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第一章
第二十ニ話 忍び寄る狂人の影
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※※※※※※※ ※※※※※※※※ ※※※※※※ ※※※※※※
クックック・・・
城の中枢近くの執務室で男が目を細めて笑みをこぼす。
青白い手にある黒い人型の紙が、はらはらと細かく散っていく。
それを用済みとばかりに容赦なく蝋燭の火にかざし見つめるその茶色の瞳には
楽しくて仕方ないという残酷な炎が映り込んでいる。
「再覚醒、しましたね」
誰ともなく呟く。
蝋燭だけが灯された薄暗いその部屋で男は視線を落として考える。
あの傀儡ではこんなものか・・。
覚醒したてのエレナに傷一つ負わすことが出来損ない、まだだ、分かっていた事だが
まだアレが足りていない、そう、もっと集めなければ。
「あなたを生かしておく事はできないのですよ、エル様・・・いや、今はエレナ様でしたか」
しかし、こちらとしても色々と予想外のことが起きている。
なぜあの方は闇を持っているのだ・・?
「セーデル宰相」
突然少女の声が男の耳に入ってきた。
「これは姫君、このような時間に何か御用が?」
セーデルと呼ばれたそ男は立ち上がって一礼した。
「執務室に明かりがついていたので寄ったまでです。」
「そうでしたか。」
この国特有の茶色の髪に茶色の瞳のその姿のその少女は、どこかエレナを彷彿とさせるものがある。
「姫君、明日も公務が早朝から入っておりますので、お体の為お休みになられてください。」
セーデルが見守る中、少女はうつむき加減でその場を立ち去った。
少女を見送りながらセーデルが呆れるように笑みを浮かべる。
「こちらの姫君は操りやすい」
※※※※※※※ ※※※※※※※※ ※※※※※※ ※※※※※※
「一体どうなってるの!?誰か説明してよ!!」
カリーナが思いつめた表情で誰にともなく叫ぶ。
ここはエレナの部屋。
気を失ったエレナを部屋までアシュベルが抱きかかえ、ベッドに寝かせたのはいいが
一向に容体が良くなる気配がない。
あの傀儡が消え去った後、訓練場にいた者全て目を覚まし、この訓練場自体を
何者かが狙ったと判断し警戒態勢が敷かれている。
明日からの訓練自体も中止になり、城から警護のため近衛隊が送られてくるという。
「わたしはエレナがピンチだからって聞いてアシュベル様の指示に従っていたけど・・」
ベッドで光を纏ったままのエレナを見て、カリーナは混乱を隠せない。
「何が起こっているの?エレナは・・光の・・・」
アシュベルもリュカも黙ったまま何も答えない、彼女にどう答えたらいいのか迷っていた。
カリーナは真っすぐすぎるほどの性格、アシュベルはリュカと相談し彼女には
エレナが危険な状況にあるという事くらいしか伝えていなかった。
危険な状況とは何か、カリーナはそれを問い詰める事もできたが、アシュベルが濁している事を野暮に言及せず二つ返事で協力を了承してくれた。
だが、さすがにここまでの状況は許容を超えている。
エレナが光の魔法士だった、という事実。
勿論、この事態はアシュベルもリュカもどう理解してどう受け入れるべきか判断が
つかない状況でいる。
次から次へと予想を超えて状況が変わっていく。
そもそもマナが不安定で濃度が濃い、それだけでも衝撃的な事実だったというのに
頭が追いつかないくらい異常な状況が目前で起こっているのだ。
「済まない、カリーナ、少し時間をくれ。君に言わなくてはいけない事もあるが、
こちらも状況を把握しきれていないんだ。」
アシュベルが真剣な瞳で説得を試みる、その様子を見てカリーナは額に手を当てながら諦めたように頷く。
「リュカ、エレナのマナはまだ不安定か?」
「不安定どころか、以前よりかなりもまずいですね・・」
彼女のマナは小さなマナを中心にそれを何かが猛烈な勢いで渦を巻き、不安定にさせていた。
今それよりもまずい状況だというのか・・。
「これは仮説ですが、彼女は闇のマナを持っている、でも光の魔法士としても覚醒し
た。僕の水のマナとアシュベル様の火のマナが接触した時、どうなったかはご存知で
すよね」
「ああ、拒絶反応が激しく起こったな」
「それが一人の体の中で、しかも相反するマナを直接体内でぶつけ合っていたら・・・」
リュカが言葉を止めた。
その先は自明の理だ。
「考えたくない状況だな・・・」
リュカがぽつりと話す。
「僕は思うんですよ。エレナの光のマナは幼い頃覚醒していた、そして次に闇のマナ
に目覚めた。その時から彼女は内なるものを制御しようと誰にも漏らすことなく自分
自身の中で戦い続けていたのではないでしょうか・・これは理論上ですが常人に
はまず不可能です。でもそれを超える彼女の意思があってここまで来たのだろうと思
います、一食触発の事態をずっと体に押さえつけていたようなものです。それは様々
な弊害を彼女にもたらした・・・彼女の成長もその一端だと思います」
更にリュカは続けた。
「エレナは恐らく自身が光のマナを有していると知らなかった、じゃなければ暴走の
危機の時に我々に話すか、立ち去ることを考えるんじゃないでしょうか・・・全ては
彼女の口から聞ければいいのですが。」
ほとんどここからは未知の世界だ、体の中に二つの異なるしかも相反するマナを有す
るなんてあり得ない。その一つは伝説とさえれる光のマナだ。
もうこれは神の領域の問題だ。
「リュカ、さっき以前よりもマナの状態がまずいと言ったな、それが何故か推察できるか。」
「彼女が再覚醒したからかと。もう僕の推察と妄想の域ですが、小さな頃に光のマナを
抑制する習慣をされていたのではないかと・・・。しかし、危険が迫ったためエレナの意思とは関係なく覚醒した光のマナはこれまで以上に闇のマナへ干渉し拒否反応は大きくなる、と言ったところですかね。」
これまでのエレナの性格、言動、マナの変動から捻りだした答え、でも何の裏付けもない。
星読み士からすると今日の夜空は騒めいている、嫌な雰囲気だ。
それでもリュカは宇宙を覗く。
快活だった彼女を、エレナを取り戻すヒントを探して・・・。
クックック・・・
城の中枢近くの執務室で男が目を細めて笑みをこぼす。
青白い手にある黒い人型の紙が、はらはらと細かく散っていく。
それを用済みとばかりに容赦なく蝋燭の火にかざし見つめるその茶色の瞳には
楽しくて仕方ないという残酷な炎が映り込んでいる。
「再覚醒、しましたね」
誰ともなく呟く。
蝋燭だけが灯された薄暗いその部屋で男は視線を落として考える。
あの傀儡ではこんなものか・・。
覚醒したてのエレナに傷一つ負わすことが出来損ない、まだだ、分かっていた事だが
まだアレが足りていない、そう、もっと集めなければ。
「あなたを生かしておく事はできないのですよ、エル様・・・いや、今はエレナ様でしたか」
しかし、こちらとしても色々と予想外のことが起きている。
なぜあの方は闇を持っているのだ・・?
「セーデル宰相」
突然少女の声が男の耳に入ってきた。
「これは姫君、このような時間に何か御用が?」
セーデルと呼ばれたそ男は立ち上がって一礼した。
「執務室に明かりがついていたので寄ったまでです。」
「そうでしたか。」
この国特有の茶色の髪に茶色の瞳のその姿のその少女は、どこかエレナを彷彿とさせるものがある。
「姫君、明日も公務が早朝から入っておりますので、お体の為お休みになられてください。」
セーデルが見守る中、少女はうつむき加減でその場を立ち去った。
少女を見送りながらセーデルが呆れるように笑みを浮かべる。
「こちらの姫君は操りやすい」
※※※※※※※ ※※※※※※※※ ※※※※※※ ※※※※※※
「一体どうなってるの!?誰か説明してよ!!」
カリーナが思いつめた表情で誰にともなく叫ぶ。
ここはエレナの部屋。
気を失ったエレナを部屋までアシュベルが抱きかかえ、ベッドに寝かせたのはいいが
一向に容体が良くなる気配がない。
あの傀儡が消え去った後、訓練場にいた者全て目を覚まし、この訓練場自体を
何者かが狙ったと判断し警戒態勢が敷かれている。
明日からの訓練自体も中止になり、城から警護のため近衛隊が送られてくるという。
「わたしはエレナがピンチだからって聞いてアシュベル様の指示に従っていたけど・・」
ベッドで光を纏ったままのエレナを見て、カリーナは混乱を隠せない。
「何が起こっているの?エレナは・・光の・・・」
アシュベルもリュカも黙ったまま何も答えない、彼女にどう答えたらいいのか迷っていた。
カリーナは真っすぐすぎるほどの性格、アシュベルはリュカと相談し彼女には
エレナが危険な状況にあるという事くらいしか伝えていなかった。
危険な状況とは何か、カリーナはそれを問い詰める事もできたが、アシュベルが濁している事を野暮に言及せず二つ返事で協力を了承してくれた。
だが、さすがにここまでの状況は許容を超えている。
エレナが光の魔法士だった、という事実。
勿論、この事態はアシュベルもリュカもどう理解してどう受け入れるべきか判断が
つかない状況でいる。
次から次へと予想を超えて状況が変わっていく。
そもそもマナが不安定で濃度が濃い、それだけでも衝撃的な事実だったというのに
頭が追いつかないくらい異常な状況が目前で起こっているのだ。
「済まない、カリーナ、少し時間をくれ。君に言わなくてはいけない事もあるが、
こちらも状況を把握しきれていないんだ。」
アシュベルが真剣な瞳で説得を試みる、その様子を見てカリーナは額に手を当てながら諦めたように頷く。
「リュカ、エレナのマナはまだ不安定か?」
「不安定どころか、以前よりかなりもまずいですね・・」
彼女のマナは小さなマナを中心にそれを何かが猛烈な勢いで渦を巻き、不安定にさせていた。
今それよりもまずい状況だというのか・・。
「これは仮説ですが、彼女は闇のマナを持っている、でも光の魔法士としても覚醒し
た。僕の水のマナとアシュベル様の火のマナが接触した時、どうなったかはご存知で
すよね」
「ああ、拒絶反応が激しく起こったな」
「それが一人の体の中で、しかも相反するマナを直接体内でぶつけ合っていたら・・・」
リュカが言葉を止めた。
その先は自明の理だ。
「考えたくない状況だな・・・」
リュカがぽつりと話す。
「僕は思うんですよ。エレナの光のマナは幼い頃覚醒していた、そして次に闇のマナ
に目覚めた。その時から彼女は内なるものを制御しようと誰にも漏らすことなく自分
自身の中で戦い続けていたのではないでしょうか・・これは理論上ですが常人に
はまず不可能です。でもそれを超える彼女の意思があってここまで来たのだろうと思
います、一食触発の事態をずっと体に押さえつけていたようなものです。それは様々
な弊害を彼女にもたらした・・・彼女の成長もその一端だと思います」
更にリュカは続けた。
「エレナは恐らく自身が光のマナを有していると知らなかった、じゃなければ暴走の
危機の時に我々に話すか、立ち去ることを考えるんじゃないでしょうか・・・全ては
彼女の口から聞ければいいのですが。」
ほとんどここからは未知の世界だ、体の中に二つの異なるしかも相反するマナを有す
るなんてあり得ない。その一つは伝説とさえれる光のマナだ。
もうこれは神の領域の問題だ。
「リュカ、さっき以前よりもマナの状態がまずいと言ったな、それが何故か推察できるか。」
「彼女が再覚醒したからかと。もう僕の推察と妄想の域ですが、小さな頃に光のマナを
抑制する習慣をされていたのではないかと・・・。しかし、危険が迫ったためエレナの意思とは関係なく覚醒した光のマナはこれまで以上に闇のマナへ干渉し拒否反応は大きくなる、と言ったところですかね。」
これまでのエレナの性格、言動、マナの変動から捻りだした答え、でも何の裏付けもない。
星読み士からすると今日の夜空は騒めいている、嫌な雰囲気だ。
それでもリュカは宇宙を覗く。
快活だった彼女を、エレナを取り戻すヒントを探して・・・。
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