異世界転生録~アヴェンジャー~

八雲 全一

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俺達は牢獄を一階まで上がって行った。アンジェリカの両親の衰弱が思ったより激しい。あまり余裕は無い。
俺達は誰かを守りながら闘う事には慣れていないのだ。地上に出たら何が待っているのだろう。俺の胸は不安で埋め尽くされた。
「どうしたんだい。紫音?顔が真っ青だよ。ボクに出来ることだったら教えてくれ。」
「いやな…お前の両親を守りながら闘うのが非常に困難な気がしてきてな。今まで誰かを守って闘った事なんて無いからさ。」
「うーん。そうだね。取り敢えず父上と母上にはさっき拾ったアサルトライフルで武装して貰っているから、最低限身を守る事は出来ると思うけど…最悪のパターンは考えてあるよ。大事な物だと思うけどゼオン連結システムを父上と母上に渡して良いかな。」
「アンジェリカ…それは先に脱出させると言うことかしら。可能では有るけど…貴女…ここで死ぬつもり?都市国家の軍事力全てを相手に闘うのは自殺行為よ。」
「そう…だよね。ごめん。エクス…紫音。どうしても父上と母上には助かって欲しいんだ。これが終わったらどんな埋め合わせでもするさ。あの二人を先に脱出させて欲しいんだ。」
そこにアンジェリカの父…ライジンが口を挟んできた。
「アンジェリカ…我が娘よ。私達を省みなくて良い。君達だけでも脱出する方法を探すんだ。良いな?私もヘレナも死ぬ覚悟は出来ている。最後にお前とお前の素晴らしい仲間を一目見れただけで満足だ。私は死ぬまで闘い続ける。」
俺が口を開いた。
「いえ、ライジンさん。貴方とヘレナさんはゼオン連結システムで逃げてください。俺達で活路を開きます。これまでも三人で幾度と無く窮地を乗り越えて来ました。今回だって一緒です。必ず生き延びて見せます。」
「そうですよ。父上、母上。貴方達は逃げてください。そして幸せに第二の人生を二人で歩んでください。ボク達は大丈夫ですから。死なずに必ず生き延びます。ゲーニアの強者相手でも遅れは取りませんよ。安心してください。」
「お父様…ここまでアンジェリカが言うのですから信じてあげましょう。強くなったわね。アンジェリカ。本当に人を思いやれる子になったと思うわ。貴方達に後は任せます。」
エクスが口を開く。
「ライジンさん。ヘレナさん。二人は大丈夫です。私が一番近くで彼らの闘いを見つめてきました。どんな困難にも彼らは挫けませんでした。これからもきっとそうです。さあ外に出ましょう。出たらすぐにゼオン連結システムで座標を出来るだけ遠くに設定して飛んで下さい。そうすれば貴方達は自由です。それはそういう機械なのです。」
エクスが俺からゼオン連結システムを受け取り、ライジンに手渡した。
ライジンが口を開く。
「そこまで言われては頼らないのが不義理と言うもの。このライジンとヘレナを助けていただいたご恩…永久に忘れませぬぞ。紫音殿、エクス殿、そしてアンジェリカ!」
そして牢獄を脱出し地上に出る。
外には数百を下らぬ軍勢が待ち構えていた。恐らく何らかの方法で牢獄の看守が皆殺しになったことを察知されたのだろう。
俺は最初からフルスロットルで飛ばしていた。
正面に約二百の敵。左側面に百。右側面に百。
対軍奥義で屠る。エクスカリバーを振りかざし術を唱える。
「エクスカリバー!究極霊閃モード突入!オーバーロード!フルロード!アルティメットスパーク…」
正宗も媒体として使う!これで幾らか威力が増強される筈だ。
「正宗!極大極光閃刃!天の具足!破邪昇天!」
正宗を言霊で解放できる限り解放した。これでエクスカリバーの真似事が出来る筈だ。
二刀の奔流を一気に解放する。狙いは正面の二百の軍勢。呑み込め!伝説の聖剣の一撃!
虹色の奔流と真っ白な正宗の奔流が正面の敵を穿った。兵士の肉体は膨れ上がり弾け飛んで行く。ただただ飲み込まれて行くだけだ。反撃など出来ようもない。
ライジンがこぼす。
「ゲーニアの精鋭の兵士が一瞬で破れさるとは…恐ろしい男だ。国を滅ぼす力と言えるだろう。だが、残念だが最後までは見届けられぬ。ヘレナ…行くぞ。彼らの意思を無駄にするな。ゼオン連結システムを起動するぞ。」
ライジンはゼオン連結システムを起動するとゲーニアとは真反対にあるとある町を選んで転移を開始した。連れていくのはヘレナだけだ。恐らくこれがアンジェリカとの今生の別れとなる。
「さらばだ。我が愛しい子…アンジェリカよ。俺はお前が産まれてくれて良かった。どうか幸せに生きてくれ。何時かは闘いを忘れてくれ。それが父の願いだ。いつまでも見守っているぞ。」
「アンジェリカ…ここで私もお別れです。自分の自分だけの道を信じて生きていきなさい。今の貴女なら迷うことも無いとは思いますが…助けに来てくれて本当にありがとう。これからはお父様と一緒に幸せに生きていきます。さよならアンジェリカ。」
そう言葉を残すとゼオン連結システムの緑色のドームが広がりライジンとヘレナは新天地に転移していった。
前方の二百の兵士は全員即死した。左右の百の兵士がアサルトライフルを連射してきた。紫音とアンジェリカは建物の影に隠れる。
隊列をばらしながら散兵として近寄ってくる敵達。
指揮官の男が叫ぶ。
「賊は大量殺傷兵器を持っている。固まって挑むな。散りながら闘うのだ。そこに勝機が有る!」
紫音が狼狽える。
「くそっ不味いな。一人一人相手にして闘うのは無理だ!どうする?」
「紫音!ここから国の外まで出れる道がある。そこを通って逃げよう。父上と母上はもう待避した。ここに残って死ぬまで闘う意味はもう無いと思うよ。」
エクスカリバーの中からエクスが答える。
「それは良い手ね。そうと決まれば早く逃げましょう。アルティメットスパークは直ぐには撃てないわ。どっちにしてもここで手詰まりよ。」
「そうだな。敵の兵士が来る前に先導してくれ。アンジェリカ!」
「了解!着いてきて!ほら!こっちこっち。」
大通りの裏路地を走って抜けていく。敵兵士はこっちが何処にいるかは分からない様だ。大人数でゆっくり索敵しているのだろう。それに捕まる紫音達では無かった。
遂に町の門まで来た。衛兵は事情を知らない様で直ぐに通してくれた。
こうして都市国家ゲーニアを俺達は脱出できたのだ。無傷で脱出出来たし、アンジェリカの両親も救出出来たので御の字だ。
今は街道を北に進んでいる。この先にはマムルークという交易都市がある。ひとまずそこが目標だ。

紫音には感謝しかない。ボクとボクの両親を救ってくれた。本当にゲーニアに討ち入ってあの二人を助け出す事になるとは思わなかった。今までの闘いも困難続きだったけれど、人を助けるために闘うのは初めてだった。
父上も母上もあんなに痩せてしまって…本当なら恨み節の一つでもぶつけられてしまっても仕方がないだろう。五年もほったらかしにしてしまった。
これからは新天地で幸せに生きて欲しい物だ。
ボクの旅もこれで完結したのかもしれない。それでも紫音とエクスに着いていく。彼らの事は好きだから。好きか…ボクは甘酸っぱい気持ちになった。とても恥ずかしくて伝えられないけど…いつか伝われボクの仄かな恋心よ。
そう眠りに着く前の一時に夢想した。さよなら父上、母上。
これからもずっと一緒さ。紫音、エクス…
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