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第二章
第二十二話 歪みに堕ちた心
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※※※※※※ ※※※※※※ ※※※※※※
アシュベルたちにアルガノット国との対戦が明朝始まるという知らせの2時間前。
ここはセーデル専用の執務室、情報はまずセーデルに届いていた。
「やっとアルガノット国が重い腰を上げたか、どれだけお膳だてしたと思ってるんだ」
セーデルが伝令を受けて、ため息交じりにそれを机に放り投げる。
「あらゆる手をつかって追い込んだというのに、10年以上の歳月を費やしてしまった、先代先々代の国王との深い絆のおかげで、こちらはそれを覆すことに必死だったというのに、どれだけ手間をかけさせるつもりだったのか、こちらもそろそろ限界だったよ、レン」
セーデルの話を壁に体を預け、どうでも良いような顔で聞いている。
彼はこの国特有の茶色の髪を長く伸ばし茶色の瞳をしており、歳の頃はアシュベルと同じ20代後半くらいに見えた。官僚の衣服は纏っているが、そうは見えない。
だがあのセーデルが話しているのに、彼の態度はあまりにぞんざい、そして無関心、極めつけはセーデルに対して敬意を払ってない点も不自然すぎる。
裏では黒い噂が付きまとい誰もが恐れるセーデルだ、表でも彼は礼儀にうるさく少しのミスも許さない、だがこのレンと呼ばれる男はそのセーデルのそんな一挙手一投足など微塵も感じていないように見える。
「兎に角、大戦争が起きる、これは素晴らしい結果だよ」
「そんな事より、俺の力は完成したたんだろ、早いとここの力を試したくてうずうずしているだが」
うんざりだとばかりに指の爪を鳴らし、苛つきを隠さない。
そんなレンの態度など気にする事無くセーデルは話し続ける
「まぁ、この大戦が滞りなく起こり、滞りなく殺し合いをしてくれればだがね、また途中で戦争をやめるなんて馬鹿なことをしたら、こちらからアルガノット国を焦土化させれてやるがな」
「聞いてんのかよ、」
まるでこちらの声が届いてないように話し続けるセーデルにレンが再び口を挟む。
「ああ、お前をこの戦争に送るつもりだ、だが殺す相手はアルガノット国のものではない、まぁ、降りかかった火の粉を排除するのはお前の勝手だがな、だがグラディス側の兵士らに悟られるな、お前がやるのはあくまでもエレナ・ルーゼリアたった一人だ」
「なんかさー、わかってるんだけど、殺っちゃうのもったいなくない。すげー好みなんだけど」
レンはきらきらした瞳でエレナの姿を思い出している、妄想上の。
振り向きざまに上目遣いされたらーとか、どうしたんですか?といってのぞき込んでくるときの胸元、もう!いじわるなんだから!とか言って頬を膨らますエレナ。
「いいよねー、エレナちゃん!」
「レン、お前に力を与えたのはこのわたしだ、第二近衛隊隊長でありながら不本意にもアシュベルの影に埋もれていたあの頃に戻りたいのか」
「・・・まぁ、」
もたれかかった壁から身を起こし、レンはアシュベルへのどす黒い思いを呼び起こす。
「大切なものをぐちゃぐちゃにされたときの、あいつの顔の方が興奮しますからね、ちゃーんと殺してきて差し上げますよ、セーデル宰相」
貴族出身でもなく、能力も持ち合わせていないレンは、衛兵である父親の影響で剣を幼い頃から続けていた。その才能は父親をもしのぎ、巷で神童と噂されるほどで剣技は彼の唯一の存在価値になっていった。だが王都へ出ていざ近衛隊にはいると、自分は一兵卒なのに対し同じ年頃のアシュベルという男はいきなり第一近衛隊副隊長の任に着き、その容姿や能力で周りを惹きこんでいく。
翌年には第一近衛隊隊長という異例の出世を果たし、部下にも信頼されているアシュベルを、レンは快く思わなかった。
天は二物を与えず?じゃあ、彼は例外中の例外なのか、と。
これが嫉妬だとはわかっている、だが押さえこもうとしてもその感情は彼を見るたび顔を出す。
そして今年セーデルからの根回しで第二近衛隊隊長に昇進できた、両親は勿論親類縁者からも一族の誇りだと言われ、もう後戻りはできないと悟った。そして何より、セーデルから授かった能力はあまりにも魅力的で捨てがたい。
「アシュベル様のあの美しい顔が、エレナちゃんの死体を見てどんなふうに顔を歪めるか、ぞくぞくしますねぇ」
レンの表情が変わる、薄く笑いそれは不気味な程暗く陰湿な雰囲気を呈して居た。
「じゃあ、先回りしときたいんで、行ってきますわ」
「・・・ああ」
執務室を出て行くレンを横目で見送りながら、ここまで仕上げた
傀儡をつくり瘴気をあやつり妖魔を生み出せるまでになった、傀儡は実験のひとつ、あの出来損ないはそれなりに混沌の闇を制御するデータをとることには成功したと言える。
「狂王様からいただいた貴重なお知恵、このセーデル見事使いこなしてみせましょう」
――――――――ブワッ
彼の言葉にこたえるように、セーデルの体から黒く邪悪なもやが噴き出す。
「殺戮を楽しみましょう、我らの狂宴がはじまりますよ」
セーデルは目を閉じる、その狂宴を夢見て。
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アシュベルたちにアルガノット国との対戦が明朝始まるという知らせの2時間前。
ここはセーデル専用の執務室、情報はまずセーデルに届いていた。
「やっとアルガノット国が重い腰を上げたか、どれだけお膳だてしたと思ってるんだ」
セーデルが伝令を受けて、ため息交じりにそれを机に放り投げる。
「あらゆる手をつかって追い込んだというのに、10年以上の歳月を費やしてしまった、先代先々代の国王との深い絆のおかげで、こちらはそれを覆すことに必死だったというのに、どれだけ手間をかけさせるつもりだったのか、こちらもそろそろ限界だったよ、レン」
セーデルの話を壁に体を預け、どうでも良いような顔で聞いている。
彼はこの国特有の茶色の髪を長く伸ばし茶色の瞳をしており、歳の頃はアシュベルと同じ20代後半くらいに見えた。官僚の衣服は纏っているが、そうは見えない。
だがあのセーデルが話しているのに、彼の態度はあまりにぞんざい、そして無関心、極めつけはセーデルに対して敬意を払ってない点も不自然すぎる。
裏では黒い噂が付きまとい誰もが恐れるセーデルだ、表でも彼は礼儀にうるさく少しのミスも許さない、だがこのレンと呼ばれる男はそのセーデルのそんな一挙手一投足など微塵も感じていないように見える。
「兎に角、大戦争が起きる、これは素晴らしい結果だよ」
「そんな事より、俺の力は完成したたんだろ、早いとここの力を試したくてうずうずしているだが」
うんざりだとばかりに指の爪を鳴らし、苛つきを隠さない。
そんなレンの態度など気にする事無くセーデルは話し続ける
「まぁ、この大戦が滞りなく起こり、滞りなく殺し合いをしてくれればだがね、また途中で戦争をやめるなんて馬鹿なことをしたら、こちらからアルガノット国を焦土化させれてやるがな」
「聞いてんのかよ、」
まるでこちらの声が届いてないように話し続けるセーデルにレンが再び口を挟む。
「ああ、お前をこの戦争に送るつもりだ、だが殺す相手はアルガノット国のものではない、まぁ、降りかかった火の粉を排除するのはお前の勝手だがな、だがグラディス側の兵士らに悟られるな、お前がやるのはあくまでもエレナ・ルーゼリアたった一人だ」
「なんかさー、わかってるんだけど、殺っちゃうのもったいなくない。すげー好みなんだけど」
レンはきらきらした瞳でエレナの姿を思い出している、妄想上の。
振り向きざまに上目遣いされたらーとか、どうしたんですか?といってのぞき込んでくるときの胸元、もう!いじわるなんだから!とか言って頬を膨らますエレナ。
「いいよねー、エレナちゃん!」
「レン、お前に力を与えたのはこのわたしだ、第二近衛隊隊長でありながら不本意にもアシュベルの影に埋もれていたあの頃に戻りたいのか」
「・・・まぁ、」
もたれかかった壁から身を起こし、レンはアシュベルへのどす黒い思いを呼び起こす。
「大切なものをぐちゃぐちゃにされたときの、あいつの顔の方が興奮しますからね、ちゃーんと殺してきて差し上げますよ、セーデル宰相」
貴族出身でもなく、能力も持ち合わせていないレンは、衛兵である父親の影響で剣を幼い頃から続けていた。その才能は父親をもしのぎ、巷で神童と噂されるほどで剣技は彼の唯一の存在価値になっていった。だが王都へ出ていざ近衛隊にはいると、自分は一兵卒なのに対し同じ年頃のアシュベルという男はいきなり第一近衛隊副隊長の任に着き、その容姿や能力で周りを惹きこんでいく。
翌年には第一近衛隊隊長という異例の出世を果たし、部下にも信頼されているアシュベルを、レンは快く思わなかった。
天は二物を与えず?じゃあ、彼は例外中の例外なのか、と。
これが嫉妬だとはわかっている、だが押さえこもうとしてもその感情は彼を見るたび顔を出す。
そして今年セーデルからの根回しで第二近衛隊隊長に昇進できた、両親は勿論親類縁者からも一族の誇りだと言われ、もう後戻りはできないと悟った。そして何より、セーデルから授かった能力はあまりにも魅力的で捨てがたい。
「アシュベル様のあの美しい顔が、エレナちゃんの死体を見てどんなふうに顔を歪めるか、ぞくぞくしますねぇ」
レンの表情が変わる、薄く笑いそれは不気味な程暗く陰湿な雰囲気を呈して居た。
「じゃあ、先回りしときたいんで、行ってきますわ」
「・・・ああ」
執務室を出て行くレンを横目で見送りながら、ここまで仕上げた
傀儡をつくり瘴気をあやつり妖魔を生み出せるまでになった、傀儡は実験のひとつ、あの出来損ないはそれなりに混沌の闇を制御するデータをとることには成功したと言える。
「狂王様からいただいた貴重なお知恵、このセーデル見事使いこなしてみせましょう」
――――――――ブワッ
彼の言葉にこたえるように、セーデルの体から黒く邪悪なもやが噴き出す。
「殺戮を楽しみましょう、我らの狂宴がはじまりますよ」
セーデルは目を閉じる、その狂宴を夢見て。
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