奴隷を使った実験録。

まぐろ

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無言の空間

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「…あ…ご主人様、おはようございます…!」

今日もご主人様が起こしてくれた。僕はいつもみたいに挨拶をする。…だけど、今日は返ってこなかった。ご主人様は僕を見つめたまま黙っている。

「…?あ、あの…ご主人様…?」

僕が話しかけても、ご主人様は口を開かない。それどころか僕を無視したままどこかに行こうとする。僕は一瞬ためらった。

──奴隷の僕なんかが、ご主人様に触れていいのか…?

でも怒っているなら謝りたい。だから僕はご主人様の服の袖を掴んだ。

「っあ!あのっ!」

「………」

ご主人様は振り返る。例えるなら、家にいた害虫が仕掛けた罠にかかった時のような残酷な笑みを僕に向けて。

「ひっ…」

ご主人様のあんな顔見たことがない。最初に僕に向けた笑みとは全く違う。ご主人様もあんな顔ができるなんて…
僕が震えながらその場に座り込むと、ご主人様はどこかに行ってしまった。

✱✱✱✱✱✱

「ご主人様っ……あの、その…お皿、洗いました…よ…」

「……」

あれからずっと何日も僕はご主人様に話しかけた。でもやっぱりご主人様は僕の方も向いてくれない。もう僕に飽きてしまったんだろうか。
それでも食事のときは僕のぶんがテーブルに用意してある。

「…藤さん…どこですか、ご主人様は僕のこと嫌いになったんですか…」

それから、藤さんが見当たらない。たくさんお話もして仲良く慣れたのに。まさか転勤…?いや、そんなわけない。
あの施設でさえ、僕の言葉くらいは聞いてくれたのに…
無気力と絶望感に襲われる。どうして召使さんが1人もいないんだろう。

「ご主人、様…僕お部屋に戻りますね…何かあれば、いやなくても…僕のこと呼んでください…」

少し泣きそうになった。いや、泣いちゃ駄目だ。子供が泣くのが嫌いな人もいると聞いた。ご主人様がそれだったらもっと嫌われてしまう。でも、もう耐えられない。僕は部屋の隅っこで膝を抱えて少しだけ泣いた。

「ご主人様ぁ…ご主人様ぁぁ…」

僕ははっと顔を上げた。そうだ。もしかしたら、ご主人様は僕の名前を忘れていて、呼べなくて気まずいから無視をしているのかもしれない。無理矢理すぎる幻想を願いつつ、僕は部屋を飛び出してご主人様に抱きついた。もうこうするしかなかった。

「ご主人様っ…!僕の名前は祐希です…!呼び方なんか、どうだっていいから…!だから呼んでください…!」

次の瞬間、僕はきゃっと短い悲鳴を上げて転んだ。ご主人様が僕に構わず歩き出したせいだ。ああもう…僕はどうしたらいいんだろう…



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