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俺の名前は来栖紫音。普通の大学生だ。
今日は授業も終わり、バイトも無いので家に直行する。友達と遊ぶ予定もないのだ。残念な事に彼女も居ない。
最寄りの桃原駅を降りた。家までは二十分程だろう。テクテクと歩いていく。少しコンビニ等にも立ち寄っていく。お菓子やエナジードリンクを買った。
「やっぱ家に帰って遊ぶ時はお菓子とエナジードリンクだな!」
と独り語ちる。
閑静な住宅街だ。何の事件も事故も起きない。平和なもんだな。
ここ桃原町は都心から離れたベットタウンに成っている。住宅街が広がっていて店を建てる規制等も有るため、騒音や暴走族等とは無縁だ。
そんなことを考えながら歩いていくと俺の家の前に着いた。現在四時過ぎだ。この時間だと妹の茜が家に居るだろう。鍵は…掛かっていないな。扉を開けると居間には茜の姿があった。
「兄さん。お帰りなさい。今日は早いんだね。バイトは無かったの?」
「只今。茜。そうだね。今日はバイトも遊ぶ用事も何にも無いよ。二人でゆっくり出来るな。」
「そうね。何か映画でも見ましょうか?近所のビデオショップに行って何本か借りてきたのよ。」
そうだな…と俺が相槌を打とうとした瞬間…居間の空間がグニャリと曲がった。
???なんだこれは…あまりの事に声がでない。
「兄さん!これはなんなのよ!空間が歪んで…ハッ何かが出てくるわ!兄さん!ボウッとしてないで逃げるわよ!」
歪み越しに茜の声が聞こえてくる。
「そうだな。家の外に避難しよう!」
俺は立ったままだったので逃げる準備に入った。…しかしそうは問屋が降ろさなかった。
バゴンという銃撃音が聞こえた。俺の胸に大きな穴が開いていた。空間の歪みの中からだ。
恐らく心臓を撃たれたのだ。呼吸ができない。
俺は横たわるとジタバタと暴れまわった。茜は?妹の身が危ない!
しかし俺には何も出来ない。地面でのたうち回るだけだった。
…空間の歪みが消えた。中からは黒いマントを羽織った黒仮面の男が現れた。手にはリボルバー銃が握られている。
男が口を開く。
「そこの坊主はもう死にかけか…敢えて手を下す迄もないだろう。さてお嬢さん…命を頂くよ。俺は捧げなくちゃならないんだ。贄をね。」
茜はその場で硬直している。蛇に睨まれた蛙の状態だ。恐る恐る口を開く。
「兄さんと私を助けてください。お願いします。兄さんを助けて…私も死にたくないよ…」
駄目だ。いつもの茜じゃない…俺は出血のし過ぎで気が遠くなってきた。
「駄目だな。お嬢さん。君のお兄さんも君もここで死んで贄になるんだ。地球の贄は極上だからな。」
黒仮面の男は一切の無駄が無い動作で茜の心臓に狙いを着けてリボルバー銃を発射した。鈍い銃声が木霊し茜はドサリと卒倒した。
「兄さん…助けて…痛いよ。寒いよ…。」
茜は立ち上がろうとする…クソ駄目だ。寝て死んだ振りをしないと本当に殺されるぞ。動け…俺の体!茜を助けるんだ。
だが現実は非情だ。黒仮面の男は銃を構え直すと茜の頭に発射した。どす黒い血が床に飛び散り、今度こそ茜は死んだ。
黒仮面の男は独り語ちる。
「地球で新たな贄を二体手にいれた。イスワルドに送還する準備に入る。移送呪詛!至天の檻よ!汝に捧げる供物なりしや!納めたまえ…」
黒仮面の男の声がフェードアウトしていく。目を開けていられない。俺も死ぬのだろう。父さん、母さん、茜…ごめんなさい。俺はもうダメみたいだ。天国に行きます。
…次に目を開けるとそこは明るい草原のような場所だった。何も無いように見えたが辺りを見回すと光輝くローブを見にまとった金髪碧眼の女性が居た。
俺は黙って草原に横たわっていた。すると女性の方から近寄ってくる。そして彼女は口を開いた。
「来栖紫音…地球では大学生でしたか…ようこそイスワルドの天界へ。貴方の意識だけでもこちらに呼び寄せられて良かったです。」
「どういう事ですか?何故貴女は俺の名前を知っているんですか。それにここは何処なんだ。今までに見たこともないような光景だ。美しい…綺麗だ。そして貴女も人並み外れた美しさを感じます。まさか神様ですか?」
女性は微笑んだ。美しい…今まで見た女性の中でダントツトップだ。
「名乗るのが遅れてしまいましたね。私の名前は女神アイリス。地球と似た別の星…イスワルドの天界を治めています。神ゆえに地球での貴方に起こった一部始終を観測していました。貴方達は時空を駆ける暗黒教団の贄に選ばれたのです。本来なら殺された後に死体がイスワルドの何処かに送られる筈でした。その後貴重な地球産の贄として暗黒神の復活の為に肉体は解体されると言った所でしょう。」
「貴女は神なんですね。荘厳な美しさがそれを物語っているようです。それにここは地球ではない星…イスワルド…大体分かりました。納得出来ます。ですがその暗黒教団と言うのは何なんですか?何故地球で人殺しをわざわざしているんですか?家の妹も贄に捧げられたって言うんですか?」
「貴方の質問もごもっともです。このイスワルドの何処かに自由に世界の狭間を移動できる暗黒教団と呼ばれている邪教があります。彼らは巧妙に自分達の足跡を隠しながらイスワルドや地球問わずに殺戮を繰り返しています。全ては遠い過去に天界の戦争に破れ去り存在そのものが滅ぼされた暗黒神達の復活の為です。今は貴方が殺されかけた黒仮面の男を中心に贄を集めているようです。貴方は私が天界に迎える事に成功しましたが、貴方の妹の魂と肉体は暗黒神に捧げられました。彼らにとって地球産の死体は高級な贄なのです。」
俺は唇を噛み締めた。血が滲んでくる。
そうか…その暗黒教団って奴らが…あの黒仮面が茜を殺したのか…許せねえ。虫でも捻るように人間を殺しやがって…絶対に報復してやる。しかも死体を解体して贄に捧げるだって…反吐が出る外道だな。
俺は意を決して口を開いた。
「これから俺はどうなるんですか…何のために天界で俺を蘇生したんですか?俺は別世界で平穏な暮らしを望んでいる訳ではありません!妹の仇を討たせて下さい。暗黒教団は俺が滅ぼします。」
女神はフフと笑みを溢した。
「貴方は随分と勇ましいのですね。それに物が余り分かっていないようです。貴方は今すぐには暗黒教団を相手にする力は与えられません。しかしいつかは暗黒教団を…あの黒仮面の男を滅ぼして貰いたいと考えています。ですから貴方に一つ力を与えます。さあ受け取りなさい。」
そう言うとアイリスは何もない空間から虹色の光を放つ剣を取り出した。俺に向かってそれを浮かせて渡してくる。
俺は剣を受け取った。鞘から剣を引き抜くと剣から声が聞こえた。
「あんたが新しい私のマスターね。紫音…我が銘はエクスカリバー。古の地球で武を振るったアーサー王の伝説の剣…を模したアーティファクトよ。エクスって呼びなさい。」
身体中に透明な文字列が走っていく。俺の体を走査しているようだ。
「エクス…君はエクスカリバーの紛い物なのか?」
「失礼な奴ね。紛い物と言えど超一流の聖剣よ。あんたのレベルは一のままだから本家本元の必殺技を使いこなせないと思うけどね。」
「ほう。言うじゃないか。復讐の旅の伴侶に相応しいかどうかはこれから分かるだろう。…アイリス様ありがとうございます。エクスカリバーを使いこなして暗黒教団を打ち払って見せますよ。」
ん?エクスカリバーから何かがにゅーっと出てきた。年は十五、六の女の子の様だ。黒いローブに身を包んだ金髪緑眼の美しい少女…
「えっと…君はエクスか?」と俺が尋ねる。
少女が答えた。
「そうよ。私はエクスカリバーに憑いている神霊のエクス。闘っている時以外は自由に受肉して外に出れるの。一人旅だと寂しいでしょう。それに剣の中って狭い上に退屈なのよね。だから暇潰しも兼ねて外に出てあげるわ。」
「闘いの時以外は勝手にしてくれ。…アイリス様。今後俺達はどうなるんですか?」
「紫音にその従者エクスよ。貴方達はイスワルドのノースメリカン大陸に転生します。その大陸の何処かに暗黒教団がいるのは間違いないでしょう。イスワルドと地球…双方の惑星を脅かす暗黒教団を討ち取るのです。復讐者よ。さらばです。」
そうアイリスが言い終わると…
天界通信ヲ遮断シマス…という機械的な音声が流れた。女神アイリスは手を振ったまま露と消えた。そして今まで居た美しい草原は姿を消した。恐らく作られていた景色だったのだろう。
本来の景色が姿を現す…ここは森の中だ。恐らく惑星イスワルドのノースメリカン大陸の何処かなのだろう。
俺の横にはエクスが立っている。美しさに見惚れそうになる…が…俺は女に気を取られている場合ではない。暗黒教団を…黒仮面の男を一刻も早く討ち滅ぼしてやる。俺のたった一人の妹を殺されたんだ。この恨み晴らさずにおくべきか!
「紫音…覚悟は決まっている様ね。困難な天命を一般人の分際で達成できると思う?」
エクスは試すようにいやらしい笑みを浮かべた。
「エクス。その為のお前だろ。お前がいれば暗黒教団と黒仮面の男を滅ぼせる…筈さ。信じてるよ。例え元一般人でもそれが可能だってな。」
「粋は良し。だがヒヨッコではねぇ…これからは沢山の闘いを経験して勇者としての格を身に付けなければならないわ。そうしなければ私も力を貸せないからね。紫音。」
「そうだな。必ずこの手で茜の仇を討つ。それまではどんな困難や恥辱にまみれようとも必ず前進する。誓うよ。茜…畜生。」
ポロポロと涙を流しながら俺は森の中で横になった。今まで気を張っていたから大丈夫だったが、恐怖と悔しさと悲しさが俺を容赦なく殴り付けた。俺は今日はもう一歩も動く気になれなかった。今は日没してから大分経ったみたいだ。森を闇が覆い尽くしている。危険な野獣が出てくるかもしれなかった。
エクスは仕方がないという風な困った顔をした。いくら転生して助かったとはいえども…記憶を覗かせて貰ったので知っているのだが…目の前で妹を殺され、自分も殺されかかったのだ。気が抜けたら恐怖に支配されるのも致し方無いだろう。しかしこの夜分に森の中で突っ伏させている訳にも行かない。
私は紫音の腕を取った。
「ほら!紫音。惚けていないで立ちなさい。このままだと妖魔や獣に襲われて死んでしまうわ!町まで歩いていくから私に掴まっていなさい。」
「…早速迷惑かけるな。エクス。気が抜けたら急に腰が抜けてしまった。仕方がない。君に掴まらせて貰おう。」
俺達は月に照らされながら森を出た。近くに街道が有ったのでそれに沿って道を進んでいく。
…夜通し歩いたと思う。とても俺は疲れていた。エクスは凛としている。神霊だから疲れないのかもしれない。
「紫音。町よ。もうすぐ町に到着するわよ。」
「ああ…ようやく到着だな。町に到着したらまず宿を取ろう。君も疲れただろう。」
俺達は町の門に辿り着いた。どうやらこの町はオベミスの町と言うらしい。
そう…俺の旅はこの町から始まりを告げる。
今日は授業も終わり、バイトも無いので家に直行する。友達と遊ぶ予定もないのだ。残念な事に彼女も居ない。
最寄りの桃原駅を降りた。家までは二十分程だろう。テクテクと歩いていく。少しコンビニ等にも立ち寄っていく。お菓子やエナジードリンクを買った。
「やっぱ家に帰って遊ぶ時はお菓子とエナジードリンクだな!」
と独り語ちる。
閑静な住宅街だ。何の事件も事故も起きない。平和なもんだな。
ここ桃原町は都心から離れたベットタウンに成っている。住宅街が広がっていて店を建てる規制等も有るため、騒音や暴走族等とは無縁だ。
そんなことを考えながら歩いていくと俺の家の前に着いた。現在四時過ぎだ。この時間だと妹の茜が家に居るだろう。鍵は…掛かっていないな。扉を開けると居間には茜の姿があった。
「兄さん。お帰りなさい。今日は早いんだね。バイトは無かったの?」
「只今。茜。そうだね。今日はバイトも遊ぶ用事も何にも無いよ。二人でゆっくり出来るな。」
「そうね。何か映画でも見ましょうか?近所のビデオショップに行って何本か借りてきたのよ。」
そうだな…と俺が相槌を打とうとした瞬間…居間の空間がグニャリと曲がった。
???なんだこれは…あまりの事に声がでない。
「兄さん!これはなんなのよ!空間が歪んで…ハッ何かが出てくるわ!兄さん!ボウッとしてないで逃げるわよ!」
歪み越しに茜の声が聞こえてくる。
「そうだな。家の外に避難しよう!」
俺は立ったままだったので逃げる準備に入った。…しかしそうは問屋が降ろさなかった。
バゴンという銃撃音が聞こえた。俺の胸に大きな穴が開いていた。空間の歪みの中からだ。
恐らく心臓を撃たれたのだ。呼吸ができない。
俺は横たわるとジタバタと暴れまわった。茜は?妹の身が危ない!
しかし俺には何も出来ない。地面でのたうち回るだけだった。
…空間の歪みが消えた。中からは黒いマントを羽織った黒仮面の男が現れた。手にはリボルバー銃が握られている。
男が口を開く。
「そこの坊主はもう死にかけか…敢えて手を下す迄もないだろう。さてお嬢さん…命を頂くよ。俺は捧げなくちゃならないんだ。贄をね。」
茜はその場で硬直している。蛇に睨まれた蛙の状態だ。恐る恐る口を開く。
「兄さんと私を助けてください。お願いします。兄さんを助けて…私も死にたくないよ…」
駄目だ。いつもの茜じゃない…俺は出血のし過ぎで気が遠くなってきた。
「駄目だな。お嬢さん。君のお兄さんも君もここで死んで贄になるんだ。地球の贄は極上だからな。」
黒仮面の男は一切の無駄が無い動作で茜の心臓に狙いを着けてリボルバー銃を発射した。鈍い銃声が木霊し茜はドサリと卒倒した。
「兄さん…助けて…痛いよ。寒いよ…。」
茜は立ち上がろうとする…クソ駄目だ。寝て死んだ振りをしないと本当に殺されるぞ。動け…俺の体!茜を助けるんだ。
だが現実は非情だ。黒仮面の男は銃を構え直すと茜の頭に発射した。どす黒い血が床に飛び散り、今度こそ茜は死んだ。
黒仮面の男は独り語ちる。
「地球で新たな贄を二体手にいれた。イスワルドに送還する準備に入る。移送呪詛!至天の檻よ!汝に捧げる供物なりしや!納めたまえ…」
黒仮面の男の声がフェードアウトしていく。目を開けていられない。俺も死ぬのだろう。父さん、母さん、茜…ごめんなさい。俺はもうダメみたいだ。天国に行きます。
…次に目を開けるとそこは明るい草原のような場所だった。何も無いように見えたが辺りを見回すと光輝くローブを見にまとった金髪碧眼の女性が居た。
俺は黙って草原に横たわっていた。すると女性の方から近寄ってくる。そして彼女は口を開いた。
「来栖紫音…地球では大学生でしたか…ようこそイスワルドの天界へ。貴方の意識だけでもこちらに呼び寄せられて良かったです。」
「どういう事ですか?何故貴女は俺の名前を知っているんですか。それにここは何処なんだ。今までに見たこともないような光景だ。美しい…綺麗だ。そして貴女も人並み外れた美しさを感じます。まさか神様ですか?」
女性は微笑んだ。美しい…今まで見た女性の中でダントツトップだ。
「名乗るのが遅れてしまいましたね。私の名前は女神アイリス。地球と似た別の星…イスワルドの天界を治めています。神ゆえに地球での貴方に起こった一部始終を観測していました。貴方達は時空を駆ける暗黒教団の贄に選ばれたのです。本来なら殺された後に死体がイスワルドの何処かに送られる筈でした。その後貴重な地球産の贄として暗黒神の復活の為に肉体は解体されると言った所でしょう。」
「貴女は神なんですね。荘厳な美しさがそれを物語っているようです。それにここは地球ではない星…イスワルド…大体分かりました。納得出来ます。ですがその暗黒教団と言うのは何なんですか?何故地球で人殺しをわざわざしているんですか?家の妹も贄に捧げられたって言うんですか?」
「貴方の質問もごもっともです。このイスワルドの何処かに自由に世界の狭間を移動できる暗黒教団と呼ばれている邪教があります。彼らは巧妙に自分達の足跡を隠しながらイスワルドや地球問わずに殺戮を繰り返しています。全ては遠い過去に天界の戦争に破れ去り存在そのものが滅ぼされた暗黒神達の復活の為です。今は貴方が殺されかけた黒仮面の男を中心に贄を集めているようです。貴方は私が天界に迎える事に成功しましたが、貴方の妹の魂と肉体は暗黒神に捧げられました。彼らにとって地球産の死体は高級な贄なのです。」
俺は唇を噛み締めた。血が滲んでくる。
そうか…その暗黒教団って奴らが…あの黒仮面が茜を殺したのか…許せねえ。虫でも捻るように人間を殺しやがって…絶対に報復してやる。しかも死体を解体して贄に捧げるだって…反吐が出る外道だな。
俺は意を決して口を開いた。
「これから俺はどうなるんですか…何のために天界で俺を蘇生したんですか?俺は別世界で平穏な暮らしを望んでいる訳ではありません!妹の仇を討たせて下さい。暗黒教団は俺が滅ぼします。」
女神はフフと笑みを溢した。
「貴方は随分と勇ましいのですね。それに物が余り分かっていないようです。貴方は今すぐには暗黒教団を相手にする力は与えられません。しかしいつかは暗黒教団を…あの黒仮面の男を滅ぼして貰いたいと考えています。ですから貴方に一つ力を与えます。さあ受け取りなさい。」
そう言うとアイリスは何もない空間から虹色の光を放つ剣を取り出した。俺に向かってそれを浮かせて渡してくる。
俺は剣を受け取った。鞘から剣を引き抜くと剣から声が聞こえた。
「あんたが新しい私のマスターね。紫音…我が銘はエクスカリバー。古の地球で武を振るったアーサー王の伝説の剣…を模したアーティファクトよ。エクスって呼びなさい。」
身体中に透明な文字列が走っていく。俺の体を走査しているようだ。
「エクス…君はエクスカリバーの紛い物なのか?」
「失礼な奴ね。紛い物と言えど超一流の聖剣よ。あんたのレベルは一のままだから本家本元の必殺技を使いこなせないと思うけどね。」
「ほう。言うじゃないか。復讐の旅の伴侶に相応しいかどうかはこれから分かるだろう。…アイリス様ありがとうございます。エクスカリバーを使いこなして暗黒教団を打ち払って見せますよ。」
ん?エクスカリバーから何かがにゅーっと出てきた。年は十五、六の女の子の様だ。黒いローブに身を包んだ金髪緑眼の美しい少女…
「えっと…君はエクスか?」と俺が尋ねる。
少女が答えた。
「そうよ。私はエクスカリバーに憑いている神霊のエクス。闘っている時以外は自由に受肉して外に出れるの。一人旅だと寂しいでしょう。それに剣の中って狭い上に退屈なのよね。だから暇潰しも兼ねて外に出てあげるわ。」
「闘いの時以外は勝手にしてくれ。…アイリス様。今後俺達はどうなるんですか?」
「紫音にその従者エクスよ。貴方達はイスワルドのノースメリカン大陸に転生します。その大陸の何処かに暗黒教団がいるのは間違いないでしょう。イスワルドと地球…双方の惑星を脅かす暗黒教団を討ち取るのです。復讐者よ。さらばです。」
そうアイリスが言い終わると…
天界通信ヲ遮断シマス…という機械的な音声が流れた。女神アイリスは手を振ったまま露と消えた。そして今まで居た美しい草原は姿を消した。恐らく作られていた景色だったのだろう。
本来の景色が姿を現す…ここは森の中だ。恐らく惑星イスワルドのノースメリカン大陸の何処かなのだろう。
俺の横にはエクスが立っている。美しさに見惚れそうになる…が…俺は女に気を取られている場合ではない。暗黒教団を…黒仮面の男を一刻も早く討ち滅ぼしてやる。俺のたった一人の妹を殺されたんだ。この恨み晴らさずにおくべきか!
「紫音…覚悟は決まっている様ね。困難な天命を一般人の分際で達成できると思う?」
エクスは試すようにいやらしい笑みを浮かべた。
「エクス。その為のお前だろ。お前がいれば暗黒教団と黒仮面の男を滅ぼせる…筈さ。信じてるよ。例え元一般人でもそれが可能だってな。」
「粋は良し。だがヒヨッコではねぇ…これからは沢山の闘いを経験して勇者としての格を身に付けなければならないわ。そうしなければ私も力を貸せないからね。紫音。」
「そうだな。必ずこの手で茜の仇を討つ。それまではどんな困難や恥辱にまみれようとも必ず前進する。誓うよ。茜…畜生。」
ポロポロと涙を流しながら俺は森の中で横になった。今まで気を張っていたから大丈夫だったが、恐怖と悔しさと悲しさが俺を容赦なく殴り付けた。俺は今日はもう一歩も動く気になれなかった。今は日没してから大分経ったみたいだ。森を闇が覆い尽くしている。危険な野獣が出てくるかもしれなかった。
エクスは仕方がないという風な困った顔をした。いくら転生して助かったとはいえども…記憶を覗かせて貰ったので知っているのだが…目の前で妹を殺され、自分も殺されかかったのだ。気が抜けたら恐怖に支配されるのも致し方無いだろう。しかしこの夜分に森の中で突っ伏させている訳にも行かない。
私は紫音の腕を取った。
「ほら!紫音。惚けていないで立ちなさい。このままだと妖魔や獣に襲われて死んでしまうわ!町まで歩いていくから私に掴まっていなさい。」
「…早速迷惑かけるな。エクス。気が抜けたら急に腰が抜けてしまった。仕方がない。君に掴まらせて貰おう。」
俺達は月に照らされながら森を出た。近くに街道が有ったのでそれに沿って道を進んでいく。
…夜通し歩いたと思う。とても俺は疲れていた。エクスは凛としている。神霊だから疲れないのかもしれない。
「紫音。町よ。もうすぐ町に到着するわよ。」
「ああ…ようやく到着だな。町に到着したらまず宿を取ろう。君も疲れただろう。」
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