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1話:故郷と幼馴染(1)
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ちりんちりん。
鈴の音が鳴り響く。
軽い音色は頭の中を流れて、俺をユメの世界へと誘った──
梅雨明けと同時に照りつける太陽は調子が良く、気温は毎日真夏日を超えて、人類はやがて溶けて地球に還っていくんじゃないかと思うくらいの暑さに耐えながら、俺は懐かしい故郷に向かう。
「おーい、アキラ!」
軽い人混みの中、俺の名前を呼びながら手を振る背丈が高く黒髪の男の姿を見つけた。それはもう10年近く会えていなかった親友の面影を残した青年だった。名を呼ぶ声も昔より随分と低くなったが、毎週ヘッドフォン越しに聞いているためギャップは感じられない。
「悪い、コウスケ。予定時刻から遅れてしまって」
「いや、俺も新幹線がある駅まで迎えに行くべきだったよ。田舎じゃ電車は来ないからなぁ」
幼馴染で親友のコウスケから、故郷──八椿村でやる夏祭りの知らせを受けて新幹線で帰ってきた。とはいえ、両親は、この村のことをよく思っていないようで、この帰省は親にサークルの宿泊合宿だと嘘をついて出てきている。少しだけ、心が痛む。
「一時間に一本は出ているかと思ったが……全然ないんだな」
「昔はそのくらいだったけど、今は平日の朝と夜くらいしか出てないな。あとは、二、三時間に一度くらいか。
まぁ、長旅ご苦労さん。といっても、ここから車で長旅だがな」
昔から落ち着いていて、幼馴染たちのリーダー格であったコウスケは変わらなくて安心する。
「安全運転なんだな」
「こんな所で事故ってみろ。下手すると崖の下まで真っ逆さまだぞ」
山道を進み、どこまで行っただろうか。ふいに見慣れているような光景が広がった。
「ここ、村を一望できるんだな」
「手前の山道だからなぁ。昔からここは整備されてなかったか?」
「あんまり記憶が無いな……」
コウスケは山道の途中で左折して斜面をくねくねと降りていくと気がつけば田んぼの中を走っている。
「帰ってきたら、一旦ここだよな?」
「ここは……」
コウスケが車を停めたのは、少しだけ村はずれにある村の守護神『スズナリ様』が祀られる神社の駐車場だった。
車を神社の敷地内に停めて社外に出ると、緑に溢れた世界の空気が肺に入り、気持ち的な問題にしても清々しく感じられた。
「空気が美味しい……」
「ははっ、都会の空気は田舎っ子のアキラには重苦しいか?」
コウスケは真っ直ぐ歩いていき、神社の本殿前にやってくる。
賽銭箱に小銭を投げてお参りすると、「あれ?」という声が聞こえた。
「コウスケくん。それに……」
「あぁ、フジヒコ。こいつは誰だと思う?」
フジヒコ、と呼ばれた子は薄紫のボブの髪を揺らして考える。
「誰だろ……」
「アキラだよ」
「えっ……!アキラくん?」
消え入りそうな儚い声で驚くフジヒコは、まるで女の子のように走しって近寄ってくると、俺の周りをキョロキョロと見て顔をじっと見つめてくる。
「なぁ、コウスケ。この子は?」
コウスケは驚く。
「薄情者だなぁ、忘れたのか?
アケミさんのこどもである神社の神子のフジヒコだよ。俺たち幼馴染は六人だったのを忘れたのか~?」
「六人……」
コウスケ、タクヤ、ユイ、リン、俺──そして、フジヒコ?
思い出せる光景は常に四人の姿が見えていた。俺視点だから、俺が目の前に居ないのは当たり前だろう。
「アケミさんは鈴を譲ってくれていたが、フジヒコは何色なんだ?」
そう尋ねるとフジヒコは、懐からキーケースを取り出して垂らしている紫色の鈴を見せてきた。
「ボクは母から紫色の鈴をもらいました。
しかし、ボクのこと…… そんなに覚えていないんですね」
箒を持ちながら落ち込んでいるフジヒコにフォローの言葉を入れようとするが浮かばない。忘れた張本人だから、余計なことが言えないのだ。
「アキラは酷いやつだなぁ、こんなにも優しい幼馴染を忘れちまうなんて……。まぁ、フジヒコが遊べるようになったあたりは、アキラも家から出て来れなかったしな」
「まぁな……」
村を出たのは小学五年生くらいだったか。
俺自身、あの前後の記憶があまりない。
鈴の音が鳴り響く。
軽い音色は頭の中を流れて、俺をユメの世界へと誘った──
梅雨明けと同時に照りつける太陽は調子が良く、気温は毎日真夏日を超えて、人類はやがて溶けて地球に還っていくんじゃないかと思うくらいの暑さに耐えながら、俺は懐かしい故郷に向かう。
「おーい、アキラ!」
軽い人混みの中、俺の名前を呼びながら手を振る背丈が高く黒髪の男の姿を見つけた。それはもう10年近く会えていなかった親友の面影を残した青年だった。名を呼ぶ声も昔より随分と低くなったが、毎週ヘッドフォン越しに聞いているためギャップは感じられない。
「悪い、コウスケ。予定時刻から遅れてしまって」
「いや、俺も新幹線がある駅まで迎えに行くべきだったよ。田舎じゃ電車は来ないからなぁ」
幼馴染で親友のコウスケから、故郷──八椿村でやる夏祭りの知らせを受けて新幹線で帰ってきた。とはいえ、両親は、この村のことをよく思っていないようで、この帰省は親にサークルの宿泊合宿だと嘘をついて出てきている。少しだけ、心が痛む。
「一時間に一本は出ているかと思ったが……全然ないんだな」
「昔はそのくらいだったけど、今は平日の朝と夜くらいしか出てないな。あとは、二、三時間に一度くらいか。
まぁ、長旅ご苦労さん。といっても、ここから車で長旅だがな」
昔から落ち着いていて、幼馴染たちのリーダー格であったコウスケは変わらなくて安心する。
「安全運転なんだな」
「こんな所で事故ってみろ。下手すると崖の下まで真っ逆さまだぞ」
山道を進み、どこまで行っただろうか。ふいに見慣れているような光景が広がった。
「ここ、村を一望できるんだな」
「手前の山道だからなぁ。昔からここは整備されてなかったか?」
「あんまり記憶が無いな……」
コウスケは山道の途中で左折して斜面をくねくねと降りていくと気がつけば田んぼの中を走っている。
「帰ってきたら、一旦ここだよな?」
「ここは……」
コウスケが車を停めたのは、少しだけ村はずれにある村の守護神『スズナリ様』が祀られる神社の駐車場だった。
車を神社の敷地内に停めて社外に出ると、緑に溢れた世界の空気が肺に入り、気持ち的な問題にしても清々しく感じられた。
「空気が美味しい……」
「ははっ、都会の空気は田舎っ子のアキラには重苦しいか?」
コウスケは真っ直ぐ歩いていき、神社の本殿前にやってくる。
賽銭箱に小銭を投げてお参りすると、「あれ?」という声が聞こえた。
「コウスケくん。それに……」
「あぁ、フジヒコ。こいつは誰だと思う?」
フジヒコ、と呼ばれた子は薄紫のボブの髪を揺らして考える。
「誰だろ……」
「アキラだよ」
「えっ……!アキラくん?」
消え入りそうな儚い声で驚くフジヒコは、まるで女の子のように走しって近寄ってくると、俺の周りをキョロキョロと見て顔をじっと見つめてくる。
「なぁ、コウスケ。この子は?」
コウスケは驚く。
「薄情者だなぁ、忘れたのか?
アケミさんのこどもである神社の神子のフジヒコだよ。俺たち幼馴染は六人だったのを忘れたのか~?」
「六人……」
コウスケ、タクヤ、ユイ、リン、俺──そして、フジヒコ?
思い出せる光景は常に四人の姿が見えていた。俺視点だから、俺が目の前に居ないのは当たり前だろう。
「アケミさんは鈴を譲ってくれていたが、フジヒコは何色なんだ?」
そう尋ねるとフジヒコは、懐からキーケースを取り出して垂らしている紫色の鈴を見せてきた。
「ボクは母から紫色の鈴をもらいました。
しかし、ボクのこと…… そんなに覚えていないんですね」
箒を持ちながら落ち込んでいるフジヒコにフォローの言葉を入れようとするが浮かばない。忘れた張本人だから、余計なことが言えないのだ。
「アキラは酷いやつだなぁ、こんなにも優しい幼馴染を忘れちまうなんて……。まぁ、フジヒコが遊べるようになったあたりは、アキラも家から出て来れなかったしな」
「まぁな……」
村を出たのは小学五年生くらいだったか。
俺自身、あの前後の記憶があまりない。
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