異世界転生録~アヴェンジャー~

八雲 全一

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ハッ茜?………夢か。そうだ。茜はもういないんだ。地球にもこのイスワルドにも…暗黒教団の贄に捧げられたんだ。
「茜茜茜茜茜…死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ…」
ガチガチガチガチ…俺は真っ青な顔で歯を鳴らしていた。ノースメリカン大陸の季節はまだ夏なのに嫌な悪寒が俺を襲っていた。
エクスはもう起きているようだ。窓からオベミスの町を眺めていたが俺の異変に気付いたようで、近くに寄ってきた。
「大丈夫?紫音…あーっ…なるほど分かったわ。妹の事でフラッシュバックしてるのね。仕方無いわね。起きなさい!紫音。帰ってこい!」
パシンと良い音を立てて俺は頬を張られた。
「うあっ…ハァハァ。エクス?何で君がいるんだ。確かに地球に戻った筈なのに…茜が居て…いや、茜は殺されたんだった。そしてここはイスワルドだ。…ようやく目が覚めたよ。ありがとう。エクス。」
「気をしっかり持ちなさい。私のマスターとして使い物に成らないようなら見限らせて貰うわよ。確かに女神アイリスから貴方に私は預けられたけれど…別に一生おんぶにだっこで面倒を見ろなんて言われてないんだから。」
「分かった。済まない。早く妹が死んだ事を受け入れるよ。そして必ず仇を討つ。約束しよう。君に相応しい男に成るよ。…よし。もう頭の混乱は収まった。依頼を受けに行くとしようか。宿屋の親父との約束もあるしな。」
俺達は宿屋の一階に降りた。一階のカウンターにはでっぷりした宿屋の親父の姿があった。俺達に不機嫌そうに話し掛けてきた。
「おい。お前達。今日の夕暮れまで待ってやる。それまでに最低百ゴールドを持ってこなかったらこの町の衛兵に通報するからな。分かったらさっさと出ていけ!さあ!行った行った!」
「分かってるさ。オヤジ。さあエクス。仕事を探しに行こう。じゃあなオヤジ。」
俺は親父の嫌味を越えた脅迫を受けながらエクスに声を掛けてこの不快な宿屋で問題を起こさずに出る事を選んだ。
宿屋の外に出るとエクスはブスッとして口を開いた。
「どうしてあのデブ主人に良いように言わせておくのよ!あれじゃあ客じゃなくてまるで犯罪者の扱いだわ!納得行かない。お金を稼いでもあんな奴に渡してやる必要は無いわね。」
フーッと俺は溜め息をついた。エクスは物の理が理解出来ない程愚かでは無いようだが…仮にも神様だ。無礼者に容赦は出来ないのだろう。
「あそこで問題を起こしたら俺達は遅かれ早かれ追われる身に成っていたぞ。あそこは穏便に切り抜ける事が大事だったと思うけどな。俺もちゃんと考えている安心してくれ。」
「ムーッ。そう言われると私が何も考えてない見たいじゃない。ムカつくわ。…フン。まあ良いわ。早く仕事を探す方法を考えなさい。」
俺は分かった分かったと相槌を打って考え込んだ。異世界…中世と現代の合の子の変な世界…仕事…うーん酒場かな?ゲームとかのセオリーだとそう決まっているけど。
「酒場だ。この町にも酒場があるはずだ。俺の前世の記憶からして酒場が仕事を受ける最善の場所だと思うよ。君は他に思い浮かぶかいエクス?」
「酒場…ね。確かに情報が集まってそうだわ。そうね。後は依頼情報が張ってある掲示板とかかしらね。まあ酒場にも何処にも依頼が無い時の可能性として考えられる事だけれどね。」
「そんなもんだろうな。よし…酒場を探そう。」
俺はそこら辺をキョロキョロと見回すと町民を探した。居た。第一町民発見…!って違うか。俺より少し若いくらいの女の子だ。声を掛ける。
「すみませんが!酒場の場所を知りたいんですけど!」
少女は大声で呼ばれて少しビックリしたようだった。
「は、はい!この先の通りを右に曲がって、その先の突き当たりの通りを真っ直ぐ進んで二叉路を左に曲がって歩いていくと酒場に着きますよ。」
エクスが俺の代わりに口を開いた。
「もう少し分かりやすく言って欲しかったけど…これ以上簡単に言うのは貴女には難しそうね。どうもありがとう。記憶したわ。行きましょう。紫音。」
エクスはズンズンと歩き始めた。結構歩くのが早いな。俺は小走りで着いていく。十分程着いていっただろうか。酒場に到着した。ここもどこか中世風の建物だ。
扉を開けて中に入る。カウンター席とテーブル席がある普通の酒場だ。
カウンターには酒場のマスターが着いていた。
「いらっしゃい。まだ営業時間じゃないぜ。旦那。どうしたんだ?話してみろよ。」
「マスター。俺達は仕事を探しているんだ。酒場なら仕事の仲介をしているんじゃないかと思ってね。何か緊急の依頼とかは無いかい?」
「マスター。私達とても緊急でお金がいるの。すぐに解決できてお金が入る依頼が良いわ。何か無いかしら?」
俺達二人はほぼ同時に口を開いて依頼を受けたい事を伝えた。ハモる必要は無かったな。
「そうか…そういう手合いか。分かった。少し待ってくれよ。」
そういうとマスターはカウンターから手配書の様なものを取り出した。それを並べてウンウン唸っている。
俺達はじっと見守っていた。五分…十分は経っただろうか。マスターがどの依頼を頼むか決めたようだった。
「待たせたな。旦那達。あんた達に頼みたい緊急の依頼がある。町の外にあるコロニアル鉱山に住み着いたコボルトの退治依頼だ。もう何人も殺されている。未だに解決の目処がつかないんだ。」
「了解したわ。コロニアル鉱山までの行き方を教えて頂戴。今すぐ行くから。」
「分かった。オベミスの正門を出て街道を東に一時間程歩くとコロニアル鉱山が見えてくるぞ。中は一本道の鉱山だ。迷う事も無いだろう。さあ…任せたぞ。旦那達!死ぬんじゃないぞ。」
「任された。依頼をこなすのは初めてだけど全力を尽くしてコボルトを狩るとしよう。行くぞ。エクス。」
「ええ。早いところコロニアル鉱山に向かいましょう。」
俺達は酒場から出た。その後元来た道を戻り宿屋の前まで辿り着くとそこから更に町の入り口まで戻った。衛兵に声を掛けられたが、軽くいなして町の外に出た。
オベミスの町からコロニアル鉱山に向かう。
歩いている道中でエクスに話し掛けた。
「コボルトってどんな敵なんだ?聞いた事も無いぞ。エクスは知っているか?」
「ええ。この世界の常識をある程度叩き込まれているから分かるわ。コボルトは所謂狼男の小型バージョンの敵よ。知性は余り無いけれど、素早い動きが厄介な敵ね。どう?不安になった?」
「剣を使って闘うのは初めてだからな。不安な事だらけだ。俺は剣術なんて知らないから剣をバットを振り回す様にしか使えない。こんな事で大丈夫かな?」
「大丈夫よ。暫くは剣に宿った私が貴方を振り回す様にして技を出すわ。それを繰り返していく内に体が技を覚えるでしょう。」
「そんな振り回す様に俺を使う気なのか…?まったくどっちがマスターか分かったもんじゃないな。俺の意思や限界は関係無しかい?」
「この程度の試練を乗り越えられないようなら私のマスターとして相応しく無いわ。初めはエスコートしてあげるって言っているのよ。有り難く受け取りなさい。」
「はいはい。分かりましたよ。まあ自由にして良いと言われても俺にはどうせ剣の使い方は分からないしな。エクスに頼らせて貰うよ。」
そんな会話をしているとコロニアル鉱山に辿り着いた。ここからが俺の初陣になる…体が武者震いをし始めた。
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