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2.6
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俺達は目覚めると仕事を探すために酒場「翠月亭」に来ていた。
今は酒場の暖簾を潜る前だ。
所持金は五万ゴールド程あるが、金はいくらあっても足りないと言うことはない。
これまで会話をしながら歩いていたのでアンジェリカが喋っていた。
「どんな仕事があるのかな?また強敵との闘い?それとも庭掃除みたいな肉体労働かな?はたまた殺人事件の捜査みたいな知的な仕事?何なんだろうね。」
「単純に殺して終わりの方が俺達向きではあるな。庭掃除とかそういう雑用系は疲れる割に報酬が少なくって良くない。アンジェリカの言う殺人事件なんかは滅多に遭遇しないだろうよ。」
「そうね。私達としては単純な討伐の方が楽で良いわね。分かりやすいし。」
「何にしろどんな仕事でもどんとこいだ。働かないと飯は食えない。旅を続けることも出来ないしな。さあそろそろ酒場に入ろうか。」
俺達は酒場の暖簾を潜った。カウンターに座っているマスターが一人。日中なので客は居ない。
「よぉ。旦那。お嬢さん達。今日は何のようだい?酒ならまだ出す時間じゃないぜ。すまんな。町の規則で決まっているんだ。日中は禁酒だとさ。やれやれ昼から飲みたい行商が山ほど居るって言うのにね。参ったもんだよ。」
「へぇ。そうなんだ。マスターさんも大変だねぇ。でも大丈夫。ボク達は仕事を探しに来たんだ。どんな仕事もどんとこいだよ。何かあるかな?」
「ほほぅ。そうかい。変わった依頼があるぜ。連続殺人の予告状が届いている。その連続殺人犯の逮捕の仕事だ。まだ被害者は出ていないが…これが町の衛兵詰所に届いたんだ。」
…………
「…マムルークの皆様…ごきげんよう。この町の男の行商人の心臓を五つ頂きます。毎日一人ずつ殺します。いくら捜査しても無駄です。私を捕まえる事は出来ません。闇より出でし這いずる魔…より」
それは挑発とも取れる脅迫状だった。大胆な奴だ。こんなものを送らなければ犯人として探される事も無かったって言うのにな。
「面白いじゃない。この仕事私達が請け負ったわ。必ず犯人を見つけて見せる。…犠牲者も出したくは無いわね。」
「エクス…簡単に引き受け過ぎだ。報酬金はいくらなんだ。マスター?」
「そうだな。報酬の話が先だろう。報酬金は五千ゴールドだ。あまり高い金額ではないが、相手はただの人間に違いない。見つけ出せれば鬼を狩った君達なら簡単に倒せるだろう。犠牲者は何人でても報酬は変えないし、追跡も止めない。このマムルークの町で騒ぎを起こしたら地獄の果てまで追いたてると言うことだ。」
「五千ゴールドか…承知した。その依頼受けるとしよう。それではな。マスター。良い結果を期待していてくれ。」
そう言うと俺達は酒場の外にでた。
「ってどうするつもりなのさ。紫音!何の宛も無いじゃないか。こんなに人が沢山居る町でどうやって犯人を見つけるんだい。」
「それには考えがある。どこぞの小説の様に次々に手掛かりが出て犯人が見つかるとは思えない。そこでエクスの権能を使う。」
「えっ私の?何をすれば良いのかしら。何でもはしないわよ。分かっていると思うけど…」
「ああ…勿論だ。君の能力でマムルーク全体に結界を張って欲しい。そして殺人事件が起きたら現場に向かって結界に残っていた人間の反応を調べるんだ。その反応が出ている場所を町から探し出す。そうすれば犯人に辿り着くだろう。」
「まあそれもそうね。やってみましょうか。結界を張るから歩き回るわよ。まずはこの翠月亭を起点とするわ。」
その後俺達はマムルークの町をくまなく歩き回った。そして各所でエクスの結界術を施して行った。
今は町の八割がたカバーした所だ。何時間経ったのだろう。町は午後の陽気に包まれている。
「残りも今日中に片付けるの?裏路地や行き止まりばかりよ。まあ殺人事件という意味では重要性が高そうね。」
「エクス…行っちゃおうよ。疲れるかもしれないけど成果が期待できるんならね。ボクはまだまだ歩けるよ?」
「俺もアンジェリカに賛成だ。出来るところまでやってしまおう。殺人事件が起きてからカバー出来ていませんでした。はい…分かりません。じゃ話にならないだろう。さ!行こうか。」
「了解。私は疲れたけどやらないと駄目よね。後もう一息…ご同行願おうかしら。」
俺達は更に町の暗部…裏路地や行き止まり等を探して結界を施して行った。今にも殺人事件が起きそうな場所ばかりだった。
「よしこれで全部だな。後は無駄かもしれないが…町の裏路地や行き止まりを中心に見回りを行おう。もしかしたら犯人が獲物に襲いかかる所を見つける事が出来るかもしれない。いいな?」
「分かったわ。紫音。少し休憩したいところだけれど殺人犯は待ってくれないものね。行きましょう。」
「一人の犠牲者も出さずに犯人を見つけたい所だけれど難しいんだろうね。うーん。どうすれば先回り出来るんだろう…紫音、エクスも何か妙案は無いのかい?」
「俺はとにかく巡回を強化するしか無いと思う。後は犠牲者が出たらその付近にある結界に反応する証拠を手にいれるしか無いな。残念ながら最低一人の犠牲者が発生する事になる。」
「紫音の言う事ももっともだけれど…私としては危険だけれど衛兵の手も借りて手分けして捜索する方が良いと思うわ。少しでも発見する可能性を上げるとすればこれね。」
「二人の考えは分かったよ。エクスの衛兵の手も借りるって言うのは難しそうだね。こちらもお金をもらってやっているんだからさ…応援を頼むのは難しいだろうな。犠牲者は防げないけど…やっぱり紫音の言う通り巡回を強化するしか無いだろうね。エクスも意見を聞かせてくれてありがとう。水を差して悪かったね。さあ出掛けよう!」
俺達は日が暮れて夜の帳が降り深夜になるまで探索を続けた。様々な裏路地や袋小路を探して歩いたが怪しい人物は見当たらなかった。
日付が変わる頃俺達は宿屋に戻り休息を取った。
翌日…
朝目を覚ますとアンジェリカが居なかった。エクスはまだ微睡んでいる。何故居ないのかぼうっとする頭を抱えて推理をぼんやりと働かせていると宿屋の部屋にアンジェリカが駆け込んできた。
興奮収まらぬと言った様子で彼女は捲し立てた。
「大変だ!大変だよ!紫音!エクス!第一の被害者が出たんだ。町の屋台がある広場に心臓を抜かれた行商人の死体が置かれていたんだ!ボク達の予測とは全く違う場所で殺されたんだ!早く調べに行こうよ。」
「何だって!エクス!起きてくれ。今すぐ現場に向かうぞ。」
「え…ええ。行きましょうか。それにしてもまさかの場所で死体が発見されたわね。広場に死体を置き去るなんて…大胆不敵な犯人だわ。」
俺達は宿屋を出ると広場に向かって走っていった。景色が目まぐるしく変わっている。しばらく走ると広場に到着した。
一目見て分かった。広場の真ん中の噴水の中に死体が置かれている。
その回りを衛兵がぐるりと囲み隔離していた。野次馬の数は尋常ではない。この町に居る行商全てが集結する勢いだ。
人混みを掻き分けて死体の元に向かう。しかし途中で衛兵に止められた。
「君達…ここから先は進むことは許されない。大人しく衛兵達から離れなさい。」
「聞いていないか?俺達は例の連続殺人予告を解決するために雇われた旅の剣士だ。死体を観察する権利位はあるだろう。通してくれ。」
「そうだよ。ボク達は君達の強い味方さ。通してくれよぉ。お願いだから…さ…?」
「どうしても通さないと言うなら…実力行使で押しとおるわ…覚悟しなさい。」
衛兵は少し思案して答えた。
「落ち着いてくれ。君達。確かに今回の殺人事件に関わっている協力者が居る事は聞いている。そしてそんなことを口にするのは君達位だった。良いだろう。通りたまえ。ただし死体には触れないようにな。」
そう言うと衛兵は特別に俺達を通してくれた。そして事件のあらましを教えてくれた。
「被害者の名前はレイス。銀獅子商会の行商人だ。今朝の未明に死体が発見された。心臓と内臓が死体からはくり貫かれている。どうやら生きたまま解体されたようだ。顔が絶望で歪んでいる。こんなところか。」
「ありがとう。衛兵。俺達は俺達で現場を調べさせてもらうぜ。行こう。エクス、アンジェリカ。」
「結界に手掛かりが有るんだよね?闇より出でし這いずる魔って奴の証拠もあるかなぁ?」
「アンジェリカ…それは調べてみないと分からないわね。でもきっと何らかの痕跡が残っている筈よ。くまなく調べましょう。」
俺達は現場を物色し始めた。死体の回りの噴水や広場に痕跡が無いか探したが…特には見つからなかった。証拠を残す程間抜けでは無いのか…。
「エクス…通常の方法では痕跡は確認出来ない。お前の結界を利用して犯人を炙り出してくれ。頼んだぞ。」
「了解よ。犯行が行われたと思われる未明の結界の情報を調べるわ。…死体の他にそれを運んできたと思われる反応が一つ。チッ…反応が弱いわね。直接出くわすか…もっと反応が見つからないと何処の誰か特定する事は不可能ね。申し訳ないわね。」
「ちぇー。エクスでも駄目なのか。手詰まりだねぇ。どうする?紫音。」
「大体の居場所も分からないのか?エクス?」
「本当に大体になるけれど反応が現在もある場所は限られているわ。商会の事務所が集まっている通りよ。そこの何処かに犯人が居るわ。」
「それだけ分かれば大分絞られるな。よし商会の通りに移動しよう。」
俺達は商会の集まる通りに移動した。そこから先は手当たり次第に飛び込みで訪問していく。都度エクスに確認するが反応は違うと言う。朝から晩までかけて飛び込んだが明確な成果は得られなかった。
「だぁー!こんなに調べても証拠が出ないなんて!ボク信じられないよ。本当にここにその犯人が居るのかな?ボク達に勘づいてもう逃げてるんじゃないかい?」
「ごめんなさい。今回だけはそうかもしれないわね。ここまで証拠が出ないとははっきり思って無かったわ。」
「エクスの責任じゃ無いさ。今日のところは引き上げるとするか。また明日商会を当たって行こう。下手すると日付が変わってしまうからな。」
俺達は帰路に着くことにした。その瞬間結界に明確な反応が出たのを俺達は見過ごす訳がなかった。
「紫音、アンジェリカ!結界に反応が出たわ。商会の通りを移動して住宅街に向かっているわ!私達も急いで向かいましょう。」
「来た来た!これを待っていたんだよ!これ以上の犠牲者は出させないぞ!闇より出でし這いずる魔とか言う変質者め!」
「行くぞ!」
俺達は疲れた体に鞭を打って駆け出した。住宅街に到着した…が。ここは囮だ。犯人は商人の心臓が狙いだ。民間人は標的ではない。こちらを撹乱する為に住宅街に足を運んだのだろう。
「エクス!引き続き結界の反応を調べろ!住宅街は本命じゃ無い筈だ。」
「了解!反応は…屋台がある広場に移ったわ。昨日と同じ場所で標的を探すつもりなのかしら?」
「そうかもしれないね。さあ広場に行こう。そこに犯人がいる筈だ。」
俺達は広場に走って移動した。こんなに走ったのは久しぶりだった。息も絶え絶えに反応を目指して突っ走る。
俺達は一つの屋台の前に辿り着いた。エクスの結界には極大の痕跡反応が出ている。ここにいる。
恐る恐る屋台の奥に進んでみる。そこには猿轡を噛まされたまま心臓を抜かれて絶命している店主の姿と…心臓を片手に恍惚の表情を浮かべている青年の姿があった。
「おい!お前が連続殺人予告の犯人だな!大人しくお縄に着け!ボク達は衛兵みたいに甘くないぞ!」
「そうだとしたら?フフフ…どうするのかなお嬢さん。行くよ。」
ふらりと犯人がしたと思うと体が消えた。縮地!?
そして瞬く間に再び現れたかと思うとその貫手はアンジェリカの胸部を掠めていた。胸から血を吹き出すアンジェリカ。
「糞!その生身自体が凶器って訳か!殺さずに捕まえる事は出来ないだろう。行くぞ!ボクに剣を抜かせた事…後悔しながら死ぬと良い!吼えろ!朧村正!」
オォォォォォォォォォンと言う独特の残響音と共に朧村正を抜刀し犯人と向き合うアンジェリカ。俺は彼女の邪魔をしないように見守る事にした。認めよう。このままでは何の目的で凶行を繰り返したか分からずにこの犯人は死ぬ。それを避けなければならない。俺は柄では無いが制止役に回るとしよう。
ボクは朧村正を抜いて構えた。犯人…闇より出でし這いずる魔…はスルリと闇に消えた。また想像もつかない所から沸いて出て来るのだろう。朧村正をきつく握りしめる。
ボクは集中を超えた集中状態に入った。落ちる一粒の雫さえ認識できる。
ああ…後ろから犯人の貫手がボクの心臓を穿とうとしている。そこまで認識できた。
ボクは脇腹スレスレに思い切り朧村正を挿入した。鈍い感触。
「グハッ何故分かったんだ?こんな小娘なんかに!くそっ!」
「剣士の直感って奴さ。このまま切り上げる!行くぞ。」
ボクは後ろに振り返ると硬直していた犯人の腹に刺さった朧村正を引きながら切り上げた。腹から心臓、心臓から肩に切り抜ける。
致命の一撃だった。しかし思わぬ邪魔が入った。
紫音がエクスカリバーの鞘を犯人に当てたのだ。そしてエクスカリバーで手足を切り落とした。これで犯人は逃げることも死ぬことも出来ないだろう。
頭では分かっているが決着を邪魔されたのでいらっと来た。まぁボクの出番はこんなところで終わりだろう。
俺は正宗を抜き、機能を限定的に解除した。神代の名刀としての機能だとは思う。その名も白日の刃。相手の精神的な防御を解除して隠し事を素直に吐かせる技だ。あまり使用した事は無いが、これを食らって無言ですんだ奴は居ない。
俺は正宗を「闇より出でし這いずる魔」の胸に差し込んだ。物理的なダメージは無い筈だが。
「ガァ!グアアア!俺が溶けて行く。何もなくなる。俺を構成する物全てがバラバラに分解される。あああ…神との盟約すら白日の元に晒されるだろう!」
彼にも良く効いているようだ。尋問を開始する。
「闇より出でし這いずる魔…じゃ名前が長すぎる。お前の本名を教えろ。良いな?」
「ジーク…通り名が闇より出でし這いずる魔だ。」
「そうか。ジーク…何故殺人予告をして人を殺したんだ。」
「暗殺者ギルドで依頼を受けた。銀獅子商会の商人を派手に殺してくれと言う依頼だ。五人殺すのも、殺人予告を出すのも依頼の条件だった。依頼主はマムルークの商会中最大勢力の銀獅子商会の弱体が目的だった。」
エクスが口を開く。
「依頼主の名前を答えなさい。隠し立てする事は許さないわ。正直に吐く事ね。」
俺はエクスカリバーをジークの腸に差し込むとグリグリと抉った。
「う…ぐぐ…グハッ。依頼主は…依頼主はライオネル商会の大商人…コンチネンタルだ。」
「よし。これで必要な情報を手にいれたな。後はこいつを生かしたまま衛兵に突きだして仕事は終わりだ。」
俺は正宗とエクスカリバーをジークから引き抜いて鞘にしまった。
ジークを縄で縛り手で引いていく。歩けるように足だけ治癒してやった。
「今回はボクの手柄だね!今日は美味しいものを食べに行こうよ。」
「良いわね。アンジェリカ。見事な手並みだったわ。後ろに気配もなく縮地した犯人を見抜くとはね。フフフ…紫音…美味しいものを期待してるわよ。」
「ああ。それも良いな。とにかくまずはこいつを衛兵に突きださないといけないな。さあ衛兵の詰所まで後少しだ。」
俺達は町の入口付近にある衛兵詰所まで歩いて行った。ジークは逃げ出さない様にアンジェリカがずっと朧村正を突きつけている。
特に問題は無いようだ。ジークはぶつぶつと独り語ちながら着いてくる。奴の人生はここで終わりだ。二度目は無い。
俺達は屋台の香ばしい匂いに誘われながらも誘惑に打ち克ち衛兵詰所に向かって行った。
…それから目抜通りをひたすら歩いて町の門まで辿り着いた。衛兵詰所はすぐそばだ。
衛兵詰所を覗く。これは…。
それは一面の血溜まりだった。何人分かも分からない人体のパーツが錯乱していた。この町の衛兵全員のバラバラ殺人死体なのか…?
ジークが急に笑いだす。
「ハハッ俺の始末の為に奴まで呼ばれたか!紫音とか言ったな?お前達の生命も俺の命もここまでだ。暗殺者ギルドから最高の暗殺者が呼ばれたぞ。俺なんかの比じゃない。コンチネンタ…」
コンチネンタルと口にしかけたジークの顎から上は吹き飛んでいた。それは血溜まりの中、臓物の中からの攻撃。不味い。遥かに格上だ。
赤い闇から人影が浮かぶ。それは黒髪赤目の少女だった。手には赤い双槍。暗殺者ギルドの最高の暗殺者…。
「紫音!惚けて無いで構えなさい。死ぬわよ。圧倒的な死の塊よ。彼女はね。」
「こんな化物がまだノースメリカン大陸に居たなんてね。キャラじゃないけどゾクゾク武者震いが止まらないよ。こんな上玉…現世でありつけないよ。」
俺は自然にエクスカリバーではなく正宗を握った。どうしてかは後にも先にも理解は出来なかった。相応しい強者に出会った正宗がこれまでの恩に応えようとしたのかもしれない。
正宗…神話礼装…神名開帳…フツノミタマ…神業限定解放…霊的な音声…神託が俺の中を駆け巡る。
正宗は本当に神話時代の特級の武器だったらしい。流石にフツノミタマの分霊だとは思うが…
暗殺者の少女と向き合う。彼女も神話クラスのアーティファクトを二つ携えている。銘は分からないがかなりの業物だ。
距離は十メートル。アンジェリカは固唾を飲んで見守っている。エクスもエクスカリバーに憑依せずに俺の事を凝視していた。
彼女には裏切りと取られても仕方ないだろう。土壇場でエクスカリバー並みの武器を覚醒して入手したのだから。
先に動いたのは暗殺者の少女だった。
彼女は手に持つ赤い双槍の片方をモーション無しで投擲してきた。
「天駆けよ!ゼオンボルグ!」
雷を纏いながら神速で穿たれるゼオンボルグ!俺は居合いの構えからコンマゼロのスピードで反撃を撃った。
無銘霊閃!フツノミタマを使い霊的な閃光を発射した。それはゼオンボルグを呑み込んで消失させ帯雷の効果も霧散させた。そしてその霊閃はそのまま少女を貫こうとする。彼女はあり得ない角度で身をひねり神速の霊閃を回避したかと思ったが、霊閃は曲がり…少女の体を穿った。そして極大の霊的爆発を引き起こした。暗殺者の少女はフツノミタマの一撃で完全に絶命した。残ったもう一振りの赤い槍は砂と化して宙に舞い消えていった。
終わった。余りにも呆気ない終わり方だったが無数の生と死が交錯した戦闘だった。
「まさか正宗がそこまでの神刀だったとはね。いざという時は私を頼って欲しかったけど…エクスカリバーで勝利できたかどうかは保証出来ないわ。もう私は要らない剣なのかしら?」
「そんな事言うな!エクス。君がいなければ今の俺は居ないさ。それにフツノミタマに極度に頼るつもりは無い。あくまでサブウェポンだ。それにフツノミタマとして何時でも使役出来る訳でも無い。」
「分かったわ。少し意地悪したくなっただけよ。いきなり神話状態に覚醒したからビックリしたけれど、無意識の発露に当てられての覚醒だったのね。フツノミタマとして使いこなすにはかなりの時間が掛かるわ。以前の様に特訓してどうにかなるわけでもないでしょう。」
「本当に申し訳無い。エクス。これからもエクスカリバーを一番で使用する。正宗がフツノミタマに覚醒する条件は不明だ。当てに出来ない。長い時間を掛けて常時覚醒出来る様に持っていくが、それでもエクスカリバーで闘った方が強い状態に俺は成りたい。」
「フフ…期待しておきましょう。それにしても今回はどう収集つけるつもりかしら?衛兵は全員殺されているし、ジークも死んだわ。それにあの強敵の暗殺者もね。」
「えーと。本当にどうしようか?紫音。流石にこの状態で酒場に行ってもボク達が犯人扱いされかねないよ。」
「となれば…ライオネル商会のコンチネンタルを取っ捕まえるしか無いだろう。」
俺達は本命の下手人であるライオネル商会のコンチネンタルを目指して衛兵詰所を離れて、商会の事務所がある通りに駆けて迫っていった。
町の風景が急ぎ足で流れていく。その中には目立った敵影は無かった。
着いた…ここがライオネル商会の事務所か。廃ビルを利用している様で荒れ果てた雰囲気だ。俺達は剣を収めて中に入る。
受付嬢ではなく厳つい男達が受付に座っていた。
「おい!お前達!何のようだ?」
「ボク達はコンチネンタルって男に会いに来たんだ。居るんだろう?邪魔させて貰うよ。」
「ふざけるな!ここから先は一歩も…いっぽ…ガボガボ」
厳つい男その一はアンジェリカの半月斬を受けて、喉を掻き斬られて絶命した。
「あ…アニキ…グバァ…」
ドサッと厳つい男その二は倒れた。エクスカリバーの袈裟斬りで脳天から唐竹割りを決めた。
これで当面敵は出てこないだろう。今は一階。このビルは五階まである。各階を確認しながら上がって行くしかない。
階段を忍び足で上がって行く。二階だ。扉のガラス越しに中を確認する。
チンピラが屯している。ここでは無いだろう。全員ぼうっとしているだけで会話等も聞こえてこない。仲良く危ないクスリでもキメているのだろうか?
更に先に進む。三階。同じように中を覗き込む。
偉そうなチンピラが大激怒していた。相手は黒髪赤目の少女…殺した筈…!?驚いて声を上げそうになりエクスに口を塞がれた。
「むーっ!むーっ…。」
「しっ!静かにしなさい。紫音。確かにさっき倒した少女と似ているけど別人よ。」
「ハァハァ…そうか…ビックリした。」
「会話を聞いてみよう。もしかしたら何か掴めるかもだよ。エクス、紫音。」
俺達は聞き耳を立てて気配を殺した。
………………………………………………
「てめぇら暗殺者ギルドの暗殺者は全員使い物にならない穀潰しか!?ジークもツバキも旅の剣士って奴に返り討ちにあってるじゃねぇか。何か言いたい事があるなら言ってみろ。」
「私の遠見の魔眼で確認した所、聖剣持ちの上に神話時代の武器を持っている男が少なくとも確認出来ました。敵のレベルが高過ぎます。ツバキもアーティファクトで武装させて衛兵詰所で待ち伏せさせましたが、敵いませんでした。しかし私達の腕前にも武器にも批はありません。最適な暗殺者を送り込んだと考えています。代金は変わらず頂きます。ジーク、ツバキの使用料合わせて十万ゴールドになります。」
「んなもん払えるわけねぇだろ!聖剣だか神話だか知らないが素人に負けるプロなんて存在価値がねぇ!びた一文払わねぇからな。早く失せな。」
そう言って偉そうなチンピラが煙草に手を伸ばした瞬間…少女がボソリと呟いた。
「ここにただの旅の剣士が既に来ていますよ。」
チンピラは驚愕し煙草を落とした。
「な!なんだっ…ムグググ。」
背後に回る少女はチンピラの口を塞ぐと喉を漆黒の短剣で切り裂いた。呆気なく死ぬ偉そうなチンピラ。
「フフ…せめて恐怖ぐらいは頂かないと死んでいったあの子達の手向けにもなりません。まあ金庫の中身位は頂いて行きましょうか。それでは短い付き合いでしたがさらばです。コンチネンタル様。」
………………………………………………
「どうする?紫音…コンチネンタルまで殺されちゃったよ。」
「あの女を生きたまま拘束するしかないな…」
「また半殺しにして捕縛するのかしら…かなり厳しい闘いになるわよ。」
「俺に考えがある。」
ごそごそとコンチネンタルの死体を漁り、金庫の鍵を見つけた少女。心なしか嬉しそうなニヤけ顔を隠せない。
俺はゆっくりとドアを開けるとホフク前進で素早く暗殺者の少女に近づく。少女はこちらに気が付かずルンルン気分で金庫まで歩いていく。
俺もその後ろにホフク前進で着いていく。
金庫の前で笑みを漏らしながらしゃがむ少女。
俺はその後ろでゆっくりと立ち上がるとエクスカリバーの平らな面で思い切り少女の延髄をひっぱたいた。
「ばたんきゅー。」
その場に卒倒する少女。俺が合図を送るとエクスとアンジェリカがやってきた。エクスが縄で少女をぐるぐる巻きにした。
「これで良いだろう。衛兵詰所は全滅してるし、取り敢えず酒場に連れていこう。」
「うーん。結構マヌケな女の子だったね。まあ抜けてて助かったけどさ。」
「まあ気を抜かずに連れていきましょう。暗殺者にあるまじき気の抜け方だったわね。」
俺達はライオネル商会の廃ビルをこっそり抜け出した。
暗殺者の少女を俺が担ぎ酒場まで連れていった。
翠月亭のマスターにはこれまでの事情を隠さず話した。
「な…なるほどな。その女の子が暗殺者ギルドの一員だって言うのか…まあ君達が言うならそうなんだろう。あっ…女の子はそちらで引き取ってくれ。生かすなり殺すなり好きにすると良い。」
少女が目を見開いた。
「えっ。私殺されないんですか?あまーい!」
「はっ。引き取り拒否よ。決まっているじゃない。」
「何この展開。ボクも困るよ。」
「ああ…流石に俺も引き取りは考えるぞ。」
少女がニンマリ笑う。
「アハハ…考えるんですか。よーし。もう死んだものとして驚愕安値三万ゴールドで生涯護衛任務引き受けますよ。」
「高いのか安いのか分からないわね。後一人称が私だと被るわ。ボクっ娘ももういるから拒否よ。」
「じゃあ…あたしで。契約成立と見てよろしいですか?」
俺はみんなの顔を見渡した。
マスターは任せたぞ的なスマイルを浮かべている。
エクスは仕方無いわねと言った表情。
アンジェリカは困ってる困ってる。
そして少女はニコリと美しい笑みを浮かべていた。
ええい、ままよ。
「分かったよ。三万ゴールドで君を雇おう。マスター諸経費で落ちるかな?」
「落ちないな。旦那。覚悟しな。今回の報酬一万ゴールドまで増額してやるからさ。」
チッそう上手くは行かなかったか…でも相当な手練れみたいだしな。
「フフフ…雇うと言いましたね!」
少女の目がキュピーンと輝いた。
「では名乗りましょう。あたしこそは暗殺者ギルド第四十四支部長…ボタンです。遠見の魔眼を使った偵察が得意です。特技は暗殺全般です。貴方の生活で消したい奴が居れば何時でも教えて下さい。簡単に始末しちゃいますよ!」
「ボタンって言ったね。ボク達が倒したツバキとは血縁関係かい?」
「ええと…あたしの妹です。別に恨んではいません。暗殺者たるもの何時も死と隣合わせですから。それに苦しまずに即死してましたしね。」
「仕方無かったとは言え、殺してしまって言葉も無い。君は自由だ。君の自由を買うために三万ゴールド支払おう。俺達を殺したいなら何時でも掛かってくると良い。」
ボタンは泣きそうな笑顔で口を開いた。
「恨んではいませんから。でもツバキの最後に相応しい強敵だったかこれから先の闘いで見極めさせて貰います。貴方の名前…教えて下さい。」
「俺か…俺の名前は…来栖紫音。こいつらはアンジェリカとエクス。」
二人とも少し怪訝な表情で応えた。
「紫音…貴方の刃として一生涯闘い抜きましょう。あたし…紫音の為に闘って死にます。」
「ああ…宜しくな。ボタン。俺も君のためにも闘う。誓おう。」
俺達は新たな旅路で新しい仲間を迎える事が出来た。復讐は終わったって言うのに俺は旅を終える事が出来ない。
まだ死ぬには早い…か………
また次の冒険で会おう
今は酒場の暖簾を潜る前だ。
所持金は五万ゴールド程あるが、金はいくらあっても足りないと言うことはない。
これまで会話をしながら歩いていたのでアンジェリカが喋っていた。
「どんな仕事があるのかな?また強敵との闘い?それとも庭掃除みたいな肉体労働かな?はたまた殺人事件の捜査みたいな知的な仕事?何なんだろうね。」
「単純に殺して終わりの方が俺達向きではあるな。庭掃除とかそういう雑用系は疲れる割に報酬が少なくって良くない。アンジェリカの言う殺人事件なんかは滅多に遭遇しないだろうよ。」
「そうね。私達としては単純な討伐の方が楽で良いわね。分かりやすいし。」
「何にしろどんな仕事でもどんとこいだ。働かないと飯は食えない。旅を続けることも出来ないしな。さあそろそろ酒場に入ろうか。」
俺達は酒場の暖簾を潜った。カウンターに座っているマスターが一人。日中なので客は居ない。
「よぉ。旦那。お嬢さん達。今日は何のようだい?酒ならまだ出す時間じゃないぜ。すまんな。町の規則で決まっているんだ。日中は禁酒だとさ。やれやれ昼から飲みたい行商が山ほど居るって言うのにね。参ったもんだよ。」
「へぇ。そうなんだ。マスターさんも大変だねぇ。でも大丈夫。ボク達は仕事を探しに来たんだ。どんな仕事もどんとこいだよ。何かあるかな?」
「ほほぅ。そうかい。変わった依頼があるぜ。連続殺人の予告状が届いている。その連続殺人犯の逮捕の仕事だ。まだ被害者は出ていないが…これが町の衛兵詰所に届いたんだ。」
…………
「…マムルークの皆様…ごきげんよう。この町の男の行商人の心臓を五つ頂きます。毎日一人ずつ殺します。いくら捜査しても無駄です。私を捕まえる事は出来ません。闇より出でし這いずる魔…より」
それは挑発とも取れる脅迫状だった。大胆な奴だ。こんなものを送らなければ犯人として探される事も無かったって言うのにな。
「面白いじゃない。この仕事私達が請け負ったわ。必ず犯人を見つけて見せる。…犠牲者も出したくは無いわね。」
「エクス…簡単に引き受け過ぎだ。報酬金はいくらなんだ。マスター?」
「そうだな。報酬の話が先だろう。報酬金は五千ゴールドだ。あまり高い金額ではないが、相手はただの人間に違いない。見つけ出せれば鬼を狩った君達なら簡単に倒せるだろう。犠牲者は何人でても報酬は変えないし、追跡も止めない。このマムルークの町で騒ぎを起こしたら地獄の果てまで追いたてると言うことだ。」
「五千ゴールドか…承知した。その依頼受けるとしよう。それではな。マスター。良い結果を期待していてくれ。」
そう言うと俺達は酒場の外にでた。
「ってどうするつもりなのさ。紫音!何の宛も無いじゃないか。こんなに人が沢山居る町でどうやって犯人を見つけるんだい。」
「それには考えがある。どこぞの小説の様に次々に手掛かりが出て犯人が見つかるとは思えない。そこでエクスの権能を使う。」
「えっ私の?何をすれば良いのかしら。何でもはしないわよ。分かっていると思うけど…」
「ああ…勿論だ。君の能力でマムルーク全体に結界を張って欲しい。そして殺人事件が起きたら現場に向かって結界に残っていた人間の反応を調べるんだ。その反応が出ている場所を町から探し出す。そうすれば犯人に辿り着くだろう。」
「まあそれもそうね。やってみましょうか。結界を張るから歩き回るわよ。まずはこの翠月亭を起点とするわ。」
その後俺達はマムルークの町をくまなく歩き回った。そして各所でエクスの結界術を施して行った。
今は町の八割がたカバーした所だ。何時間経ったのだろう。町は午後の陽気に包まれている。
「残りも今日中に片付けるの?裏路地や行き止まりばかりよ。まあ殺人事件という意味では重要性が高そうね。」
「エクス…行っちゃおうよ。疲れるかもしれないけど成果が期待できるんならね。ボクはまだまだ歩けるよ?」
「俺もアンジェリカに賛成だ。出来るところまでやってしまおう。殺人事件が起きてからカバー出来ていませんでした。はい…分かりません。じゃ話にならないだろう。さ!行こうか。」
「了解。私は疲れたけどやらないと駄目よね。後もう一息…ご同行願おうかしら。」
俺達は更に町の暗部…裏路地や行き止まり等を探して結界を施して行った。今にも殺人事件が起きそうな場所ばかりだった。
「よしこれで全部だな。後は無駄かもしれないが…町の裏路地や行き止まりを中心に見回りを行おう。もしかしたら犯人が獲物に襲いかかる所を見つける事が出来るかもしれない。いいな?」
「分かったわ。紫音。少し休憩したいところだけれど殺人犯は待ってくれないものね。行きましょう。」
「一人の犠牲者も出さずに犯人を見つけたい所だけれど難しいんだろうね。うーん。どうすれば先回り出来るんだろう…紫音、エクスも何か妙案は無いのかい?」
「俺はとにかく巡回を強化するしか無いと思う。後は犠牲者が出たらその付近にある結界に反応する証拠を手にいれるしか無いな。残念ながら最低一人の犠牲者が発生する事になる。」
「紫音の言う事ももっともだけれど…私としては危険だけれど衛兵の手も借りて手分けして捜索する方が良いと思うわ。少しでも発見する可能性を上げるとすればこれね。」
「二人の考えは分かったよ。エクスの衛兵の手も借りるって言うのは難しそうだね。こちらもお金をもらってやっているんだからさ…応援を頼むのは難しいだろうな。犠牲者は防げないけど…やっぱり紫音の言う通り巡回を強化するしか無いだろうね。エクスも意見を聞かせてくれてありがとう。水を差して悪かったね。さあ出掛けよう!」
俺達は日が暮れて夜の帳が降り深夜になるまで探索を続けた。様々な裏路地や袋小路を探して歩いたが怪しい人物は見当たらなかった。
日付が変わる頃俺達は宿屋に戻り休息を取った。
翌日…
朝目を覚ますとアンジェリカが居なかった。エクスはまだ微睡んでいる。何故居ないのかぼうっとする頭を抱えて推理をぼんやりと働かせていると宿屋の部屋にアンジェリカが駆け込んできた。
興奮収まらぬと言った様子で彼女は捲し立てた。
「大変だ!大変だよ!紫音!エクス!第一の被害者が出たんだ。町の屋台がある広場に心臓を抜かれた行商人の死体が置かれていたんだ!ボク達の予測とは全く違う場所で殺されたんだ!早く調べに行こうよ。」
「何だって!エクス!起きてくれ。今すぐ現場に向かうぞ。」
「え…ええ。行きましょうか。それにしてもまさかの場所で死体が発見されたわね。広場に死体を置き去るなんて…大胆不敵な犯人だわ。」
俺達は宿屋を出ると広場に向かって走っていった。景色が目まぐるしく変わっている。しばらく走ると広場に到着した。
一目見て分かった。広場の真ん中の噴水の中に死体が置かれている。
その回りを衛兵がぐるりと囲み隔離していた。野次馬の数は尋常ではない。この町に居る行商全てが集結する勢いだ。
人混みを掻き分けて死体の元に向かう。しかし途中で衛兵に止められた。
「君達…ここから先は進むことは許されない。大人しく衛兵達から離れなさい。」
「聞いていないか?俺達は例の連続殺人予告を解決するために雇われた旅の剣士だ。死体を観察する権利位はあるだろう。通してくれ。」
「そうだよ。ボク達は君達の強い味方さ。通してくれよぉ。お願いだから…さ…?」
「どうしても通さないと言うなら…実力行使で押しとおるわ…覚悟しなさい。」
衛兵は少し思案して答えた。
「落ち着いてくれ。君達。確かに今回の殺人事件に関わっている協力者が居る事は聞いている。そしてそんなことを口にするのは君達位だった。良いだろう。通りたまえ。ただし死体には触れないようにな。」
そう言うと衛兵は特別に俺達を通してくれた。そして事件のあらましを教えてくれた。
「被害者の名前はレイス。銀獅子商会の行商人だ。今朝の未明に死体が発見された。心臓と内臓が死体からはくり貫かれている。どうやら生きたまま解体されたようだ。顔が絶望で歪んでいる。こんなところか。」
「ありがとう。衛兵。俺達は俺達で現場を調べさせてもらうぜ。行こう。エクス、アンジェリカ。」
「結界に手掛かりが有るんだよね?闇より出でし這いずる魔って奴の証拠もあるかなぁ?」
「アンジェリカ…それは調べてみないと分からないわね。でもきっと何らかの痕跡が残っている筈よ。くまなく調べましょう。」
俺達は現場を物色し始めた。死体の回りの噴水や広場に痕跡が無いか探したが…特には見つからなかった。証拠を残す程間抜けでは無いのか…。
「エクス…通常の方法では痕跡は確認出来ない。お前の結界を利用して犯人を炙り出してくれ。頼んだぞ。」
「了解よ。犯行が行われたと思われる未明の結界の情報を調べるわ。…死体の他にそれを運んできたと思われる反応が一つ。チッ…反応が弱いわね。直接出くわすか…もっと反応が見つからないと何処の誰か特定する事は不可能ね。申し訳ないわね。」
「ちぇー。エクスでも駄目なのか。手詰まりだねぇ。どうする?紫音。」
「大体の居場所も分からないのか?エクス?」
「本当に大体になるけれど反応が現在もある場所は限られているわ。商会の事務所が集まっている通りよ。そこの何処かに犯人が居るわ。」
「それだけ分かれば大分絞られるな。よし商会の通りに移動しよう。」
俺達は商会の集まる通りに移動した。そこから先は手当たり次第に飛び込みで訪問していく。都度エクスに確認するが反応は違うと言う。朝から晩までかけて飛び込んだが明確な成果は得られなかった。
「だぁー!こんなに調べても証拠が出ないなんて!ボク信じられないよ。本当にここにその犯人が居るのかな?ボク達に勘づいてもう逃げてるんじゃないかい?」
「ごめんなさい。今回だけはそうかもしれないわね。ここまで証拠が出ないとははっきり思って無かったわ。」
「エクスの責任じゃ無いさ。今日のところは引き上げるとするか。また明日商会を当たって行こう。下手すると日付が変わってしまうからな。」
俺達は帰路に着くことにした。その瞬間結界に明確な反応が出たのを俺達は見過ごす訳がなかった。
「紫音、アンジェリカ!結界に反応が出たわ。商会の通りを移動して住宅街に向かっているわ!私達も急いで向かいましょう。」
「来た来た!これを待っていたんだよ!これ以上の犠牲者は出させないぞ!闇より出でし這いずる魔とか言う変質者め!」
「行くぞ!」
俺達は疲れた体に鞭を打って駆け出した。住宅街に到着した…が。ここは囮だ。犯人は商人の心臓が狙いだ。民間人は標的ではない。こちらを撹乱する為に住宅街に足を運んだのだろう。
「エクス!引き続き結界の反応を調べろ!住宅街は本命じゃ無い筈だ。」
「了解!反応は…屋台がある広場に移ったわ。昨日と同じ場所で標的を探すつもりなのかしら?」
「そうかもしれないね。さあ広場に行こう。そこに犯人がいる筈だ。」
俺達は広場に走って移動した。こんなに走ったのは久しぶりだった。息も絶え絶えに反応を目指して突っ走る。
俺達は一つの屋台の前に辿り着いた。エクスの結界には極大の痕跡反応が出ている。ここにいる。
恐る恐る屋台の奥に進んでみる。そこには猿轡を噛まされたまま心臓を抜かれて絶命している店主の姿と…心臓を片手に恍惚の表情を浮かべている青年の姿があった。
「おい!お前が連続殺人予告の犯人だな!大人しくお縄に着け!ボク達は衛兵みたいに甘くないぞ!」
「そうだとしたら?フフフ…どうするのかなお嬢さん。行くよ。」
ふらりと犯人がしたと思うと体が消えた。縮地!?
そして瞬く間に再び現れたかと思うとその貫手はアンジェリカの胸部を掠めていた。胸から血を吹き出すアンジェリカ。
「糞!その生身自体が凶器って訳か!殺さずに捕まえる事は出来ないだろう。行くぞ!ボクに剣を抜かせた事…後悔しながら死ぬと良い!吼えろ!朧村正!」
オォォォォォォォォォンと言う独特の残響音と共に朧村正を抜刀し犯人と向き合うアンジェリカ。俺は彼女の邪魔をしないように見守る事にした。認めよう。このままでは何の目的で凶行を繰り返したか分からずにこの犯人は死ぬ。それを避けなければならない。俺は柄では無いが制止役に回るとしよう。
ボクは朧村正を抜いて構えた。犯人…闇より出でし這いずる魔…はスルリと闇に消えた。また想像もつかない所から沸いて出て来るのだろう。朧村正をきつく握りしめる。
ボクは集中を超えた集中状態に入った。落ちる一粒の雫さえ認識できる。
ああ…後ろから犯人の貫手がボクの心臓を穿とうとしている。そこまで認識できた。
ボクは脇腹スレスレに思い切り朧村正を挿入した。鈍い感触。
「グハッ何故分かったんだ?こんな小娘なんかに!くそっ!」
「剣士の直感って奴さ。このまま切り上げる!行くぞ。」
ボクは後ろに振り返ると硬直していた犯人の腹に刺さった朧村正を引きながら切り上げた。腹から心臓、心臓から肩に切り抜ける。
致命の一撃だった。しかし思わぬ邪魔が入った。
紫音がエクスカリバーの鞘を犯人に当てたのだ。そしてエクスカリバーで手足を切り落とした。これで犯人は逃げることも死ぬことも出来ないだろう。
頭では分かっているが決着を邪魔されたのでいらっと来た。まぁボクの出番はこんなところで終わりだろう。
俺は正宗を抜き、機能を限定的に解除した。神代の名刀としての機能だとは思う。その名も白日の刃。相手の精神的な防御を解除して隠し事を素直に吐かせる技だ。あまり使用した事は無いが、これを食らって無言ですんだ奴は居ない。
俺は正宗を「闇より出でし這いずる魔」の胸に差し込んだ。物理的なダメージは無い筈だが。
「ガァ!グアアア!俺が溶けて行く。何もなくなる。俺を構成する物全てがバラバラに分解される。あああ…神との盟約すら白日の元に晒されるだろう!」
彼にも良く効いているようだ。尋問を開始する。
「闇より出でし這いずる魔…じゃ名前が長すぎる。お前の本名を教えろ。良いな?」
「ジーク…通り名が闇より出でし這いずる魔だ。」
「そうか。ジーク…何故殺人予告をして人を殺したんだ。」
「暗殺者ギルドで依頼を受けた。銀獅子商会の商人を派手に殺してくれと言う依頼だ。五人殺すのも、殺人予告を出すのも依頼の条件だった。依頼主はマムルークの商会中最大勢力の銀獅子商会の弱体が目的だった。」
エクスが口を開く。
「依頼主の名前を答えなさい。隠し立てする事は許さないわ。正直に吐く事ね。」
俺はエクスカリバーをジークの腸に差し込むとグリグリと抉った。
「う…ぐぐ…グハッ。依頼主は…依頼主はライオネル商会の大商人…コンチネンタルだ。」
「よし。これで必要な情報を手にいれたな。後はこいつを生かしたまま衛兵に突きだして仕事は終わりだ。」
俺は正宗とエクスカリバーをジークから引き抜いて鞘にしまった。
ジークを縄で縛り手で引いていく。歩けるように足だけ治癒してやった。
「今回はボクの手柄だね!今日は美味しいものを食べに行こうよ。」
「良いわね。アンジェリカ。見事な手並みだったわ。後ろに気配もなく縮地した犯人を見抜くとはね。フフフ…紫音…美味しいものを期待してるわよ。」
「ああ。それも良いな。とにかくまずはこいつを衛兵に突きださないといけないな。さあ衛兵の詰所まで後少しだ。」
俺達は町の入口付近にある衛兵詰所まで歩いて行った。ジークは逃げ出さない様にアンジェリカがずっと朧村正を突きつけている。
特に問題は無いようだ。ジークはぶつぶつと独り語ちながら着いてくる。奴の人生はここで終わりだ。二度目は無い。
俺達は屋台の香ばしい匂いに誘われながらも誘惑に打ち克ち衛兵詰所に向かって行った。
…それから目抜通りをひたすら歩いて町の門まで辿り着いた。衛兵詰所はすぐそばだ。
衛兵詰所を覗く。これは…。
それは一面の血溜まりだった。何人分かも分からない人体のパーツが錯乱していた。この町の衛兵全員のバラバラ殺人死体なのか…?
ジークが急に笑いだす。
「ハハッ俺の始末の為に奴まで呼ばれたか!紫音とか言ったな?お前達の生命も俺の命もここまでだ。暗殺者ギルドから最高の暗殺者が呼ばれたぞ。俺なんかの比じゃない。コンチネンタ…」
コンチネンタルと口にしかけたジークの顎から上は吹き飛んでいた。それは血溜まりの中、臓物の中からの攻撃。不味い。遥かに格上だ。
赤い闇から人影が浮かぶ。それは黒髪赤目の少女だった。手には赤い双槍。暗殺者ギルドの最高の暗殺者…。
「紫音!惚けて無いで構えなさい。死ぬわよ。圧倒的な死の塊よ。彼女はね。」
「こんな化物がまだノースメリカン大陸に居たなんてね。キャラじゃないけどゾクゾク武者震いが止まらないよ。こんな上玉…現世でありつけないよ。」
俺は自然にエクスカリバーではなく正宗を握った。どうしてかは後にも先にも理解は出来なかった。相応しい強者に出会った正宗がこれまでの恩に応えようとしたのかもしれない。
正宗…神話礼装…神名開帳…フツノミタマ…神業限定解放…霊的な音声…神託が俺の中を駆け巡る。
正宗は本当に神話時代の特級の武器だったらしい。流石にフツノミタマの分霊だとは思うが…
暗殺者の少女と向き合う。彼女も神話クラスのアーティファクトを二つ携えている。銘は分からないがかなりの業物だ。
距離は十メートル。アンジェリカは固唾を飲んで見守っている。エクスもエクスカリバーに憑依せずに俺の事を凝視していた。
彼女には裏切りと取られても仕方ないだろう。土壇場でエクスカリバー並みの武器を覚醒して入手したのだから。
先に動いたのは暗殺者の少女だった。
彼女は手に持つ赤い双槍の片方をモーション無しで投擲してきた。
「天駆けよ!ゼオンボルグ!」
雷を纏いながら神速で穿たれるゼオンボルグ!俺は居合いの構えからコンマゼロのスピードで反撃を撃った。
無銘霊閃!フツノミタマを使い霊的な閃光を発射した。それはゼオンボルグを呑み込んで消失させ帯雷の効果も霧散させた。そしてその霊閃はそのまま少女を貫こうとする。彼女はあり得ない角度で身をひねり神速の霊閃を回避したかと思ったが、霊閃は曲がり…少女の体を穿った。そして極大の霊的爆発を引き起こした。暗殺者の少女はフツノミタマの一撃で完全に絶命した。残ったもう一振りの赤い槍は砂と化して宙に舞い消えていった。
終わった。余りにも呆気ない終わり方だったが無数の生と死が交錯した戦闘だった。
「まさか正宗がそこまでの神刀だったとはね。いざという時は私を頼って欲しかったけど…エクスカリバーで勝利できたかどうかは保証出来ないわ。もう私は要らない剣なのかしら?」
「そんな事言うな!エクス。君がいなければ今の俺は居ないさ。それにフツノミタマに極度に頼るつもりは無い。あくまでサブウェポンだ。それにフツノミタマとして何時でも使役出来る訳でも無い。」
「分かったわ。少し意地悪したくなっただけよ。いきなり神話状態に覚醒したからビックリしたけれど、無意識の発露に当てられての覚醒だったのね。フツノミタマとして使いこなすにはかなりの時間が掛かるわ。以前の様に特訓してどうにかなるわけでもないでしょう。」
「本当に申し訳無い。エクス。これからもエクスカリバーを一番で使用する。正宗がフツノミタマに覚醒する条件は不明だ。当てに出来ない。長い時間を掛けて常時覚醒出来る様に持っていくが、それでもエクスカリバーで闘った方が強い状態に俺は成りたい。」
「フフ…期待しておきましょう。それにしても今回はどう収集つけるつもりかしら?衛兵は全員殺されているし、ジークも死んだわ。それにあの強敵の暗殺者もね。」
「えーと。本当にどうしようか?紫音。流石にこの状態で酒場に行ってもボク達が犯人扱いされかねないよ。」
「となれば…ライオネル商会のコンチネンタルを取っ捕まえるしか無いだろう。」
俺達は本命の下手人であるライオネル商会のコンチネンタルを目指して衛兵詰所を離れて、商会の事務所がある通りに駆けて迫っていった。
町の風景が急ぎ足で流れていく。その中には目立った敵影は無かった。
着いた…ここがライオネル商会の事務所か。廃ビルを利用している様で荒れ果てた雰囲気だ。俺達は剣を収めて中に入る。
受付嬢ではなく厳つい男達が受付に座っていた。
「おい!お前達!何のようだ?」
「ボク達はコンチネンタルって男に会いに来たんだ。居るんだろう?邪魔させて貰うよ。」
「ふざけるな!ここから先は一歩も…いっぽ…ガボガボ」
厳つい男その一はアンジェリカの半月斬を受けて、喉を掻き斬られて絶命した。
「あ…アニキ…グバァ…」
ドサッと厳つい男その二は倒れた。エクスカリバーの袈裟斬りで脳天から唐竹割りを決めた。
これで当面敵は出てこないだろう。今は一階。このビルは五階まである。各階を確認しながら上がって行くしかない。
階段を忍び足で上がって行く。二階だ。扉のガラス越しに中を確認する。
チンピラが屯している。ここでは無いだろう。全員ぼうっとしているだけで会話等も聞こえてこない。仲良く危ないクスリでもキメているのだろうか?
更に先に進む。三階。同じように中を覗き込む。
偉そうなチンピラが大激怒していた。相手は黒髪赤目の少女…殺した筈…!?驚いて声を上げそうになりエクスに口を塞がれた。
「むーっ!むーっ…。」
「しっ!静かにしなさい。紫音。確かにさっき倒した少女と似ているけど別人よ。」
「ハァハァ…そうか…ビックリした。」
「会話を聞いてみよう。もしかしたら何か掴めるかもだよ。エクス、紫音。」
俺達は聞き耳を立てて気配を殺した。
………………………………………………
「てめぇら暗殺者ギルドの暗殺者は全員使い物にならない穀潰しか!?ジークもツバキも旅の剣士って奴に返り討ちにあってるじゃねぇか。何か言いたい事があるなら言ってみろ。」
「私の遠見の魔眼で確認した所、聖剣持ちの上に神話時代の武器を持っている男が少なくとも確認出来ました。敵のレベルが高過ぎます。ツバキもアーティファクトで武装させて衛兵詰所で待ち伏せさせましたが、敵いませんでした。しかし私達の腕前にも武器にも批はありません。最適な暗殺者を送り込んだと考えています。代金は変わらず頂きます。ジーク、ツバキの使用料合わせて十万ゴールドになります。」
「んなもん払えるわけねぇだろ!聖剣だか神話だか知らないが素人に負けるプロなんて存在価値がねぇ!びた一文払わねぇからな。早く失せな。」
そう言って偉そうなチンピラが煙草に手を伸ばした瞬間…少女がボソリと呟いた。
「ここにただの旅の剣士が既に来ていますよ。」
チンピラは驚愕し煙草を落とした。
「な!なんだっ…ムグググ。」
背後に回る少女はチンピラの口を塞ぐと喉を漆黒の短剣で切り裂いた。呆気なく死ぬ偉そうなチンピラ。
「フフ…せめて恐怖ぐらいは頂かないと死んでいったあの子達の手向けにもなりません。まあ金庫の中身位は頂いて行きましょうか。それでは短い付き合いでしたがさらばです。コンチネンタル様。」
………………………………………………
「どうする?紫音…コンチネンタルまで殺されちゃったよ。」
「あの女を生きたまま拘束するしかないな…」
「また半殺しにして捕縛するのかしら…かなり厳しい闘いになるわよ。」
「俺に考えがある。」
ごそごそとコンチネンタルの死体を漁り、金庫の鍵を見つけた少女。心なしか嬉しそうなニヤけ顔を隠せない。
俺はゆっくりとドアを開けるとホフク前進で素早く暗殺者の少女に近づく。少女はこちらに気が付かずルンルン気分で金庫まで歩いていく。
俺もその後ろにホフク前進で着いていく。
金庫の前で笑みを漏らしながらしゃがむ少女。
俺はその後ろでゆっくりと立ち上がるとエクスカリバーの平らな面で思い切り少女の延髄をひっぱたいた。
「ばたんきゅー。」
その場に卒倒する少女。俺が合図を送るとエクスとアンジェリカがやってきた。エクスが縄で少女をぐるぐる巻きにした。
「これで良いだろう。衛兵詰所は全滅してるし、取り敢えず酒場に連れていこう。」
「うーん。結構マヌケな女の子だったね。まあ抜けてて助かったけどさ。」
「まあ気を抜かずに連れていきましょう。暗殺者にあるまじき気の抜け方だったわね。」
俺達はライオネル商会の廃ビルをこっそり抜け出した。
暗殺者の少女を俺が担ぎ酒場まで連れていった。
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「な…なるほどな。その女の子が暗殺者ギルドの一員だって言うのか…まあ君達が言うならそうなんだろう。あっ…女の子はそちらで引き取ってくれ。生かすなり殺すなり好きにすると良い。」
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