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俺達はオベミスの町に入った。何故かそこらじゅうにある表札や標識の字が読める。疑問に思いエクスに尋ねてみる。
「なんで異世界の町なのに表札や標識が日本語表記なんだ?もしかしてこの町って日本にあるのか?どうみても街並みは異世界って感じなのにな。それも中世っぽい所に機械文明の残り香を感じられる。」
エクスは首を傾げながら答える。
「さあねえ。私もこの世界についての知識はないんだけどね。そもそも私が日本語を話している時点で疑問に思うべきよ。それに女神アイリス様もどう考えても日本語を喋っていたらおかしいでしょう?…文明の発達レベルについては地球並みの機械文明が栄えていた形跡が有るわね。今は滅びて歴史の闇に飲まれて久しいって所かしら。」
「そうか…まあ何らかの加護が働いているのかもしれないな。言語を通訳する加護か。地味だけど重要な加護だな。ありがたく受けとるとしよう。…機械文明が栄えてた形跡ありか…まず間違いないだろうな。」
町は中世並みの町並みながら…遥か昔に栄えていたであろう文明の残り香が残っていた。廃ビルや工場の跡地がある。
そこに今の住人が勝手に住み着いている様だった。
それに冒険者と思われる出で立ちの若者は皆剣ではなく銃を担いでいる。町に入って直ぐに分かる事はそんなところだろうか。
俺達は宿屋に向かった。そうだ俺はヘトヘトに疲れはてていたのだ。
エクスは疲労の色が見えない。神霊だからだろうか?神の肉体は簡単なことでは疲労する事も傷つく事もないのだろう。
フラりと倒れそうになったが…エクスに腕を引っ張られて体勢を立て直す。
「ちょっと!大丈夫?フラフラし過ぎよ。まあ一晩中歩き通したんだから仕方ないと思うけどね。ほら!しっかりしなさい。」
背中を強く叩かれた。体が芯から反り返る。
「すまないな。エクス。大分疲れているみたいだ。大丈夫。自分一人で歩けるよ。」
俺が姿勢を立て直してから町の大通りを歩いていくと宿屋が見つかった。木造の建物で如何にも中世風だ。
しまったな。この世界の通貨なんて俺は持っていないし、エクスも勿論持っていないだろう。どうしようか…うーん。考えていても仕方がないし宿屋に入ることにしよう。
俺とエクスは宿屋に入った。中にはでっぷりとした主人が座っている。
「いらっしゃい。旦那様とお嬢さん。一泊百ゴールドになるよ。」
百ゴールド…どのくらいの価値があるのかすらも分からない。一万円位だろうか?
「オヤジ…俺達は生憎金を持っていなくてな。後で必ず払うからツケにしておいて貰えないか?良いだろう?」
愛想笑いをしていた主人の顔が急に無表情になった。
「金が無いなら帰りな。貧乏人に用事は無いんだ。さあ帰った帰った!」
エクスが助け船を出す。
「ご主人…私達は冒険者なんだ。依頼を受けたら報償金の中から宿代を支払う事ができるわ。今晩は泊めて貰うとして…明日依頼をこなすというのは如何かしら?」
「なるほど冒険者だったのか…それなら多少の依頼をこなせば百ゴールド位は払えるな。フン…一日だけだぞ…泊まるのを許してやる。」
私は少し腹が立っていた。こんな中年のデブ親父にへいこらしたく無かったし、依頼を受ける事が確定してしまった。私の予定には無かった事だ。
本来ならば直ぐに町から野原に出てひたすら妖魔を撲滅するような行動が望ましい。
そうすれば紫音が勇者としての格を上げることが出来るだろう。
だけれどそれは十分に資金が有ることが前提だった。
暗黒教団を屠る旅を続けるにはまず第一に金を稼がなくてはならない。
急がば回れとは言うけれど…面倒くさいわね。
アイリス様もお金くらいは困らないように渡してくれないのかしら?
俺達は渋々親父からの許可を得ると宿屋の二階へと上がって行った。指定された部屋だ。中に入る。
すると殺風景な光景が広がっていた。あるのは簡素なベッドが二つ…それだけだ。現世の様にテレビが有ったりはしない。暇を潰すにのには苦労しそうだ。
こういう時にスマートフォンがあれば世話は無いのだが…生憎転生する際に衣服が強制的に黒い服と黒いマントに変えられており、その際に財布やスマートフォンは無くなってしまっていた。
それにもし有ったとしても圏外でインターネットは使えないし、ソーシャルゲームでも遊べないだろう。
…それに重い疲労が溜まっている事にも気がついた。もう眠るとしよう。
「エクス。お休み。起きたら仕事が待っている。ゆっくり休んでくれよ。」
「はいはい。昨日死にかけた所からよくここまで貴方みたいなパンピーが持ったわね。称賛してあげるわ。おめでとう。でも…明日からは血で血を洗う闘争が待っているわ。安眠を貪れるのは今日だけよ。紫音…ゆっくりとお休みなさい。」
何かトゲが刺さる言い方だな…まあいい。彼女とはこれから打ち解けていけばいい。俺の一杯あった人生の目標も今はただ一つだけだ。
だから彼女の面倒を見るくらいならどうって言うことないさ。
俺はベッドの上でそう感じると眠りについた。深い眠りだ。一つ夢を見た。
ショッピングモールを茜と見て回っていた。その時はお母さんは別のフロアに行っており、後で合流する事になっていた。
「兄さん。私このオモチャが欲しいの。でもお母さんは買ってくれないに決まっているわ。」
「茜。何でも欲しがるからだぞ。僕のお小遣いだって大した金額じゃないんだ。どれどれどのオモチャだ。」
「これ。お姫様の人形。千円くらいするわ。」
「仕方ないな。良し。僕が買ってやろう。…ボソリ後でお母さんに請求しよう。千円は痛すぎる。」
店員に千円を渡してお姫様の人形を手にいれた。それを茜に渡す。
「ほら、茜。お姫様の人形だぞ。大事に使えよ。」
目をキラキラと輝かせる茜。大事そうに俺が渡した人形を胸に抱えた。
「ありがとう。兄さん!絶対大事にするわね。」
段々と見ている光景がフェードアウトしていく。駄目だ。茜!逝かないでくれ!
夢は暁に消えた。また朝が来た。もう茜は戻らないのだ。
「なんで異世界の町なのに表札や標識が日本語表記なんだ?もしかしてこの町って日本にあるのか?どうみても街並みは異世界って感じなのにな。それも中世っぽい所に機械文明の残り香を感じられる。」
エクスは首を傾げながら答える。
「さあねえ。私もこの世界についての知識はないんだけどね。そもそも私が日本語を話している時点で疑問に思うべきよ。それに女神アイリス様もどう考えても日本語を喋っていたらおかしいでしょう?…文明の発達レベルについては地球並みの機械文明が栄えていた形跡が有るわね。今は滅びて歴史の闇に飲まれて久しいって所かしら。」
「そうか…まあ何らかの加護が働いているのかもしれないな。言語を通訳する加護か。地味だけど重要な加護だな。ありがたく受けとるとしよう。…機械文明が栄えてた形跡ありか…まず間違いないだろうな。」
町は中世並みの町並みながら…遥か昔に栄えていたであろう文明の残り香が残っていた。廃ビルや工場の跡地がある。
そこに今の住人が勝手に住み着いている様だった。
それに冒険者と思われる出で立ちの若者は皆剣ではなく銃を担いでいる。町に入って直ぐに分かる事はそんなところだろうか。
俺達は宿屋に向かった。そうだ俺はヘトヘトに疲れはてていたのだ。
エクスは疲労の色が見えない。神霊だからだろうか?神の肉体は簡単なことでは疲労する事も傷つく事もないのだろう。
フラりと倒れそうになったが…エクスに腕を引っ張られて体勢を立て直す。
「ちょっと!大丈夫?フラフラし過ぎよ。まあ一晩中歩き通したんだから仕方ないと思うけどね。ほら!しっかりしなさい。」
背中を強く叩かれた。体が芯から反り返る。
「すまないな。エクス。大分疲れているみたいだ。大丈夫。自分一人で歩けるよ。」
俺が姿勢を立て直してから町の大通りを歩いていくと宿屋が見つかった。木造の建物で如何にも中世風だ。
しまったな。この世界の通貨なんて俺は持っていないし、エクスも勿論持っていないだろう。どうしようか…うーん。考えていても仕方がないし宿屋に入ることにしよう。
俺とエクスは宿屋に入った。中にはでっぷりとした主人が座っている。
「いらっしゃい。旦那様とお嬢さん。一泊百ゴールドになるよ。」
百ゴールド…どのくらいの価値があるのかすらも分からない。一万円位だろうか?
「オヤジ…俺達は生憎金を持っていなくてな。後で必ず払うからツケにしておいて貰えないか?良いだろう?」
愛想笑いをしていた主人の顔が急に無表情になった。
「金が無いなら帰りな。貧乏人に用事は無いんだ。さあ帰った帰った!」
エクスが助け船を出す。
「ご主人…私達は冒険者なんだ。依頼を受けたら報償金の中から宿代を支払う事ができるわ。今晩は泊めて貰うとして…明日依頼をこなすというのは如何かしら?」
「なるほど冒険者だったのか…それなら多少の依頼をこなせば百ゴールド位は払えるな。フン…一日だけだぞ…泊まるのを許してやる。」
私は少し腹が立っていた。こんな中年のデブ親父にへいこらしたく無かったし、依頼を受ける事が確定してしまった。私の予定には無かった事だ。
本来ならば直ぐに町から野原に出てひたすら妖魔を撲滅するような行動が望ましい。
そうすれば紫音が勇者としての格を上げることが出来るだろう。
だけれどそれは十分に資金が有ることが前提だった。
暗黒教団を屠る旅を続けるにはまず第一に金を稼がなくてはならない。
急がば回れとは言うけれど…面倒くさいわね。
アイリス様もお金くらいは困らないように渡してくれないのかしら?
俺達は渋々親父からの許可を得ると宿屋の二階へと上がって行った。指定された部屋だ。中に入る。
すると殺風景な光景が広がっていた。あるのは簡素なベッドが二つ…それだけだ。現世の様にテレビが有ったりはしない。暇を潰すにのには苦労しそうだ。
こういう時にスマートフォンがあれば世話は無いのだが…生憎転生する際に衣服が強制的に黒い服と黒いマントに変えられており、その際に財布やスマートフォンは無くなってしまっていた。
それにもし有ったとしても圏外でインターネットは使えないし、ソーシャルゲームでも遊べないだろう。
…それに重い疲労が溜まっている事にも気がついた。もう眠るとしよう。
「エクス。お休み。起きたら仕事が待っている。ゆっくり休んでくれよ。」
「はいはい。昨日死にかけた所からよくここまで貴方みたいなパンピーが持ったわね。称賛してあげるわ。おめでとう。でも…明日からは血で血を洗う闘争が待っているわ。安眠を貪れるのは今日だけよ。紫音…ゆっくりとお休みなさい。」
何かトゲが刺さる言い方だな…まあいい。彼女とはこれから打ち解けていけばいい。俺の一杯あった人生の目標も今はただ一つだけだ。
だから彼女の面倒を見るくらいならどうって言うことないさ。
俺はベッドの上でそう感じると眠りについた。深い眠りだ。一つ夢を見た。
ショッピングモールを茜と見て回っていた。その時はお母さんは別のフロアに行っており、後で合流する事になっていた。
「兄さん。私このオモチャが欲しいの。でもお母さんは買ってくれないに決まっているわ。」
「茜。何でも欲しがるからだぞ。僕のお小遣いだって大した金額じゃないんだ。どれどれどのオモチャだ。」
「これ。お姫様の人形。千円くらいするわ。」
「仕方ないな。良し。僕が買ってやろう。…ボソリ後でお母さんに請求しよう。千円は痛すぎる。」
店員に千円を渡してお姫様の人形を手にいれた。それを茜に渡す。
「ほら、茜。お姫様の人形だぞ。大事に使えよ。」
目をキラキラと輝かせる茜。大事そうに俺が渡した人形を胸に抱えた。
「ありがとう。兄さん!絶対大事にするわね。」
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