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第二章
第二十六話 無謀な作戦とヒメちゃんの演技力
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「あそこ、テントが張ってある、それも他のものより豪華だわ」
「指揮官がいるか、まぁ、外れってこともあるね」
二人は潜入のために農民の姿に身をやつしている。
しかし、さすがに戦争中にテントの中を見る事は憚れるだろう。
「じゃあ、わたし傷だらけだし、グラディスの兵にやられたってことにしない?」
「本当に君は無謀だね、それでも見破られたらどうするの」
「ちょっと暴れるしかないわね・・」
まるで本気でそう考えてるように、エレナは難し顔をする。
「じゃあ、俺がを助けた農民てことにして、あのテントに一気に突入しよう」
ばれたら、その時はその時、相手の反応を見て動く、最善の方法とはいいがたいが、今は考えている時間すら惜しい、それでも危険があればエレナだけは逃がす、アシュベルはそう決めていた。
じゃあ、行くぞ、目でお互いに合図し、テントの警備の前にいる兵士の前に倒れ込む。
「なんだ、お前ら!!」
そういう反応になるのは想定済み、問題はここから、エレナの演技力にもかかっている。
アシュベルがエレナを抱き起すようにして、兵士に頭を下げる。
「す、すみません、この子がそこで倒れて意識を失ってて、」
「・・・っ、だい、じょうぶです、このくらい・・・」
なかなかの演技力でエレナがよろけながら立ち上がろうとするが、すぐふらついて膝をつく。
「大丈夫じゃないよ、兵士さん、消毒だけでもしてあげられませんか、」
「グラディスの兵なのか、強盗なのかわからないけど、お財布を取られて・・・いたた、」
兵士はまだ疑っている、もう一押しか。
「戦線のちかくまで行ってなにをしていた」
そこまでは考えてなかった、やみくもにこのテントに侵入する事だけを考えていたエレナは、肩を押さえ痛がる振りをしながら懸命に考えた、この兵士の心に届く言葉を。
「や、薬草を、母の病を治すために薬草を探しておりました、その薬草はこのあたりにしかなくて・・・」
「兵士さん、お願いだ、この子の母親も待ってる、ひとまず応急処置をしてもらえない」
アシュベルもエレナの作り話に加勢する。
「母親の病は重いのか・・?」
兵士の顔にはエレナへの同情がうかんでいた、申し訳ない、エレナは心の中で謝罪する。
「はい、わたしだけでもついてあげないと、わたし、かえらな・・いと」
渾身の演技力で兵士に倒れ込むエレナ。
若干イラッとしながらもアシュベルは彼女を援護する。
「いや、それじゃ、家までたどり着けないだろう、兵士さんだめですか」
「・・・。少し待っていてくれ」
兵士はテントの中に入り、何やら話している、内容は聞き取れないが恐らく治療の許可を得ているのだろう。エレナとアシュベルは目を見合わせて、頷く、まだ油断はできない、テントの中に入ったら入ったで見破られるかもしれない、しかもアシュベルは顔が広い、他国まで赴いたことは無いが、あちらが一方的にアシュベルを知っている可能性は否定できない。
テントの中から日張り番の兵士が出てきて、エレナの手を取る。
「はいっていいそ、そこのお前つきそいなんだろ、一緒に来い」
「あ、はい、助かります、わたしではどうしたらいいのか」
そういいつつ兵士の後を付いていきテントの中に入っていく、ここまでは成功だ、ただしここに上層部の人間がいないと意味はない。
「娘、大変な目にあったな、傷の手当はすぐさせよう、」
そう声をかけてきた男性の佇まい、服装、なにより彼がしている指輪の模様、それは王族の証。
新緑を思わせる濃い緑の色をたたえた瞳が際立つ、風の魔法剣士。
上層部に辿り着けたら、それくらいの望みで此処まで来た、しかしまさか最重要人物と接触できるとは。
そもそもありえないのだ、王族が最前線で指揮を執ることなど。
王族は司令塔であり、殺されれば国は落ちる事になる、そんな危険を冒してまで国境沿いにいる理由、それこそ彼らがこの戦争に対し本気であり、王族自身も命を懸けているとい
その行動を見た兵士らは、士気が上がるのは当然だ、彼らが守ろうとしている者を王族も同じように守ろうとしている、上からではなく同じ目線で戦っているのだから。
「このような尊い方の司令部とは存じ上げず、もうしわけございません、」
アシュベルが膝をついて伏し目がちに語り掛ける、瞳の色を見られれば追及されることは必至だろう。
エレナも傷口を押さえ、痛そうに眼をほとんど閉じている、彼女の場合は白銀色の髪とマツゲが目を引いて瞳の色までは意識がいきそうもない、アシュベルはそう見えた。
「指揮官がいるか、まぁ、外れってこともあるね」
二人は潜入のために農民の姿に身をやつしている。
しかし、さすがに戦争中にテントの中を見る事は憚れるだろう。
「じゃあ、わたし傷だらけだし、グラディスの兵にやられたってことにしない?」
「本当に君は無謀だね、それでも見破られたらどうするの」
「ちょっと暴れるしかないわね・・」
まるで本気でそう考えてるように、エレナは難し顔をする。
「じゃあ、俺がを助けた農民てことにして、あのテントに一気に突入しよう」
ばれたら、その時はその時、相手の反応を見て動く、最善の方法とはいいがたいが、今は考えている時間すら惜しい、それでも危険があればエレナだけは逃がす、アシュベルはそう決めていた。
じゃあ、行くぞ、目でお互いに合図し、テントの警備の前にいる兵士の前に倒れ込む。
「なんだ、お前ら!!」
そういう反応になるのは想定済み、問題はここから、エレナの演技力にもかかっている。
アシュベルがエレナを抱き起すようにして、兵士に頭を下げる。
「す、すみません、この子がそこで倒れて意識を失ってて、」
「・・・っ、だい、じょうぶです、このくらい・・・」
なかなかの演技力でエレナがよろけながら立ち上がろうとするが、すぐふらついて膝をつく。
「大丈夫じゃないよ、兵士さん、消毒だけでもしてあげられませんか、」
「グラディスの兵なのか、強盗なのかわからないけど、お財布を取られて・・・いたた、」
兵士はまだ疑っている、もう一押しか。
「戦線のちかくまで行ってなにをしていた」
そこまでは考えてなかった、やみくもにこのテントに侵入する事だけを考えていたエレナは、肩を押さえ痛がる振りをしながら懸命に考えた、この兵士の心に届く言葉を。
「や、薬草を、母の病を治すために薬草を探しておりました、その薬草はこのあたりにしかなくて・・・」
「兵士さん、お願いだ、この子の母親も待ってる、ひとまず応急処置をしてもらえない」
アシュベルもエレナの作り話に加勢する。
「母親の病は重いのか・・?」
兵士の顔にはエレナへの同情がうかんでいた、申し訳ない、エレナは心の中で謝罪する。
「はい、わたしだけでもついてあげないと、わたし、かえらな・・いと」
渾身の演技力で兵士に倒れ込むエレナ。
若干イラッとしながらもアシュベルは彼女を援護する。
「いや、それじゃ、家までたどり着けないだろう、兵士さんだめですか」
「・・・。少し待っていてくれ」
兵士はテントの中に入り、何やら話している、内容は聞き取れないが恐らく治療の許可を得ているのだろう。エレナとアシュベルは目を見合わせて、頷く、まだ油断はできない、テントの中に入ったら入ったで見破られるかもしれない、しかもアシュベルは顔が広い、他国まで赴いたことは無いが、あちらが一方的にアシュベルを知っている可能性は否定できない。
テントの中から日張り番の兵士が出てきて、エレナの手を取る。
「はいっていいそ、そこのお前つきそいなんだろ、一緒に来い」
「あ、はい、助かります、わたしではどうしたらいいのか」
そういいつつ兵士の後を付いていきテントの中に入っていく、ここまでは成功だ、ただしここに上層部の人間がいないと意味はない。
「娘、大変な目にあったな、傷の手当はすぐさせよう、」
そう声をかけてきた男性の佇まい、服装、なにより彼がしている指輪の模様、それは王族の証。
新緑を思わせる濃い緑の色をたたえた瞳が際立つ、風の魔法剣士。
上層部に辿り着けたら、それくらいの望みで此処まで来た、しかしまさか最重要人物と接触できるとは。
そもそもありえないのだ、王族が最前線で指揮を執ることなど。
王族は司令塔であり、殺されれば国は落ちる事になる、そんな危険を冒してまで国境沿いにいる理由、それこそ彼らがこの戦争に対し本気であり、王族自身も命を懸けているとい
その行動を見た兵士らは、士気が上がるのは当然だ、彼らが守ろうとしている者を王族も同じように守ろうとしている、上からではなく同じ目線で戦っているのだから。
「このような尊い方の司令部とは存じ上げず、もうしわけございません、」
アシュベルが膝をついて伏し目がちに語り掛ける、瞳の色を見られれば追及されることは必至だろう。
エレナも傷口を押さえ、痛そうに眼をほとんど閉じている、彼女の場合は白銀色の髪とマツゲが目を引いて瞳の色までは意識がいきそうもない、アシュベルはそう見えた。
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