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masuta

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第二章:別れの章 〜迷走するルート〜

第二十三話 診断結果

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 絶対に嫌、いきません。寝ていれば良いのだから、おとなしく、しているから。
 行かないの、嫌なの。ずっと、良い子で寝ているから。美少女美野里ちゃんは、病院なんて行かないのです――。

   ***

 エレベータの扉が開き、未来が何か言いかけたが、私は構わず中に入った。まだ病院の中には、患者さんはいないようだ。掃除をしている看護婦さんたち、受付の準備をしている方、忙しそうである。

 ここは、地元では超がつくほど、有名な小児科。子供のころから、怖い先生、鬼の先生と言われていた病院。
 私は平気だった。先生は怖くないのである。怖いのは、親。子供の両親である。

 小児科の先生は、親が生じ知識があると、論破する。それは、それである。私の言うことを聞きなさいと。船橋市の小児科会長である。

 受付で、先生をお願いします。二宮と言えば、わかりますので、お忙しいところ、すみません。小さな声で伝えた。伝わったはず。未来には気が付かれたくないので、外で待っていてと。

 受付の方はどのことかわからなかったが、院長に『二宮さんがお越しです。大人の方ですが、お引き取りしましょうか』

(二宮、え、まさか)院長は慌てて中から出て来た。

 本当なのかという、驚きの顔が目に入ってきた。美野里と再会である。

 私に、千葉大学を紹介してくれたのも、この先生。
「先生、わたし! アメリカで根治してきました、先月日本に帰ってきました、今日はちょっと熱っぽいので」かすれた声で、おそらく聞こえたはず。

 鬼の目にも涙である。アメリカに渡ったことは聞いていると、良く帰ってきたと言わんばかりに、院長がボロボロと泣いていた。受付の方や、看護師さんは一体どうしたのだろう。

 あの院長が泣いたのである。初めて見た、院長の涙。

「内科は下の階だから、行ってきなさい」院長から案内された。

 美野里は深く、頭を下げた。(この先生が、大学病院を紹介してくれなければ、正しい診断をしてくれなければ、私は生きていないのだから、お礼がしたかった)

「はい」と答え、下の内科に、未来と行く。未来はずっと、手を握ってくれていた。

   ***

 内科はすでに複数の方が、来ていた。受付を済ませ待つことにした。順番が来て、美野里は一緒に来てと、未来の手を離さない。

 内診が始まった。検温、三十八・四℃。

 インフルエンザ、溶連菌、その他の迅速抗原検査。
 十五分程隔離された部屋で、待機することになった。

 先生が来て、話がありますと、伝えられた。

 私は顔を、青ざめた。あの時と同じだ、やはり、嫌だ、嫌だ……。
 怖い、怖い、怖い。先生が中に入って来た。

 先生の顔を、観れない。小刻みに震えていた。
 明らかに何かに怯えているようで、私の手を未来が強く握る。

「うん、風邪、アデノウィルス」紙を見せてくれた。診断結果であった。

「これね、うつりやすいんだよね、プール熱って知っているかな? 子供達が、よくかかるのだけど」
「結膜炎をおこしたりね」
「二宮さんは、結膜炎はないし、喉が赤いかな」

「熱がさがるまで、喉の通りが良いものと、脱水にならないように、OSーワンとかね、解熱剤と整腸剤は出しておくね」

「よかった……ただのアデノだった……よかったあ……」
 美野里は熱に浮かされた赤い顔で、ボロボロと涙を流している。

 未来は診断結果の紙を見ながら首を傾げた。「いや、よかったって……三十八・四度もあるんだぞ? 辛くない?」
 「辛いよ、すっごく辛い。……でも、治るんでしょ?」 先生は、「寝てれば治るけど」と言っていた。

「治る病気になれるなんて、……夢みたい」
 高熱に震えながら、幸せそうに未来の手を握った。

(良かった、風邪だった、風邪、アデノウィルス)
「未来、聞いて、聞いて、聞いたよね、良かった! 風邪だって、アデノウィルス! だって」

 泣きながら、言った。未来は不思議そうに、私を見ている。

(良かった、再発じゃない。根治だものね。良かった――)

 薬等言われたものを揃え、帰宅。

   ***

 パジャマを持ってきてくれた。「えー、だって、風邪よ、風邪」寝なさいと言わんばかりに、ベッドに横になる。
 脅しをかけて来た、治らなかったら家から一歩もだしてくれないらしい、それは困る、嫌なので、おとなしくすることに。
「未来、遊びに行っちゃ駄目よ」

 ……何を言っているのだろうと、言うような目で見られて、眠りについた。髪を撫でていてくれる。いつのまにか、寝てしまった。

 目が覚めると、十九時になるころであった。外は日が落ちたのか夜空と、夕方の光のグラデーションである。
 検温すると、三十七・五℃。下がってはきている。
「うーーーん。楽になったけど、まだ、だるい」

「うわ、汗でべたべた」
「未来、未来、拭いて」

 未来は、新しいタオルをもってきてくれた。エアコンが気持ちが良い。タオルを渡された。じっと未来を見る。すると、もう一枚タオルを渡された。
 そうじゃないんだなー。

「ちがうの、未来が拭くの。わたしを」
 バチャ、桶が倒れて、未来がつまずいた。あー、あー、水だらけ。

「はやく、気持ちがわるいのー、拭いて」桶にぬるま湯をいれて、タオルを二枚。
 顔周り、腕、背中を拭いてくれて、動きが止まった。

 私は、体を、指をさす「前も」
 またもや、バチャー、桶を倒す未来。……。「前も!」

「できないの、あ、熱が、千五三十八℃まであがってきたー、ごふおん、ごふおん、もう、ダメ、あ、ー ね つ が、 もう、だめ、だめ」」
 小さな声が聞こえる、医療行為、医療行為と、よしよし、(ムフフ! 大勝利! )
 そこは、「あ、ああー」変な声を出さないでと、注意された。だってえー。

「まだよ、まだ、もう一度、乾いたので、拭いて」
「パジャマも替えたい」

「はい、ありがとう、着替えさせてね」

 小声が聞こえる(医療行為、医療行為、あ、触ってしまった、やわらかい。不可抗力、不可抗力……)

 たのしい! 未来、かわいい、顔が真っ赤、未来のほうが熱あるのでは? 私はスッキリして、起き上がり、水分とプリン、ウィダーと薬。

 朝まで寝なさいといわれて、少しムッとしたが、体はだるいのは変わらないので、寝ることにした。

「つまんなーい」
「つまらなーい」
 と連呼していると、痛恨の一撃である、明日も、病院いく? と言われ、おとなしくする。うーん、負けた。

「寝ます。寝てます」
「直ぐに、寝ます。もう、寝てます、みてください、寝てるでしょう」

 頭を手で押さえる未来、飽きられている。これは、寝なくてはいけない。大勝利から、敗北に転落。

 パジャマの洗濯へと未来は、行ってしまった。未来行っちゃった、行っちゃった、と思いながら、瞼は閉じた。
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