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亡国の姫君編
第53話 回想
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魔王が大戦を初めてから2年。
世界の均衡が壊れるまでにそう時間はかからなかった。
始めは東の小国が壊滅したと聞き、小規模な討伐隊が編成されたかと思えば大国を巻き込む大戦までに発展していた。
もちろんその話は大国をリーダーとする連合軍に属する我が国も例外ではなかった。
数年に一度、近隣の国と半ば行事のような形で行われる戦しか経験してこなかった我が国では出兵前にも関わらず凱旋パレードのような盛り上がりであった。
昼間だというのに城下町のあちこちで祝砲が上がり、吟遊詩人の演奏につられて国民はジョッキを振り回しながら踊っていた。
城門の前では復数の騎馬が列を連ねており、各騎馬の横では金属音を立てながら忙しと騎士達が装備の手入れなどをしていた。
その中でも立派な純白の鎧を身にまとった騎士が、一際目立つドレスを身にまとった女性と別れを惜しむように話し合っていた。
「それでは姫様、行って参ります。」
「気をつけてね、マイル・・・。」
「大丈夫ですよ姫様。私には天より授かりし秘術があります。」
「ですが、隣国の中隊規模がやられたと聞いています。気をつけてください。」
「ははっ、あの国にはいつも勝利していますよ。それに大戦というものを私は夢で知っています。」
「それはそうですが・・・。」
私の暗そうな顔を見ると笑顔で彼はこちらを見つめる。
「秘術を持たない姫様こそお気をつけて・・・狙われないとは思いますが・・・。」
「マイル、それは嫌味ですか!?」
「ははっ、こうも休みがないと嫌味の一つぐらい言いたくなります。」
「休みですか・・・・。わかりました、帰ってきてからゆっくりと定めましょう。」
「えぇ、この国の凱旋記念日とでも致しましょう。」
「ふふっ・・・。待っています!」
その言葉を境に彼の手が離れ、周りの兵士たちの高まりを表すように激励が上がり続々と城下町へと繰り出していった。
そして言葉通り彼はこの地に帰ってきたが凱旋記念日が定めされることはなかったという。
・・・・・
二日後、彼らはこの大戦の最前線に居た。
自国よりも遥かに大きな土地を接収したであろう拠点には大量の武器や兵器が並んでいた。
夢で見たような不思議な形をした杖、過去に伝説級モンスターを撃退したとされる兵器が所狭しと並んでいた。
「此処が最前線・・・。何という品揃えか!」
「えぇ。ですがこれらすべて亡国からの引き払い品でございます。」
「何!?」
マイルは不思議で仕方なかった。
この世界で最先端とされるこれらの武器がほぼ新品に近い状態で此処に並んでいたことと、目の前の男が死んだ目を浮かべていることに。
まずはそれらが使われなかったこと・・・その考えを元に男は慎重に考えを進めた。
「つまり・・・使う余裕がなかったということか・・・・」
「はい・・・。」
次の瞬間、男はその真の意味を知ることになる。
山の向こうの空が昼のように赤くなったかと思えば巨大なキノコ雲が上がったのである。
「あぁ・・・・・・。あれは・・。」
そうマイルは知っていたのである。
不思議な夢の中で見た、遙か未来の大戦で使用されていた兵器・・・・。
なぜ目の前の武器が使用されなかったのかも想像に難くなかった。
「あれをご存知・・・ということはお告げを見られたのですね。」
「はい・・・・。」
「であればこの大戦の経緯はおわかりになると思います・・・。」
近くで待機していた兵士たちが大声を上げていた。
それは恐怖によるものではなく歓喜の声だった。
「おい、どういう事だ!」
「どうってあれは最強様の魔法だろ!」
「最強の魔法使い様がこの戦場に!?」
「あぁ、2日前に戦場入りしたと聞いたが。これで大戦も集結するだろうな!」
「おかしいですね。そのような情報は・・・。」
「なんにせよ。こちらに流れが来ているということだな!」
それからというもの男の表情は自信に満ちていた。
本来モンスターを倒す程度の魔法をあれほどの威力で行使できる噂に名高い魔法使い様がこちらにいると確信した彼は勝利を味わい始めていた。
だが彼がが真実にだどりついたのは戦地へと続く森林を抜けた後だった。
正確には森林がそこで途絶えていて、剥き出しの地面と生い茂る草によって何かを区切るように線引きされていた。
そこに踏み入れた兵士たちがそれがどのような意味を持つかを感じ取ると、徐々に場の雰囲気が張り詰めだす。
「何かがおかしい・・・・」
そこは本来木々が生い茂り豊かな自然が育まれた場所で有名な大森林であるが、それをひっくり返したような場所へと変わり果てていた。
先に数万と入ったはずの兵士の姿が1人たりとも見当たらず彼らが身に着けていたであろう武具だけが辺りに散乱していた。
それはまるで人だけを消したかのように・・・。
「ば、馬鹿な・・・・夢でもこんな光景は・・・・。」
周りの兵士たちが唖然としながら辺りを調査しているのを横目に、奥の岩の上に人影らしき人物が座っているのが見えた。
彼が目を凝らしてその人物を確認しようとした瞬間、反対側の兵士が叫んだ。
「おぉ、あれは魔法使い様だ!」
その声を頼りに一斉に兵士達がそこに注目する。
確かに見る限りは最強の魔法使いの証である白い帽子とマントを身に着けた青年がいる様に見えたが何かの違和感を感じた。
「ま、待て様子が・・・・」
「うがあっ!」
悲鳴を上げながら目の前の男が倒れた。
「て、敵か!」
それを皮切りに一斉に多くの兵士がその青年に向かって走り出した。
その刹那、目の前の青年の持っていた杖からまばゆい光が溢れた。
「しまっ・・・!」
しばらくして収まった光の中から膝を着いた彼と周りの兵士達が現れた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
「あ、ありがとうございます。騎士様、助かりました・・・・」
この土地の変わりよう、数時間前に見たあの光景、原因は推測どおりこの青年によるものだった。
おそらく彼があの最強の魔法使いで間違いないだろう。
だが連合軍の中核をなす最強の魔法使いの一族である彼が寝返る理由が分からなかった。
「なぜ、あなたは寝返ったのですか!!」
「・・・」
まるで人形を相手にしているかのようにその青年からの返答はない。
「人形・・・そうか・・・。」
再び青年の杖が光りだす。
「き、騎士様!」
「最強の魔法使い様、失礼いたします。」
そういうと私は手をかざし秘技を使った。
・・・
青年の遺体を埋めるとそこから私の騎士団は少し離れた森林にいた。
「な、なぜ最強の魔法使い様が敵に・・・・」
「精神操作系の秘技を持った敵がいる可能性が高いな。」
「た、確かに。おい伝令役にそれを伝えろ!」
「はっ!」
反対側にあった、こちらを見下ろすような大きな崖に異様な男が居た。
不気味ではあるがその男の姿は形容しがたく、辛うじて異様という言葉を当てはめることが出来た。
「お人形の気配が消えたと思ったら此処に居たんだね。」
「貴様は何者だ!」
こちらの声に耳を貸すこともなく品定めをするかのようにこちらを見渡す。
微かではあるが彼の右目が光っていた。
(魔眼持ちか・・・厄介だな・・・。)
「空間制御、地形操作、S級魔法・・・ほとんど外れかぁ・・・。」
空間制御、その言葉に私は反応した。
それは私が天より授かりし秘術の名称と呼べるものであった。
そしてやつが放った人形と外れという言葉に私は戦慄した。
即座に手をかざした。
「空間乖離!!」
すると目の前に透明な緑色の箱が現れる。
確かに何かの衝撃を受けたがそこには何もない。
「おー」
突然、秘技によって作り出された緑色の箱が崩れだす。
それは空間を隔絶することによって、最強の魔法使い様の魔法ですら完全に防ぐことができる代物であった。
それを崩壊せしめるほどの秘技を持った相手明らかに分が悪い状況であった。
「な、何をした!」
「さぁね。面白そうだしもらうね。」
「させるか!!空間乖離!」
私は自信を囲うように緑色の箱を展開した。
「楽に終わらせようと思ったのになぁ・・・」
周りに居た兵士たちが次々と倒れだした。
「貴様!」
次に私はやつに向かって手をかざす。
異様な男の首元に緑色の板が現れるとすぐに消滅した。
それは男の首元にある空間だけを消滅させる防御不可能な絶対攻撃だった。
それを食らってもなお男は立ち尽くしていた。
「ははっ、不老不死がなかったら死んでたよ!」
「貴様!」
私が再びやつを細切れにしようと手をかざしたときであった。
「手が上がらない・・・」
脱力感すら感じない、まさにそこだけ空間で切り取られたかのような間隔であった。
その違和感に腕を見てみると緑の箱のように崩れだしていた。
「くっ・・・」
「さぁ、頂戴・・・。君の能力・・・」
「姫様・・・すいません。約束果たせませんでした・・・・。」
そう云うと私の全身を緑の箱が覆った。
「空間滅・・・却・・・」
そこで私の意識は途絶えた。
世界の均衡が壊れるまでにそう時間はかからなかった。
始めは東の小国が壊滅したと聞き、小規模な討伐隊が編成されたかと思えば大国を巻き込む大戦までに発展していた。
もちろんその話は大国をリーダーとする連合軍に属する我が国も例外ではなかった。
数年に一度、近隣の国と半ば行事のような形で行われる戦しか経験してこなかった我が国では出兵前にも関わらず凱旋パレードのような盛り上がりであった。
昼間だというのに城下町のあちこちで祝砲が上がり、吟遊詩人の演奏につられて国民はジョッキを振り回しながら踊っていた。
城門の前では復数の騎馬が列を連ねており、各騎馬の横では金属音を立てながら忙しと騎士達が装備の手入れなどをしていた。
その中でも立派な純白の鎧を身にまとった騎士が、一際目立つドレスを身にまとった女性と別れを惜しむように話し合っていた。
「それでは姫様、行って参ります。」
「気をつけてね、マイル・・・。」
「大丈夫ですよ姫様。私には天より授かりし秘術があります。」
「ですが、隣国の中隊規模がやられたと聞いています。気をつけてください。」
「ははっ、あの国にはいつも勝利していますよ。それに大戦というものを私は夢で知っています。」
「それはそうですが・・・。」
私の暗そうな顔を見ると笑顔で彼はこちらを見つめる。
「秘術を持たない姫様こそお気をつけて・・・狙われないとは思いますが・・・。」
「マイル、それは嫌味ですか!?」
「ははっ、こうも休みがないと嫌味の一つぐらい言いたくなります。」
「休みですか・・・・。わかりました、帰ってきてからゆっくりと定めましょう。」
「えぇ、この国の凱旋記念日とでも致しましょう。」
「ふふっ・・・。待っています!」
その言葉を境に彼の手が離れ、周りの兵士たちの高まりを表すように激励が上がり続々と城下町へと繰り出していった。
そして言葉通り彼はこの地に帰ってきたが凱旋記念日が定めされることはなかったという。
・・・・・
二日後、彼らはこの大戦の最前線に居た。
自国よりも遥かに大きな土地を接収したであろう拠点には大量の武器や兵器が並んでいた。
夢で見たような不思議な形をした杖、過去に伝説級モンスターを撃退したとされる兵器が所狭しと並んでいた。
「此処が最前線・・・。何という品揃えか!」
「えぇ。ですがこれらすべて亡国からの引き払い品でございます。」
「何!?」
マイルは不思議で仕方なかった。
この世界で最先端とされるこれらの武器がほぼ新品に近い状態で此処に並んでいたことと、目の前の男が死んだ目を浮かべていることに。
まずはそれらが使われなかったこと・・・その考えを元に男は慎重に考えを進めた。
「つまり・・・使う余裕がなかったということか・・・・」
「はい・・・。」
次の瞬間、男はその真の意味を知ることになる。
山の向こうの空が昼のように赤くなったかと思えば巨大なキノコ雲が上がったのである。
「あぁ・・・・・・。あれは・・。」
そうマイルは知っていたのである。
不思議な夢の中で見た、遙か未来の大戦で使用されていた兵器・・・・。
なぜ目の前の武器が使用されなかったのかも想像に難くなかった。
「あれをご存知・・・ということはお告げを見られたのですね。」
「はい・・・・。」
「であればこの大戦の経緯はおわかりになると思います・・・。」
近くで待機していた兵士たちが大声を上げていた。
それは恐怖によるものではなく歓喜の声だった。
「おい、どういう事だ!」
「どうってあれは最強様の魔法だろ!」
「最強の魔法使い様がこの戦場に!?」
「あぁ、2日前に戦場入りしたと聞いたが。これで大戦も集結するだろうな!」
「おかしいですね。そのような情報は・・・。」
「なんにせよ。こちらに流れが来ているということだな!」
それからというもの男の表情は自信に満ちていた。
本来モンスターを倒す程度の魔法をあれほどの威力で行使できる噂に名高い魔法使い様がこちらにいると確信した彼は勝利を味わい始めていた。
だが彼がが真実にだどりついたのは戦地へと続く森林を抜けた後だった。
正確には森林がそこで途絶えていて、剥き出しの地面と生い茂る草によって何かを区切るように線引きされていた。
そこに踏み入れた兵士たちがそれがどのような意味を持つかを感じ取ると、徐々に場の雰囲気が張り詰めだす。
「何かがおかしい・・・・」
そこは本来木々が生い茂り豊かな自然が育まれた場所で有名な大森林であるが、それをひっくり返したような場所へと変わり果てていた。
先に数万と入ったはずの兵士の姿が1人たりとも見当たらず彼らが身に着けていたであろう武具だけが辺りに散乱していた。
それはまるで人だけを消したかのように・・・。
「ば、馬鹿な・・・・夢でもこんな光景は・・・・。」
周りの兵士たちが唖然としながら辺りを調査しているのを横目に、奥の岩の上に人影らしき人物が座っているのが見えた。
彼が目を凝らしてその人物を確認しようとした瞬間、反対側の兵士が叫んだ。
「おぉ、あれは魔法使い様だ!」
その声を頼りに一斉に兵士達がそこに注目する。
確かに見る限りは最強の魔法使いの証である白い帽子とマントを身に着けた青年がいる様に見えたが何かの違和感を感じた。
「ま、待て様子が・・・・」
「うがあっ!」
悲鳴を上げながら目の前の男が倒れた。
「て、敵か!」
それを皮切りに一斉に多くの兵士がその青年に向かって走り出した。
その刹那、目の前の青年の持っていた杖からまばゆい光が溢れた。
「しまっ・・・!」
しばらくして収まった光の中から膝を着いた彼と周りの兵士達が現れた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
「あ、ありがとうございます。騎士様、助かりました・・・・」
この土地の変わりよう、数時間前に見たあの光景、原因は推測どおりこの青年によるものだった。
おそらく彼があの最強の魔法使いで間違いないだろう。
だが連合軍の中核をなす最強の魔法使いの一族である彼が寝返る理由が分からなかった。
「なぜ、あなたは寝返ったのですか!!」
「・・・」
まるで人形を相手にしているかのようにその青年からの返答はない。
「人形・・・そうか・・・。」
再び青年の杖が光りだす。
「き、騎士様!」
「最強の魔法使い様、失礼いたします。」
そういうと私は手をかざし秘技を使った。
・・・
青年の遺体を埋めるとそこから私の騎士団は少し離れた森林にいた。
「な、なぜ最強の魔法使い様が敵に・・・・」
「精神操作系の秘技を持った敵がいる可能性が高いな。」
「た、確かに。おい伝令役にそれを伝えろ!」
「はっ!」
反対側にあった、こちらを見下ろすような大きな崖に異様な男が居た。
不気味ではあるがその男の姿は形容しがたく、辛うじて異様という言葉を当てはめることが出来た。
「お人形の気配が消えたと思ったら此処に居たんだね。」
「貴様は何者だ!」
こちらの声に耳を貸すこともなく品定めをするかのようにこちらを見渡す。
微かではあるが彼の右目が光っていた。
(魔眼持ちか・・・厄介だな・・・。)
「空間制御、地形操作、S級魔法・・・ほとんど外れかぁ・・・。」
空間制御、その言葉に私は反応した。
それは私が天より授かりし秘術の名称と呼べるものであった。
そしてやつが放った人形と外れという言葉に私は戦慄した。
即座に手をかざした。
「空間乖離!!」
すると目の前に透明な緑色の箱が現れる。
確かに何かの衝撃を受けたがそこには何もない。
「おー」
突然、秘技によって作り出された緑色の箱が崩れだす。
それは空間を隔絶することによって、最強の魔法使い様の魔法ですら完全に防ぐことができる代物であった。
それを崩壊せしめるほどの秘技を持った相手明らかに分が悪い状況であった。
「な、何をした!」
「さぁね。面白そうだしもらうね。」
「させるか!!空間乖離!」
私は自信を囲うように緑色の箱を展開した。
「楽に終わらせようと思ったのになぁ・・・」
周りに居た兵士たちが次々と倒れだした。
「貴様!」
次に私はやつに向かって手をかざす。
異様な男の首元に緑色の板が現れるとすぐに消滅した。
それは男の首元にある空間だけを消滅させる防御不可能な絶対攻撃だった。
それを食らってもなお男は立ち尽くしていた。
「ははっ、不老不死がなかったら死んでたよ!」
「貴様!」
私が再びやつを細切れにしようと手をかざしたときであった。
「手が上がらない・・・」
脱力感すら感じない、まさにそこだけ空間で切り取られたかのような間隔であった。
その違和感に腕を見てみると緑の箱のように崩れだしていた。
「くっ・・・」
「さぁ、頂戴・・・。君の能力・・・」
「姫様・・・すいません。約束果たせませんでした・・・・。」
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「空間滅・・・却・・・」
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