19 / 92
第一章
第十九話 相性は最悪
しおりを挟む
これまでエレナの時折見せる不可解な事象。
それは彼女のマナに秘密があったというのか・・。
彼女は特別だ、それが全てマナのせいであるとは到底思えない。
アシュベルは冷静に振り返ってみた、それだけでは語りつくせない彼女の
際立つ才覚。
しかしその一端を担っているのがマナならば
こんな小僧に言われずとも自ら気付きたかった・・。
「それは俺にも感じることができるのか」
二人には言わなかったがエレナのマナを直視していると躊躇いが生じる。
彼女のマナはまるで――――異質。
これはマナと呼べるのか、そう思ってしまうほど。
通常のマナの形態を強いて説明するならば球体、そしてそれは体の中で優しく溶け込んでいる。
属性ごとに見た目は少々違う。
炎属性ならば赤色を宿し水属性ならば青色ように非常に理解しやすい。そしてそれらは例外なく淡くそれは世界が与えた人類に与えられた能力と考えれば納得のいく力の形と言っていいだろう。
それに対し、エレナのマナは通常よりもひどく小さい球体で激しいスピードで何かが周囲を回転している。
それはリュカがいくら目を凝らしても色すら特定できない程だ。
不安定するぎる・・・何が起こっているのか。
それだけでも異質だというのにさらなる問題がある、それは異様にマナの密度が濃いという事だ。マナが凝縮されているといっても過言ではない。
エレナのマナが奪い合っているような暴走が起きている、・・?
だがエレナは意識は正常、こんなことがまかり通るのだろうか。
自身の答えが纏まらないでいると、アシュベルが痺れをきらし、リュカを急かす。
「ヒメちゃんの一大事なんで早めにお願いしたいんですけど。」
言葉は丁寧だがアシュベルの表情を見なくても苛立って居るのは分かった。
リュカが慎重に言葉を選ぶ。
「瞳の共有ってやつです、でも僕とアシュベル様って相性最悪なんですよ・・・」
「マナ・・か」
アシュベルも即座にその事に気付いた。
リュカは水の魔力アシュベルは火の魔力、これはかなり厄介だ。
魔力の本質だけではなく体質や性格まで相反すると云われている。
そして、二人とも魔力が通常の人よりも強い、反発する力は更に高まる。
「リュカ、お前には済まんが、どうあっても俺はヒメちゃんのマナを見ておかなければならない。で、俺はどうすればいい?」
そう来ると思った・・リュカは覚悟を決めて瞳に集中する。
「僕の腕に掴んでください、絶対離さないように。」
「・・了解」
アシュベルがリュカの腕を掴み、リュカがマナを再び覗こうとした。
バチバチッ!
やはり想定内ではあるが、二人の魔力が激しく反発しあって上手く覗けない。
お互いの魔力が拒否反応を起こしているのだ、これは至極当然のこと。
だが、今はそれを乗り切らねばならない。
アシュベルの腕はまだリュカの腕を掴んでいる。
リュカ、悪いな・・何が起きても彼には離す気など毛頭なかった。
一方リュカも覗かせてやると言った手前引き下がる訳にはいかなかった、
このエレナに一番近い男、アシュベルに。
僕の力で覗かせてやる・・。
だが最悪な相性がぶつかれば只々猛烈な拒絶反応が痛みとなって帰ってくるだけ、
しかもそれを続けていれば体力も精神力もどんどん削られていくのは明白だった。
「・・・っ」
それでも、どちらも辞めようとはしない。
なにか違うゲームに突入しているんじゃないか、これは。
土埃が二人を中心に巻き上がり、魔力が熾烈な拒絶反応を起こする度、
爆風が湧き上がる。
「・・・・・ん」
エレナは静観していたが、何を思ったのか「えいっ」とアシュベルとリュカの腕を掴んだ。
「あれ・・・」
二人の男が静けさに気付く。
拒絶反応による痛みがまるで嘘のようにない。
この手、このエレナの手が加わったからか?
彼女は闇の魔力の持ち主。それが加わっただけで?
違う気がする、けれど今は。
「見えた?」
エレナが二人をそれぞれ見て言う。
それにつられてアシュベルとリュカが我に返り、エレナを視る。
「視えましたかアシュベル様」
「視えた・・・」
この状態だと自分のマナとリュカのマナ、そしてエレナのマナが視える。
これは・・。
なんと表現していいかわからない、これはマナなのか、そう疑いたくなる程のマナの濃度。見ていて分かる不安定な存在。
リュカの限界が来て、離れてみたが。
二人にはエレナのマナの光景が目に焼き付いて離れない。
どう考えてもおかしい。しかし、彼女のこれまでの事象を考えれば全て辻褄が合う。
「これは、まるでまだ完成していない星のようです・・」
リュカが額の汗を拭きつつ、自分の感想を述べた。
「それ、どういう意味?」
エレナが不思議そう質問する。
「エレナのマナは特別です、そして異質・・異質すぎるんです。僕としてはまだ完成されてないような、その途中の過程を見ているようです。形は違いますが、星が恒星になるまでに様々な過程を経て様々なものが混じり合う過程。・・・頭が追いつかないが、これをまとめると、」
アシュベルが真剣に耳を傾ける。
「僕の考えでは、エレナのマナは完成されてない、しかも今も不安定。」
そんな事が在り得るのか・・。
不安定でありながら、魔力を無尽蔵に引き出し、それを具現化する力を持っている。
そこから引き出されるのはたった一つ。
彼女の願わない暴走の危機。
そう。
彼女の暴発だ。
今は平静を保っているエレナだが・・・いつか彼女は正気を失ってしまうかもしれない。
その時俺は彼女をどう受け止めれば、どう止めればいいのだ。
アシュベルの心に焦燥が満ちる。
それはエレナが彼にとって大切な人になってしまった事を示している。
大切、それはアシュベルが彼女に主になって欲しい、と思った時からの感情。
だがそれはもうアシュベルにすら計れない程の重みになっている、まだそこに彼は気付いていなかった。
それは彼女のマナに秘密があったというのか・・。
彼女は特別だ、それが全てマナのせいであるとは到底思えない。
アシュベルは冷静に振り返ってみた、それだけでは語りつくせない彼女の
際立つ才覚。
しかしその一端を担っているのがマナならば
こんな小僧に言われずとも自ら気付きたかった・・。
「それは俺にも感じることができるのか」
二人には言わなかったがエレナのマナを直視していると躊躇いが生じる。
彼女のマナはまるで――――異質。
これはマナと呼べるのか、そう思ってしまうほど。
通常のマナの形態を強いて説明するならば球体、そしてそれは体の中で優しく溶け込んでいる。
属性ごとに見た目は少々違う。
炎属性ならば赤色を宿し水属性ならば青色ように非常に理解しやすい。そしてそれらは例外なく淡くそれは世界が与えた人類に与えられた能力と考えれば納得のいく力の形と言っていいだろう。
それに対し、エレナのマナは通常よりもひどく小さい球体で激しいスピードで何かが周囲を回転している。
それはリュカがいくら目を凝らしても色すら特定できない程だ。
不安定するぎる・・・何が起こっているのか。
それだけでも異質だというのにさらなる問題がある、それは異様にマナの密度が濃いという事だ。マナが凝縮されているといっても過言ではない。
エレナのマナが奪い合っているような暴走が起きている、・・?
だがエレナは意識は正常、こんなことがまかり通るのだろうか。
自身の答えが纏まらないでいると、アシュベルが痺れをきらし、リュカを急かす。
「ヒメちゃんの一大事なんで早めにお願いしたいんですけど。」
言葉は丁寧だがアシュベルの表情を見なくても苛立って居るのは分かった。
リュカが慎重に言葉を選ぶ。
「瞳の共有ってやつです、でも僕とアシュベル様って相性最悪なんですよ・・・」
「マナ・・か」
アシュベルも即座にその事に気付いた。
リュカは水の魔力アシュベルは火の魔力、これはかなり厄介だ。
魔力の本質だけではなく体質や性格まで相反すると云われている。
そして、二人とも魔力が通常の人よりも強い、反発する力は更に高まる。
「リュカ、お前には済まんが、どうあっても俺はヒメちゃんのマナを見ておかなければならない。で、俺はどうすればいい?」
そう来ると思った・・リュカは覚悟を決めて瞳に集中する。
「僕の腕に掴んでください、絶対離さないように。」
「・・了解」
アシュベルがリュカの腕を掴み、リュカがマナを再び覗こうとした。
バチバチッ!
やはり想定内ではあるが、二人の魔力が激しく反発しあって上手く覗けない。
お互いの魔力が拒否反応を起こしているのだ、これは至極当然のこと。
だが、今はそれを乗り切らねばならない。
アシュベルの腕はまだリュカの腕を掴んでいる。
リュカ、悪いな・・何が起きても彼には離す気など毛頭なかった。
一方リュカも覗かせてやると言った手前引き下がる訳にはいかなかった、
このエレナに一番近い男、アシュベルに。
僕の力で覗かせてやる・・。
だが最悪な相性がぶつかれば只々猛烈な拒絶反応が痛みとなって帰ってくるだけ、
しかもそれを続けていれば体力も精神力もどんどん削られていくのは明白だった。
「・・・っ」
それでも、どちらも辞めようとはしない。
なにか違うゲームに突入しているんじゃないか、これは。
土埃が二人を中心に巻き上がり、魔力が熾烈な拒絶反応を起こする度、
爆風が湧き上がる。
「・・・・・ん」
エレナは静観していたが、何を思ったのか「えいっ」とアシュベルとリュカの腕を掴んだ。
「あれ・・・」
二人の男が静けさに気付く。
拒絶反応による痛みがまるで嘘のようにない。
この手、このエレナの手が加わったからか?
彼女は闇の魔力の持ち主。それが加わっただけで?
違う気がする、けれど今は。
「見えた?」
エレナが二人をそれぞれ見て言う。
それにつられてアシュベルとリュカが我に返り、エレナを視る。
「視えましたかアシュベル様」
「視えた・・・」
この状態だと自分のマナとリュカのマナ、そしてエレナのマナが視える。
これは・・。
なんと表現していいかわからない、これはマナなのか、そう疑いたくなる程のマナの濃度。見ていて分かる不安定な存在。
リュカの限界が来て、離れてみたが。
二人にはエレナのマナの光景が目に焼き付いて離れない。
どう考えてもおかしい。しかし、彼女のこれまでの事象を考えれば全て辻褄が合う。
「これは、まるでまだ完成していない星のようです・・」
リュカが額の汗を拭きつつ、自分の感想を述べた。
「それ、どういう意味?」
エレナが不思議そう質問する。
「エレナのマナは特別です、そして異質・・異質すぎるんです。僕としてはまだ完成されてないような、その途中の過程を見ているようです。形は違いますが、星が恒星になるまでに様々な過程を経て様々なものが混じり合う過程。・・・頭が追いつかないが、これをまとめると、」
アシュベルが真剣に耳を傾ける。
「僕の考えでは、エレナのマナは完成されてない、しかも今も不安定。」
そんな事が在り得るのか・・。
不安定でありながら、魔力を無尽蔵に引き出し、それを具現化する力を持っている。
そこから引き出されるのはたった一つ。
彼女の願わない暴走の危機。
そう。
彼女の暴発だ。
今は平静を保っているエレナだが・・・いつか彼女は正気を失ってしまうかもしれない。
その時俺は彼女をどう受け止めれば、どう止めればいいのだ。
アシュベルの心に焦燥が満ちる。
それはエレナが彼にとって大切な人になってしまった事を示している。
大切、それはアシュベルが彼女に主になって欲しい、と思った時からの感情。
だがそれはもうアシュベルにすら計れない程の重みになっている、まだそこに彼は気付いていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる