49 / 92
第二章
第十五話 城の書庫の秘密と抱いた恋は迷い子となる
しおりを挟む
アシュベル、エレナ、リュカ、カリーナらは城の書庫の入り口に来ていた。
「すごい、こんなに本が・・・」
リュカが驚くのは当然のこと、その書庫は塔が高くそびえ、各階へ上がれるよう階段
が設置されている、壁面にぎっしりと貴重な本が詰まっており、読書するために小さ
いながらも装飾のあしらわれた机と椅子がおかれていた。その壮観ともいえる光
景は、やはり王家の庇護のもと設立された書庫にふさわしい珍しい限定本が目に付
く。
見たこともない内容、見たことのない題名、見たことのない舶来本などが所狭しと収
納されている。
「今日は君らの入隊祝いに貸し切りにしてもらったんだ、好きに見るといい。俺は約
束は守るたちでね」
「わぁ!!ありがとう、アシュ!」
「どういたしまして、ヒメ」
それぞれがアシュベルに礼の言葉を述べる、それもそのはず城の書庫など貴族でも使
用するためには相当な基準をクリアしなければならない。ここを貸し切り、なおかつ
新人の近衛隊を3名も使用させられるよう手をまわせるアシュベルは、それほどこの
国において影響力を持ち始めているという証にもなる。
アシュベルが見守る中、3人はそれぞれ自分たちの興味のある分野の本が並んでると
ころへ散っていく。
エレナとリュカの書庫への関心が半端ではない、エレナは魔法への知識を深めるた
め、リュカは光のマナの伝説等を中心にここでしか読むことが叶わない本を片っ端
から目を通していく。几帳面なリュカらしく必要な情報だと判断すれば、こまめに
メモをとっている。
カリーナは違う視点からで三千年前に触れた記述の本を探している、なるほどエレ
ナは三千年もの間転生を繰り返していると言っていた、ならば、この世界がエレナ
を必要とする何かが三千年前に起こったとも考えられる。
「そうか、三千年前に何が起こったか、それは調べてみる価値はあるな、しかも恐
らくはかなり大きな出来事だろうから特定は難しくないだろう、」
とはいえ、歴史は一通り学んでいる、今アシュベルの記憶にないという事は、語ら
れるのに憚られるような出来事なのかもしれない。
「三千年と言ってもかなりの幅があります、その中でも大きな事件を探さないと
・・・」
カリーナは次々と本を手に取っていく。
二人の彼女を想う気持ちに、アシュベルは気が引き締まる思いを抱く。
アシュベル自身も光の魔法士についての文献を読んでいたが、ふとエレナの姿が見
えないことに気付く。
見渡してみると、彼女がかなり上の階に居るのが見えた。
なにをそんなに読んでいるのか、気になってアシュベルが階段を上っていく。
「ヒメちゃん、それは?」
エレナは分厚く大きな本を机に座り読みふけっている、それはアシュベルでさえ見
たこことのない、古代魔法書。
「どこからそれを?」
それは禁書、この書庫に収納されているとは思えないものだ。
「そこから取り出してきたのだけど、いけなかったかしら」
エレナはつい、と指をさす、アシュベルがその方を見ても普通の魔法書が並べられ
られているだけだ。
禁書とされている古代魔法書はどこにもない。
彼女はそのことを察すると、棚と棚の間を両の指をかけぐっと引っ張る、すると戸
棚が開きその向こうに僅かなスペースが現れる。
「隠し部屋・・・」
その部屋には禁忌とされている魔法の使い方を載せたものや、古代魔法という今で
は使われなくなった魔法、そして成功にはいたってないが理論的には実装可能とさ
れる魔法の構成が書かれた研究の記述のような本まで多岐にわたる魔法書が収納さ
れていた。
表にある本と違い、ほこりをかぶっている、長い間忘れられていた空間のようだ。
「どうしてここがわかったのヒメちゃん、」
「魔法書をさがしていたら、床のこの跡を見つけて」
視線を落とすと、ほんのわずか隠し扉を開いた時にできるひきずった跡が残って
いた。
「見てはいけないものかしら、」
「いや、でも口外はしないほうがいい、その本の内容も、この隠し部屋の事も」
誰が何の意図でここを作ったかは分からないが、確かなのはここに収められてい
る本は貴重であるとともに危険なものかもしれない、ということ。隠さなければ
ならない何かがある、そう考えた方が自然だろう。
アシュベルも古代魔法書を手に取ってみる、ふっと息を吹きかけるとほこりが
舞う。
本を開いてみると古い文字で書かれており、解読に少々手間取る。
「ヒメちゃんはこれ読めるの?」
アシュベルは炎のマナを覚醒させたときに、英才教育を受け、少しではあるが古
代文字も学んだことがある、そのため一応理解できる程度には読むことが出来
る。
「ええ、おじい様に習ったわ、」
いとも簡単にエレナは答え軽やかにページをめくっていく。
アシュベルはその様子を見て、クアドラは徹底的に王女としての教育をしたのだ
ろう、そしてそれができるクアドラもまた剣技だけではなく英知溢れる人だった
のだと思う。彼女にふさわしい男でありたい、ならばクアドラ様を超えるようで
なければ・・・ふさわしい?
アシュベルは自分の気持ちを押し殺す。
これが恋だという事は自覚している、気付いたのはつい先日だが、たぶんずっと
前から。
エレナの頭にそっと手を伸ばし、自分の指を彼女の白銀色の髪に絡ませながら、
ゆっくりとなでる。
「アシュ?」
止められるのだろうか、こんなに大きくなってしまった想いを、この関係を壊
してまで。
机に手を置き座っているエレナの顔にアシュベルは自身の顔を近づけていく、
その小さく薄い薔薇の色の唇に彼の親指が優しく触れる。
「アシュ・・・?」
二人の唇が触れそうになる。
「こほん!!」
いつの間にか後ろにリュカが立っており、わざとらしく咳払いをする。
その水色の瞳には挑戦的な怒りの冷たい炎が色濃くあらわれていた。
「お邪魔でしたか、アシュベル様」
「いや、問題ないよリュカ」
二人の間で火花が散るが、エレナはマイペースに古代魔法書の続きを読み始め
る。
彼女の心臓は早鐘を打っていたが、それが自分では理解できない、未知の感情。
カリーナは下の階で呆れたような顔をしてやはり本を開いていく。
取り敢えず午前中はエレナにとって有意義な時間となり、闇魔法として新しい
手法を学ぶことが出来た。
「すごい、こんなに本が・・・」
リュカが驚くのは当然のこと、その書庫は塔が高くそびえ、各階へ上がれるよう階段
が設置されている、壁面にぎっしりと貴重な本が詰まっており、読書するために小さ
いながらも装飾のあしらわれた机と椅子がおかれていた。その壮観ともいえる光
景は、やはり王家の庇護のもと設立された書庫にふさわしい珍しい限定本が目に付
く。
見たこともない内容、見たことのない題名、見たことのない舶来本などが所狭しと収
納されている。
「今日は君らの入隊祝いに貸し切りにしてもらったんだ、好きに見るといい。俺は約
束は守るたちでね」
「わぁ!!ありがとう、アシュ!」
「どういたしまして、ヒメ」
それぞれがアシュベルに礼の言葉を述べる、それもそのはず城の書庫など貴族でも使
用するためには相当な基準をクリアしなければならない。ここを貸し切り、なおかつ
新人の近衛隊を3名も使用させられるよう手をまわせるアシュベルは、それほどこの
国において影響力を持ち始めているという証にもなる。
アシュベルが見守る中、3人はそれぞれ自分たちの興味のある分野の本が並んでると
ころへ散っていく。
エレナとリュカの書庫への関心が半端ではない、エレナは魔法への知識を深めるた
め、リュカは光のマナの伝説等を中心にここでしか読むことが叶わない本を片っ端
から目を通していく。几帳面なリュカらしく必要な情報だと判断すれば、こまめに
メモをとっている。
カリーナは違う視点からで三千年前に触れた記述の本を探している、なるほどエレ
ナは三千年もの間転生を繰り返していると言っていた、ならば、この世界がエレナ
を必要とする何かが三千年前に起こったとも考えられる。
「そうか、三千年前に何が起こったか、それは調べてみる価値はあるな、しかも恐
らくはかなり大きな出来事だろうから特定は難しくないだろう、」
とはいえ、歴史は一通り学んでいる、今アシュベルの記憶にないという事は、語ら
れるのに憚られるような出来事なのかもしれない。
「三千年と言ってもかなりの幅があります、その中でも大きな事件を探さないと
・・・」
カリーナは次々と本を手に取っていく。
二人の彼女を想う気持ちに、アシュベルは気が引き締まる思いを抱く。
アシュベル自身も光の魔法士についての文献を読んでいたが、ふとエレナの姿が見
えないことに気付く。
見渡してみると、彼女がかなり上の階に居るのが見えた。
なにをそんなに読んでいるのか、気になってアシュベルが階段を上っていく。
「ヒメちゃん、それは?」
エレナは分厚く大きな本を机に座り読みふけっている、それはアシュベルでさえ見
たこことのない、古代魔法書。
「どこからそれを?」
それは禁書、この書庫に収納されているとは思えないものだ。
「そこから取り出してきたのだけど、いけなかったかしら」
エレナはつい、と指をさす、アシュベルがその方を見ても普通の魔法書が並べられ
られているだけだ。
禁書とされている古代魔法書はどこにもない。
彼女はそのことを察すると、棚と棚の間を両の指をかけぐっと引っ張る、すると戸
棚が開きその向こうに僅かなスペースが現れる。
「隠し部屋・・・」
その部屋には禁忌とされている魔法の使い方を載せたものや、古代魔法という今で
は使われなくなった魔法、そして成功にはいたってないが理論的には実装可能とさ
れる魔法の構成が書かれた研究の記述のような本まで多岐にわたる魔法書が収納さ
れていた。
表にある本と違い、ほこりをかぶっている、長い間忘れられていた空間のようだ。
「どうしてここがわかったのヒメちゃん、」
「魔法書をさがしていたら、床のこの跡を見つけて」
視線を落とすと、ほんのわずか隠し扉を開いた時にできるひきずった跡が残って
いた。
「見てはいけないものかしら、」
「いや、でも口外はしないほうがいい、その本の内容も、この隠し部屋の事も」
誰が何の意図でここを作ったかは分からないが、確かなのはここに収められてい
る本は貴重であるとともに危険なものかもしれない、ということ。隠さなければ
ならない何かがある、そう考えた方が自然だろう。
アシュベルも古代魔法書を手に取ってみる、ふっと息を吹きかけるとほこりが
舞う。
本を開いてみると古い文字で書かれており、解読に少々手間取る。
「ヒメちゃんはこれ読めるの?」
アシュベルは炎のマナを覚醒させたときに、英才教育を受け、少しではあるが古
代文字も学んだことがある、そのため一応理解できる程度には読むことが出来
る。
「ええ、おじい様に習ったわ、」
いとも簡単にエレナは答え軽やかにページをめくっていく。
アシュベルはその様子を見て、クアドラは徹底的に王女としての教育をしたのだ
ろう、そしてそれができるクアドラもまた剣技だけではなく英知溢れる人だった
のだと思う。彼女にふさわしい男でありたい、ならばクアドラ様を超えるようで
なければ・・・ふさわしい?
アシュベルは自分の気持ちを押し殺す。
これが恋だという事は自覚している、気付いたのはつい先日だが、たぶんずっと
前から。
エレナの頭にそっと手を伸ばし、自分の指を彼女の白銀色の髪に絡ませながら、
ゆっくりとなでる。
「アシュ?」
止められるのだろうか、こんなに大きくなってしまった想いを、この関係を壊
してまで。
机に手を置き座っているエレナの顔にアシュベルは自身の顔を近づけていく、
その小さく薄い薔薇の色の唇に彼の親指が優しく触れる。
「アシュ・・・?」
二人の唇が触れそうになる。
「こほん!!」
いつの間にか後ろにリュカが立っており、わざとらしく咳払いをする。
その水色の瞳には挑戦的な怒りの冷たい炎が色濃くあらわれていた。
「お邪魔でしたか、アシュベル様」
「いや、問題ないよリュカ」
二人の間で火花が散るが、エレナはマイペースに古代魔法書の続きを読み始め
る。
彼女の心臓は早鐘を打っていたが、それが自分では理解できない、未知の感情。
カリーナは下の階で呆れたような顔をしてやはり本を開いていく。
取り敢えず午前中はエレナにとって有意義な時間となり、闇魔法として新しい
手法を学ぶことが出来た。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる