7 / 15
1.7
しおりを挟む
いつもの様に宿屋で目覚める。今は昼過ぎだ。少し寝すぎたかもしれない。
今日の天気は悪い。雨が今にも降り出しそうだった。
エリカはもう目を覚ましている。宿屋にいるのが退屈なようでどこかに出かけたさそうだ。
私だってこんな日で無ければ外に出かけているが…。
雨が降り出す中外に出かける訳にはいかない。しかしそれでも外に出かけなくてはならない事情が生まれる事もある…
私達が大人しく部屋で過ごしていると不意に外が騒がしくなってきた。何だろう?何かあったのだろうか?
「この騒ぎは何なんだろうね?エリス。気にならないかい?」
「確かに気になるわね。少し外を覗いてみましょうか。エリカ。」
私とエリカは宿屋の外に顔を出す事に決めた。殺風景な部屋を出て通りを眺める。すると外から奇声が聞こえてきた。
「うぐるるるるるるるるあああああああああああああああああああ!うぐるああああああああああああああああ!」
甲高い機械音の様な声だ。通りの真ん中に立っている黒い甲冑を着た騎士が発しているようだ。それを周りの人間が囲みどよめきが起こっていた様だった。
「何なんだ?あれ。エリス。分かる?ボクには理解できないよ。」
「何重にも狂化の呪いを掛けられているのかもしれないわね。結構危険な状態よ。彼は。」
エリカはフーンという。興味はそこそこありそうだが相手の得体が知れず何とも言えないといった所だろう。
「何でそんな奴がブリジストの街中にいるんだろう。生命樹の事件と言いこの町は何か危険なものを引きずり込む物があるのかねえ。」
さあね。と答える私。あの狂化した騎士は危険だ。私達で対処する事になるかもしれない。その場合でも報酬は払ってもらえないだろう。闘い損という事だが致し方ない。
対象の狂化は鎧そのものに呪いが掛かっているのか、騎士本人に呪いが掛かっているのか分からない。私も呪いのスペシャリストではないので判断しかねるというのが本音だ。
どうやって狂化を解く?闘ったらまず殺してしまうだろう。しかしなるべく殺しはしたくないものだ。寝覚めが悪いし、あの騎士は善良な存在なのかもしれない。
後は衆人環視の中で闘うのは憚れるな。余り自分の手の内を他人に明かしたくはないものだ。それにエリカがギフテッドと言う事がばれると少々まずい。神様を連れ歩いているのと同じだからだ。変な信者の様な者が付いて来ても困る。
さてどうするか…私が思案しているとエリカがまず動いた。黒い騎士の前に躍り出る。
「こいつはボクが倒してやろう。一撃であの世に送ってやる!」
「エリカ!待って闘うのは私がやる。貴女は下がっていなさい。」
えー!と不満気なエリカ。こっちだって計算して動いているのだ。ギフテッドのその時の気分に振り回されては仕方が無い。
黒い騎士を囲んでいる野次馬に声を掛ける。
「えー。この黒い騎士は私が責任をもって正気に戻します。ですから皆さんは離れていてください。」
未だに黒い騎士は唸り声を上げながら静止している。だが残された時間は少ないと見て良いだろう。
野次馬の男達が好き勝手に話しかけてくる。
「嬢ちゃん。何者だい。あの黒い騎士を討ち取れるほどの力は本当にあるのかい?」
「やめときな。御嬢さん。あんたじゃあの男は討てないだろう。発狂するほどの研鑽を積んでいるかもしれない相手だぞ。相手が悪すぎる。まあ俺でも倒せないけれどね。」
「どうすればあの男が倒れると思う?その姿を想い描き動きをトレースするんだ。そうすれば勝利は君のものになるだろう。御嬢さん。諦めるな。」
「無理無理。君みたいなガリヒョロもやしの御嬢ちゃんにはあの騎士は倒せないね。ま、おじさんにも無理だけどな。ハッハッハ。」
本当に言いたい放題言ってくれるわね。私だってこんな狂人相手にしたくないわよ。でもやらないと皆が死んでしまうからやるのよ。やあってやるわよ。ストームカリバーに手を掛ける。そして引き抜いた。周囲を囲んでいた野次馬が一歩下がった。黒い騎士の一メートル以内に割り込む。
必殺の上段八双からの袈裟斬りを放った。黒い騎士は手に持った剣でその技を弾いた。そしてそのまま直突を放ってきた。私は交わしきれずに胸に受ける。ブラッドシールドは貫通。大きな穴が胸に開いた。野次馬から悲鳴が上がった。
「ガハッガハッ…オエッやるわね。ブラッドヒーリング。」
剣を引き抜く黒い騎士。胸の傷は塞がり、失った血も補給される。
ええ、そうここからが勝負よ。私は死から程遠い女なの。それとブラッドシールドを展開した。正直私のブラッドシールドでこの騎士の攻撃を防げるかどうかは自信が無いのだけれどやるしかないでしょう。
私は黒い騎士と睨み合った。騎士は奇声を上げながらこちらの隙を狙っている。
「あぐるうううううううううううう…ぐあああああああああああああああ…」
踏み込んでくる騎士。袈裟斬りの一閃が飛んでくる。私はストームカリバーで打ち払い、下に飛んだ刀身を利用した燕返しを放った。
黒い騎士の甲冑が抉られる。股間から胸まで一直線に切り裂いてやった。悲鳴を上げる黒い騎士。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ…うぐるあああああああああああああああああああ」
蘇生や回復はしない様だ。血を失う騎士。手に持っている剣を横に構えると音速の速さで一閃を決めてきた。対応しきれずに受けてしまう私。ブラッドシールドでの保護はあったものの貫通して腹を切り裂かれた。多量の出血を伴う。刀を杖にして何とか立っている私。後ろに大地を蹴り跳躍する。騎士との距離は三メートル程。
「ゲハッ…ハアハア…ブラッドヒーリング。ブラッドシールド。」
腹部の傷が急速に塞がっていく。そして体の表面にシールドを張り直した。
エリカは不安そうだ。しかし私が手出ししない様に言ってあるので見守る事に徹している。
「こんなくだらない事で死ぬんじゃないぞ。エリス。信じてるからね。」
「ハァハァ…ありがとう。エリカ。必ず勝利するわ。」
野次馬は静まり返っている。死闘の行方を見守っているようだ。茶化したり大声を上げたりするものは居なくなっていた。
黒い騎士だって出血している。勝機はあるはずだ。私は地面を踏み込み黒い騎士に打ち込んだ。連撃を決める。全てが決まらなくても何発か入れば違う筈だ。
袈裟斬り!弾かれる。三連突!心臓に一撃が入った。大量の血を吐く黒い騎士。燕返し!いなされた。上半身に直突!そのまま決まる。心臓にもう一突。これが致命の一撃になったかと思われたが…
再び大地を蹴って黒い騎士との距離を開けた。やったか…騎士は胸部から大量に血を流し、口からも血を吹き出している。
…それでもなお狂っても立つというのなら
…力が欲しいか?誰にも負けない力が…狂気の檻に囚われるとしても
「うぐるるるるる…力ほしい…もう誰にも砕かれないために…もう奪われないために…力が…自分自身に信仰を捧げる。俺は強い…それを俺が信じ続ける…!」
喋った。まともな言葉を黒い騎士が口にした。でも彼はもう勝つ事なんて出来る体じゃない。私が致命の傷を抉ったのだ。勝負はとっくに付いているそう思ったが…
黒い甲冑が騎士を蝕み始めた。締め付け縛り食い込んでいく。驚いたことに心臓の傷や燕返しで付けた傷も治癒したようだ。クソ…無敵という事なの?この騎士を殺したり無力化する方法は無いというのかしら。
それでも太刀筋は覚えた。いなせる。今の私になら出来る。奴の技は見切ったわ。
黒い騎士は踏み込んできた。大上段からの袈裟斬り。私はストームカリバーで打ち払うと黒い騎士が剣を握っている両手に打ち込んだ。龍閃!素早い横一閃を叩き込む。甲冑はひしゃげて中の肉も断ち切った。ブラブラと両手が皮一枚で繋がっており、剣も地面に落としてしまった騎士。これで万事休すね。攻撃には移れないでしょう…
甘かった。私はひたすらに甘い事を時たま実感させられるが闘いの中で甘さを実感させられた事は初めてだった。黒い騎士は一瞬で地面に伏せ口に何かを加えるとこっちに走って突っ込んできた。私の胸から上と胸から下が両断された。
口に剣を加えて切り裂いてきたのだった。
「エリス。嘘だろ!死ぬんじゃない。戻ってこい!エリスルージュ。おい!聞こえているのか!」
エリカの叫ぶ声がやけに遠くに感じる。不味い。とても不味い。さすがにこれは死ぬんじゃないか…胸から上だけになり地面に叩きつけられた私は思った。血の気が失せて行く。寒い寒すぎる。ああ…私は死ぬんだ…取り敢えず唱えてはおきましょうか。
「ブラッドヒーリング…ブラッドシールド…」
地面に横たわる私の胸から下の体と胸から上の体はずるずると独りでに動いて接着した。そして急速に回復していく。失われた血液も補充されているようだ。本当にギフテッドのスキルは無茶苦茶ね。運命すら誤魔化す強引な魔法…まったく。
私はまた一つになった体で立ち上がった。距離は二メートルってところか…黒い騎士はじっと待っていた。甲冑が食い込み両腕が蘇生していく。不死身の狂戦士か…
私は静かにストームカリバーを構えた。カウンターの姿勢に入る。龍閃を極める。極められる場所はその時にならないと分からない。
「うぐるるるるるるるるあああああああああああああああああああ!」
叫び声を上げて黒い騎士が突っ込んできた。横一閃と袈裟斬りを同時に放ってきた。
十文字斬!私はストームカリバーを上下に振っていなした。横一閃のみいなしきれずに受けた。ブラッドシールドに無効化される斬撃。
黒い騎士に一瞬の隙が生じた。その首に向かって龍閃を放った。神速の横一閃が極まった。血飛沫を上げながら飛び上がる黒い騎士の首。その場に崩れ落ちる黒い騎士の体。
終わった。何とか終わったのだ。
エリカが恐ろしい形相で語り掛けてくる。
「エリス。君は無茶をしすぎだ。何回も死にそうになったじゃないか。まったく少し闘う敵を選ぶんだな。ボクだっていつも君を手助けしないわけじゃないんだよ。あの甲冑の黒騎士はこれでくたばったんだよな?それにしても相当な強敵だったね。」
「そうね。今回は流石に死ぬかと思ったけれど、運が良かったわね。何とか最後まで生き延びられたわ。本当に強敵だった。生命樹の教祖を超えてたわ。騎士としての一種の到達点に立っていると言っていい強さだった。何があってここまで狂ってしまったのかは謎だけれどね。今は静かに眠れ狂気の黒騎士よ。お前の強さ忘れないぞ。二度と狂い人を傷つけることは無いだろう。さらばだ。」
野次馬は静まり返っていた。余りにも刺激的な熱戦に皆心を奪われていたのだ。
闘いが終わった事に気付くと歓声が上がった。私を讃える言葉を皆述べたのは言うまでもないだろう。
野次馬の熱狂を他所に私達は黒い騎士に近づいていった。
私達は黒い騎士の遺骸を担ぐとブリジストの共同墓地まで運んでいく。
ここに埋葬するのだ。闘った戦士を…称えるために。土を掘り返して穴を開ける。
天気が悪く今にも雨が降りそうだった。早く埋葬しよう。
その中に黒い騎士を埋めようとした瞬間だった。
見慣れない冒険者が現れた。金髪金眼に黒いコートを羽織った男だ。
「お前がマルスを殺したのか!」
冒険者が叫んだ。そして剣を抜くその冒険者。
私が答える。
「大勢の人がいる前で発狂していたのよ。誰かを殺してもおかしくない状況だったから、私が闘って彼を討ち取ったの。何か問題があるかしら。」
「マルスは発狂状態だったのか。あれだけあの甲冑には気を付けろと言っていたのに我を失うなんて。あいつは馬鹿な奴だな。何が最強の戦士になりたいだ。あんな呪われた甲冑を使っても女子供に負けてしまっているじゃないか。哀れだ。余りにも虚しい。あいつは惨めに死んだのか?君に殺されて?」
剣をしまう冒険者。哀しみが伝わってくる。
エリカが口を開く。
「マルスさんは立派に闘っていたよ。何度もウチのエリスは死にかけたんだ。無様な死に方じゃない。最高に強い戦士として生きて闘って死んでいったんだ。惨めな死にざまなんかじゃないさ。」
「そうか。あいつの事を俺がちゃんと見張っていれば良かった。俺は日に日に甲冑に犯されて正気を失っていくマルスを放っておいたんだ。俺にも今回の事件に責任がある。甲冑を脱がせるべきだった。ただ呪いの黒甲冑はこれで世には出回らないで済むだろう。」
あの甲冑只者では無いと思っていたけれどやっぱり呪われた品だったのね。着たら死ぬまで体が朽ち果てても何度でも戦わされる甲冑か…気分が良くないわね。これも闇の歴史のアーティファクトなんでしょう。
昔の人はこんなものを作って喜んでいたのかしら。一体何のために?変わった処刑の為?それともここの戦士の強さを追い求める為かしら?何れにせよ制御のつかない狂戦士を作り出したって意味は無いでしょうに。
私は…彼の事を忘れない。私もあの黒甲冑があったら装着してイーストリア帝国と体が砕き果てるまで闘い続けたかもしれないもの。他人事の様に思えないわね。
私はマルスの遺骸に土を掛けた。埋葬するために…
「マルスさんの事は絶対に忘れないわ。私の生涯で最強の敵だった。あそこまで強い戦士は今後現れるかどうか分からないわ。彼の強さを追い求める信念に敬意を表します。だから名も知らぬ冒険者さん。どうか彼を卑下しないでやって頂戴。彼は闘い抜いたのよ。そして死んだわ。もう蘇らない。黒い甲冑の能力を超えてダメージを受けて死んでいったの。」
「…あいつは天国でも強さを求めているのかな?何のために闘っていたか最後には分からなくなってしまったかもしれないけれど、あいつ本当は魔王を倒す事が目的だったんだ。…俺の名前はフリードリヒ。マルスとフリードリヒの二人で魔王を討伐する事が目標だった。この大陸には魔王は居ないみたいだけど…どこかにいる絶対悪の魔王を倒そうって二人で誓って旅に出ていたんだ。こんな所で終わるなんて畜生…馬鹿野郎が。」
「きっと勝てたと思うよ。今のマルスさんは魔王をも砕くほど強かった。ただウチのエリスはもっともっと強かったんだ。この子はイーストリア帝国を一人で倒すぐらい強くならなきゃいけないから…背負っているものがあったんだ。マルスさんは魔王を倒す夢が…エリスはイーストリア帝国全てを根絶やしにする憎しみがあったんだ。ボクは見守っているだけだった。本当はボクの能力をフルに活用すればマルスさんを助ける事が出来たかもしれなかったけれどそれはしなかった。ボクもエリスの共犯者だ。文句があるならボクにいいな。受けて立つよ。」
フリードリヒは剣を抜いた。
「エリス。俺と戦え。マルスが死んだ今俺に生きている意味は殆どなくなってしまった。二人で超えていくと誓ったんだ。どんな障害も。あいつはやり方を間違ったから死んでしまった。人知を超える邪悪な物に魂を売り払って力を付けたんだ。それが君には通用しなかった。俺だって魔王打倒のために鍛えた冒険者…いや勇者と呼ばれた事もある男だ。君を…エリスの死を乗り越えて闘っていく。一人になったとしても魔王を倒すために闘い続ける。ここで死ぬのならそれも本望だ。俺もそこまでの男だったという事だ。さあ構えろ。」
「…そこまで言うのなら仕方ないわね。さあどこからでも掛かって来なさい。」
私はストームカリバーを抜いた。フリードリヒも剣を抜く。金色に輝く剣だ。あんなもの見たことが無い。私の持つ暗い黒の刀身に赤い刃紋が走っているストームカリバーとは大違いだ。
いわゆる聖剣と呼ばれる類の剣かもしれなかった。特殊な能力や祝福を使用者に与えるのだ。あれを装備しているだけで一筋縄ではいかないだろう。
「エリス。ボクは一切手助けできない。この勝負見届けさせてもらおう。フリードリヒとエリス…君達のどちらが生きてまた死ぬかボクには決められない。さあ立ち合うんだ。」
フリードリヒとの間合いは五メートル程、私はブラッドシールドを張った。
フリードリヒは剣を振りかぶってその名を叫んだ。
「カレイドブルフ!延伸磔刑開始!」
カレイドブルフが鞭のように刀身が伸び私を切りつけてくる。何だこの動きは…クッいなしきれない。体を何度か貫かれそうになるがブラッドシールドの保護により無傷で済んだ。
間合を開けたままではこちらの不利だ。一気に間合いを詰める!大地を蹴った。
跳躍してフリードリヒの目前に迫る。私の袈裟斬り!ストームカリバーの必殺の剣閃をカレイドブルフで弾かれる。流石聖剣の一種だけあって綻びたり、折れる事は無いようだ。
続けて剣技を叩き込む。三連突!カレイドブルフは鞭のように伸び縮していなされてしまった。龍閃!弾かれた。そのまま下に弾かれた刀身を逆に返して切りかかる。燕返し!胸を掠ったが致命傷ではない。
ハァハァ…殆ど全ての攻撃をいなされてしまった。不味いわね。
フリードリヒは後退して距離を開けた。三メートル。
「そんなものか!こちらから行かせてもらうぞ!カレイドブルフ!鞭斬!」
鞭のようにしなるカレイドブルフが迫ってくる。このままでは致命の一撃を貰う。
ブラッドシールドを張り直した。
ストームカリバーを上下左右に素早く振り、鞭斬をいなす。しかし上にしなる一撃が腕を穿った。ブラッドシールドの上を細かく何重にも鞭斬を加えられ装甲が貫通する。右腕が千切れ飛んだ。
当然ストームカリバーも吹き飛んでしまう。無防備な体でカレイドブルフの鞭斬を受け続ける。腹部貫通。胸部貫通。心臓破壊。…致命の一撃を受ける。だがそれくらいでは私は死ねない。これも一種の呪いなのだろう。唱える回復の魔法を…
ブラッドヒーリング!傷を受けた箇所が急激に塞がり右腕が生えてきた。常識外の蘇生能力。
「何なんだ?その回復能力は…だから狂戦士状態のマルスが敗れ去ったのか…あいつが負けた理由がはっきりと分かった。俺達にはそんな回復能力は無いからな。黒い甲冑は傷を治しているように見えるが、無理やり戦えるように締め付けて補強しているに過ぎない。君のその技は傷そのものを完全に遡行して治癒してしまっている。破格の魔法だ。信じられないよ。これでは何れ敗れ去るだろう。…いや手はあるな。即死させれば良い。それだけだ。」
闘っている最中にペチャクチャお喋りする趣味は無い。彼の一瞬の隙を狙ってストームカリバーを拾い彼の前に躍り出た。突然の事で動揺したようだ。その一瞬の隙を穿つ。
「喰らいなさい!」
袈裟斬り!命中。肩から右腕を切り落とした。カレイドブルフも地面に落ちる。
龍閃!胴体を薙いだ。血が噴き出る。大量出血。最早フリードリヒに戦意は無い。だがここで手を緩めない。殺しきる。
三連突!腹部・心臓・首に三回連続の突きをかました。心臓を破壊された事が致命の一撃となりフリードリヒは崩れ落ちた。
「ハァハァ…やったわ。これでもう立てないでしょう。フリードリヒ。貴方の負けよ。」
カレイドブルフから輝きが失われる。持ち主の傷の蘇生に宿っていたマナが使われたようだ。立ち上がるフリードリヒ。
「こっちにも奥の手があるって事さ…カレイドブルフ…ビーストモード。お前の敵を喰らいつくせ。呪印暴走開始!いくぜエリス。これが全身全霊の全てを捨てた一撃だ…」
そう言うとカレイドブルフはフリードリヒを包み全身に棘がある獣へと姿を変えた。最早戻れないのだろう。直感でそう感じる。フリードリヒは死に今は勝利のために何でもやる獣がいるだけだ。
私に思い切り突っ込んでくる。私はストームカリバーを上段八双に構えて時を待った。時の雫が一瞬穿つその瞬間、全身全霊の一撃を叩き込んだ。最高の袈裟斬りだった。
突っ込んで来てまともに受けたフリードリヒだった獣は頭から尻尾の先まで真っ二つに切り離された。即死だったのだろう。
「終わった。もう終わったんだよ。エリス。フリードリヒの負けだ。蘇生は出来るけどしてあげた方が良いかな?」
エリカは困った様子だ。当たり前だろう。どちらが生きるか死ぬかの戦いを繰り広げたというのに蘇生したらプライドを著しく傷つける事になる。
正直私からも決められないが、勝者としての生殺与奪があるとするのなら、フリードリヒにはまだ生きていてほしいと思った。生きて一人でも魔王を討伐するために闘い抜いてほしい。それが私の願いだ。ここで倒れて埋もれていく男では無い筈だ。
「私…私は蘇生してやった方が良いと思う。とても勝手な願いだけれど彼にはまだ生きていてほしいのよ。」
「分かったよ。エリス。勝者の君の願いなら聞かないわけにはいかないね。コードフェニックス。強制蘇生開始!」
そうエリカが唱えると真っ二つになって死んでいたフリードリヒの体はくっつきしばらくすると息を吹き返した。
辺りを見回し状況を把握するフリードリヒ。
「そうか…俺は死んでしまったのか。…何故甦らした?マルスは死んだままなのに。何で俺を蘇らせたんだ!答えろエリス!」
私は重い澱の様な物が体に溜まっていく感じがした。重い口を開く。
「貴方には生きてほしいのよ。フリードリヒ。マルスはもう間に合わなかったけれど。貴方はまだ間に合う。生きて魔王を討伐する事が出来ると思うの。その為に生きて生き抜いて。」
フリードリヒは絶叫する。受け入れられないというように。魂が拒絶しているのだ。彼の戦士の魂が負けて生き恥を晒す事を拒絶している。
「まだ生きろというのか!マルスを殺されて、その仇すら討てないで…まだ魔王を倒す為に俺は生き続けなくてはいけないというのか。どれだけ残酷で惨い事を言っているのか分かっているのか。エリス。君は…君は…君さえ超えられればまた歩み出せると思っていたのに…君に負けちゃ…生きていちゃ駄目なんだ。そう俺は決めたのに…畜生。」
ああ…これが哀しみなのね。私の胸は彼の哀しい決意に打たれた。自然と涙が溢れてくる。
それでも私は告げる。私は謳う。生きろと…
「それでも生き抜いて。立ち上がってみなさい。マルスの狂った死に様を無駄にするかどうかが掛かっているわよ。貴方まで死んで全てを失ってどうなるっていうの!甘ったれるな。立って打ち克ちなさい。フリードリヒ!これからは一人でこれまでの事を背負って生きていくのよ。男でしょ!ここで負けるな。自分のプライドを言い訳に死にたがるな!マルスに本当に顔向けできると思っているの?出来ないでしょ。こんな死に方じゃ。悔しかったら魔王を一人で打ち破ってみろ!私より魔王はもっと強いと思うけどだからこそ挑みなさいよ!また仲間を集めても良い。一人でも良いから魔王をこの地上から駆逐して見せなさいよ!仮にも勇者なんでしょ。闘え。死んだマルスの為にも!」
フリードリヒはハッとしている。私の言葉に胸を打たれたようだった。
「ありがとう。エリス。これからは一人で生きていく。死んだマルスの為にも…そして俺自身の為に…必ず魔王は討ち果たす。それは誓おう。俺は勇者フリードリヒだ。魔王に遅れなんて取らない。いや今日から負けは許されない。エリス…君は俺が負けた最後の人間になるだろう。必ずこの約束を守るよ。マルスの事は許せないけれど…胸を貸してくれてありがとう。そしてさようならだ。いつか子供達に語り継がれる夢物語の中に俺は生きていくのだろう。その時きっとあえるさ。じゃあな。最強の女戦士。エリス。」
そういうとフリードリヒは立ち去っていった。彼はもう大丈夫だろう。
エリカだ。闘いが終わり安心した様子だ。
「彼も本当に強かったね。エリス。君が死ぬかと思っていたけど勇者相手に勝ってしまうなんてね。どんどん強くなるな君は。どれ程強くなったらイーストリア帝国を滅ぼせると思う?」
イーストリア帝国と闘う日か…段々近づいているのかもしれない。今帝国と闘っているバディスタ王国もどれだけ持つか分からない。そうすればこのシャウヤーン連合地帯にもイーストリア帝国の魔手が伸びてくるだろう。どれ程の時間が残されているのか私には見当もつかなかった。
エリカに応える。
「まだ足りないわよ。きっと。もっともっと強くならなければ。一人で戦況を引っ繰り返せる程強くなるにはまだ強さが足りないわよ。まあエリカには期待させてもらうわ。帝国との闘いでは全力の力を見させてもらうわよ。」
エリカはにんまりと笑う。頼られて嬉しいのだろうか。この子は裁定者の様な立ち回りをするかと思えば妙に子供っぽいところがあって私には分からない。まあその子供っぽいところが可愛いとは思うのだが。
「エッヘン。イーストリア帝国との闘いの際は任せなさい。万の軍勢だろうとちぎっては投げちぎっては投げで片付けて見せよう。今から闘うのをワクワクしているよ。何たってボクが本気で遊んであげてようやく壊れるオモチャなんだもの。楽しみで楽しみで仕方ないよ。」
訂正…やっぱり子供っぽいのは怖いのかもしれない。後先考えずにギフテッドの能力を振り回しそうで怖い。
私達は墓地でマルスの埋葬を終えると宿屋に戻ることにした。戻りながら会話する。
「ねえ。ブリジストの町にはいつまで居るつもりなの?」
「そうね。イーストリア帝国の出方次第ね。今はまだ町を出る気は無いけれど…もう少しで最前線の町を渡り歩くようになるかもしれないわ。それだけは覚悟しておいて頂戴。それにこの町もイーストリア帝国に襲われるかもしれないしね。今の所バディスタ王国が陥落したって情報は無いから大丈夫だと思うけれど。」
「そっか。この町とはまだお別れしなくても良いんだ。折角マスターと仲良くなった事だし、もう少し居たかったんだ。良かった良かった。」
「それも何時までも長く続かないと思って頂戴。さあ宿屋に付いたわよ。」
眼の前には宿屋があった。相変わらず殺風景な部屋に戻る。時刻は夕方に差し掛かっていた。
「フリードリヒは一人で大丈夫かな。落ち込んだり、くよくよしたりしないかな?どう思うエリス?彼にそんな心配は必要ないかな?」
「大丈夫でしょう。エリカの好みのタイプだった?だから気になるのかしら?」
「違うやい。あんなにズタボロになって強気を保っていたけれど、ポロポロ弱い所が出ていたからさ。今になって心配になってきたんだ。」
「そう言う事にしておきましょうか。きっと大丈夫よ。いつか彼とその仲間が魔王を討つはず。そう私は信じているわ。この大陸に魔王は居ないから、遠い異世界の話になってしまうかもしれないけれどね。さあもう休みましょう。明日からまた依頼の日々よ。」
「はーい。分かったよ。それにそろそろイーストリア帝国との闘いも視野に入れないとだね。」
「ええ。その時は近いうちに必ず来るわ。それではお休み。エリカ。」
「お休みなさい。エリス。」
今日の天気は悪い。雨が今にも降り出しそうだった。
エリカはもう目を覚ましている。宿屋にいるのが退屈なようでどこかに出かけたさそうだ。
私だってこんな日で無ければ外に出かけているが…。
雨が降り出す中外に出かける訳にはいかない。しかしそれでも外に出かけなくてはならない事情が生まれる事もある…
私達が大人しく部屋で過ごしていると不意に外が騒がしくなってきた。何だろう?何かあったのだろうか?
「この騒ぎは何なんだろうね?エリス。気にならないかい?」
「確かに気になるわね。少し外を覗いてみましょうか。エリカ。」
私とエリカは宿屋の外に顔を出す事に決めた。殺風景な部屋を出て通りを眺める。すると外から奇声が聞こえてきた。
「うぐるるるるるるるるあああああああああああああああああああ!うぐるああああああああああああああああ!」
甲高い機械音の様な声だ。通りの真ん中に立っている黒い甲冑を着た騎士が発しているようだ。それを周りの人間が囲みどよめきが起こっていた様だった。
「何なんだ?あれ。エリス。分かる?ボクには理解できないよ。」
「何重にも狂化の呪いを掛けられているのかもしれないわね。結構危険な状態よ。彼は。」
エリカはフーンという。興味はそこそこありそうだが相手の得体が知れず何とも言えないといった所だろう。
「何でそんな奴がブリジストの街中にいるんだろう。生命樹の事件と言いこの町は何か危険なものを引きずり込む物があるのかねえ。」
さあね。と答える私。あの狂化した騎士は危険だ。私達で対処する事になるかもしれない。その場合でも報酬は払ってもらえないだろう。闘い損という事だが致し方ない。
対象の狂化は鎧そのものに呪いが掛かっているのか、騎士本人に呪いが掛かっているのか分からない。私も呪いのスペシャリストではないので判断しかねるというのが本音だ。
どうやって狂化を解く?闘ったらまず殺してしまうだろう。しかしなるべく殺しはしたくないものだ。寝覚めが悪いし、あの騎士は善良な存在なのかもしれない。
後は衆人環視の中で闘うのは憚れるな。余り自分の手の内を他人に明かしたくはないものだ。それにエリカがギフテッドと言う事がばれると少々まずい。神様を連れ歩いているのと同じだからだ。変な信者の様な者が付いて来ても困る。
さてどうするか…私が思案しているとエリカがまず動いた。黒い騎士の前に躍り出る。
「こいつはボクが倒してやろう。一撃であの世に送ってやる!」
「エリカ!待って闘うのは私がやる。貴女は下がっていなさい。」
えー!と不満気なエリカ。こっちだって計算して動いているのだ。ギフテッドのその時の気分に振り回されては仕方が無い。
黒い騎士を囲んでいる野次馬に声を掛ける。
「えー。この黒い騎士は私が責任をもって正気に戻します。ですから皆さんは離れていてください。」
未だに黒い騎士は唸り声を上げながら静止している。だが残された時間は少ないと見て良いだろう。
野次馬の男達が好き勝手に話しかけてくる。
「嬢ちゃん。何者だい。あの黒い騎士を討ち取れるほどの力は本当にあるのかい?」
「やめときな。御嬢さん。あんたじゃあの男は討てないだろう。発狂するほどの研鑽を積んでいるかもしれない相手だぞ。相手が悪すぎる。まあ俺でも倒せないけれどね。」
「どうすればあの男が倒れると思う?その姿を想い描き動きをトレースするんだ。そうすれば勝利は君のものになるだろう。御嬢さん。諦めるな。」
「無理無理。君みたいなガリヒョロもやしの御嬢ちゃんにはあの騎士は倒せないね。ま、おじさんにも無理だけどな。ハッハッハ。」
本当に言いたい放題言ってくれるわね。私だってこんな狂人相手にしたくないわよ。でもやらないと皆が死んでしまうからやるのよ。やあってやるわよ。ストームカリバーに手を掛ける。そして引き抜いた。周囲を囲んでいた野次馬が一歩下がった。黒い騎士の一メートル以内に割り込む。
必殺の上段八双からの袈裟斬りを放った。黒い騎士は手に持った剣でその技を弾いた。そしてそのまま直突を放ってきた。私は交わしきれずに胸に受ける。ブラッドシールドは貫通。大きな穴が胸に開いた。野次馬から悲鳴が上がった。
「ガハッガハッ…オエッやるわね。ブラッドヒーリング。」
剣を引き抜く黒い騎士。胸の傷は塞がり、失った血も補給される。
ええ、そうここからが勝負よ。私は死から程遠い女なの。それとブラッドシールドを展開した。正直私のブラッドシールドでこの騎士の攻撃を防げるかどうかは自信が無いのだけれどやるしかないでしょう。
私は黒い騎士と睨み合った。騎士は奇声を上げながらこちらの隙を狙っている。
「あぐるうううううううううううう…ぐあああああああああああああああ…」
踏み込んでくる騎士。袈裟斬りの一閃が飛んでくる。私はストームカリバーで打ち払い、下に飛んだ刀身を利用した燕返しを放った。
黒い騎士の甲冑が抉られる。股間から胸まで一直線に切り裂いてやった。悲鳴を上げる黒い騎士。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああ…うぐるあああああああああああああああああああ」
蘇生や回復はしない様だ。血を失う騎士。手に持っている剣を横に構えると音速の速さで一閃を決めてきた。対応しきれずに受けてしまう私。ブラッドシールドでの保護はあったものの貫通して腹を切り裂かれた。多量の出血を伴う。刀を杖にして何とか立っている私。後ろに大地を蹴り跳躍する。騎士との距離は三メートル程。
「ゲハッ…ハアハア…ブラッドヒーリング。ブラッドシールド。」
腹部の傷が急速に塞がっていく。そして体の表面にシールドを張り直した。
エリカは不安そうだ。しかし私が手出ししない様に言ってあるので見守る事に徹している。
「こんなくだらない事で死ぬんじゃないぞ。エリス。信じてるからね。」
「ハァハァ…ありがとう。エリカ。必ず勝利するわ。」
野次馬は静まり返っている。死闘の行方を見守っているようだ。茶化したり大声を上げたりするものは居なくなっていた。
黒い騎士だって出血している。勝機はあるはずだ。私は地面を踏み込み黒い騎士に打ち込んだ。連撃を決める。全てが決まらなくても何発か入れば違う筈だ。
袈裟斬り!弾かれる。三連突!心臓に一撃が入った。大量の血を吐く黒い騎士。燕返し!いなされた。上半身に直突!そのまま決まる。心臓にもう一突。これが致命の一撃になったかと思われたが…
再び大地を蹴って黒い騎士との距離を開けた。やったか…騎士は胸部から大量に血を流し、口からも血を吹き出している。
…それでもなお狂っても立つというのなら
…力が欲しいか?誰にも負けない力が…狂気の檻に囚われるとしても
「うぐるるるるる…力ほしい…もう誰にも砕かれないために…もう奪われないために…力が…自分自身に信仰を捧げる。俺は強い…それを俺が信じ続ける…!」
喋った。まともな言葉を黒い騎士が口にした。でも彼はもう勝つ事なんて出来る体じゃない。私が致命の傷を抉ったのだ。勝負はとっくに付いているそう思ったが…
黒い甲冑が騎士を蝕み始めた。締め付け縛り食い込んでいく。驚いたことに心臓の傷や燕返しで付けた傷も治癒したようだ。クソ…無敵という事なの?この騎士を殺したり無力化する方法は無いというのかしら。
それでも太刀筋は覚えた。いなせる。今の私になら出来る。奴の技は見切ったわ。
黒い騎士は踏み込んできた。大上段からの袈裟斬り。私はストームカリバーで打ち払うと黒い騎士が剣を握っている両手に打ち込んだ。龍閃!素早い横一閃を叩き込む。甲冑はひしゃげて中の肉も断ち切った。ブラブラと両手が皮一枚で繋がっており、剣も地面に落としてしまった騎士。これで万事休すね。攻撃には移れないでしょう…
甘かった。私はひたすらに甘い事を時たま実感させられるが闘いの中で甘さを実感させられた事は初めてだった。黒い騎士は一瞬で地面に伏せ口に何かを加えるとこっちに走って突っ込んできた。私の胸から上と胸から下が両断された。
口に剣を加えて切り裂いてきたのだった。
「エリス。嘘だろ!死ぬんじゃない。戻ってこい!エリスルージュ。おい!聞こえているのか!」
エリカの叫ぶ声がやけに遠くに感じる。不味い。とても不味い。さすがにこれは死ぬんじゃないか…胸から上だけになり地面に叩きつけられた私は思った。血の気が失せて行く。寒い寒すぎる。ああ…私は死ぬんだ…取り敢えず唱えてはおきましょうか。
「ブラッドヒーリング…ブラッドシールド…」
地面に横たわる私の胸から下の体と胸から上の体はずるずると独りでに動いて接着した。そして急速に回復していく。失われた血液も補充されているようだ。本当にギフテッドのスキルは無茶苦茶ね。運命すら誤魔化す強引な魔法…まったく。
私はまた一つになった体で立ち上がった。距離は二メートルってところか…黒い騎士はじっと待っていた。甲冑が食い込み両腕が蘇生していく。不死身の狂戦士か…
私は静かにストームカリバーを構えた。カウンターの姿勢に入る。龍閃を極める。極められる場所はその時にならないと分からない。
「うぐるるるるるるるるあああああああああああああああああああ!」
叫び声を上げて黒い騎士が突っ込んできた。横一閃と袈裟斬りを同時に放ってきた。
十文字斬!私はストームカリバーを上下に振っていなした。横一閃のみいなしきれずに受けた。ブラッドシールドに無効化される斬撃。
黒い騎士に一瞬の隙が生じた。その首に向かって龍閃を放った。神速の横一閃が極まった。血飛沫を上げながら飛び上がる黒い騎士の首。その場に崩れ落ちる黒い騎士の体。
終わった。何とか終わったのだ。
エリカが恐ろしい形相で語り掛けてくる。
「エリス。君は無茶をしすぎだ。何回も死にそうになったじゃないか。まったく少し闘う敵を選ぶんだな。ボクだっていつも君を手助けしないわけじゃないんだよ。あの甲冑の黒騎士はこれでくたばったんだよな?それにしても相当な強敵だったね。」
「そうね。今回は流石に死ぬかと思ったけれど、運が良かったわね。何とか最後まで生き延びられたわ。本当に強敵だった。生命樹の教祖を超えてたわ。騎士としての一種の到達点に立っていると言っていい強さだった。何があってここまで狂ってしまったのかは謎だけれどね。今は静かに眠れ狂気の黒騎士よ。お前の強さ忘れないぞ。二度と狂い人を傷つけることは無いだろう。さらばだ。」
野次馬は静まり返っていた。余りにも刺激的な熱戦に皆心を奪われていたのだ。
闘いが終わった事に気付くと歓声が上がった。私を讃える言葉を皆述べたのは言うまでもないだろう。
野次馬の熱狂を他所に私達は黒い騎士に近づいていった。
私達は黒い騎士の遺骸を担ぐとブリジストの共同墓地まで運んでいく。
ここに埋葬するのだ。闘った戦士を…称えるために。土を掘り返して穴を開ける。
天気が悪く今にも雨が降りそうだった。早く埋葬しよう。
その中に黒い騎士を埋めようとした瞬間だった。
見慣れない冒険者が現れた。金髪金眼に黒いコートを羽織った男だ。
「お前がマルスを殺したのか!」
冒険者が叫んだ。そして剣を抜くその冒険者。
私が答える。
「大勢の人がいる前で発狂していたのよ。誰かを殺してもおかしくない状況だったから、私が闘って彼を討ち取ったの。何か問題があるかしら。」
「マルスは発狂状態だったのか。あれだけあの甲冑には気を付けろと言っていたのに我を失うなんて。あいつは馬鹿な奴だな。何が最強の戦士になりたいだ。あんな呪われた甲冑を使っても女子供に負けてしまっているじゃないか。哀れだ。余りにも虚しい。あいつは惨めに死んだのか?君に殺されて?」
剣をしまう冒険者。哀しみが伝わってくる。
エリカが口を開く。
「マルスさんは立派に闘っていたよ。何度もウチのエリスは死にかけたんだ。無様な死に方じゃない。最高に強い戦士として生きて闘って死んでいったんだ。惨めな死にざまなんかじゃないさ。」
「そうか。あいつの事を俺がちゃんと見張っていれば良かった。俺は日に日に甲冑に犯されて正気を失っていくマルスを放っておいたんだ。俺にも今回の事件に責任がある。甲冑を脱がせるべきだった。ただ呪いの黒甲冑はこれで世には出回らないで済むだろう。」
あの甲冑只者では無いと思っていたけれどやっぱり呪われた品だったのね。着たら死ぬまで体が朽ち果てても何度でも戦わされる甲冑か…気分が良くないわね。これも闇の歴史のアーティファクトなんでしょう。
昔の人はこんなものを作って喜んでいたのかしら。一体何のために?変わった処刑の為?それともここの戦士の強さを追い求める為かしら?何れにせよ制御のつかない狂戦士を作り出したって意味は無いでしょうに。
私は…彼の事を忘れない。私もあの黒甲冑があったら装着してイーストリア帝国と体が砕き果てるまで闘い続けたかもしれないもの。他人事の様に思えないわね。
私はマルスの遺骸に土を掛けた。埋葬するために…
「マルスさんの事は絶対に忘れないわ。私の生涯で最強の敵だった。あそこまで強い戦士は今後現れるかどうか分からないわ。彼の強さを追い求める信念に敬意を表します。だから名も知らぬ冒険者さん。どうか彼を卑下しないでやって頂戴。彼は闘い抜いたのよ。そして死んだわ。もう蘇らない。黒い甲冑の能力を超えてダメージを受けて死んでいったの。」
「…あいつは天国でも強さを求めているのかな?何のために闘っていたか最後には分からなくなってしまったかもしれないけれど、あいつ本当は魔王を倒す事が目的だったんだ。…俺の名前はフリードリヒ。マルスとフリードリヒの二人で魔王を討伐する事が目標だった。この大陸には魔王は居ないみたいだけど…どこかにいる絶対悪の魔王を倒そうって二人で誓って旅に出ていたんだ。こんな所で終わるなんて畜生…馬鹿野郎が。」
「きっと勝てたと思うよ。今のマルスさんは魔王をも砕くほど強かった。ただウチのエリスはもっともっと強かったんだ。この子はイーストリア帝国を一人で倒すぐらい強くならなきゃいけないから…背負っているものがあったんだ。マルスさんは魔王を倒す夢が…エリスはイーストリア帝国全てを根絶やしにする憎しみがあったんだ。ボクは見守っているだけだった。本当はボクの能力をフルに活用すればマルスさんを助ける事が出来たかもしれなかったけれどそれはしなかった。ボクもエリスの共犯者だ。文句があるならボクにいいな。受けて立つよ。」
フリードリヒは剣を抜いた。
「エリス。俺と戦え。マルスが死んだ今俺に生きている意味は殆どなくなってしまった。二人で超えていくと誓ったんだ。どんな障害も。あいつはやり方を間違ったから死んでしまった。人知を超える邪悪な物に魂を売り払って力を付けたんだ。それが君には通用しなかった。俺だって魔王打倒のために鍛えた冒険者…いや勇者と呼ばれた事もある男だ。君を…エリスの死を乗り越えて闘っていく。一人になったとしても魔王を倒すために闘い続ける。ここで死ぬのならそれも本望だ。俺もそこまでの男だったという事だ。さあ構えろ。」
「…そこまで言うのなら仕方ないわね。さあどこからでも掛かって来なさい。」
私はストームカリバーを抜いた。フリードリヒも剣を抜く。金色に輝く剣だ。あんなもの見たことが無い。私の持つ暗い黒の刀身に赤い刃紋が走っているストームカリバーとは大違いだ。
いわゆる聖剣と呼ばれる類の剣かもしれなかった。特殊な能力や祝福を使用者に与えるのだ。あれを装備しているだけで一筋縄ではいかないだろう。
「エリス。ボクは一切手助けできない。この勝負見届けさせてもらおう。フリードリヒとエリス…君達のどちらが生きてまた死ぬかボクには決められない。さあ立ち合うんだ。」
フリードリヒとの間合いは五メートル程、私はブラッドシールドを張った。
フリードリヒは剣を振りかぶってその名を叫んだ。
「カレイドブルフ!延伸磔刑開始!」
カレイドブルフが鞭のように刀身が伸び私を切りつけてくる。何だこの動きは…クッいなしきれない。体を何度か貫かれそうになるがブラッドシールドの保護により無傷で済んだ。
間合を開けたままではこちらの不利だ。一気に間合いを詰める!大地を蹴った。
跳躍してフリードリヒの目前に迫る。私の袈裟斬り!ストームカリバーの必殺の剣閃をカレイドブルフで弾かれる。流石聖剣の一種だけあって綻びたり、折れる事は無いようだ。
続けて剣技を叩き込む。三連突!カレイドブルフは鞭のように伸び縮していなされてしまった。龍閃!弾かれた。そのまま下に弾かれた刀身を逆に返して切りかかる。燕返し!胸を掠ったが致命傷ではない。
ハァハァ…殆ど全ての攻撃をいなされてしまった。不味いわね。
フリードリヒは後退して距離を開けた。三メートル。
「そんなものか!こちらから行かせてもらうぞ!カレイドブルフ!鞭斬!」
鞭のようにしなるカレイドブルフが迫ってくる。このままでは致命の一撃を貰う。
ブラッドシールドを張り直した。
ストームカリバーを上下左右に素早く振り、鞭斬をいなす。しかし上にしなる一撃が腕を穿った。ブラッドシールドの上を細かく何重にも鞭斬を加えられ装甲が貫通する。右腕が千切れ飛んだ。
当然ストームカリバーも吹き飛んでしまう。無防備な体でカレイドブルフの鞭斬を受け続ける。腹部貫通。胸部貫通。心臓破壊。…致命の一撃を受ける。だがそれくらいでは私は死ねない。これも一種の呪いなのだろう。唱える回復の魔法を…
ブラッドヒーリング!傷を受けた箇所が急激に塞がり右腕が生えてきた。常識外の蘇生能力。
「何なんだ?その回復能力は…だから狂戦士状態のマルスが敗れ去ったのか…あいつが負けた理由がはっきりと分かった。俺達にはそんな回復能力は無いからな。黒い甲冑は傷を治しているように見えるが、無理やり戦えるように締め付けて補強しているに過ぎない。君のその技は傷そのものを完全に遡行して治癒してしまっている。破格の魔法だ。信じられないよ。これでは何れ敗れ去るだろう。…いや手はあるな。即死させれば良い。それだけだ。」
闘っている最中にペチャクチャお喋りする趣味は無い。彼の一瞬の隙を狙ってストームカリバーを拾い彼の前に躍り出た。突然の事で動揺したようだ。その一瞬の隙を穿つ。
「喰らいなさい!」
袈裟斬り!命中。肩から右腕を切り落とした。カレイドブルフも地面に落ちる。
龍閃!胴体を薙いだ。血が噴き出る。大量出血。最早フリードリヒに戦意は無い。だがここで手を緩めない。殺しきる。
三連突!腹部・心臓・首に三回連続の突きをかました。心臓を破壊された事が致命の一撃となりフリードリヒは崩れ落ちた。
「ハァハァ…やったわ。これでもう立てないでしょう。フリードリヒ。貴方の負けよ。」
カレイドブルフから輝きが失われる。持ち主の傷の蘇生に宿っていたマナが使われたようだ。立ち上がるフリードリヒ。
「こっちにも奥の手があるって事さ…カレイドブルフ…ビーストモード。お前の敵を喰らいつくせ。呪印暴走開始!いくぜエリス。これが全身全霊の全てを捨てた一撃だ…」
そう言うとカレイドブルフはフリードリヒを包み全身に棘がある獣へと姿を変えた。最早戻れないのだろう。直感でそう感じる。フリードリヒは死に今は勝利のために何でもやる獣がいるだけだ。
私に思い切り突っ込んでくる。私はストームカリバーを上段八双に構えて時を待った。時の雫が一瞬穿つその瞬間、全身全霊の一撃を叩き込んだ。最高の袈裟斬りだった。
突っ込んで来てまともに受けたフリードリヒだった獣は頭から尻尾の先まで真っ二つに切り離された。即死だったのだろう。
「終わった。もう終わったんだよ。エリス。フリードリヒの負けだ。蘇生は出来るけどしてあげた方が良いかな?」
エリカは困った様子だ。当たり前だろう。どちらが生きるか死ぬかの戦いを繰り広げたというのに蘇生したらプライドを著しく傷つける事になる。
正直私からも決められないが、勝者としての生殺与奪があるとするのなら、フリードリヒにはまだ生きていてほしいと思った。生きて一人でも魔王を討伐するために闘い抜いてほしい。それが私の願いだ。ここで倒れて埋もれていく男では無い筈だ。
「私…私は蘇生してやった方が良いと思う。とても勝手な願いだけれど彼にはまだ生きていてほしいのよ。」
「分かったよ。エリス。勝者の君の願いなら聞かないわけにはいかないね。コードフェニックス。強制蘇生開始!」
そうエリカが唱えると真っ二つになって死んでいたフリードリヒの体はくっつきしばらくすると息を吹き返した。
辺りを見回し状況を把握するフリードリヒ。
「そうか…俺は死んでしまったのか。…何故甦らした?マルスは死んだままなのに。何で俺を蘇らせたんだ!答えろエリス!」
私は重い澱の様な物が体に溜まっていく感じがした。重い口を開く。
「貴方には生きてほしいのよ。フリードリヒ。マルスはもう間に合わなかったけれど。貴方はまだ間に合う。生きて魔王を討伐する事が出来ると思うの。その為に生きて生き抜いて。」
フリードリヒは絶叫する。受け入れられないというように。魂が拒絶しているのだ。彼の戦士の魂が負けて生き恥を晒す事を拒絶している。
「まだ生きろというのか!マルスを殺されて、その仇すら討てないで…まだ魔王を倒す為に俺は生き続けなくてはいけないというのか。どれだけ残酷で惨い事を言っているのか分かっているのか。エリス。君は…君は…君さえ超えられればまた歩み出せると思っていたのに…君に負けちゃ…生きていちゃ駄目なんだ。そう俺は決めたのに…畜生。」
ああ…これが哀しみなのね。私の胸は彼の哀しい決意に打たれた。自然と涙が溢れてくる。
それでも私は告げる。私は謳う。生きろと…
「それでも生き抜いて。立ち上がってみなさい。マルスの狂った死に様を無駄にするかどうかが掛かっているわよ。貴方まで死んで全てを失ってどうなるっていうの!甘ったれるな。立って打ち克ちなさい。フリードリヒ!これからは一人でこれまでの事を背負って生きていくのよ。男でしょ!ここで負けるな。自分のプライドを言い訳に死にたがるな!マルスに本当に顔向けできると思っているの?出来ないでしょ。こんな死に方じゃ。悔しかったら魔王を一人で打ち破ってみろ!私より魔王はもっと強いと思うけどだからこそ挑みなさいよ!また仲間を集めても良い。一人でも良いから魔王をこの地上から駆逐して見せなさいよ!仮にも勇者なんでしょ。闘え。死んだマルスの為にも!」
フリードリヒはハッとしている。私の言葉に胸を打たれたようだった。
「ありがとう。エリス。これからは一人で生きていく。死んだマルスの為にも…そして俺自身の為に…必ず魔王は討ち果たす。それは誓おう。俺は勇者フリードリヒだ。魔王に遅れなんて取らない。いや今日から負けは許されない。エリス…君は俺が負けた最後の人間になるだろう。必ずこの約束を守るよ。マルスの事は許せないけれど…胸を貸してくれてありがとう。そしてさようならだ。いつか子供達に語り継がれる夢物語の中に俺は生きていくのだろう。その時きっとあえるさ。じゃあな。最強の女戦士。エリス。」
そういうとフリードリヒは立ち去っていった。彼はもう大丈夫だろう。
エリカだ。闘いが終わり安心した様子だ。
「彼も本当に強かったね。エリス。君が死ぬかと思っていたけど勇者相手に勝ってしまうなんてね。どんどん強くなるな君は。どれ程強くなったらイーストリア帝国を滅ぼせると思う?」
イーストリア帝国と闘う日か…段々近づいているのかもしれない。今帝国と闘っているバディスタ王国もどれだけ持つか分からない。そうすればこのシャウヤーン連合地帯にもイーストリア帝国の魔手が伸びてくるだろう。どれ程の時間が残されているのか私には見当もつかなかった。
エリカに応える。
「まだ足りないわよ。きっと。もっともっと強くならなければ。一人で戦況を引っ繰り返せる程強くなるにはまだ強さが足りないわよ。まあエリカには期待させてもらうわ。帝国との闘いでは全力の力を見させてもらうわよ。」
エリカはにんまりと笑う。頼られて嬉しいのだろうか。この子は裁定者の様な立ち回りをするかと思えば妙に子供っぽいところがあって私には分からない。まあその子供っぽいところが可愛いとは思うのだが。
「エッヘン。イーストリア帝国との闘いの際は任せなさい。万の軍勢だろうとちぎっては投げちぎっては投げで片付けて見せよう。今から闘うのをワクワクしているよ。何たってボクが本気で遊んであげてようやく壊れるオモチャなんだもの。楽しみで楽しみで仕方ないよ。」
訂正…やっぱり子供っぽいのは怖いのかもしれない。後先考えずにギフテッドの能力を振り回しそうで怖い。
私達は墓地でマルスの埋葬を終えると宿屋に戻ることにした。戻りながら会話する。
「ねえ。ブリジストの町にはいつまで居るつもりなの?」
「そうね。イーストリア帝国の出方次第ね。今はまだ町を出る気は無いけれど…もう少しで最前線の町を渡り歩くようになるかもしれないわ。それだけは覚悟しておいて頂戴。それにこの町もイーストリア帝国に襲われるかもしれないしね。今の所バディスタ王国が陥落したって情報は無いから大丈夫だと思うけれど。」
「そっか。この町とはまだお別れしなくても良いんだ。折角マスターと仲良くなった事だし、もう少し居たかったんだ。良かった良かった。」
「それも何時までも長く続かないと思って頂戴。さあ宿屋に付いたわよ。」
眼の前には宿屋があった。相変わらず殺風景な部屋に戻る。時刻は夕方に差し掛かっていた。
「フリードリヒは一人で大丈夫かな。落ち込んだり、くよくよしたりしないかな?どう思うエリス?彼にそんな心配は必要ないかな?」
「大丈夫でしょう。エリカの好みのタイプだった?だから気になるのかしら?」
「違うやい。あんなにズタボロになって強気を保っていたけれど、ポロポロ弱い所が出ていたからさ。今になって心配になってきたんだ。」
「そう言う事にしておきましょうか。きっと大丈夫よ。いつか彼とその仲間が魔王を討つはず。そう私は信じているわ。この大陸に魔王は居ないから、遠い異世界の話になってしまうかもしれないけれどね。さあもう休みましょう。明日からまた依頼の日々よ。」
「はーい。分かったよ。それにそろそろイーストリア帝国との闘いも視野に入れないとだね。」
「ええ。その時は近いうちに必ず来るわ。それではお休み。エリカ。」
「お休みなさい。エリス。」
0
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる