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第二章
第二十五話 黒い瞳から流れる涙、そして優しく触れるくちづけ
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アシュベルが振り返ると、血まみれになったエレナが呆然とこちらを見ていた。
彼女の体からは切られたあとが随所にみられ、白い肌に赤い血がひどく際立って見えた。
「ヒメちゃん、大丈夫!?」
アシュベルの声に我に返る。
「あ、うん、見た目ほどひどくはないの、傷は浅いから平気、どう、して・・アシュがここにいるの?」
「君が俺の主だから、って言ったら満足かな」
エレナの体を支えつつ、優美な笑顔をうかべるアシュベル。
そして大切な人だから。
「嘘ついたのに怒ってないの?」
「怒ってないよ、君が無謀だってことはわかっているからね、」
苦笑ぎみに答える。
怒りなんておこがましい感情だから、エレナを引き留めたのは自分自身、彼女を縛り付ける権利なんて露程もないのだ、アシュベルは怒りより空虚さを感じる。どうしたらこの人をつなぎとめておけるのか、どうしたらこのひとに腕の中にいてもらえるのか。全ては自分自身の我儘だ。
「取り敢えず止血しないと、右腕と左足の足首、ちょっと傷深いね」
素早く彼女の傷の状態を把握し、自分のマントを脱ぎ引き裂き、エレナの傷を止血し手当てする。
エレナの足首を縛る時、アシュベルのくせのある金の髪がふわふわとゆれるのを彼女はぼんやり見ていた。
このひとの感情は読みづらい、でもいまのエレナにはそれは通用しなかった。なぜならば、隊長という立場を誰かに預けてここまで駆けつけてくれたのは、わたしのことを心配してくれているから、そしてもっと多くの感情をその笑顔の下に押し殺しているのだろう。
「第一近衛隊の指揮はアロが?」
「そうだよ、あいつむかつくほどできるやつだからね」
「リュカとカリーナは?」
「国境沿いの二人の領主のところへ他の近衛隊と共に行動してる、不正に国から資金をだまし取っていた書類が見つかってね、でもセーデルまでは捕えられないかな、奴は抜け目がないし、いざとなったら部下に責任を押し付けるだろうから」
「そう・・・」
アシュベルが手当てを終えて、エレナの顔を見ると、その煌めく黒い瞳からぼろぼろと大粒の涙が流れていた。
「ごめん、アシュ」
「君が謝ることは無いんだよ、だから泣かないで」
そう言ってエレナの頬に流れる清らかで美しい涙をそっと指先で拭う。
「君は君のやり方で突き進んで、俺は最大限にそれをサポートするだけ」
そう、そのためなら近衛隊を使用し、リュカやカリーナを巻き込み、自身のアフタン商会も利用する、利用できるもだったらなんだって利用してやる。
アシュベルは思う、俺は溺れているんだと、でも今はそれが正しくも感じる。
エレナの白銀色の髪を耳にかけ、アシュベルがエレナの唇に自分の唇を重ねる。
「・・・アシュ?」
彼女のその小さな顔をアシュベルは両手を優しくそえて、再び少し長めのキスをした。
「ご褒美もらっておきました、」
「え、え、アシュベルの女たらしー!!」
「どこでそんなこと聞いたの?」
言いにくそうではあるが、そういうことを吹聴するのは大体あいつだ。
「アロ、でしょ」
エレナは答えない、それが告げ口になると思っているから。
「ヒメちゃん、言っとくけど本気になったのはヒメちゃんだけだから」
「なに・・言ってんの、」
その動揺ぶりが可愛くてつい虐めたくなる。
「ほら、泣き止んだ、でも泣くのは俺の前でだけね」
こういうことをさらりというから、エレナはアシュベルを警戒しまくる。
「じゃあ、こっからのプラン聞かせて?」
アシュベルが言うとエレナは対面にあるアルガノット国の絶壁を指さす。
あそこまで闇魔法と魔防円陣をくししていくつもり、そうエレナはいうがどう見ても1㎞はありそうだ。
「理論は頭に入っるから、平気、」
そのとき開戦の合図が響いた、戦争が始まった、今この瞬間にも殺し殺されている人がいる。
こうしてはいられない、はやくアルガノット国に潜入しなければ。
「黒き薔薇よ、」
その声に応じツルが絡まり合いながらアルガノット国の領土へ向けて伸びていく、が遠すぎて届かない。
エレナはその薔薇の道をすたすた歩いていく、重力に半端なく逆らってるのだが。
「アシュもついてきて」
言われた通り薔薇の道を進む、意外と安定感があり、下をのぞき込まなければ問題はない。
薔薇が止まっているところまで来ると、彼女は魔防円陣を造り出す。
「これは初歩の魔防円陣よ、これに薔薇をつないで前へへ進む。」
なるほど、過程はどうあれここから敵襲などかんがえないだろう。
何度かそれを繰り貸すと、あっさりアルガノット国へ到着することが出来た。
万が一のことを考えて薔薇の道は回収しておいた。
さていよいよアルガノットの上層部、もしくはそれ以上の位の人物に接触を図らねがならない。
わかっていることだがここからは敵地であり、見つかり次第殺される、そう思って間違いないだろう。
エレナさえ無事に上層部にあわせる事さえできれば、なんとかなる、彼女には人を引き付ける力があるから、混沌の闇にひきづりこまれていなければ。俺は文字通り盾になりに来た、エレナがチャンスを掴めるように。
遠くで戦争の激しさが地鳴りのように轟き、二人の意識を引き付ける。
大勢の兵士が走り剣をふるい相手を切り裂いていく、馬も人もその命を散らしていく。
これがセーデルのやりたかった事か、隣国を破綻させて何の得になるというのだ、混沌の闇にのまれ狂気に身を任せている者の考えを理解するのは不可能ではないが、やめておいた方がいい。
「闇は闇を引き寄せる」
沢山の人の死がエレナの感情に触れる、悲しみ痛み苦しみ嘆き、これが目的なのだろうか。
負の感情を持ったまま死んだとしても、全ての人が混沌の闇に取り込まれるわけではない。
それどころか、ほとんどがただただ死を迎えるだけ。
ならば、彼の狙いは―――――――戦争そのもの。
より多くの死者をだし、そのわずかに手に入る混沌の闇を手に入れる算段か。
今更ながら、自身の利益の為なら禁忌にも手を染めるセーデルを哀れにすら思う。単語
アルガノット国はまさに彼の大きなは操り人形になっているのだ。
聞えるはずのないセーデルの高笑いが聞えてくるきがする、でもそれを止める者は必ずいる。
世界は均衡を保つはずだから、もしわたしが死んでもそれを受け継ぐ人が出てくるのは天の理。
「じゃあ、行こう」
「そうだね、ヒメちゃん」
二人は戦乱の渦中へと近づいていく。
彼女の体からは切られたあとが随所にみられ、白い肌に赤い血がひどく際立って見えた。
「ヒメちゃん、大丈夫!?」
アシュベルの声に我に返る。
「あ、うん、見た目ほどひどくはないの、傷は浅いから平気、どう、して・・アシュがここにいるの?」
「君が俺の主だから、って言ったら満足かな」
エレナの体を支えつつ、優美な笑顔をうかべるアシュベル。
そして大切な人だから。
「嘘ついたのに怒ってないの?」
「怒ってないよ、君が無謀だってことはわかっているからね、」
苦笑ぎみに答える。
怒りなんておこがましい感情だから、エレナを引き留めたのは自分自身、彼女を縛り付ける権利なんて露程もないのだ、アシュベルは怒りより空虚さを感じる。どうしたらこの人をつなぎとめておけるのか、どうしたらこのひとに腕の中にいてもらえるのか。全ては自分自身の我儘だ。
「取り敢えず止血しないと、右腕と左足の足首、ちょっと傷深いね」
素早く彼女の傷の状態を把握し、自分のマントを脱ぎ引き裂き、エレナの傷を止血し手当てする。
エレナの足首を縛る時、アシュベルのくせのある金の髪がふわふわとゆれるのを彼女はぼんやり見ていた。
このひとの感情は読みづらい、でもいまのエレナにはそれは通用しなかった。なぜならば、隊長という立場を誰かに預けてここまで駆けつけてくれたのは、わたしのことを心配してくれているから、そしてもっと多くの感情をその笑顔の下に押し殺しているのだろう。
「第一近衛隊の指揮はアロが?」
「そうだよ、あいつむかつくほどできるやつだからね」
「リュカとカリーナは?」
「国境沿いの二人の領主のところへ他の近衛隊と共に行動してる、不正に国から資金をだまし取っていた書類が見つかってね、でもセーデルまでは捕えられないかな、奴は抜け目がないし、いざとなったら部下に責任を押し付けるだろうから」
「そう・・・」
アシュベルが手当てを終えて、エレナの顔を見ると、その煌めく黒い瞳からぼろぼろと大粒の涙が流れていた。
「ごめん、アシュ」
「君が謝ることは無いんだよ、だから泣かないで」
そう言ってエレナの頬に流れる清らかで美しい涙をそっと指先で拭う。
「君は君のやり方で突き進んで、俺は最大限にそれをサポートするだけ」
そう、そのためなら近衛隊を使用し、リュカやカリーナを巻き込み、自身のアフタン商会も利用する、利用できるもだったらなんだって利用してやる。
アシュベルは思う、俺は溺れているんだと、でも今はそれが正しくも感じる。
エレナの白銀色の髪を耳にかけ、アシュベルがエレナの唇に自分の唇を重ねる。
「・・・アシュ?」
彼女のその小さな顔をアシュベルは両手を優しくそえて、再び少し長めのキスをした。
「ご褒美もらっておきました、」
「え、え、アシュベルの女たらしー!!」
「どこでそんなこと聞いたの?」
言いにくそうではあるが、そういうことを吹聴するのは大体あいつだ。
「アロ、でしょ」
エレナは答えない、それが告げ口になると思っているから。
「ヒメちゃん、言っとくけど本気になったのはヒメちゃんだけだから」
「なに・・言ってんの、」
その動揺ぶりが可愛くてつい虐めたくなる。
「ほら、泣き止んだ、でも泣くのは俺の前でだけね」
こういうことをさらりというから、エレナはアシュベルを警戒しまくる。
「じゃあ、こっからのプラン聞かせて?」
アシュベルが言うとエレナは対面にあるアルガノット国の絶壁を指さす。
あそこまで闇魔法と魔防円陣をくししていくつもり、そうエレナはいうがどう見ても1㎞はありそうだ。
「理論は頭に入っるから、平気、」
そのとき開戦の合図が響いた、戦争が始まった、今この瞬間にも殺し殺されている人がいる。
こうしてはいられない、はやくアルガノット国に潜入しなければ。
「黒き薔薇よ、」
その声に応じツルが絡まり合いながらアルガノット国の領土へ向けて伸びていく、が遠すぎて届かない。
エレナはその薔薇の道をすたすた歩いていく、重力に半端なく逆らってるのだが。
「アシュもついてきて」
言われた通り薔薇の道を進む、意外と安定感があり、下をのぞき込まなければ問題はない。
薔薇が止まっているところまで来ると、彼女は魔防円陣を造り出す。
「これは初歩の魔防円陣よ、これに薔薇をつないで前へへ進む。」
なるほど、過程はどうあれここから敵襲などかんがえないだろう。
何度かそれを繰り貸すと、あっさりアルガノット国へ到着することが出来た。
万が一のことを考えて薔薇の道は回収しておいた。
さていよいよアルガノットの上層部、もしくはそれ以上の位の人物に接触を図らねがならない。
わかっていることだがここからは敵地であり、見つかり次第殺される、そう思って間違いないだろう。
エレナさえ無事に上層部にあわせる事さえできれば、なんとかなる、彼女には人を引き付ける力があるから、混沌の闇にひきづりこまれていなければ。俺は文字通り盾になりに来た、エレナがチャンスを掴めるように。
遠くで戦争の激しさが地鳴りのように轟き、二人の意識を引き付ける。
大勢の兵士が走り剣をふるい相手を切り裂いていく、馬も人もその命を散らしていく。
これがセーデルのやりたかった事か、隣国を破綻させて何の得になるというのだ、混沌の闇にのまれ狂気に身を任せている者の考えを理解するのは不可能ではないが、やめておいた方がいい。
「闇は闇を引き寄せる」
沢山の人の死がエレナの感情に触れる、悲しみ痛み苦しみ嘆き、これが目的なのだろうか。
負の感情を持ったまま死んだとしても、全ての人が混沌の闇に取り込まれるわけではない。
それどころか、ほとんどがただただ死を迎えるだけ。
ならば、彼の狙いは―――――――戦争そのもの。
より多くの死者をだし、そのわずかに手に入る混沌の闇を手に入れる算段か。
今更ながら、自身の利益の為なら禁忌にも手を染めるセーデルを哀れにすら思う。単語
アルガノット国はまさに彼の大きなは操り人形になっているのだ。
聞えるはずのないセーデルの高笑いが聞えてくるきがする、でもそれを止める者は必ずいる。
世界は均衡を保つはずだから、もしわたしが死んでもそれを受け継ぐ人が出てくるのは天の理。
「じゃあ、行こう」
「そうだね、ヒメちゃん」
二人は戦乱の渦中へと近づいていく。
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