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依頼内容を見直してみる。ダングスデン遺跡に眠るアーティファクトの発掘…か。
少し毛色の変わった依頼だった。何時もは誰かと切った張ったの殺し合いばかりだった。
今回は誰も殺さずにすむかもしれない。そんなことを考えながらダングスデン遺跡への旅路を急いだ。この依頼は広く募集されていた。
早くしないと他のパーティーに横取りされるかもしれない。
ちなみにアーティファクトとは先史人類が残したオーパーツの事を指す。とんでもない威力の武器であったり…空を飛ぶことすら可能とするアイテムだったりする。
俺達の持ち物ではエクスカリバーやフツノミタマ、アンジェリカの朧村正にボタンのゼオンボルグが当てはまる。
どれも一騎当千の戦果をもたらす代物だ。その能力に限界は無く…使い手の修練次第で無限に成長する可能性がある。
そんな超兵器の発掘が今回の俺達の仕事だ。報酬は出来高次第。よりレアで危険なアーティファクト程金になるだろう。
まあお宝探しみたいなものさ。気は抜けないが、今までの様な危険もあるまい。
アンジェリカが口を開いた。
「アーティファクト探しかぁ。そこら辺の銃を拾ってピカピカに磨けばアーティファクトって通用しないかなぁ。」
「アンジェリカは遺跡の探索は嫌か?」
「うん。絶対にガーディアンが居るって相場が決まっているしね。死闘は避けられないと思うよ。ああ…気分が憂鬱だなぁ。」
「ガーディアンか…その時は俺達の全力で一瞬でけりを着けるとしよう。別にアーティファクトは一つだけ有るって訳じゃない。何個か見つけてその内の一つを頂く事だって出来るぞ。」
「ボク達もアーティファクトゲットかあ。それも悪くないね。ゼオン連結システムも無くなってしまったし、それに代わるアーティファクトが欲しい所だね。」
エクスも口を挟んできた。
「アーティファクトは魅力的だけど、それでもやはりこの依頼は危険よ。財宝を守るドラゴン的な物が遺跡の各所にあるに違いないわ。ガーディアンだけじゃない。雑魚モンスターもうようよ居るかもしれないわよ。全部倒しきる自信はあるかしら?紫音。」
「まあ雑魚モンスター相手ならそんなに怖がる必要は無いだろう。怪我をしても俺達には聖剣の鞘がある。これを使えばどんな傷もたちどころに直るしな。」
「むぅ。そこまで言うなら好きになさい。大量のモンスターに殺されても文句は聞かないわよ。」
「はいはい。分かってるよ。まぁこっちにはボタンも居るんだ。三人で闘えばなんとかなるさ。ボタン…君はモンスターと闘った事はあるかい?」
「えっ…あたしですか?残念ながら人間専用の暗殺者だったのでモンスターと闘った事はありませんが…ゼオンボルグならモンスターにも効き目はあると思いますので大丈夫です。」
「そうなんだね。ボクはてっきりモンスター退治もプロなのかと思ったよ。」
「フフフ…あたしにお任せあれ!本物の暗殺者は暗殺対象を選びません。神槍ゼオンボルグを用いて退治してあげましょう!」
「その意気は良いわね。後は本当に闘ってみるしか無いわね。そろそろかしら?」
マムルークから街道をひたすら東に進んでいった。二日は歩いただろうか…そこには巨大な地下迷宮…ダングスデン遺跡が広がっていた。遺跡の外には多数の負傷者が運び出されている。その数二百は下らない。全員同じパーティの者も居れば、パーティに置き去りにされている者も居る。
中では相当激しい戦闘が繰り返されているようだ。
「怖じけ着いちゃった?紫音?ボクは大丈夫だよ。」
「冗談言うなよ。アンジェリカ。俺がびびる訳無いだろう。むしろ闘志が沸いてきたね。俺がこの遺跡の闘いを終わらせてやる。何でも掛かってこいだ。」
「他のパーティと戦闘になっても闘い続けられますか?最終的には生きている人間が敵になると思いますよ。」
とボタン。
「それもそうね。最後の敵はモンスターでもガーディアンでもない同じ人間よ。貴方は罪の無い冒険者を殺せるかしら?紫音?」
「意地悪な質問だな。ボタン…エクス。そりゃ闘うさ。でも殺さないように工夫する。その工夫があるから今もボタンが生きているんだろう。」
「それを言われちゃうと弱いですね。確かにあたしは本来死んでいる人間です。だからこそ冒険者としてやり直そうと思えたんです。そう紫音が言うのなら信じられます。」
「そうねぇ。確かにアルティメットスパークの威力を工夫すれば気絶で済むわ。殺し殺される中で忘れていたけど殺さない技もあるものね。」
「ボクも加減をすれば半殺し位ですむかもしれないね。まあそれは時と場合によるけど…以前会った青い鎧の騎士…ドラームみたいな奴の時はボクも手加減出来ないさ。不殺は心掛けてみるよ。さあダングスデン遺跡は目の前だ。中に入るとしよう。」
「おうとも!この遺跡は俺達が征服する。行くぞ!」
「ええ!行きましょう。」
「暗殺のご依頼は何時でも承りますよぉ~!行きましょうとも。」
俺達はダングスデン遺跡の地下一階に踏み込んだ。機械的な壁が続き狭い通路しか見渡せない。迷路と言っても差し支えないだろう。入口から折れ曲がりながら続く道を進んでいく。どれほど歩いた事だろう。二叉路に出た。直感を信じ右へ進む。そのまま道ぞいに直進して行く。
「紫音!あたしの遠見の魔眼に反応があります。この先二百メートルに機械の化物が居ます。数は五。覚悟しておいて下さい。回りには人間の死体の反応もあります。強敵でしょうね。」
「機械の化物?先史文明の残り香かな?ボクは闘った事はないや。紫音とエクスはどう?ボタンはモンスターと闘った事無いんだよね。」
「いやいや私達も闘った事はないわ。非常にタフな可能性が高いわね。神霊の様に体の中にコアを持っているかも知れないわ。それでも所詮機械…人間を相手にするのが一番恐ろしいわ。」
「そうだな。エクスの言う通りだ。先に進もう。」
エクスカリバーを抜刀して先に進む。エクスを憑依。目標地点に近付くと機械音声が流れてきた。そして蠢く影。それと無惨に蜂の巣になり、また焼け焦げた死体の山。
ピピピドルマーナーヘイキコウジョウヘノシンニュウシャニヒャクゴジュウニニンメヲカクニンシマシタ。スミヤカニハイジョシマス。ブローニングハッシャヨウイ。
影が顕になる。これが機械の化物か…まるでドラゴンの様な造形をしたロボットだった。両胸から機関銃が突きだしておりかなり攻撃的な印象を与える。
「皆一気に距離を詰めて突貫するぞ!俺に続け!」
俺は縮地を使った。ドラゴンの背後に周り巨大なリアクターに剣閃を叩き込む。袈裟斬り!雷閃!直突!無双三連!剣技の暴力に耐えきれずロボットは爆発した。
遅れて他のロボット達は機関銃を乱射し始める。しかしアンジェリカもボタンもその場には居なかった。縮地をし二人ともロボットの背後に回り込む。アンジェリカは神速の三連撃を朧村正で叩き込んだ。ロボットの動きは鈍ったが刺さった朧村正ごとアンジェリカを振り回し、アンジェリカは地面に落ちた。そこに振り返ったロボットが口から火炎放射を放った。とっさにローブで防ぐアンジェリカ。ローブは焼けただれ下着が露出してしまっているが何とか彼女は無事だ。しかしこのままではアンジェリカは焼き殺されるか機関銃で撃ち殺される。
アンジェリカはロボットから朧村正を引き抜くとロボットは衝撃でスタンした。
彼女は目をつぶってぶつぶつと唱えながら朧村正を撫でる。怖気が走る。大気が震える。朧村正を限界を超えて解放しているのだ。
「…偉大なる無銘の神よ。我が逆境を打ち払いし新たなる技を賜わん。」
カッと目を見開くアンジェリカ。
「是魔神の一撃。魔神億連刃なり。億に至りし一なる魔神の剣閃…如何なる敵も砕こう。受けよ。機械獣よ!我が新たなる剣閃を!魔!神!億!連!刃!」
アンジェリカはただの袈裟斬りを放ったように見える。しかしその剣閃は無限に広がり切り刻んだ。そして魔神億連刃を受けたロボットは卒倒し爆散した。
まさかの新技解放だった。アンジェリカもそして俺もまだまだ成長の余地が有るのだろう。
残り三体。ボタンがロボットの裏に舞出る。
ダガーを投擲する。無効。鋼の体を抉るには余りに無力。ゼオンボルグを実体化する。ロボットの首とリアクターに差し込む。まるでバターを溶かす様にロボットの体を神槍は貫通した。しかしこれだけでは動きは止まらない。
ならば実体化したアーティファクトを用いた究極の爆撃を用いるまで…!
あたしは口ずさむ。禁忌の歌を…。
「ゼオンボルグ…幻想爆撃!究極霊爆!」
ロボットに刺さった二本の神槍ゼオンボルグは青白い光を放ち極大の霊的爆発を引き起こした。それは実体にも多大な傷を与える。ロボットは離れた場所に居た残りの二体を巻き込み大爆発を起こした。全敵影消滅。戦闘終了。
「アンジェリカ。素晴らしい技の冴えだった。また限界を超えたな。俺も見習わなくちゃな。」
「へへーん。凄いだろ!と言っておこう。でもボクよりも派手に敵を倒した奴が居る件について!?」
「あたしはたまたまですよ。幻想爆撃は本当に奥の手なんです。しかもあたしはこれ以上成長なんて出来ないでしょう。暗殺者のやり口に拘っている内はですけどね。」
「謙遜しちゃって…憎らしいわね。紫音。貴方も新技の開発をするようにね。いつまでも立ち止まっているわけには行かないわ。」
「勿論だ。二人とも素晴らしい闘いだった。先に進もう。」
俺達は右の通路をそのまま進んでいくと階段に辿り着いた。ようやく地下二階だ。このダングスデン遺跡は何階まであるか未だに不明らしい。気は抜けないな。
地下二階…そこに踏み入れた瞬間にボタンが口を開いた。
「紫音。この階には奇妙な人間の姿が散見されます。注意して進みましょう。あたしこんな人間を見た事はありません。遠見の魔眼では姿を確認出来ますが…まるで死人の様です。元々先史文明から居たのか…それともここに挑んだ冒険者の成れの果てなのかは不明ですね。脅すみたいでごめんなさい。さあ行きましょう。」
「まじか。もしかしてゾンビなのか?イスワルドにもゾンビが居るなんてな。まあ地球では想像の産物だったんだけれど…」
「紫音。ゾンビって何かしら。私の記憶…天界の記録にも無いわ。」
「そりゃそうだろうよ。地球の娯楽物に出てくる生きた屍だ。しかも出てきたのは近代に入ってから。神様だって知らないだろう。特徴は腐っていて、ノロノロ動いて生きた人間を食べるんだ。頭を飛ばせば大抵は死ぬ。中には別格の奴も居るけどな。」
「へぇ。なるほどね。生ける屍って訳。まあ人間扱いしないでさっさと殺すに限るね。ボクも遠慮しなくても済むわけだ。」
「ゾンビですか。それが何でこんな先史文明の遺跡に発生しているかは謎です。ゾンビはどんな理由で発生するのでしょうか?」
「そうだなぁ。作品によって違うんだけど…大抵はウイルスに感染したとかかなぁ。あっウイルスって言うのは生きた病気の元みたいな奴なんだ。大抵噛まれるとゾンビウイルスに感染する。」
「それじゃあ私達にも感染する恐れがあるかもしれないって事じゃない!弱くても一撃貰えば生きた屍になるって洒落に成ってないわよ。どうすれば良いのかしら?」
「うん。本当は銃があれば良いんだけど…俺達は誰も持っていないから確実に一撃で仕留めるしかないな。それとボタンのゼオンボルグの投擲に頼るかだな。ダガーの投擲でも倒せるかもしれない。耐久力は並の人間に毛が生えた程度だよ。」
「そうですか。あたしの暗殺スキルが役に立つようで何よりです。殺せるなら問題ありません。行きましょう。」
「ボクは極光魔神閃中心に闘おうかな…それなら接触しないしさ。まあ何発も撃てるもんじゃ無いんだけどね。ここで話し込んで居ても仕方ない。一気に階段まで駆けていこう。行くよ。」
そう言うとアンジェリカは走り出した。朧村正を抜刀した状態だ。俺とボタンも後に続く。しかし道は曲がりくねっている上に行き止まりが多かった。二度目の行き止まりにそいつは…居た。
全身が緑色に変色したゾンビ…頭部に機械が取り付けてある。あの機械がゾンビ化を促しているのか…
ゾンビは叫んだ。醜い大声で…それは仲間を呼ぶための物だったのかもしれない。
「ううーあーうおおーうがぁーーうごおおー。」
迷路の壁越しに似たような叫び声が次々に聞こえ、一斉に走り出す気配がした。
「こいつ!仲間を呼びやがったぞ。早く殺さないと!朧村正!限定解放!極光魔神閃!」
絞られた黄金の閃光が発射されゾンビを貫いた。ゾンビの体は光に飲まれて消滅したが頭の機械だけが残った。
機械からは急に足が生えると駆け出しこちらの頭部目掛けて飛び掛かってきた。
俺はエクスカリバーで直突を放って機械を破壊した。
「ふぅ。危機一髪だな。多分この壊した機械でゾンビ化するんだろう。しかし参ったな。こいつの雄叫びでゾンビ達がこっちに集まってくるぞ。」
「一難去ってまた一難ね。仕方ないわね。全部掃討するわよ。」
「任務了解です。あたしにゾンビ暗殺お任せあれ!」
「限定解放の極光魔神閃なら全然撃てそうだ。ボクにも任せて貰おう。」
行き止まりから別れ道まで帰っている途中にゾンビの集団に出会った。
ボタンはゼオンボルグを投擲し、幻想爆撃を放った。究極の霊爆がゾンビの集団を襲い瞬時に殲滅した。
しかしその轟音が更にゾンビを引き寄せてしまった。通路がゾンビで埋め尽くされている。芋洗い状態だ。
仕方無いなぁ。とアンジェリカ。
「本気で行くよ。吼えろ!朧村正!完全神話展開!抑止力モード!極光魔神閃!」
全力の黄金色の一閃がゾンビの群れを焼き払う。頭部の機械も全て破壊した。
これで終わりか?辺りには静けさが漂っている。
俺達は別れ道まで引き返すと再び地下三階に繋がる通路を探し始めた。行き止まりに何度か遭遇したもののその都度来た道を戻り探索を続けていった。ゾンビ達はもう何処にもいない。
そして遂に地下三階に繋がる通路を発見した。しかしそこには一際図体のデカいゾンビが鎮座していた。こちらの足音に気付きその巨体を揺らす。
立ち上がると俊敏な動作で飛び掛かってきた。俺はエクスカリバーとフツノミタマの二刀流で立ち向かう。
二連袈裟斬り!ゾンビの両腕を切り飛ばした。そのまま剣技を連続で叩き込む。
二連直突!二連回転閃刃!二連雷閃!
全てがゾンビにクリティカルヒットする…が体勢を崩さずにそのまま噛みついて来た。俺は咄嗟にフツノミタマを口につっこみ噛みつきを防いだ。そしてフツノミタマを限定解放する。
「フツノミタマ!限定解放!無銘霊閃!」
ゾンビの口の中のフツノミタマから霊力の爆発が迸る。頭はその場で爆裂し、ゾンビは卒倒した。
これで俺達を遮る者は何もない。多数のゾンビ達はここの元の住人が長い時間の中で変化していったのか…それとも冒険者が取り込まれてゾンビになったのか不明だった。
どちらにしても元の姿に戻る事は出来ないだろう。
「元は人間だと思うと何だか後味が悪いですね。もしかしたら助けられたのかもしれないですし。」
「ボタンは優しいね。ボクは殺すしかなかったと思うよ。あんな殺意剥き出しの化物にボクは手加減する余裕はないなぁ。ボタンは強いから手加減を考えるのかもね。」
「あたしは自分が強いなんて思った事はありませんよ。あくまで必要な事をやるまでです。ゼオンボルグも幻想爆撃も必要な手段に過ぎません。それを誇るつもりはないです。」
「まあ彼らを元に戻す事はセオリー通りだと出来ないでしょう?紫音?それなら手加減する必要もなかったのよ。」
「そうだな。ゾンビになったら二度とは元に戻れない。殺してやるのも情けと言うものだ。あんな姿でいつまでも徘徊している方が可哀想じゃないか。もう彼らの人生は終わっている。文字通り死人が徘徊しているのと変わらない。いやそれより悪質か。死人は噛みついて死人を増殖させたりなんかしないからな。さあ先のフロアに進もう。次は何が待っているのかな?」
「更なる敵か?それともはたまた味方が現れるか…まったく分からないね。とにかく先に進むしかないよ。その先に待っているものが何であってもね。ボクはこの遺跡に違和感を感じている。何処か自然からずれている。人為的に様々な要素が配置されているとしか思えない。機械獣はここを工場だって言っていたけど何かを生産している素振りは全く無い。もしかしたらこの先に工場があるのかも知れないけどね。考えても無駄か…。」
「確かに敵の構成だったり、他のパーティが全く居なかったり…違和感を感じるわね。この先ではパーティ同士を闘わせる罠が仕掛けて有ったりしてね。覚悟して進みましょう。」
「悲しい事に暗殺のスキルが役に立つかもしれませんね。まああたしとしては願ったり叶ったりなんですけれど。機械の化物、ゾンビ、そして最後は人間が敵ですかね?この調子だと本当にそうなりそうで怖いです。」
皆不安を抱えながら次の階に進む事になった。
地下三階…階段を降りるとそこは開けた部屋だった。そしてそれが無数に広がっている。アナウンスが流れる。
「ピンポーンパンポーン。ここまでやって来た侵入者の皆様…皆殺しの時間です。互いに侵入者同士で殺しあい最後まで生き延びた者のみ、この先の工場フロアに進み…またドルマーナー兵器工場のオーナーとして認められます。殺し合いはあらゆる平行世界を連結して行っています。一万三百六十組の侵入者が死亡しました。残るは八千六百組です。それでは五万六千三百二十五回目の戦闘開始。」
アナウンスが終わると俺達の前にパーティが転移してきた。四人組の男女だ。
スナイパーライフルを持った女
アサルトライフルを二丁持ちした男
ハンドガンを構えた衛生兵の女
ロケットランチャーを構えた男
で…計四人だ。
合図など無い。何処からともなく闘いの火蓋が切って落とされた。
俺は出力を絞ってエクスカリバーのアルティメットスパークを放った。虹色の閃光が敵パーティを包み込む。半死半生と言った所だ。
あるものは腕を失い…あるものは腸を覗かせている。頭が弾け飛び死んでいる者も居た。
無事なのは衛生兵の女だけだ。必死にパーティのメンバーを治療している。
出力を落としてこれか…脆い。余りに普通の人間は脆すぎる。せめて止めを刺してやろう。一撃で天に送る。
「エクスカリバー!神話展開!究極霊閃モード突入!オーバーロード!行くぞ!天に帰る時が来た!アルティメットスパーク!」
全力の虹色の閃光が敵パーティを穿った。衝撃に耐えきれず敵の体は風船の様に膨れ上がり破裂する。後には夥しい血液だけが残った。
今回は俺達の勝ちだ。敵を倒すとまたアナウンスが流れる。
「五万六千三百二十五回目の戦闘終了。四千三百組が生き残っています。新たに七百組が侵入しました。また新たな戦闘体勢に移ります。それでは五万六千三百二十六回の戦闘開始。」
また俺達の眼前に敵のパーティが転移してきた。これを俺達が死ぬまで繰り返す訳か…後何回殺せば良いんだ?心が砕ける…磨耗する。なにも考えるな。殺し続けろ。こいつらだって俺達を殺しに来るんだ。やらなきゃ殺られる。
それから俺達は何度も何度も「敵」として現れる人間を殺し続けた。ある時はアンジェリカの剣技でなます切りにし、またある時はボタンのゼオンボルグの幻想爆撃で爆殺した。数えきれない殺し合いを続けた末最後の瞬間が訪れた。
「ピンポーンパンポーン。六万二千六百三十五回の戦闘が終わりました。残るは二組の侵入者です。新たな侵入者はいません。次の闘いで工場フロアに進み、ドルマーナー兵器工場のオーナーになる権利が与えられます。最後の闘いです。戦闘開始。」
俺達は疲れはてていた。丸三日間ぶっ続けて闘い続けた。勿論敵もそうなのだろう。これで終わり…決着だ。
目の前に一人の男が転移してきた。両手に銃身を切り詰めた黄金のショットガンを持っている。
俺は重い体を引き摺りながらアルティメットスパークの構えに入った。それが致命的だった。男は縮地を連続で行い、五十メートルは離れている俺の元まで一気に距離を詰めてきた。俺を思い切り蹴りあげ、怯んだ所に二丁のショットガンの弾を浴びせてきた。俺は衝撃で後ろに吹っ飛んだ。
「ぐあっ!ぐはぁ…ハァハァ。糞が!」
腹に大きな穴が空き、右腕がプラプラとしている。千切れかけていた。
「紫音!?危ない。このままじゃ殺されちゃうよ!」
アンジェリカが慌てて縮地で男に詰め寄る。そして魔神億連刃を放った。男はズタズタに切り裂かれて卒倒した。血の海が広がっている。しかし…奴はまだ死んでいない。
アンジェリカは朧村正で男に止めを刺そうとした。しかし男の握るショットガンがゆっくりとアンジェリカに狙いを定めて発射された。体を前に二つに折りながら吹き飛ぶアンジェリカ。腹から大量に出血している。
「ハァハァ…駄目だ。このままじゃ皆殺される。こいつは今までの奴と格が違うぞ。」
ぬぅっと立ち上がる男。傷は回復呪詛で蘇生しているようだ。ショットガンの弾を込める…この瞬間を待っていた者が一人。
「遅いですね。刈り取ります。その命。」
ボタンは気配を殺して男の真後ろに降り立った。そしてゼオンボルグで心臓を貫いた。そして喉をダガーで掻き切る。男は致命の技を受けて音もなく倒れる。闘いは終わった。
しばらくたって鞘を使って俺とアンジェリカの傷の回復が終了した。アナウンスがまた流れる。
「侵入者A58421…ドルマーナー兵器工場のオーナーと認め、工場フロアへ進む権利を授与します。先に進んでください。」
ようやく…か。長すぎる闘いだった。何人殺したかなんて覚えていない。罪の無い冒険者を殺しすぎてしまった。
向こうも殺す気だったとは言え…俺達には血塗られた道しか歩む場所は無いのか…
心が削れて擦り潰される。それでも彼女達の手前立ち止まる訳には行かない。俺を信じて剣を振るってくれたのだから。
そんな事を考えながら音声アナウンスを聞いていると俺達の居る部屋がガコンと音を立てて下に降り始めた。エレベーターになっているのか。俺は納得できたが彼女達は驚いているようだ。
「これは?部屋が下降している?どうなっているのかしら…また新しい敵が出てくると言うの?」
「いきなり部屋が下がるなんてビックリだなぁ。エクス…さっきの声がボク達が最後に残ったって伝えてたからこれ以上敵は出てこないと思うよ。何処に連れていかれるかは検討も着かないけどね。」
「あたしもこんなのは初めてですが、嫌な感じはしません。きっと勝者が至るべき場所に運ばれているのでしょうね。工場って言ってましたっけ。」
「皆驚いたかもしれないけど心配しなくても良いんだ。今俺達は兵器工場の工場フロアに向かっているらしい。そこに目的のアーティファクトが置いてあるに違いない。この遺跡のゴールだよ。まあダングスデン遺跡って名前は偽装だったみたいだけどな。」
「ようやくゴールかぁ。いやぁ今回は闘い通しで辛かったなぁ。ボクこの仕事が終わったらしばらく休暇を貰うよ。流石に疲れた。」
「私も賛成ね。憑依しているだけとは言えとんでもなく疲れたわ。一週間は休みが欲しい所ね。ボタンもそう思うでしょ?」
「あたしですか?あたしは命があれば闘いますよ。それこそ死ぬまでです。紫音はそこまで無茶苦茶な闘いはさせないと思いますけどね。ああ…まあ今回は大分無茶な闘いだったとは思います。あたしは大丈夫ですが皆さんには休みが必要ですね。」
俺は気圧された。
「ハハハ…まあ疲れたよな。もう少しの辛抱だ。もう少しでアーティファクトがザクザク手に入るぞ。」
部屋のエレベーターが何階下降しただろうか?チラチラ見ていたが…現在地下七十階と言うところだ。どこまで下降していくのかまったく見当がつかない。
エクス達も少し怪訝な表情をしている。止まる気配が無いので怪しんでいるのだろう。
………俺は無言を貫いていた。今はちょっと話し掛けるムードではない。
皆も押し黙っている。現在の階数八十九…九十…九十一…九十二…九十三…九十四…九十五…九十六…九十七…九十八…九十九…ピンポーン目的地に到着しました。というアナウンス。
俺達は恐る恐る部屋を出た。そこは大きな広間になっていた。壁という壁にはアーティファクトと思われる光を放つ剣や銃が山のように置かれていた。そして広間の真ん中には十メートル程の戦闘機が置かれていた。作られて幾星霜経つと言うのに塵一つ着いていない。
「これはすごいね。この機械は何なんだろう?鉄の鳥かな?ボク達に使いこなせるのかな?」
「アーティファクト中のアーティファクトだから使えるかどうかは難しいわね。でも使いこなせれば大きな戦力アップになるに違いないわ。」
「鉄の鳥ですか…あたし初めて見ました。これを使えば空を飛べるのでしょうか?」
「これは戦闘機と言ってな。空を飛んで敵の鉄の鳥を落とす為に作られた代物だ。操作は難しいと思うがなんとか持って帰りたいな。依頼の報酬に加えて手土産にするには丁度良いだろう。」
アナウンスが俺達の会話に反応する。
「この星間戦闘機はライトニングファルコンと言う名前です。ここにあるものは実体ですが…エーテル体を登録して持ち帰る事が出来ます。幻想顕現の能力者は名乗り出てください。実体の持ち出しは機密保持の観点から禁止されています。」
「幻想顕現?何だそれは?そんな能力を持っている奴は俺達の中にはいないはずだ。困ったな。ここまで来て戦闘機が持ち出し禁止とはな。」
「私もそんな能力は持っていないわ。幻想顕現…記憶データの中にはある。空想の産物を補強して産出する能力者の事を指すらしいわ。あっ…」
「それってボタンの事じゃないかな?ゼオンボルグをチャカポカ産み出しているし。あれもエーテル体何だろう?どうかなボタン?」
「あたしは確かに空想の産物である神器ゼオンボルグを召喚する事が出来ます。きっとこれは幻想顕現と言う能力の一端なんでしょう。そうであればライトニングファルコンを私の好きに産み出す事が出きるはず…。あたしが幻想顕現の能力者です。ライトニングファルコンのエーテル体を渡しなさい。」
アナウンスが答える。
「了解しました。対象者の全身を走査中。幻想顕現の能力者であると認定します。ライトニングファルコンのエーテル体を挿入します。」
ボタンは体をびくりと跳ねさせた。そして地面にしゃがみこんでしまった。
…機体名、操作方法、装甲強度、搭載武器、星間航行機能、特殊装備…ありとあらゆるエーテル体の情報があたしの脳を駆け巡りメチャクチャに犯して行った。幼少期に初めてゼオンボルグを産み出した時の事を思い出す。全身が神器の情報に無茶苦茶に荒らされ死にかけたのだ。
師匠の暗殺者が言うには類い稀なる能力らしい。しかし他の武器の情報を読み込んだ事は無かった。エーテル体の情報がある武器と言うのも珍しかった。たまたま師匠は仕事の最中にゼオンボルグを手にいれてそれがエーテル体の武器である事、あたしとツバキがエーテル体を自在に産み出せる能力者である事を知ったのだった。
…………………………………………………………………………………
情報の暴力は収まった。基本理念の理解。想定骨子の顕現。外装の産出。ゼオンボルグと同じようにやれば良い。私は幻想顕現を始めた。
私は歌う。禁断の果実を。私は貪る。宵闇の英雄を。私は産み出す。打ち破りし物を!幻想顕現!
「来い!空駆ける!終末の使者よ!ライトニングファルコン!」
そうあたしが唱えるとバチバチという錬成音と緑色の光の中から目の前にある戦闘機と瓜二つな戦闘機が表れた。
でもこれで私の魔力は空っぽ。一日一回呼べれば良いほうだと思う。それを皆に伝えなきゃ。
「あのぅ…」
「凄い!凄いじゃないか。零から戦闘機を産み出すなんて。俺の目を疑ったね。これで何処へでも飛んでいけるな。まあまずはこの工場を出なくてはならないんだけど。」
「やるじゃないか!ボタン。戦闘機を産み出すなんて…ゼオンボルグを自由に産み出せる時点でただ者じゃないとは思っていたけどね。空を飛ぶってどんな感じ何だろう。ボクワクワクが止まらないよ。舞い上がりそうだ。」
「自由にこの戦闘機が産み出せるのは本当に凄いわ。武装は分からないけれど大抵のモンスターやならず者ならイチコロでしょうね。まあ闘う楽しみが減ってしまうけど。まあなにはともかくおめでとう。ボタン。とんでもない快挙よ。」
「皆さん。お伝えする事があります。あたしの魔力量だと一日一回呼ぶのが限度です。無造作に何度も呼ぶ事は出来ません。まあ壊れない限りはずっと使えると思います。燃料位は顕現出来るので。」
「そ…そうか。まあ強い力には制限が付き物だからな。仕方ないんじゃないかな。取り敢えず中はどんな感じか乗ってみようか。」
「紫音の言う通りだ。ボタン…恥じたり負い目を感じることは無いよ。よーしボクも乗るぞ!」
「人間には魔力量の限りがあるもの仕方無いわ。それにしてもライトニングファルコンの様な戦闘機を喚べるのは凄い事よ。私も乗りましょう。」
「ありがとうございます。皆優しいですね。よしあたしも乗ります。」
全員で産み出されたライトニングファルコンに乗り込んだ。操縦席が二つに搭乗席が三つある合計で五人まで座れる様だ。操縦席に俺とアンジェリカ、搭乗席にエクスとボタンが座っている。
「操縦席での操作は念じるだけで出来ます。兵装の起動も同様です。基本的に念動操作になりますね。後は自由に動かして下さい。」
「と言ってもこの狭い広間の中じゃ身動き取れないな…一旦降りて出来る限りのアーティファクトを収集して回ろう。」
「了解。ボクも集めるかぁ。」
「分かったわ。剣に銃…あまり数は集められないかもね…。」
「承知しました。あたしも持てる限り集めて来ます。」
俺達は散って壁に立て掛けてあるアーティファクトを集めてライトニングファルコンの余剰スペースに詰め込みまくった。名高い名刀や魔剣等のコピー品や携行式レールガン等の超兵器が壁に立て掛けてあった。
剣を百五十本、銃を百丁詰め込んだ。まだまだ壁に立て掛けてあるアーティファクトはあるのだがこれ以上は積むスペースが無い。
俺達はまたライトニングファルコンに乗り込むとドルマーナー兵器工場を出る準備を始めた。
各自が席に着く。そしてアナウンスしていたドルマーナー兵器工場のAIに話し掛ける。
「おい!AI。地下三階まで連れていって貰うぞ。その先はライトニングファルコンで破壊して脱出させて貰う。」
「オーナー様。ライトニングファルコンを使った外出方法があります。地下九十九階から地上までのリフトを登り、外に外出する方法があります。」
「それでいい。行くぞ。」
「来る時に乗っていたリフトが外部まで直通の物になります。そこまで念動操作でライトニングファルコンを動かして下さい。」
俺は後ろに動くように念じた。フワリとライトニングファルコンが浮き上がると後ろのリフトまで後退した。なるほど結構小回りが効くらしい。
ガコッと音がなるとリフトが上に動き始めた。
AIの声も遠ざかっていく。
「ライトニングファルコンの実習…開始…敵対巨大機獣による…殲滅戦です…周囲五百キロメートルを掃討する設定です…繰り返します…」
俺達を乗せたライトニングファルコンは地上に辿り着いた。念動力でマムルークに向かう様に念じていた時…
「あたしの遠見の魔眼に見えました。巨大な機械の獣が工場から這い出て来ます!気をつけて下さい!」
「何だって!ボク達をつけてきたのか?でもライトニングファルコンならやれるさ!ボクの担当の兵装を試す番だね。」
「紫音、アンジェリカ!何時もの闘いみたいに死ぬまで闘う事は出来ないわよ。一方的に蹂躙して勝ちなさい!搭乗席から見守っているわ。」
「アンジェリカ!俺は回避に専念する。攻撃は任せたぞ。」
会話をしているうちにドルマーナー兵器工場を突き破って機械の竜が出てきた。大きさは二十メートル近くもある。一撃でも貰ったら不味い!俺は直感して回避行動を取り始めた。機械の竜を囲む様に旋回する。
「オーケー!行かせて貰うよ。兵装一!三十ミリ炸裂バルカン!」
ライトニングファルコンはバルカン砲を断続的に斉射した。機械の竜の体に命中し爆発が断続的に巻き起こる。小破!
機械の竜は尻尾をこちらに振ってきた。巨大な尻尾がこちらに迫る。ライトニングファルコンを急旋回して右に機体を振る。間一髪で避けられた。
「次行っちゃうよ!兵装二!霊神ミサイル!フルバースト!」
霊気を溜め込んだミサイルを全開で発射する。弾数は不明。ミサイルの誘導アラートが画面を埋め尽くす。全弾が機械の竜に命中する。装甲がめくり上がり電気回路が剥き出しになっている。対象…中破!
機械の竜はいきなり此方に手を伸ばし掴もうとしてきた。
「甘いね!兵装四!炸裂霊爆装甲!」
ボム!という表示が操作画面を埋め尽くし、機体の外で霊気の爆発が起きた。ライトニングファルコンを掴もうとした機械の竜の両腕がひしゃげた。対象大破!
機械の竜は満身創痍と言った所だ。
「アンジェリカ!凄い武器があるんだろ!決めてくれ!」
「了解!紫音!フゥハァー!こいつで終わりだ。兵装三!三百ミリレールカノン!発射!」
カォォーンという甲高い発射音と共にレールカノンが発射された。
その弾は音速で機械の竜の頭部に着弾し、爆発させた。対象完全撃破!
「やったわ!私達の勝ちね。先史文明の残り香よ…安らかに眠りなさい。」
「これがあたしの産み出した兵器の力…!信じられませんよ!何か泣けてきます。感動しちゃって…!」
「どうだい紫音!ボクの武器捌きは中々だろう!この念動操作って言うのが良いね。直感で何でも出来てしまう。しかし先史文明はこんな兵器が普通に有ったって事だよね。しかも滅亡するなんて…一体何と闘っていたんだ…?」
「ああ素晴らしかったぞ。先史文明の敵…それは分からないな。そんな奴等に出会わない事を祈るしかない。さあマムルークへ帰ろう。」
俺達はマムルークまでライトニングファルコンで帰った。目立つと不味いと思ったが兵装の中にアクティブステルスという光学迷彩の機能があったのでそれを使って帰路についた。
マムルークの町の外にライトニングファルコンを隠すと俺達は依頼を受けた酒場「翠月亭」に向かった。
ダングスデン遺跡を攻略し大量のアーティファクトを鹵獲した事を伝える。
酒場のマスターは驚いているようだ。
「あの遺跡を完全に攻略したのか?そんなパーティが現れるとは思わなかったぜ。確かに旦那達は別格に強いけどな。アーティファクトも一本や二本拾って来るもんだと思ってたよ。報酬金もその位を想定した金額しか預かっていないんだ。改めて依頼主に会ってくれないか?」
「了解した。何時会えば良い?」
「結構忙しい方だからな…一週間位は待って貰う事になるかもな。それでも大丈夫か?」
俺はボタンに耳打ちする。
「ライトニングファルコンは一週間も実体化してられるのか?」
「…危害を加えられなければ可能ですね。降りる時にアンジェリカが炸裂霊爆装甲をオンにしたままですのであたし達以外が弄くっても大丈夫です。派手に死にますけどね。」
「…町の外の何にも無い所に隠しておいたし、アクティブステルスが解除されない限り無事だろう。依頼主に会うまで定期的に見て回ろう。」
「で、旦那?大丈夫そうか?」
「ああ…問題ないが早目に会えると助かる。何せアーティファクトを大量に隠しているんだ。何時までも持つもんじゃない。」
「了解したよ。依頼主に連絡して会える日程が決まり次第こちらから使いを出す。それまでは待っててくれ。じゃあな。」
「ああ。それじゃあな。また会おう。」
俺達は酒場を出た。
しばらくはライトニングファルコンを監視しながら宿屋に泊まる生活になった。
それからピッタリ一週間経って使者が来た。
彼の持っていた手紙によると…
「明日未明ランギーニ邸までアーティファクトを全て所持して参られたし。」
…との事だった。
了承の旨を使者に伝えると彼は承知して帰って行った。
「ランギーニってこの町の最大勢力の銀獅子商会のトップじゃないか。何だって大量にアーティファクトを集めてるんだろうね?ボク達のアーティファクトで戦争でも始めるつもりかな?」
「あり得るわね。商会の手下のチンピラみたいな奴等でもアーティファクトで武装したら一騎当千の強者に化けるかもしれないもの。私達は獲物を押さえたら消される可能性も有るわ。」
「最悪の想定をするべきです。ライトニングファルコンの兵装をオンラインにしたまま現場に向かうべきでしょう。いざとなれば直接あたしが暗殺しますよ。」
「皆の言う通りだな。警戒して事に当たろう。取り敢えず今日は体を休めて明日に備えてくれ。」
「「「了解!」」」
俺達は約束の時刻の近くまで待ち、町の外に向かうとライトニングファルコンに乗り込んだ。アクティブステルスのままランギーニ邸まで飛行していった。飛行音までステルスになっており、完全に気配を消している。
現場に到着して音もなく着陸した。ボタンに遠見の魔眼で確認して貰う。
「ランギーニ邸の庭にあたし達は着陸しましたが…二階のベランダに一人居るだけですね。四十代位の男…豪奢な服を着ています。彼がランギーニ?かもしれません。」
「そうか…エクス…緊急で結界を張った結果はどうだった?」
「ボタンと同じよ。二階のベランダに一人。この反応だけだわ。」
「分かった。アクティブステルス解除だ!」
「了解したよ。アクティブステルス解除!」
アンジェリカが念じてアクティブステルスを解除した。
突然目の前に音もなく現れた戦闘機に二階に居る男は度肝を抜かれた様だ。
近くに置いていたであろうガトリングを構え吼える男。
「テメぇ!なにもんだ?このランギーニ様の屋敷に断りも無く現れやがって!十秒やる!名乗れ!」
「アーティファクトを届けに来た者だ。この機械の中にしまってある。搬出するから買い取ってくれ。」
「なんだ。そうか。ビックリさせやがって。心臓に悪いぜ。言い値で買い取ってやる。早くよこしな。」
「了解した。今から何度かに分けて運ぶ。それまで待っていてくれ。」
そう伝えると俺達は手分けしてライトニングファルコンから剣を百五十本、銃を百丁取り出して庭にズラリと並べた。
息を吸い込んで叫ぶ。
「これで全部だ。一本…」
「待ちな。全部で五十万ゴールドでどうだ?」
「…七十万ゴールド。」
「百万ゴールドだ。これ以上は一銭も払わないぞ。」
「了解した。百万ゴールドで承った。支払い方法はどうする?」
「俺の商会で利用しているドラグマ金貨で支払う。一枚十万ゴールドの価値がある。直接支払いに行く。待っていろ。」
そう言うとランギーニは二階から降りてきた。手には十枚の大きな金貨を持っている。
それを受け取ると俺は疑問を投げ掛けた。
「買い取りありがとう。一つ聞きたいんだが、このアーティファクトを一体何に使うつもりなんだ?」
「お前達には関係無い事だ。金を受け取ったんだ無かった事には出来ないぜ。そら帰った帰った!」
「…次に会うのは戦場かもな…」
俺はそう呟いた。若干不穏な空気を感じたが大金を得る事が出来た。所持金は百万ゴールドの大台を超えた。
後ろ髪を引かれながらも俺達はライトニングファルコンに乗り込みその場を立ち去った。
また次の冒険で会おう
少し毛色の変わった依頼だった。何時もは誰かと切った張ったの殺し合いばかりだった。
今回は誰も殺さずにすむかもしれない。そんなことを考えながらダングスデン遺跡への旅路を急いだ。この依頼は広く募集されていた。
早くしないと他のパーティーに横取りされるかもしれない。
ちなみにアーティファクトとは先史人類が残したオーパーツの事を指す。とんでもない威力の武器であったり…空を飛ぶことすら可能とするアイテムだったりする。
俺達の持ち物ではエクスカリバーやフツノミタマ、アンジェリカの朧村正にボタンのゼオンボルグが当てはまる。
どれも一騎当千の戦果をもたらす代物だ。その能力に限界は無く…使い手の修練次第で無限に成長する可能性がある。
そんな超兵器の発掘が今回の俺達の仕事だ。報酬は出来高次第。よりレアで危険なアーティファクト程金になるだろう。
まあお宝探しみたいなものさ。気は抜けないが、今までの様な危険もあるまい。
アンジェリカが口を開いた。
「アーティファクト探しかぁ。そこら辺の銃を拾ってピカピカに磨けばアーティファクトって通用しないかなぁ。」
「アンジェリカは遺跡の探索は嫌か?」
「うん。絶対にガーディアンが居るって相場が決まっているしね。死闘は避けられないと思うよ。ああ…気分が憂鬱だなぁ。」
「ガーディアンか…その時は俺達の全力で一瞬でけりを着けるとしよう。別にアーティファクトは一つだけ有るって訳じゃない。何個か見つけてその内の一つを頂く事だって出来るぞ。」
「ボク達もアーティファクトゲットかあ。それも悪くないね。ゼオン連結システムも無くなってしまったし、それに代わるアーティファクトが欲しい所だね。」
エクスも口を挟んできた。
「アーティファクトは魅力的だけど、それでもやはりこの依頼は危険よ。財宝を守るドラゴン的な物が遺跡の各所にあるに違いないわ。ガーディアンだけじゃない。雑魚モンスターもうようよ居るかもしれないわよ。全部倒しきる自信はあるかしら?紫音。」
「まあ雑魚モンスター相手ならそんなに怖がる必要は無いだろう。怪我をしても俺達には聖剣の鞘がある。これを使えばどんな傷もたちどころに直るしな。」
「むぅ。そこまで言うなら好きになさい。大量のモンスターに殺されても文句は聞かないわよ。」
「はいはい。分かってるよ。まぁこっちにはボタンも居るんだ。三人で闘えばなんとかなるさ。ボタン…君はモンスターと闘った事はあるかい?」
「えっ…あたしですか?残念ながら人間専用の暗殺者だったのでモンスターと闘った事はありませんが…ゼオンボルグならモンスターにも効き目はあると思いますので大丈夫です。」
「そうなんだね。ボクはてっきりモンスター退治もプロなのかと思ったよ。」
「フフフ…あたしにお任せあれ!本物の暗殺者は暗殺対象を選びません。神槍ゼオンボルグを用いて退治してあげましょう!」
「その意気は良いわね。後は本当に闘ってみるしか無いわね。そろそろかしら?」
マムルークから街道をひたすら東に進んでいった。二日は歩いただろうか…そこには巨大な地下迷宮…ダングスデン遺跡が広がっていた。遺跡の外には多数の負傷者が運び出されている。その数二百は下らない。全員同じパーティの者も居れば、パーティに置き去りにされている者も居る。
中では相当激しい戦闘が繰り返されているようだ。
「怖じけ着いちゃった?紫音?ボクは大丈夫だよ。」
「冗談言うなよ。アンジェリカ。俺がびびる訳無いだろう。むしろ闘志が沸いてきたね。俺がこの遺跡の闘いを終わらせてやる。何でも掛かってこいだ。」
「他のパーティと戦闘になっても闘い続けられますか?最終的には生きている人間が敵になると思いますよ。」
とボタン。
「それもそうね。最後の敵はモンスターでもガーディアンでもない同じ人間よ。貴方は罪の無い冒険者を殺せるかしら?紫音?」
「意地悪な質問だな。ボタン…エクス。そりゃ闘うさ。でも殺さないように工夫する。その工夫があるから今もボタンが生きているんだろう。」
「それを言われちゃうと弱いですね。確かにあたしは本来死んでいる人間です。だからこそ冒険者としてやり直そうと思えたんです。そう紫音が言うのなら信じられます。」
「そうねぇ。確かにアルティメットスパークの威力を工夫すれば気絶で済むわ。殺し殺される中で忘れていたけど殺さない技もあるものね。」
「ボクも加減をすれば半殺し位ですむかもしれないね。まあそれは時と場合によるけど…以前会った青い鎧の騎士…ドラームみたいな奴の時はボクも手加減出来ないさ。不殺は心掛けてみるよ。さあダングスデン遺跡は目の前だ。中に入るとしよう。」
「おうとも!この遺跡は俺達が征服する。行くぞ!」
「ええ!行きましょう。」
「暗殺のご依頼は何時でも承りますよぉ~!行きましょうとも。」
俺達はダングスデン遺跡の地下一階に踏み込んだ。機械的な壁が続き狭い通路しか見渡せない。迷路と言っても差し支えないだろう。入口から折れ曲がりながら続く道を進んでいく。どれほど歩いた事だろう。二叉路に出た。直感を信じ右へ進む。そのまま道ぞいに直進して行く。
「紫音!あたしの遠見の魔眼に反応があります。この先二百メートルに機械の化物が居ます。数は五。覚悟しておいて下さい。回りには人間の死体の反応もあります。強敵でしょうね。」
「機械の化物?先史文明の残り香かな?ボクは闘った事はないや。紫音とエクスはどう?ボタンはモンスターと闘った事無いんだよね。」
「いやいや私達も闘った事はないわ。非常にタフな可能性が高いわね。神霊の様に体の中にコアを持っているかも知れないわ。それでも所詮機械…人間を相手にするのが一番恐ろしいわ。」
「そうだな。エクスの言う通りだ。先に進もう。」
エクスカリバーを抜刀して先に進む。エクスを憑依。目標地点に近付くと機械音声が流れてきた。そして蠢く影。それと無惨に蜂の巣になり、また焼け焦げた死体の山。
ピピピドルマーナーヘイキコウジョウヘノシンニュウシャニヒャクゴジュウニニンメヲカクニンシマシタ。スミヤカニハイジョシマス。ブローニングハッシャヨウイ。
影が顕になる。これが機械の化物か…まるでドラゴンの様な造形をしたロボットだった。両胸から機関銃が突きだしておりかなり攻撃的な印象を与える。
「皆一気に距離を詰めて突貫するぞ!俺に続け!」
俺は縮地を使った。ドラゴンの背後に周り巨大なリアクターに剣閃を叩き込む。袈裟斬り!雷閃!直突!無双三連!剣技の暴力に耐えきれずロボットは爆発した。
遅れて他のロボット達は機関銃を乱射し始める。しかしアンジェリカもボタンもその場には居なかった。縮地をし二人ともロボットの背後に回り込む。アンジェリカは神速の三連撃を朧村正で叩き込んだ。ロボットの動きは鈍ったが刺さった朧村正ごとアンジェリカを振り回し、アンジェリカは地面に落ちた。そこに振り返ったロボットが口から火炎放射を放った。とっさにローブで防ぐアンジェリカ。ローブは焼けただれ下着が露出してしまっているが何とか彼女は無事だ。しかしこのままではアンジェリカは焼き殺されるか機関銃で撃ち殺される。
アンジェリカはロボットから朧村正を引き抜くとロボットは衝撃でスタンした。
彼女は目をつぶってぶつぶつと唱えながら朧村正を撫でる。怖気が走る。大気が震える。朧村正を限界を超えて解放しているのだ。
「…偉大なる無銘の神よ。我が逆境を打ち払いし新たなる技を賜わん。」
カッと目を見開くアンジェリカ。
「是魔神の一撃。魔神億連刃なり。億に至りし一なる魔神の剣閃…如何なる敵も砕こう。受けよ。機械獣よ!我が新たなる剣閃を!魔!神!億!連!刃!」
アンジェリカはただの袈裟斬りを放ったように見える。しかしその剣閃は無限に広がり切り刻んだ。そして魔神億連刃を受けたロボットは卒倒し爆散した。
まさかの新技解放だった。アンジェリカもそして俺もまだまだ成長の余地が有るのだろう。
残り三体。ボタンがロボットの裏に舞出る。
ダガーを投擲する。無効。鋼の体を抉るには余りに無力。ゼオンボルグを実体化する。ロボットの首とリアクターに差し込む。まるでバターを溶かす様にロボットの体を神槍は貫通した。しかしこれだけでは動きは止まらない。
ならば実体化したアーティファクトを用いた究極の爆撃を用いるまで…!
あたしは口ずさむ。禁忌の歌を…。
「ゼオンボルグ…幻想爆撃!究極霊爆!」
ロボットに刺さった二本の神槍ゼオンボルグは青白い光を放ち極大の霊的爆発を引き起こした。それは実体にも多大な傷を与える。ロボットは離れた場所に居た残りの二体を巻き込み大爆発を起こした。全敵影消滅。戦闘終了。
「アンジェリカ。素晴らしい技の冴えだった。また限界を超えたな。俺も見習わなくちゃな。」
「へへーん。凄いだろ!と言っておこう。でもボクよりも派手に敵を倒した奴が居る件について!?」
「あたしはたまたまですよ。幻想爆撃は本当に奥の手なんです。しかもあたしはこれ以上成長なんて出来ないでしょう。暗殺者のやり口に拘っている内はですけどね。」
「謙遜しちゃって…憎らしいわね。紫音。貴方も新技の開発をするようにね。いつまでも立ち止まっているわけには行かないわ。」
「勿論だ。二人とも素晴らしい闘いだった。先に進もう。」
俺達は右の通路をそのまま進んでいくと階段に辿り着いた。ようやく地下二階だ。このダングスデン遺跡は何階まであるか未だに不明らしい。気は抜けないな。
地下二階…そこに踏み入れた瞬間にボタンが口を開いた。
「紫音。この階には奇妙な人間の姿が散見されます。注意して進みましょう。あたしこんな人間を見た事はありません。遠見の魔眼では姿を確認出来ますが…まるで死人の様です。元々先史文明から居たのか…それともここに挑んだ冒険者の成れの果てなのかは不明ですね。脅すみたいでごめんなさい。さあ行きましょう。」
「まじか。もしかしてゾンビなのか?イスワルドにもゾンビが居るなんてな。まあ地球では想像の産物だったんだけれど…」
「紫音。ゾンビって何かしら。私の記憶…天界の記録にも無いわ。」
「そりゃそうだろうよ。地球の娯楽物に出てくる生きた屍だ。しかも出てきたのは近代に入ってから。神様だって知らないだろう。特徴は腐っていて、ノロノロ動いて生きた人間を食べるんだ。頭を飛ばせば大抵は死ぬ。中には別格の奴も居るけどな。」
「へぇ。なるほどね。生ける屍って訳。まあ人間扱いしないでさっさと殺すに限るね。ボクも遠慮しなくても済むわけだ。」
「ゾンビですか。それが何でこんな先史文明の遺跡に発生しているかは謎です。ゾンビはどんな理由で発生するのでしょうか?」
「そうだなぁ。作品によって違うんだけど…大抵はウイルスに感染したとかかなぁ。あっウイルスって言うのは生きた病気の元みたいな奴なんだ。大抵噛まれるとゾンビウイルスに感染する。」
「それじゃあ私達にも感染する恐れがあるかもしれないって事じゃない!弱くても一撃貰えば生きた屍になるって洒落に成ってないわよ。どうすれば良いのかしら?」
「うん。本当は銃があれば良いんだけど…俺達は誰も持っていないから確実に一撃で仕留めるしかないな。それとボタンのゼオンボルグの投擲に頼るかだな。ダガーの投擲でも倒せるかもしれない。耐久力は並の人間に毛が生えた程度だよ。」
「そうですか。あたしの暗殺スキルが役に立つようで何よりです。殺せるなら問題ありません。行きましょう。」
「ボクは極光魔神閃中心に闘おうかな…それなら接触しないしさ。まあ何発も撃てるもんじゃ無いんだけどね。ここで話し込んで居ても仕方ない。一気に階段まで駆けていこう。行くよ。」
そう言うとアンジェリカは走り出した。朧村正を抜刀した状態だ。俺とボタンも後に続く。しかし道は曲がりくねっている上に行き止まりが多かった。二度目の行き止まりにそいつは…居た。
全身が緑色に変色したゾンビ…頭部に機械が取り付けてある。あの機械がゾンビ化を促しているのか…
ゾンビは叫んだ。醜い大声で…それは仲間を呼ぶための物だったのかもしれない。
「ううーあーうおおーうがぁーーうごおおー。」
迷路の壁越しに似たような叫び声が次々に聞こえ、一斉に走り出す気配がした。
「こいつ!仲間を呼びやがったぞ。早く殺さないと!朧村正!限定解放!極光魔神閃!」
絞られた黄金の閃光が発射されゾンビを貫いた。ゾンビの体は光に飲まれて消滅したが頭の機械だけが残った。
機械からは急に足が生えると駆け出しこちらの頭部目掛けて飛び掛かってきた。
俺はエクスカリバーで直突を放って機械を破壊した。
「ふぅ。危機一髪だな。多分この壊した機械でゾンビ化するんだろう。しかし参ったな。こいつの雄叫びでゾンビ達がこっちに集まってくるぞ。」
「一難去ってまた一難ね。仕方ないわね。全部掃討するわよ。」
「任務了解です。あたしにゾンビ暗殺お任せあれ!」
「限定解放の極光魔神閃なら全然撃てそうだ。ボクにも任せて貰おう。」
行き止まりから別れ道まで帰っている途中にゾンビの集団に出会った。
ボタンはゼオンボルグを投擲し、幻想爆撃を放った。究極の霊爆がゾンビの集団を襲い瞬時に殲滅した。
しかしその轟音が更にゾンビを引き寄せてしまった。通路がゾンビで埋め尽くされている。芋洗い状態だ。
仕方無いなぁ。とアンジェリカ。
「本気で行くよ。吼えろ!朧村正!完全神話展開!抑止力モード!極光魔神閃!」
全力の黄金色の一閃がゾンビの群れを焼き払う。頭部の機械も全て破壊した。
これで終わりか?辺りには静けさが漂っている。
俺達は別れ道まで引き返すと再び地下三階に繋がる通路を探し始めた。行き止まりに何度か遭遇したもののその都度来た道を戻り探索を続けていった。ゾンビ達はもう何処にもいない。
そして遂に地下三階に繋がる通路を発見した。しかしそこには一際図体のデカいゾンビが鎮座していた。こちらの足音に気付きその巨体を揺らす。
立ち上がると俊敏な動作で飛び掛かってきた。俺はエクスカリバーとフツノミタマの二刀流で立ち向かう。
二連袈裟斬り!ゾンビの両腕を切り飛ばした。そのまま剣技を連続で叩き込む。
二連直突!二連回転閃刃!二連雷閃!
全てがゾンビにクリティカルヒットする…が体勢を崩さずにそのまま噛みついて来た。俺は咄嗟にフツノミタマを口につっこみ噛みつきを防いだ。そしてフツノミタマを限定解放する。
「フツノミタマ!限定解放!無銘霊閃!」
ゾンビの口の中のフツノミタマから霊力の爆発が迸る。頭はその場で爆裂し、ゾンビは卒倒した。
これで俺達を遮る者は何もない。多数のゾンビ達はここの元の住人が長い時間の中で変化していったのか…それとも冒険者が取り込まれてゾンビになったのか不明だった。
どちらにしても元の姿に戻る事は出来ないだろう。
「元は人間だと思うと何だか後味が悪いですね。もしかしたら助けられたのかもしれないですし。」
「ボタンは優しいね。ボクは殺すしかなかったと思うよ。あんな殺意剥き出しの化物にボクは手加減する余裕はないなぁ。ボタンは強いから手加減を考えるのかもね。」
「あたしは自分が強いなんて思った事はありませんよ。あくまで必要な事をやるまでです。ゼオンボルグも幻想爆撃も必要な手段に過ぎません。それを誇るつもりはないです。」
「まあ彼らを元に戻す事はセオリー通りだと出来ないでしょう?紫音?それなら手加減する必要もなかったのよ。」
「そうだな。ゾンビになったら二度とは元に戻れない。殺してやるのも情けと言うものだ。あんな姿でいつまでも徘徊している方が可哀想じゃないか。もう彼らの人生は終わっている。文字通り死人が徘徊しているのと変わらない。いやそれより悪質か。死人は噛みついて死人を増殖させたりなんかしないからな。さあ先のフロアに進もう。次は何が待っているのかな?」
「更なる敵か?それともはたまた味方が現れるか…まったく分からないね。とにかく先に進むしかないよ。その先に待っているものが何であってもね。ボクはこの遺跡に違和感を感じている。何処か自然からずれている。人為的に様々な要素が配置されているとしか思えない。機械獣はここを工場だって言っていたけど何かを生産している素振りは全く無い。もしかしたらこの先に工場があるのかも知れないけどね。考えても無駄か…。」
「確かに敵の構成だったり、他のパーティが全く居なかったり…違和感を感じるわね。この先ではパーティ同士を闘わせる罠が仕掛けて有ったりしてね。覚悟して進みましょう。」
「悲しい事に暗殺のスキルが役に立つかもしれませんね。まああたしとしては願ったり叶ったりなんですけれど。機械の化物、ゾンビ、そして最後は人間が敵ですかね?この調子だと本当にそうなりそうで怖いです。」
皆不安を抱えながら次の階に進む事になった。
地下三階…階段を降りるとそこは開けた部屋だった。そしてそれが無数に広がっている。アナウンスが流れる。
「ピンポーンパンポーン。ここまでやって来た侵入者の皆様…皆殺しの時間です。互いに侵入者同士で殺しあい最後まで生き延びた者のみ、この先の工場フロアに進み…またドルマーナー兵器工場のオーナーとして認められます。殺し合いはあらゆる平行世界を連結して行っています。一万三百六十組の侵入者が死亡しました。残るは八千六百組です。それでは五万六千三百二十五回目の戦闘開始。」
アナウンスが終わると俺達の前にパーティが転移してきた。四人組の男女だ。
スナイパーライフルを持った女
アサルトライフルを二丁持ちした男
ハンドガンを構えた衛生兵の女
ロケットランチャーを構えた男
で…計四人だ。
合図など無い。何処からともなく闘いの火蓋が切って落とされた。
俺は出力を絞ってエクスカリバーのアルティメットスパークを放った。虹色の閃光が敵パーティを包み込む。半死半生と言った所だ。
あるものは腕を失い…あるものは腸を覗かせている。頭が弾け飛び死んでいる者も居た。
無事なのは衛生兵の女だけだ。必死にパーティのメンバーを治療している。
出力を落としてこれか…脆い。余りに普通の人間は脆すぎる。せめて止めを刺してやろう。一撃で天に送る。
「エクスカリバー!神話展開!究極霊閃モード突入!オーバーロード!行くぞ!天に帰る時が来た!アルティメットスパーク!」
全力の虹色の閃光が敵パーティを穿った。衝撃に耐えきれず敵の体は風船の様に膨れ上がり破裂する。後には夥しい血液だけが残った。
今回は俺達の勝ちだ。敵を倒すとまたアナウンスが流れる。
「五万六千三百二十五回目の戦闘終了。四千三百組が生き残っています。新たに七百組が侵入しました。また新たな戦闘体勢に移ります。それでは五万六千三百二十六回の戦闘開始。」
また俺達の眼前に敵のパーティが転移してきた。これを俺達が死ぬまで繰り返す訳か…後何回殺せば良いんだ?心が砕ける…磨耗する。なにも考えるな。殺し続けろ。こいつらだって俺達を殺しに来るんだ。やらなきゃ殺られる。
それから俺達は何度も何度も「敵」として現れる人間を殺し続けた。ある時はアンジェリカの剣技でなます切りにし、またある時はボタンのゼオンボルグの幻想爆撃で爆殺した。数えきれない殺し合いを続けた末最後の瞬間が訪れた。
「ピンポーンパンポーン。六万二千六百三十五回の戦闘が終わりました。残るは二組の侵入者です。新たな侵入者はいません。次の闘いで工場フロアに進み、ドルマーナー兵器工場のオーナーになる権利が与えられます。最後の闘いです。戦闘開始。」
俺達は疲れはてていた。丸三日間ぶっ続けて闘い続けた。勿論敵もそうなのだろう。これで終わり…決着だ。
目の前に一人の男が転移してきた。両手に銃身を切り詰めた黄金のショットガンを持っている。
俺は重い体を引き摺りながらアルティメットスパークの構えに入った。それが致命的だった。男は縮地を連続で行い、五十メートルは離れている俺の元まで一気に距離を詰めてきた。俺を思い切り蹴りあげ、怯んだ所に二丁のショットガンの弾を浴びせてきた。俺は衝撃で後ろに吹っ飛んだ。
「ぐあっ!ぐはぁ…ハァハァ。糞が!」
腹に大きな穴が空き、右腕がプラプラとしている。千切れかけていた。
「紫音!?危ない。このままじゃ殺されちゃうよ!」
アンジェリカが慌てて縮地で男に詰め寄る。そして魔神億連刃を放った。男はズタズタに切り裂かれて卒倒した。血の海が広がっている。しかし…奴はまだ死んでいない。
アンジェリカは朧村正で男に止めを刺そうとした。しかし男の握るショットガンがゆっくりとアンジェリカに狙いを定めて発射された。体を前に二つに折りながら吹き飛ぶアンジェリカ。腹から大量に出血している。
「ハァハァ…駄目だ。このままじゃ皆殺される。こいつは今までの奴と格が違うぞ。」
ぬぅっと立ち上がる男。傷は回復呪詛で蘇生しているようだ。ショットガンの弾を込める…この瞬間を待っていた者が一人。
「遅いですね。刈り取ります。その命。」
ボタンは気配を殺して男の真後ろに降り立った。そしてゼオンボルグで心臓を貫いた。そして喉をダガーで掻き切る。男は致命の技を受けて音もなく倒れる。闘いは終わった。
しばらくたって鞘を使って俺とアンジェリカの傷の回復が終了した。アナウンスがまた流れる。
「侵入者A58421…ドルマーナー兵器工場のオーナーと認め、工場フロアへ進む権利を授与します。先に進んでください。」
ようやく…か。長すぎる闘いだった。何人殺したかなんて覚えていない。罪の無い冒険者を殺しすぎてしまった。
向こうも殺す気だったとは言え…俺達には血塗られた道しか歩む場所は無いのか…
心が削れて擦り潰される。それでも彼女達の手前立ち止まる訳には行かない。俺を信じて剣を振るってくれたのだから。
そんな事を考えながら音声アナウンスを聞いていると俺達の居る部屋がガコンと音を立てて下に降り始めた。エレベーターになっているのか。俺は納得できたが彼女達は驚いているようだ。
「これは?部屋が下降している?どうなっているのかしら…また新しい敵が出てくると言うの?」
「いきなり部屋が下がるなんてビックリだなぁ。エクス…さっきの声がボク達が最後に残ったって伝えてたからこれ以上敵は出てこないと思うよ。何処に連れていかれるかは検討も着かないけどね。」
「あたしもこんなのは初めてですが、嫌な感じはしません。きっと勝者が至るべき場所に運ばれているのでしょうね。工場って言ってましたっけ。」
「皆驚いたかもしれないけど心配しなくても良いんだ。今俺達は兵器工場の工場フロアに向かっているらしい。そこに目的のアーティファクトが置いてあるに違いない。この遺跡のゴールだよ。まあダングスデン遺跡って名前は偽装だったみたいだけどな。」
「ようやくゴールかぁ。いやぁ今回は闘い通しで辛かったなぁ。ボクこの仕事が終わったらしばらく休暇を貰うよ。流石に疲れた。」
「私も賛成ね。憑依しているだけとは言えとんでもなく疲れたわ。一週間は休みが欲しい所ね。ボタンもそう思うでしょ?」
「あたしですか?あたしは命があれば闘いますよ。それこそ死ぬまでです。紫音はそこまで無茶苦茶な闘いはさせないと思いますけどね。ああ…まあ今回は大分無茶な闘いだったとは思います。あたしは大丈夫ですが皆さんには休みが必要ですね。」
俺は気圧された。
「ハハハ…まあ疲れたよな。もう少しの辛抱だ。もう少しでアーティファクトがザクザク手に入るぞ。」
部屋のエレベーターが何階下降しただろうか?チラチラ見ていたが…現在地下七十階と言うところだ。どこまで下降していくのかまったく見当がつかない。
エクス達も少し怪訝な表情をしている。止まる気配が無いので怪しんでいるのだろう。
………俺は無言を貫いていた。今はちょっと話し掛けるムードではない。
皆も押し黙っている。現在の階数八十九…九十…九十一…九十二…九十三…九十四…九十五…九十六…九十七…九十八…九十九…ピンポーン目的地に到着しました。というアナウンス。
俺達は恐る恐る部屋を出た。そこは大きな広間になっていた。壁という壁にはアーティファクトと思われる光を放つ剣や銃が山のように置かれていた。そして広間の真ん中には十メートル程の戦闘機が置かれていた。作られて幾星霜経つと言うのに塵一つ着いていない。
「これはすごいね。この機械は何なんだろう?鉄の鳥かな?ボク達に使いこなせるのかな?」
「アーティファクト中のアーティファクトだから使えるかどうかは難しいわね。でも使いこなせれば大きな戦力アップになるに違いないわ。」
「鉄の鳥ですか…あたし初めて見ました。これを使えば空を飛べるのでしょうか?」
「これは戦闘機と言ってな。空を飛んで敵の鉄の鳥を落とす為に作られた代物だ。操作は難しいと思うがなんとか持って帰りたいな。依頼の報酬に加えて手土産にするには丁度良いだろう。」
アナウンスが俺達の会話に反応する。
「この星間戦闘機はライトニングファルコンと言う名前です。ここにあるものは実体ですが…エーテル体を登録して持ち帰る事が出来ます。幻想顕現の能力者は名乗り出てください。実体の持ち出しは機密保持の観点から禁止されています。」
「幻想顕現?何だそれは?そんな能力を持っている奴は俺達の中にはいないはずだ。困ったな。ここまで来て戦闘機が持ち出し禁止とはな。」
「私もそんな能力は持っていないわ。幻想顕現…記憶データの中にはある。空想の産物を補強して産出する能力者の事を指すらしいわ。あっ…」
「それってボタンの事じゃないかな?ゼオンボルグをチャカポカ産み出しているし。あれもエーテル体何だろう?どうかなボタン?」
「あたしは確かに空想の産物である神器ゼオンボルグを召喚する事が出来ます。きっとこれは幻想顕現と言う能力の一端なんでしょう。そうであればライトニングファルコンを私の好きに産み出す事が出きるはず…。あたしが幻想顕現の能力者です。ライトニングファルコンのエーテル体を渡しなさい。」
アナウンスが答える。
「了解しました。対象者の全身を走査中。幻想顕現の能力者であると認定します。ライトニングファルコンのエーテル体を挿入します。」
ボタンは体をびくりと跳ねさせた。そして地面にしゃがみこんでしまった。
…機体名、操作方法、装甲強度、搭載武器、星間航行機能、特殊装備…ありとあらゆるエーテル体の情報があたしの脳を駆け巡りメチャクチャに犯して行った。幼少期に初めてゼオンボルグを産み出した時の事を思い出す。全身が神器の情報に無茶苦茶に荒らされ死にかけたのだ。
師匠の暗殺者が言うには類い稀なる能力らしい。しかし他の武器の情報を読み込んだ事は無かった。エーテル体の情報がある武器と言うのも珍しかった。たまたま師匠は仕事の最中にゼオンボルグを手にいれてそれがエーテル体の武器である事、あたしとツバキがエーテル体を自在に産み出せる能力者である事を知ったのだった。
…………………………………………………………………………………
情報の暴力は収まった。基本理念の理解。想定骨子の顕現。外装の産出。ゼオンボルグと同じようにやれば良い。私は幻想顕現を始めた。
私は歌う。禁断の果実を。私は貪る。宵闇の英雄を。私は産み出す。打ち破りし物を!幻想顕現!
「来い!空駆ける!終末の使者よ!ライトニングファルコン!」
そうあたしが唱えるとバチバチという錬成音と緑色の光の中から目の前にある戦闘機と瓜二つな戦闘機が表れた。
でもこれで私の魔力は空っぽ。一日一回呼べれば良いほうだと思う。それを皆に伝えなきゃ。
「あのぅ…」
「凄い!凄いじゃないか。零から戦闘機を産み出すなんて。俺の目を疑ったね。これで何処へでも飛んでいけるな。まあまずはこの工場を出なくてはならないんだけど。」
「やるじゃないか!ボタン。戦闘機を産み出すなんて…ゼオンボルグを自由に産み出せる時点でただ者じゃないとは思っていたけどね。空を飛ぶってどんな感じ何だろう。ボクワクワクが止まらないよ。舞い上がりそうだ。」
「自由にこの戦闘機が産み出せるのは本当に凄いわ。武装は分からないけれど大抵のモンスターやならず者ならイチコロでしょうね。まあ闘う楽しみが減ってしまうけど。まあなにはともかくおめでとう。ボタン。とんでもない快挙よ。」
「皆さん。お伝えする事があります。あたしの魔力量だと一日一回呼ぶのが限度です。無造作に何度も呼ぶ事は出来ません。まあ壊れない限りはずっと使えると思います。燃料位は顕現出来るので。」
「そ…そうか。まあ強い力には制限が付き物だからな。仕方ないんじゃないかな。取り敢えず中はどんな感じか乗ってみようか。」
「紫音の言う通りだ。ボタン…恥じたり負い目を感じることは無いよ。よーしボクも乗るぞ!」
「人間には魔力量の限りがあるもの仕方無いわ。それにしてもライトニングファルコンの様な戦闘機を喚べるのは凄い事よ。私も乗りましょう。」
「ありがとうございます。皆優しいですね。よしあたしも乗ります。」
全員で産み出されたライトニングファルコンに乗り込んだ。操縦席が二つに搭乗席が三つある合計で五人まで座れる様だ。操縦席に俺とアンジェリカ、搭乗席にエクスとボタンが座っている。
「操縦席での操作は念じるだけで出来ます。兵装の起動も同様です。基本的に念動操作になりますね。後は自由に動かして下さい。」
「と言ってもこの狭い広間の中じゃ身動き取れないな…一旦降りて出来る限りのアーティファクトを収集して回ろう。」
「了解。ボクも集めるかぁ。」
「分かったわ。剣に銃…あまり数は集められないかもね…。」
「承知しました。あたしも持てる限り集めて来ます。」
俺達は散って壁に立て掛けてあるアーティファクトを集めてライトニングファルコンの余剰スペースに詰め込みまくった。名高い名刀や魔剣等のコピー品や携行式レールガン等の超兵器が壁に立て掛けてあった。
剣を百五十本、銃を百丁詰め込んだ。まだまだ壁に立て掛けてあるアーティファクトはあるのだがこれ以上は積むスペースが無い。
俺達はまたライトニングファルコンに乗り込むとドルマーナー兵器工場を出る準備を始めた。
各自が席に着く。そしてアナウンスしていたドルマーナー兵器工場のAIに話し掛ける。
「おい!AI。地下三階まで連れていって貰うぞ。その先はライトニングファルコンで破壊して脱出させて貰う。」
「オーナー様。ライトニングファルコンを使った外出方法があります。地下九十九階から地上までのリフトを登り、外に外出する方法があります。」
「それでいい。行くぞ。」
「来る時に乗っていたリフトが外部まで直通の物になります。そこまで念動操作でライトニングファルコンを動かして下さい。」
俺は後ろに動くように念じた。フワリとライトニングファルコンが浮き上がると後ろのリフトまで後退した。なるほど結構小回りが効くらしい。
ガコッと音がなるとリフトが上に動き始めた。
AIの声も遠ざかっていく。
「ライトニングファルコンの実習…開始…敵対巨大機獣による…殲滅戦です…周囲五百キロメートルを掃討する設定です…繰り返します…」
俺達を乗せたライトニングファルコンは地上に辿り着いた。念動力でマムルークに向かう様に念じていた時…
「あたしの遠見の魔眼に見えました。巨大な機械の獣が工場から這い出て来ます!気をつけて下さい!」
「何だって!ボク達をつけてきたのか?でもライトニングファルコンならやれるさ!ボクの担当の兵装を試す番だね。」
「紫音、アンジェリカ!何時もの闘いみたいに死ぬまで闘う事は出来ないわよ。一方的に蹂躙して勝ちなさい!搭乗席から見守っているわ。」
「アンジェリカ!俺は回避に専念する。攻撃は任せたぞ。」
会話をしているうちにドルマーナー兵器工場を突き破って機械の竜が出てきた。大きさは二十メートル近くもある。一撃でも貰ったら不味い!俺は直感して回避行動を取り始めた。機械の竜を囲む様に旋回する。
「オーケー!行かせて貰うよ。兵装一!三十ミリ炸裂バルカン!」
ライトニングファルコンはバルカン砲を断続的に斉射した。機械の竜の体に命中し爆発が断続的に巻き起こる。小破!
機械の竜は尻尾をこちらに振ってきた。巨大な尻尾がこちらに迫る。ライトニングファルコンを急旋回して右に機体を振る。間一髪で避けられた。
「次行っちゃうよ!兵装二!霊神ミサイル!フルバースト!」
霊気を溜め込んだミサイルを全開で発射する。弾数は不明。ミサイルの誘導アラートが画面を埋め尽くす。全弾が機械の竜に命中する。装甲がめくり上がり電気回路が剥き出しになっている。対象…中破!
機械の竜はいきなり此方に手を伸ばし掴もうとしてきた。
「甘いね!兵装四!炸裂霊爆装甲!」
ボム!という表示が操作画面を埋め尽くし、機体の外で霊気の爆発が起きた。ライトニングファルコンを掴もうとした機械の竜の両腕がひしゃげた。対象大破!
機械の竜は満身創痍と言った所だ。
「アンジェリカ!凄い武器があるんだろ!決めてくれ!」
「了解!紫音!フゥハァー!こいつで終わりだ。兵装三!三百ミリレールカノン!発射!」
カォォーンという甲高い発射音と共にレールカノンが発射された。
その弾は音速で機械の竜の頭部に着弾し、爆発させた。対象完全撃破!
「やったわ!私達の勝ちね。先史文明の残り香よ…安らかに眠りなさい。」
「これがあたしの産み出した兵器の力…!信じられませんよ!何か泣けてきます。感動しちゃって…!」
「どうだい紫音!ボクの武器捌きは中々だろう!この念動操作って言うのが良いね。直感で何でも出来てしまう。しかし先史文明はこんな兵器が普通に有ったって事だよね。しかも滅亡するなんて…一体何と闘っていたんだ…?」
「ああ素晴らしかったぞ。先史文明の敵…それは分からないな。そんな奴等に出会わない事を祈るしかない。さあマムルークへ帰ろう。」
俺達はマムルークまでライトニングファルコンで帰った。目立つと不味いと思ったが兵装の中にアクティブステルスという光学迷彩の機能があったのでそれを使って帰路についた。
マムルークの町の外にライトニングファルコンを隠すと俺達は依頼を受けた酒場「翠月亭」に向かった。
ダングスデン遺跡を攻略し大量のアーティファクトを鹵獲した事を伝える。
酒場のマスターは驚いているようだ。
「あの遺跡を完全に攻略したのか?そんなパーティが現れるとは思わなかったぜ。確かに旦那達は別格に強いけどな。アーティファクトも一本や二本拾って来るもんだと思ってたよ。報酬金もその位を想定した金額しか預かっていないんだ。改めて依頼主に会ってくれないか?」
「了解した。何時会えば良い?」
「結構忙しい方だからな…一週間位は待って貰う事になるかもな。それでも大丈夫か?」
俺はボタンに耳打ちする。
「ライトニングファルコンは一週間も実体化してられるのか?」
「…危害を加えられなければ可能ですね。降りる時にアンジェリカが炸裂霊爆装甲をオンにしたままですのであたし達以外が弄くっても大丈夫です。派手に死にますけどね。」
「…町の外の何にも無い所に隠しておいたし、アクティブステルスが解除されない限り無事だろう。依頼主に会うまで定期的に見て回ろう。」
「で、旦那?大丈夫そうか?」
「ああ…問題ないが早目に会えると助かる。何せアーティファクトを大量に隠しているんだ。何時までも持つもんじゃない。」
「了解したよ。依頼主に連絡して会える日程が決まり次第こちらから使いを出す。それまでは待っててくれ。じゃあな。」
「ああ。それじゃあな。また会おう。」
俺達は酒場を出た。
しばらくはライトニングファルコンを監視しながら宿屋に泊まる生活になった。
それからピッタリ一週間経って使者が来た。
彼の持っていた手紙によると…
「明日未明ランギーニ邸までアーティファクトを全て所持して参られたし。」
…との事だった。
了承の旨を使者に伝えると彼は承知して帰って行った。
「ランギーニってこの町の最大勢力の銀獅子商会のトップじゃないか。何だって大量にアーティファクトを集めてるんだろうね?ボク達のアーティファクトで戦争でも始めるつもりかな?」
「あり得るわね。商会の手下のチンピラみたいな奴等でもアーティファクトで武装したら一騎当千の強者に化けるかもしれないもの。私達は獲物を押さえたら消される可能性も有るわ。」
「最悪の想定をするべきです。ライトニングファルコンの兵装をオンラインにしたまま現場に向かうべきでしょう。いざとなれば直接あたしが暗殺しますよ。」
「皆の言う通りだな。警戒して事に当たろう。取り敢えず今日は体を休めて明日に備えてくれ。」
「「「了解!」」」
俺達は約束の時刻の近くまで待ち、町の外に向かうとライトニングファルコンに乗り込んだ。アクティブステルスのままランギーニ邸まで飛行していった。飛行音までステルスになっており、完全に気配を消している。
現場に到着して音もなく着陸した。ボタンに遠見の魔眼で確認して貰う。
「ランギーニ邸の庭にあたし達は着陸しましたが…二階のベランダに一人居るだけですね。四十代位の男…豪奢な服を着ています。彼がランギーニ?かもしれません。」
「そうか…エクス…緊急で結界を張った結果はどうだった?」
「ボタンと同じよ。二階のベランダに一人。この反応だけだわ。」
「分かった。アクティブステルス解除だ!」
「了解したよ。アクティブステルス解除!」
アンジェリカが念じてアクティブステルスを解除した。
突然目の前に音もなく現れた戦闘機に二階に居る男は度肝を抜かれた様だ。
近くに置いていたであろうガトリングを構え吼える男。
「テメぇ!なにもんだ?このランギーニ様の屋敷に断りも無く現れやがって!十秒やる!名乗れ!」
「アーティファクトを届けに来た者だ。この機械の中にしまってある。搬出するから買い取ってくれ。」
「なんだ。そうか。ビックリさせやがって。心臓に悪いぜ。言い値で買い取ってやる。早くよこしな。」
「了解した。今から何度かに分けて運ぶ。それまで待っていてくれ。」
そう伝えると俺達は手分けしてライトニングファルコンから剣を百五十本、銃を百丁取り出して庭にズラリと並べた。
息を吸い込んで叫ぶ。
「これで全部だ。一本…」
「待ちな。全部で五十万ゴールドでどうだ?」
「…七十万ゴールド。」
「百万ゴールドだ。これ以上は一銭も払わないぞ。」
「了解した。百万ゴールドで承った。支払い方法はどうする?」
「俺の商会で利用しているドラグマ金貨で支払う。一枚十万ゴールドの価値がある。直接支払いに行く。待っていろ。」
そう言うとランギーニは二階から降りてきた。手には十枚の大きな金貨を持っている。
それを受け取ると俺は疑問を投げ掛けた。
「買い取りありがとう。一つ聞きたいんだが、このアーティファクトを一体何に使うつもりなんだ?」
「お前達には関係無い事だ。金を受け取ったんだ無かった事には出来ないぜ。そら帰った帰った!」
「…次に会うのは戦場かもな…」
俺はそう呟いた。若干不穏な空気を感じたが大金を得る事が出来た。所持金は百万ゴールドの大台を超えた。
後ろ髪を引かれながらも俺達はライトニングファルコンに乗り込みその場を立ち去った。
また次の冒険で会おう
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