新しいルートでご案内致します。目的地は、君の隣(きみとな)

masuta

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第二章:別れの章 〜迷走するルート〜

第二十五話 いざ青森県むつ市へ

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 夏休みの夜、予想に反して高速道路は空いていた。
 対向車線のヘッドライトが、暗闇に消えるくらいまばらだった。
 アルファードは安定していて、ドライブには最適だった。台風が通り過ぎてから雨は一切降っておらず、水不足になるのではないかと心配がよぎるほどだった。

 スースーと寝息が聞こえた。音楽を止めて、ナビの音声のみにした。まだ相当な距離があった。
 眠くなっては危険なので、途中サービスエリアに立ち寄り、エナジードリンクと缶コーヒーを買ってリフレッシュし、再び出発した。

 お盆休みより早いというころだろうか、道はガラガラだった。
 オート運転に切り替えた。学生の頃、レンタカーのオート運転といえば前の車に追従するだけだったが、この新型未発表モデルという意味不明なアルファードは、安全かつ高度に自動走行してくれた。
 正直、寝てしまっても目的地に着くのではないかと思ったくらいだった。

 このシステムに自分の研究が活用できないだろうかと考えながら、県境をまたいでいった。
 途中、再びサービスエリアで給油し、ペットボトルのお茶を買ってトイレを済ませ、車を走らせた。

 夢でも見ているのであろうか、助手席から小さな寝言が聞こえた。
 走っているのは大型トラックのみで、スムーズに進んだ。
 シートが快適すぎて眠気を誘ったが、そのたびにパーキングエリアに立ち寄るようにしていた。

 徐々に空が白み始め、明るくなってきていた。
 そのままドライブを続け、ラジオに切り替えて邦楽を流してみたが、正直誰の歌なのか、今の流行りなのかさっぱりわからなかった。
 東北地方に向かうなら演歌を聞くほうが合うのではないか。準備不足だった。
 まさか唐突に青森県に行くことになるとは思ってもいなかったのだ。

   ***

 思い返せば、このアルファード、給油時になぜか目的地として示した先が「青森県むつ市大畑町」であったことに、思わずにやけてしまった。

 カーナビから女の子が出てくるほど時代は都合が良いわけではないが、青森県という指定に何か意味があるのかもしれない。
 助手席を見ると、シートベルトからあふれる谷間に、つい視線が向いてしまった。

 ――確かに、二宮美野里とは幼少期から会っている。これは間違いない。
 しかし、どうして「彼女が亡くなった」という話になっていたのか、理解に苦しんだ。
 隣には、いつもとは違い静かにしている美野里がいるのは事実だった。

 青森県に着けば何かわかるのかもしれないし、直接聞いてみてもよい。
 どこかおかしい。自分でもおかしいと思った。
 何かが違う、いや違わない。どうしてだろう。

 変な感覚があるのだが、それがいったい何であるのか、深く考えてみることはなかった。

 幼いころ一緒にいた美野里、花火大会に行った美野里。
 その後は……さすがに十年以上前だから覚えていないだけなのだろうか。

 学生時代は勉強に集中し、研究にも熱が入り、就職が決まった。
 三か月程、一人だけ海外で研修を受け、帰国後は昼夜問わず研究に没頭した。

 ドライブはある意味、自分を見つめなおす有意義な時間なのかもしれない。
 今こうして、振り返っている。なぜ研究に没頭したのか。
 社会の問題、人類が抱えている問題。確かにそうだ。テーマは他にもあったはずだ。

 宇宙開発などである。どうして人体に、AGI研究に向かったのか。何かが、ひっかかる。

   ***

 朝日が昇り、青森県に入った。
 予定より早いペースだった。渋滞は皆無だった。
 まだ目的地までは二、三時間かかるとナビが表示している。
 学生の頃に来た時より、高速道路や有料道路が伸びている。助かった。長距離ドライブは、あの時以来だ。

 すっかり明るくなり、外の温度は急激に上がっている。
 青森県でもここまで気温が上がるのだ。
 学生の時は朝寒かった記憶があるのだが、今は違う。
 表示は二十五度。千葉県と変わらないではないか。誤差の範囲だ。

 ここで、津軽方面と八戸・陸奥方面とが分かれるジャンクションまで差し掛かった。

 シートベルトに苦しそうにしている大きなお山二つに視線がいくと、「うーん」と何か言っているのが聞こえた。そろそろ目を覚ますころだろう。

 新型アルファードは快適だった。
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