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亡国の姫君編
第62話 悪い虫
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王城の大広間では、午前中にもかかわらず社交界のような優雅な雰囲気を醸しながら作戦会議が行われていた。
純白のシーツが掛かった大きなテーブルに普段とはまた違った豪勢な料理がこれでもかと言わんばかりにならんでいる。
その近くで見慣れないこの国の要人と思われる人物たちが飲食をしながら壇上の王女の説明を聞いていた。
タブレット端末で見たであろう電子戦の情報を元に手書きでスケッチされた資料が壁に貼られ、それを次々と雄弁に説明していく。
それらは当初彼女が目を輝かせるほどのエゴに過ぎなかったが、此処の会場にいる全員に突き通せるほど鋭意なものになっていた。
説明から見事に昇華した演説が終わると会場はヒートアップし拍手喝采に包まれる。
その興奮が冷めないのか優雅に飲食をしていたはずの要人達は獅子奮迅の如く我先にと大広間を飛び出していく。
傍から見ていたこちらにもその熱気がひしひしと伝わってきた。
「王女様の演説すごかったにゃ。」
「ははっ、こりゃ策士だな」
先程まで対抗心を燃やしていた少女もそれに圧倒されたのか称賛を送るほどであった。
「相手ながらあっぱれですね。」
「あぁ・・・。そうだな・・・。」
俺はその熱気と共にあの時感じていた違和感も感じていた。
演説から分かる圧倒的なカリスマ性・・・彼女ならば羽虫をグリフォンに、何処かの獣人を白虎に見せる事は造作もないだろう。
だからこそ勘定が合わない・・・アカネ同様に奪取者を簡単に屠(ほふ)る事が出来るであろう人物がこちらを頼ってくることに・・・。
(考え過ぎか・・・)
そんな思惑や熱気をお構いなしに幼馴染は平然としながら話しかけてくる。
こんな時だからこそ、ナシェの存在、その無邪気がありがたかった。
「コウくん、マフラーなんかして寒いの?」
「あぁ・・・それはだな・・・(まずいな・・・)」
その後の展開を悟った俺は冷静に対処する。
寒いと言おうものなら、彼女は喜んで倒れるほど温めてくれるだろうが・・・・。
「これは虫さされを隠すためにしてるんだよ。」
そういうと俺はマフラーの一部を避けて首に出来た赤い斑点の箇所を彼女に見せる。
「うわっ!ひどい虫刺されだね!!」
「あぁ、寝室に悪い虫がいたんだ・・・。そのせいで若干寝不足だ。」
そう言うと隣りにいた犯人がこちらの脇腹を見えないようにつねってくる。
「いっ・・・」
「えぇ、わ・る・い・虫がいたんですよ。」
「リンちゃんは大丈夫だったんだね。」
少女は赤面しながら目を逸らし返答した。
「は、はい・・・何故か大丈夫でした。」
その様子を見ていた獣人は何かを察したのか、犯人を見ながらツッコミを入れてきた。
「随分と行儀の悪い虫もいたものにゃねぇ・・・。」
「うぅ・・・そうですね・・・。」
グラスは酒瓶を片手に、顔を赤くして気持ち良さそうに酔っ払っていた。
「俺も気をつけねえとなぁ!!」
モニカは口元に手を当てそんな先祖を叱る。
「酒臭いです!!あなたは虫の方でしょ!!もしかして相手はユリアさんですか?」
「ハッハッハ、流石に嫁ぐらいにしかしてねえよ!!嬢ちゃんにもしておくか!」
「キモ過ぎて、引きますね・・・。」
次の瞬間、仰向けに男は倒れた。
「ぐっ・・・。嬢ちゃん・・・・いつの間に・・・。」
「さぁ、いつでしょうか?」
モニカとその先祖の他愛の無いやり取りを見ていた俺は彼女の祖母チエミを思い出していた。
前世ではチエミによくキスマークを付けられていたのだ。
「遺伝か・・・・」
「あ?なんて言ったガキ!?」
「いや、なんでも・・・。」
「あっ・・・此処にも虫さされが!」
そう言うとモニカはこちらの首元に顔を近づけてきた。
チュッ!
一瞬そんな音が聞こえ痛みが走った。
「おい、モニカ・・・。」
「モニカさん・・・」
「な、何でしょうか!?私の薬をつければすぐに治りますよ。」
笑顔でモニカが薬の入った瓶を渡してくる。
それをリンはすかさず掴んだ。
「ありがとうございます、モニカさん!!」
「なぜ、リンさんが受け取るんですか?」
「後で、私が彼に付けておきますから大丈夫です・・・」
「それなら、今ここで私が彼に優しく付けます!!キスマークと一緒に!!」
「いいえ!悪い虫に付けてもらわなくても大丈夫ですから!!」
「あなたに言われたくありませんよ!!」
両者は一歩も譲らず、薬の入った瓶の掴み合いが始まった。
虫さされ程度であれば低級回復薬で十分なのだが・・・。
当然、付けた当人達がそれを許してくれるわけもない。
「はぁ・・・・」
王女は悠然と歩きながら話しかけてきた。
「変ですね・・・ここは虫一匹通さない程の警備をしているはずなのですが・・・」
先程まで大勢の前で演説を行いこの場を最高潮へと導いた人物は揺らぐこともなく平然としている。
薬の掴み合いをしていたはずの少女達は自然と息を合わせ、警戒するように王女の前へと立ちはだかった。
お互いに瓶を掴みながら少女達は息を合わせて王女に問いただす。
「王女様は何の用で?」
「用も何もこれから準備をするんですよ。そこのコウさんと。」
「2人でですか!?」
「そのつもりですけど・・・手伝ってもらえますか?」
「もちろんです!!」
「二人共息ぴったりにゃね・・・。」
・・・・・
その後俺達が訪れた場所は、あの夜王女と過ごした静寂に包まれたの思い出の地とは違い、湖の周りには剥き出しの茶色い大地が広がっていた。
遠くには草木が青々と生い茂る森が広がっているものの、湖の周りには何も遮るものがないのか水面は荒立っており、少女達の未だ煮えきらない思いを表現しているようであった。
先の悪い虫達が寄ってこないように俺の周りには幼馴染と獣人が待機している。
こちらから少し離れた王女は不思議そうな顔をする。
「コウさん、ここでよろしかったでしょうか?」
「あぁ、十分だよ。」
「こんな湖で何をするつもりにゃ。」
「まぁ見ていてくれ。知己、周囲への影響を最小限にして例のアイテムを取り出してくれ。」
「はい。」
次の瞬間、巨大な灰色の鉄の塊が湖の上空に出現した。
その塊は重力に従い湖の水面(みなも)を大きく歪ませた後、浮上しその姿をはっきりと現した。
「なんですか、あれは!?ロミウル王国の船ですか・・・。」
「なんと!?」
「あぁ。詳しい説明を・・・・と言いたいところだが・・・・まずいな。」
イージス艦を浮かべた衝撃で発生した水面の歪みは想定上の大きさでこちらに向かってきていた。
「って言ってる場合かにゃ!?逃げにゃいと!」
獣人は少年と近くに居た少女を担ぎあげ湖周辺から退避する。
「姫様、失礼します。」
マイルは杖をかざし姿をくらませた。
先程まで喧嘩していたはず少女達は置き去りにされたことに気が付き、打って変わって困惑した表情でうろたえていた。
「あれ?コウさんは?」
「ちょっと!私達は!?」
その様子をグラスは呆れながら見ていた。
「嬢ちゃん達・・・もうちっと器用さがあっても良いんじゃねえかぁ?」
「文句を言う暇があったらなんとかしてください!!」
男は背負っていた鎚を取り出し、地面に大きく叩きつけた。
「仕方ねえなぁ!!グランドアース!」
すると辺りの地面が台形の様ににせり上がっていく。
「わわわっ!」
「グラス坊、助かったにゃ。」
近くに居た少女は悲鳴を上げた。
「きゃーっ!」
「モニカ!?」
少女はせり上がった地面とぶつかった水飛沫を全身で浴びていた。
恥ずかしそうに透けた胸元を隠しながら少年の方を見ていた。
「うぅ・・・・。」
近くに居た男は感心しながらその少女を見ていた。
「まぁ、器用さはあるのか・・」
「ご先祖様は見ないでください!」
「あぁ、すまねえな。」
少年は目を逸らした。
「コウさんは見てください!」
呆れながら少年は持ち物からバスタオルを取り出した。
「はぁ・・・風邪引くぞ・・・・。」
「ありがとうございます・・・。」
「私も飛び込んでおくかにゃぁ・・・。」
「引き上げないからな・・・。」
しばらくしてフィオナとマイルが戻ってきた。
「コウ様、これは?」
「電子戦の要、イージス艦・・・高度なシステムを備えた軍艦だな。ここを作戦の拠点にしたい。」
「分かりました。」
「まずは船内調査だな・・・」
「調査をするのですか?」
「あぁ、入手してから手付かずの状態で放置していたからな。」
「そういうことであれば、マイルお願いします。」
「はっ。」
「ロモ、頼むよ。」
「一緒に行くなら手伝ってやらないこともないにゃ!」
「はぁ・・・それじゃあ行くか。後は悪い虫が出ないことを願うだけだな・・・。」
「そ、そうにゃね・・・。」
純白のシーツが掛かった大きなテーブルに普段とはまた違った豪勢な料理がこれでもかと言わんばかりにならんでいる。
その近くで見慣れないこの国の要人と思われる人物たちが飲食をしながら壇上の王女の説明を聞いていた。
タブレット端末で見たであろう電子戦の情報を元に手書きでスケッチされた資料が壁に貼られ、それを次々と雄弁に説明していく。
それらは当初彼女が目を輝かせるほどのエゴに過ぎなかったが、此処の会場にいる全員に突き通せるほど鋭意なものになっていた。
説明から見事に昇華した演説が終わると会場はヒートアップし拍手喝采に包まれる。
その興奮が冷めないのか優雅に飲食をしていたはずの要人達は獅子奮迅の如く我先にと大広間を飛び出していく。
傍から見ていたこちらにもその熱気がひしひしと伝わってきた。
「王女様の演説すごかったにゃ。」
「ははっ、こりゃ策士だな」
先程まで対抗心を燃やしていた少女もそれに圧倒されたのか称賛を送るほどであった。
「相手ながらあっぱれですね。」
「あぁ・・・。そうだな・・・。」
俺はその熱気と共にあの時感じていた違和感も感じていた。
演説から分かる圧倒的なカリスマ性・・・彼女ならば羽虫をグリフォンに、何処かの獣人を白虎に見せる事は造作もないだろう。
だからこそ勘定が合わない・・・アカネ同様に奪取者を簡単に屠(ほふ)る事が出来るであろう人物がこちらを頼ってくることに・・・。
(考え過ぎか・・・)
そんな思惑や熱気をお構いなしに幼馴染は平然としながら話しかけてくる。
こんな時だからこそ、ナシェの存在、その無邪気がありがたかった。
「コウくん、マフラーなんかして寒いの?」
「あぁ・・・それはだな・・・(まずいな・・・)」
その後の展開を悟った俺は冷静に対処する。
寒いと言おうものなら、彼女は喜んで倒れるほど温めてくれるだろうが・・・・。
「これは虫さされを隠すためにしてるんだよ。」
そういうと俺はマフラーの一部を避けて首に出来た赤い斑点の箇所を彼女に見せる。
「うわっ!ひどい虫刺されだね!!」
「あぁ、寝室に悪い虫がいたんだ・・・。そのせいで若干寝不足だ。」
そう言うと隣りにいた犯人がこちらの脇腹を見えないようにつねってくる。
「いっ・・・」
「えぇ、わ・る・い・虫がいたんですよ。」
「リンちゃんは大丈夫だったんだね。」
少女は赤面しながら目を逸らし返答した。
「は、はい・・・何故か大丈夫でした。」
その様子を見ていた獣人は何かを察したのか、犯人を見ながらツッコミを入れてきた。
「随分と行儀の悪い虫もいたものにゃねぇ・・・。」
「うぅ・・・そうですね・・・。」
グラスは酒瓶を片手に、顔を赤くして気持ち良さそうに酔っ払っていた。
「俺も気をつけねえとなぁ!!」
モニカは口元に手を当てそんな先祖を叱る。
「酒臭いです!!あなたは虫の方でしょ!!もしかして相手はユリアさんですか?」
「ハッハッハ、流石に嫁ぐらいにしかしてねえよ!!嬢ちゃんにもしておくか!」
「キモ過ぎて、引きますね・・・。」
次の瞬間、仰向けに男は倒れた。
「ぐっ・・・。嬢ちゃん・・・・いつの間に・・・。」
「さぁ、いつでしょうか?」
モニカとその先祖の他愛の無いやり取りを見ていた俺は彼女の祖母チエミを思い出していた。
前世ではチエミによくキスマークを付けられていたのだ。
「遺伝か・・・・」
「あ?なんて言ったガキ!?」
「いや、なんでも・・・。」
「あっ・・・此処にも虫さされが!」
そう言うとモニカはこちらの首元に顔を近づけてきた。
チュッ!
一瞬そんな音が聞こえ痛みが走った。
「おい、モニカ・・・。」
「モニカさん・・・」
「な、何でしょうか!?私の薬をつければすぐに治りますよ。」
笑顔でモニカが薬の入った瓶を渡してくる。
それをリンはすかさず掴んだ。
「ありがとうございます、モニカさん!!」
「なぜ、リンさんが受け取るんですか?」
「後で、私が彼に付けておきますから大丈夫です・・・」
「それなら、今ここで私が彼に優しく付けます!!キスマークと一緒に!!」
「いいえ!悪い虫に付けてもらわなくても大丈夫ですから!!」
「あなたに言われたくありませんよ!!」
両者は一歩も譲らず、薬の入った瓶の掴み合いが始まった。
虫さされ程度であれば低級回復薬で十分なのだが・・・。
当然、付けた当人達がそれを許してくれるわけもない。
「はぁ・・・・」
王女は悠然と歩きながら話しかけてきた。
「変ですね・・・ここは虫一匹通さない程の警備をしているはずなのですが・・・」
先程まで大勢の前で演説を行いこの場を最高潮へと導いた人物は揺らぐこともなく平然としている。
薬の掴み合いをしていたはずの少女達は自然と息を合わせ、警戒するように王女の前へと立ちはだかった。
お互いに瓶を掴みながら少女達は息を合わせて王女に問いただす。
「王女様は何の用で?」
「用も何もこれから準備をするんですよ。そこのコウさんと。」
「2人でですか!?」
「そのつもりですけど・・・手伝ってもらえますか?」
「もちろんです!!」
「二人共息ぴったりにゃね・・・。」
・・・・・
その後俺達が訪れた場所は、あの夜王女と過ごした静寂に包まれたの思い出の地とは違い、湖の周りには剥き出しの茶色い大地が広がっていた。
遠くには草木が青々と生い茂る森が広がっているものの、湖の周りには何も遮るものがないのか水面は荒立っており、少女達の未だ煮えきらない思いを表現しているようであった。
先の悪い虫達が寄ってこないように俺の周りには幼馴染と獣人が待機している。
こちらから少し離れた王女は不思議そうな顔をする。
「コウさん、ここでよろしかったでしょうか?」
「あぁ、十分だよ。」
「こんな湖で何をするつもりにゃ。」
「まぁ見ていてくれ。知己、周囲への影響を最小限にして例のアイテムを取り出してくれ。」
「はい。」
次の瞬間、巨大な灰色の鉄の塊が湖の上空に出現した。
その塊は重力に従い湖の水面(みなも)を大きく歪ませた後、浮上しその姿をはっきりと現した。
「なんですか、あれは!?ロミウル王国の船ですか・・・。」
「なんと!?」
「あぁ。詳しい説明を・・・・と言いたいところだが・・・・まずいな。」
イージス艦を浮かべた衝撃で発生した水面の歪みは想定上の大きさでこちらに向かってきていた。
「って言ってる場合かにゃ!?逃げにゃいと!」
獣人は少年と近くに居た少女を担ぎあげ湖周辺から退避する。
「姫様、失礼します。」
マイルは杖をかざし姿をくらませた。
先程まで喧嘩していたはず少女達は置き去りにされたことに気が付き、打って変わって困惑した表情でうろたえていた。
「あれ?コウさんは?」
「ちょっと!私達は!?」
その様子をグラスは呆れながら見ていた。
「嬢ちゃん達・・・もうちっと器用さがあっても良いんじゃねえかぁ?」
「文句を言う暇があったらなんとかしてください!!」
男は背負っていた鎚を取り出し、地面に大きく叩きつけた。
「仕方ねえなぁ!!グランドアース!」
すると辺りの地面が台形の様ににせり上がっていく。
「わわわっ!」
「グラス坊、助かったにゃ。」
近くに居た少女は悲鳴を上げた。
「きゃーっ!」
「モニカ!?」
少女はせり上がった地面とぶつかった水飛沫を全身で浴びていた。
恥ずかしそうに透けた胸元を隠しながら少年の方を見ていた。
「うぅ・・・・。」
近くに居た男は感心しながらその少女を見ていた。
「まぁ、器用さはあるのか・・」
「ご先祖様は見ないでください!」
「あぁ、すまねえな。」
少年は目を逸らした。
「コウさんは見てください!」
呆れながら少年は持ち物からバスタオルを取り出した。
「はぁ・・・風邪引くぞ・・・・。」
「ありがとうございます・・・。」
「私も飛び込んでおくかにゃぁ・・・。」
「引き上げないからな・・・。」
しばらくしてフィオナとマイルが戻ってきた。
「コウ様、これは?」
「電子戦の要、イージス艦・・・高度なシステムを備えた軍艦だな。ここを作戦の拠点にしたい。」
「分かりました。」
「まずは船内調査だな・・・」
「調査をするのですか?」
「あぁ、入手してから手付かずの状態で放置していたからな。」
「そういうことであれば、マイルお願いします。」
「はっ。」
「ロモ、頼むよ。」
「一緒に行くなら手伝ってやらないこともないにゃ!」
「はぁ・・・それじゃあ行くか。後は悪い虫が出ないことを願うだけだな・・・。」
「そ、そうにゃね・・・。」
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