味に答えてやる事にした。
「何度も言わせるな。剣聖が一層の超空間認識を使ったからだって、さっき言っただろが」
師匠に対して敬意を払えない不肖の弟子には、ちょっと不機嫌なくらいがちょうど良いのだ。それにさ、この狡《こす》っ辛《から》い少年は、そんな事くらいでしおらしくなる様な性格じゃ無い。
「それは、さっきも聞いたって。あいつの第一層は信じられないくらいに深いんだろ。でもさ、それでなんで俺まで逃げなきゃなんないのって聞いてんの!」
ほらほら。直ぐに言い返して来るだろ?本当こいつは弟子のくせに生意気なんだよ。
まったくそんなことくらい、俺の口から言わなくても分かってるだろうに……。っていうか分かっとけよ。
だから……。
俺とエデンが逃げなきゃならない理由ってのは……。
ほら……。
あれだよ……。
……ん?
なんでだっけ?
ヤバ。そこまでは考えて無かったわ。
これはまずいぞ。こいつは一瞬でも隙を見せたら全力で畳み掛けてくる奴なんだ。
「今のおっさんが妹に会えないてのは聞いてるけどさ。俺は大会の出場者なんだぜ?俺まで逃げる必要なんて無いだろう?」
「そ、それはだな……」
「だいたい俺ってば、第3試合に出なきゃなんないんですけど……」
「え、えっと……」
「それに、おっさんがあんな目立つ技使わなければ、あのまま会場から逃げる必要も無かっただろ?わざわざ見ず知らずの姉ちゃんの命を助ける必要なんてあったか?」
「だからあれはだな……」
くっ、くそう……。俺は正論を言う奴と、口の立つ奴が大嫌いなんだよう。俺。何も言い返せないじゃないか……。
でもまぁ、結局さ。俺達ってあれから20分くらいは走ったんじゃないかなぁ……。いつの間にか辺りが大分《だいぶ》と静かになってきたんじゃない?
正面には東の城門が見えてきて、あんなに賑やかだったコロシアムの歓声もここでは聞こえやしない。
さてさて。ここまで離れれば、レイラのやつも俺をそう簡単に見つける事は出来ないだろう。あいつ、俺を見つけたら絶対に俺のことを追って来るだろうしな。もしかしたら騎士団くらい動員するかもしれんからなぁ。
だから、ここは用心に用心を重ねて……。適当なこと言ってエデンを連れてきたわけさ。
だって師匠の俺が言えないでしょう?
「お前は俺が見つかった時の囮役だよ。」だなんて、さすがにねぇ……。
結局、エデンのやつはぶつくさ言いながらもコロシアムに帰って行ったけど。でもね。俺はさっき、あんな取っておきの技を使うつもりなんて全く無かったんだ。本当は『気』を込めた指弾《しだん》なんて使いたくは無かったんだよ。
あの時さ――ダークエルフに殺られかけたアイシアと言う少女を、俺が指弾を使って助けたって、そうみんなは思ってるでしょう?
まさか?
なんで見ず知らずの人間を俺が助けなくちゃなんないんだよう。だってアレは決闘だよ。
じゃぁ、なんでわざわざあんな目立つ事をしたんだって?
実はね……。
あのダークエルフが最後に刀を振りかぶった瞬間。あいつの曲刀が僅かに緑色に発光したのが見えたんだよ。そして、その時に見せたあいつの驚異的なまでのスピードは、俺の目から見ても本気《まじ》でヤバかった。
あんなの、普通じゃあり得ないでしょ。
そう。あれは、絶対にファンタジー的な何かだよ。
いやいや、本当の話。絶対にそうに違いないって。剣が光るとかさ、むちゃくちゃかっこいいじゃん。それにあの跳躍力やスピードだって……あのダークエルフ、俺の知らない何かを絶対にやってるはずなんだ。
だったらさ、あのドーマとかいう女が、騎士の姉ちゃんを殺して反則退場になっちゃうなんて勿体ないじゃん。
もっともっと勝ち進んでもらって、最後には……剣聖と闘ってもらわなきゃ。
だって。
あんな面白いやつ。利用しない手は無いだろう? 俺の妹の剣術の修行にさぁ。
残念ですけど、今の私では『気』の力で空を飛んでみたり――超宇宙人的な必殺技、チョメチョメ波なんて……間違っても出来るはずありませんから。
ほんと、私にそんなことが出来るなら、こんなに息を切らせて走ってはいませんよ……。だって俺は今、妹のレイラ=バレンティンから全速力で逃げている最中なんですから。
「ねぇ。なんで俺までおっさんと一緒に逃げなきゃなんないの?」
背中から聞こえて来るのは、相変わらず不満気なエデン少年の声。まったくこの小僧は何度同じことを言わせるんだ。それにいつまでも俺のことをおっさんおっさんと……。
だから俺も不機嫌気味に答えてやる事にした。
「何度も言わせるな。剣聖が一層の超空間認識を使ったからだって、さっき言っただろが」
師匠に対して敬意を払えない不肖の弟子には、ちょっと不機嫌なくらいがちょうど良いのだ。それにさ、この狡《こす》っ辛《から》い少年は、そんな事くらいでしおらしくなる様な性格じゃ無い。
「それは、さっきも聞いたって。あいつの第一層は信じられないくらいに深いんだろ。でもさ、それでなんで俺まで逃げなきゃなんないのって聞いてんの!」
ほらほら。直ぐに言い返して来るだろ?本当こいつは弟子のくせに生意気なんだよ。
まったくそんなことくらい、俺の口から言わなくても分かってるだろうに……。っていうか分かっとけよ。
だから……。
俺とエデンが逃げなきゃならない理由ってのは……。
ほら……。
あれだよ……。
……ん?
なんでだっけ?
ヤバ。そこまでは考えて無かったわ。
これはまずいぞ。こいつは一瞬でも隙を見せたら全力で畳み掛けてくる奴なんだ。
「今のおっさんが妹に会えないてのは聞いてるけどさ。俺は大会の出場者なんだぜ?俺まで逃げる必要なんて無いだろう?」
「そ、それはだな……」
「だいたい俺ってば、第3試合に出なきゃなんないんですけど……」
「え、えっと……」
「それに、おっさんがあんな目立つ技使わなければ、あのまま会場から逃げる必要も無かっただろ?わざわざ見ず知らずの姉ちゃんの命を助ける必要なんてあったか?」
「だからあれはだな……」
くっ、くそう……。俺は正論を言う奴と、口の立つ奴が大嫌いなんだよう。俺。何も言い返せないじゃないか……。
でもまぁ、結局さ。俺達ってあれから20分くらいは走ったんじゃないかなぁ……。いつの間にか辺りが大分《だいぶ》と静かになってきたんじゃない?
正面には東の城門が見えてきて、あんなに賑やかだったコロシアムの歓声もここでは聞こえやしない。
さてさて。ここまで離れれば、レイラのやつも俺をそう簡単に見つける事は出来ないだろう。あいつ、俺を見つけたら絶対に俺のことを追って来るだろうしな。もしかしたら騎士団くらい動員するかもしれんからなぁ。
だから、ここは用心に用心を重ねて……。適当なこと言ってエデンを連れてきたわけさ。
だって師匠の俺が言えないでしょう?
「お前は俺が見つかった時の囮役だよ。」だなんて、さすがにねぇ……。
結局、エデンのやつはぶつくさ言いながらもコロシアムに帰って行ったけど。でもね。俺はさっき、あんな取っておきの技を使うつもりなんて全く無かったんだ。本当は『気』を込めた指弾《しだん》なんて使いたくは無かったんだよ。
あの時さ――ダークエルフに殺られかけたアイシアと言う少女を、俺が指弾を使って助けたって、そうみんなは思ってるでしょう?
まさか?
なんで見ず知らずの人間を俺が助けなくちゃなんないんだよう。だってアレは決闘だよ。
じゃぁ、なんでわざわざあんな目立つ事をしたんだって?
実はね……。
あのダークエルフが最後に刀を振りかぶった瞬間。あいつの曲刀が僅かに緑色に発光したのが見えたんだよ。そして、その時に見せたあいつの驚異的なまでのスピードは、俺の目から見ても本気《まじ》でヤバかった。
あんなの、普通じゃあり得ないでしょ。
そう。あれは、絶対にファンタジー的な何かだよ。
いやいや、本当の話。絶対にそうに違いないって。剣が光るとかさ、むちゃくちゃかっこいいじゃん。それにあの跳躍力やスピードだって……あのダークエルフ、俺の知らない何かを絶対にやってるはずなんだ。
だったらさ、あのドーマとかいう女が、騎士の姉ちゃんを殺して反則退場になっちゃうなんて勿体ないじゃん。
もっともっと勝ち進んでもらって、最後には……剣聖と闘ってもらわなきゃ。
だって。
あんな面白いやつ。利用しない手は無いだろう? 俺の妹の剣術の修行にさぁ。
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