ものひろいの能力もらったけど魔法と恋愛に夢中です。

紫雲くろの

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亡国の姫君編

第52話 成長

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ある有名なことわざがある。

天は二物を与えず・・・

誰が、どういう意味で言ったんだっけ?
まぁいいか、俺の元いた世界じゃみんな使ってたし、昔の偉い人が考えて広めたんだろう・・・。

でも・・・いや、始めからから話すよ・・・長い事の始まりからだ。


・・・・・・


アルドリア王国ー城内
相変わらず此処は漆黒の闇の中でサーバーの冷却ファンが出す熱と冷房が轟音を立てながら戦いを繰り広げている。
その最奥、暗闇をかき消すかのように復数のモニターが設置された場所で此処の主と話をしていた。

「私の分身体が消息を絶ったのはこの街ね。」

「至って普通の廃墟の街だが?」

「レイヴン王国・・・魔法で栄えた都なのだけれど、不思議なことに約100年前から情報が全く無いわ・・・。」

「全くってことは無いだろ・・・学園の図書館とか、お前なら国中の諜報もできるはずだが・・・。」

「当然それもやったわ。そもそも見たことも聞いたことも無いって人が大半よ。」

「幽霊じゃあるまいし・・・その座標には存在してるんだろ?」

「えぇ。監視衛星で確認済みよ。」

「行ってみるしかないか。100年ってことはロモ当たりが知ってそうだが・・・。」

次の瞬間天井から何かが降ってきた・・・この場合、降りてきたという方が適切だろう。
降りてきたそれは、ゆっくりと立ち上がり見慣れた姿へと変わった。
「呼んだかにゃ?」

「うわっ・・・っていつから・・・」

「24時間付きまとわれてるわよ?」

此処に来るまでにナシェはもちろんリンや1番厄介であるモニカを苦労して撒いたのだが・・・。
「そういえばいつもお前の姿が見当たらないよな・・・。」

ロモが抱きついてくる。
「当然、おはようからお休みまで一緒にゃ。」

「2人分でストーカー被害出していいか?」

「この世界に出せるところがあればね。」
「そうにゃ。」

「はぁ・・・。で、ロモどうなんだ?」

「100年前・・・ちょうど大戦中だったときにゃね。いやーあの時は大変だったにゃ。」

「前魔王が世界征服しようとしていたころね・・・」

「大変って、奪取者よりもか?」

「そうにゃね。酷い時だと週に一回のペースで街が滅んでたから、規模が違うにゃ。」

「テウリアぐらいの街が週一で滅んでたのか・・・・」

目の前の獣人は平然とした顔でとんでもないことを言い放つ。
「ちなみにテウリアも一回滅んでるけどにゃ!」

「さらっと凄い事ねじ込んでくるな。」

「まぁなんとか復興させたけどにゃ!」

「もしかして、ロモってすごいのか?」

「お前、さらっと失礼な事言ってないかにゃ?」
「この男は昔からこんな感じよ。」

「いや、テウリアの件から馴染み過ぎて普通の女の子としてしか見てなかったな。」

「はぁ・・・。なら少し抱いてくれてもいいと思うけどにゃ。」

「肌触り良さそうだしな。」

「そうじゃないにゃ。アイツみたいなこというんじゃないにゃ。」

「あいつ?」

「なんでも無いにゃ・・・」

「やはり大戦時に滅んだ街に特典があるってことでいいのかしら?」

「聞いたこと無い街だけど、その可能性が高いにゃ。」

「アカネの分身体が消えたのも特典の力か?」

「詳細はわからないけどその可能性が高いわね。」

「そうなると危険な特典の可能性が高いにゃね。」
「あぁ。ということはナシェたちは巻き込めないな。」

ジト目でロモがこちらを見てくる。
「私の事は巻き込んで良いのかにゃあ?」

「だって不老不死だろ?」

「はぁ酷いにゃ・・・・。なんで私はこんな奴の事を・・・・」

「それに・・・。」

「それに何にゃ?」

「俺はロモのことを信頼しているからな。」

その言葉を聞いた獣人は恥ずかしそうに顔をそらした。
「ば、馬鹿!そんな事言ったってなにもでないにゃ!」

「そういうところね。」

「まぁいいにゃ。仕方ないから私も同行するにゃ。」

「ありがとうなロモ!」

「ふんっ!」

・・・・・

翌日、俺は自室で旅の準備をしていた。
もちろん、ものひろいで準備は不要で、何なら一瞬で帰ってこれるので必要はなかったが気分を引き締めるために旅の準備をしていた。
これはこれで必要な準備であった。

「コウ君、ロモちゃんと何処か行くの?」

「ナシェ、なんでわかったんだ?」

「ロモちゃんが笑顔で旅行の準備してたから。」

「ロモのやつ・・・」

「それに今ね、屋敷の門のところで嬉しそうに待ってるから・・・。」

ゆっくりと窓から門の方を覗くと、嬉しそうに尻尾をくねらせる獣人と目が合う。
こちらを24時間監視するレベルで隠密行動が得意な彼女も、何故かこういうことには爪が甘いようだ。

「ナシェ・・・。これは国からの依頼でな・・・・。」

「そうなんだ。でもロモちゃんは良いんだね。」

「ロモは領主だし、それにナシェを危険な目に合わせたくないんだ。」

「えっ!?危険な依頼なの!?」

(しまった・・・。蛇足だったな・・・。)

「いや・・・まぁ・・・普通の任務だよ。」

ナシェがジト目でこちらを見てくる。
「ふーん。でもコウ君が嘘つく時、微妙に手が震えるよね。」

「何!?」

「嘘だよ♪」

この幼馴染はこう見えて、かなりやり手のようだ。
「ぐっ・・・。」

「やっぱり危険なんだね・・・。」

「すまない、ナシェ・・。」

手を広げて何かを目で訴えるかのようにこちらを見てくる。
「んー」

「あぁ・・・。」

俺はナシェを抱きしめる。
「絶対に帰ってくるからな。」

「うん!待ってる!」

しばらくして離れると俺はカバンを持って部屋を出る。
「いってらっしゃい!コウ君」

「あぁ、いってきます。」

俺がドアノブに手を掛けた瞬間だった。
視界に大量の状態異常通知が表示される。

状態異常ーー麻痺
状態異常ーー中麻痺
状態異常ーー強麻痺
状態異常ーー毒
状態異常ーー猛毒
状態異常ーー混乱
状態異常ーー強混乱
・・・・

「これは・・・・。」

アイテム自動使用が発動しているにも関わらず俺は床に横たわっていた。
すると仕掛けたであろう犯人が扉をあけて入ってきた。
その人物は恍惚な表情を浮かべて俺の目の前でしゃがんだ。

「ふふっ、やりました。」

「モニ・・・・か・・・。」
(猛毒とか混じってるんだが・・・・。)

「コウ君!大丈夫!?」

「私は、行かせませんよ。」

普段、俺はモニカへの対策として特典級アイテムを使用し状態異常耐性を身に着けていた。
特にモニカが常用してくる麻痺に関しては対策を完璧に行っていたはずだった。

「なぜって顔をしてますね。これでも一応は薬屋の娘ですし、魔王様に力添えをいただいたので・・・。」

(そういうことか・・・。)

魔王という単語で俺は納得した。
そもそも、状態異常耐性とアイテム自動使用は俺自身を守る一種のセキュリティである。
前世ではハッカーであった魔王からすれば、その程度のセキュリティを突破することなど朝飯前なのだ。
そして目の前の薬屋の少女は、その魔王の協力もあってか、それらのセキュリティを易易と突破するほどの腕前になっていたのである。
さらに元プログラマーのチエミの孫という資質もあってか余計にタチが悪かった。

「色々と溜まっているので・・・」

「も、モニカちゃん!?色々って・・・って脱がないで!!」

「ナシェちゃんも一緒にする?」

「わ、私は・・・」

幼馴染は真っ赤になると下を俯いた。
(そこら辺の扱いもなれているのか・・・。)

「さぁ、コウさん・・・。」

モニカの手がこちらに向かってくる。
次の瞬間、黒い紐がモニカの手首を引っ張ると少女の手をドアノブに触れさせた。
「きゃぁっ!」

ドアノブに触れた少女はぐったりと倒れ込んだ。
魔王レベルにもなると対策はしてくるだろうとおもうが、初心者ハッカーは自身の攻撃に弱い。
幸いにも魔法は使えたので砂鉄を使って操り人形の要領で、体を動かしながらゆっくりと立ち上がった。

「ギリギリだな・・・知己。」

「モニカ様は無事のようです。」

「そうか。回復方法は?」

「検索しましたが、ありません。」

下手な奪取者よりも強力だった。
なんなら特典アイテムを無視できるほどの調合技術を持つ彼女であれば奪取者を倒せるレベルだろう。

「はぁ・・・。もう少しまともならなぁ・・・。」

そう言いながら落胆していると、なぜか再び体が重くなった。
「ぐっ・・・。薬の効果が強く・・・」

ゆっくりと動かせなくなった腕を見ると紐状に伸ばした砂鉄だけが焼ききれていた。
「いや・・・これは・・・。」

「コウさん。私も行かせたくありません!」

その人物は仁王立ちをしながら扉の前に立っていた。

「リンちゃん!?」
「リンか・・・。次から次へと・・・。」

「次から次とは何ですか!私だって心配なんですから!」

再び砂鉄をつなぎ合わせると俺はゆっくりと立ち上がる。
「すまなかった。そこを通してもらえるか?」

「通すと思いますか?」

まさかの3連撃・・・・あの嫁が来ないことを願うばかりだ。
その瞬間腕に痛みが走った。
「いっ・・・!」
それはリンが放ったであろう魔法によるものだった。

「自動使用は行けそうなので多少荒くても良さそうですね!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

そう言いながら俺はいつもどおりに砂鉄を展開した。

「待ちません!私も成長したんですから!」

そういいながら彼女は背後に展開していた砂鉄を魔法で焼き切っていく。

「なんて速度だ・・・。」

そのスピードと精度から、もはや不可視に近いそれを行使できる彼女もまた奪取者よりも強力と言わざる負えないだろう。
俺は自身をカモフラージュにして後ろから網のように砂鉄の紐を組み展開する。
彼女に向けられたそれらは即座に細切れにされていった。

「遅いです!」

「仕方ないな・・・」

その魔法を防ぐために俺は聖剣を手にした。

「ふふっ、それです!それが見たかったんです!」

するとリンの手に電気を帯びた白い剣が現れる。
あまりの高温から白く見えるそれは聖剣に近しいものであった。

「行きますね!」

刹那、斬撃を防いだはずの聖剣が真っ二つになり上半身を浅く切り刻まれた。
切断されると同時に傷口を焼かれ、またその高温によって爆風のような衝撃が発生した。
その衝撃で尻餅をついていた俺にリンが白い剣をかざす。

「ぐっ・・・。」

「あの時と状況が逆ですね・・・って別人でしたね。」

壊れないとイメージして発動した聖剣が破壊されたということは、彼女の繰り出す魔法のイメージがこちらを上回っていたということであった。
それは同時に魔法のレベルとしてもこちらを上回っているということでもあった。
俺はすかさず別のイメージで聖剣を握るが何の変化も起きなかった。

「魔王の修行の成果といったところか・・・。」

「えぇ、やっと・・・この時を待っていたんですよ・・。」

「この時・・・?」
その言葉の意味がわからず俺は考え込んだ。

「私はテウリアの時にほとんど1人で解決しようとするコウさんが心配でした。
血だらけで宿に戻ってきたこと・・・強大な力を持った敵にすら諦めずに立ち向かったこと・・・。」

「あぁ、それがあったから俺は強くなろうとしたんだ。」

「ナシェさんの時だって。あなたは1人で届かないはずのところまで行こうとする。」

「あぁ・・・。リンたちを守れないからな。」

リンは下を俯いた。
「ここまで言っても・・・気が付かないんですね・・・。」

「どういう・・・。」

いつの間にか少女は涙ぐんでいた。
「本当に、私達は・・・あなたの足手まといにしかならないんですか・・・・」

「っ!?それは違う、リンやモニカの協力があったからこそナシェが無事で居られたんだ。」

涙を流しながらリンはこちらに抱きついてくる。
今までの悔しさを表すかのように力強く抱きしめてきた。
「なら、もう少し頼ってくれてもいいじゃないですか!あの時みたいに泣きついていいですから!」

「それは・・・・。すまなかった・・・。」

「うっ・・・うっ・・・。」

少女はあられもなく子供のように感情を顕にして泣いている様に思えた。
「ごめん・・・。」

俺が彼女を強く抱きしめると、抱きしめ返してきた。
しばらくして泣き終わると涙を拭き、リンは立ち上がった。

「すいません、コウさん・・・私ったら・・・。」

「ありがとうリン、嬉しいよ!」

「はい、ですから・・・その・・・・。」
目の前の少女は恥ずかしそうに腕組みをしたあとに、こちらに手を差し伸べる。

「私があなたを守る剣になります。」

俺は迷わずにその手を取った。
「あぁ、頼む・・・。」

扉の向こう側で獣人が腕組みをしながら立っていた。
「リン、1人で抜け駆けは良くないと思うにゃあ・・・。」

「ロモさん!?」

「ま、こいつは鈍感だからにゃぁ・・・。女の子を泣かせるまでわからないにゃ!」

「ぐっ・・・。ごめん」

「はぁ・・・。ともかく、此処にいる全員がお前の力になりたいってことにゃ!」

「そうだよ!コウ君」

気がつくと隣に笑顔でモニカが座っていた。
しばらく動けなかったあの状態異常ですら彼女は多少の耐性をもっているようだ。
「コウさん、私もですよ。」

「モニカ・・・お前の体どうなってんだ?」

「ふふっ、見ますか?」

「そうじゃない。脱ごうとするな。」

背後から懐かしい声がした。
「まぁ、昼間からお盛んですこと!」
「相変わらずだな!コウ!」

「リーク、エンリカ!?どうして此処に。」

「魔法のさらなる修行を教えてもらおうと思っただけですの!」
そういうとエンリカはボロボロになったモンスターの素材を見せてきた。

「コウさん、私達だけじゃなかったみたいですね。みんなが強くなろうとしてるんですよ。」

「そうだぜ、中にはギルドで小遣い稼ぎをしてるやつもいるからな!」

「まぁ私が紹介してやったんだけどにゃ!」

「いいのかそれは・・・。」

「ともかく、おみゃーはひとりじゃないにゃ。」

「あぁ。」
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