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2話:幼馴染のお姉ちゃん(3)
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ちりんちりん。
鈴の音が鳴り響く。
頭の中をこだまして、脳に異常を訴えている。
「うぅ……」
目を覚ますと昨夜見た夢と同じように神社の前の広場で立ち尽くしていた。
起きたのにも関わらず頭の中で反響する鈴の音は未だに鳴り響き、まるでアキラを歓迎してるようだった。
「いっ……」
頭が軋む。疲れすぎているのか、あの栄養剤は摂取するべきではないものだったのか。
──ただ、コウスケがああいうんだ。コウスケが嘘をついているとは到底思えないし。
頭を振り、顔が下を向いたまま目を開くと、目の前に桃色の靴が見える。
それは女性もので──目の前に立っていたのは、倒れて寝ているはずのユイ姉だった。
「ふふふ。おはよ、アキラ」
にこにこと笑っているユイ姉は現実とそう変わらない。
姿はコウスケと同じように現実とは異なり、首元があるオフショルダーの服に胸から腹にかけてコルセットのような鎧、前は膝まで、後ろは足元まで広がる桃色のフリルスカートに桃色のロングブーツを履いている。
「ユイ姉」
「もう体調は大丈夫?」
「え?」
ユイ姉は俺を囲むようにして歩く。それは、俺の行動すべてを見張るように。
「村からいなくなっちゃったの……アキラの体調が悪くなったからだって聞いてたから」
ユイ姉は俺の背中へ回って近寄ると、ユイ姉の細い指で背中をなぞる。本当ならくすぐったさを感じる場面なのに、どうしてなのか。感じるのは恐怖心だった。
「俺が……?」
確かに村を出た後、どこも悪くないのに病院に入院して検査を受けさせられた時はあった。しかし、それはコウスケにすら話してない。
──なぜ、ユイ姉が知っている?
「……どうして、そのままいなくなっちゃったの?」
ユイ姉は背中をとんっと押す。
飛ばされた勢いで前に出て、後ろを振り返ろうと身体を捻るとユイ姉は大きな斧を振りかざしていた。
降ろす瞬間、咄嗟に後退して抜刀する。
「どうしてスズナリ様の元から離れてしまったの?
どうして、私たちを──私を置いていったの?」
「ユイ姉、落ち着いて……」
ユイ姉の独白は止まらない。
いつも前向きで、明るくて、村の太陽であるユイ姉は、今は泣きそうな声で叫びながら、体が遠心力で持っていかれそうなのを無視して感情のままに、斧を振り回している。
──刀じゃ、斧には近寄れない。
「──いつまでも村に縛られたくない」
「え」
俺の足はその言葉に足を掬われて参道の傍らに敷き詰められている石の上に尻餅をつく。
「お姉ちゃんはずっと言われてた。女は笑え。こどもを産め。家のために尽くせって。頑張って抗ったけど、結果は無駄。
村から逃げれないなら意味が無い」
村から逃げたらいいじゃないか、なんて無責任な言葉は言えなかった。
「お母さんやお姉ちゃんみたいになりたくない。
私は好きでもない誰かと結婚したい訳じゃない」
ユイ姉の独白を聞きながら、胸の痛みをごまかしながら間一髪のところを避ける。
「どうしてアキラはいなくなってしまったの。
私は、私は……アキラのことが好きだったのに。
寂しいよぉ……」
ユイ姉の頬に、一粒の涙が流れ落ちる。
ユイ姉はその場に座り込み、まるで幼子のように泣きわめく。
「ユイ姉……」
ユイ姉の傍に寄ろうと、少しでも慰めになってくれればいいなと。
ユメのセカイがユイ姉が現実世界とは違うこともすっかり忘れて、不意に近寄ってしまったのが間違いだった。
「俺はユイ姉の傍にいるから……」
ユイ姉の肩に手を置いた瞬間だった。
「……ホント?」
ユイ姉は顔を上げると先ほどまでの涙は枯れて、歪んだ笑みを浮かべていた。
その瞬間だった。右腕側に大きな反動を感じて視線を向けると、ユイ姉の持った斧で右腕と右脇腹を切断されていた。
「ぁ……ぐっぁぁああ」
時間差で激痛が走り、嫌な汗がにじんでくる。
コウスケの痛みもこんな感じだったのだろうか。
──夢なのに、こんなにもはっきりと痛みを感じるなんて。
「アッハッハッハ!!!!」
ユイ姉は歓喜が混ざる高笑いと共に立ち上がる。
参道に芋虫みたいに這いつくばっている俺を見下ろして、ユイ姉は斧を再び構えた。
「このままだとね、スズナリ様に供物を捧げられない。
私がスズナリ様に選ばれないの。我が家の悲願と私の逃避という夢が叶えられない。
だから──ごめんね?」
悠長に語っているユイ姉はついに斧を振り下ろした。
しかし、振り下ろした──いいや、ユイ姉の斧が落ちた先は、参道の石畳だけだった。
「ごめん、ユイ姉」
ユイ姉に落とされた右腕の元へ転がって、左手で持った刀でユイ姉の両腕を切り落とした。
バランスを崩したユイ姉を左腕で受け止めるように刀で胸を刺した。
「アキラ……」
「ユイ姉、置いていってごめん」
ユイ姉の亡骸を抱きしめながら、ゆっくりと目を瞑った。
鈴の音が鳴り響く。
頭の中をこだまして、脳に異常を訴えている。
「うぅ……」
目を覚ますと昨夜見た夢と同じように神社の前の広場で立ち尽くしていた。
起きたのにも関わらず頭の中で反響する鈴の音は未だに鳴り響き、まるでアキラを歓迎してるようだった。
「いっ……」
頭が軋む。疲れすぎているのか、あの栄養剤は摂取するべきではないものだったのか。
──ただ、コウスケがああいうんだ。コウスケが嘘をついているとは到底思えないし。
頭を振り、顔が下を向いたまま目を開くと、目の前に桃色の靴が見える。
それは女性もので──目の前に立っていたのは、倒れて寝ているはずのユイ姉だった。
「ふふふ。おはよ、アキラ」
にこにこと笑っているユイ姉は現実とそう変わらない。
姿はコウスケと同じように現実とは異なり、首元があるオフショルダーの服に胸から腹にかけてコルセットのような鎧、前は膝まで、後ろは足元まで広がる桃色のフリルスカートに桃色のロングブーツを履いている。
「ユイ姉」
「もう体調は大丈夫?」
「え?」
ユイ姉は俺を囲むようにして歩く。それは、俺の行動すべてを見張るように。
「村からいなくなっちゃったの……アキラの体調が悪くなったからだって聞いてたから」
ユイ姉は俺の背中へ回って近寄ると、ユイ姉の細い指で背中をなぞる。本当ならくすぐったさを感じる場面なのに、どうしてなのか。感じるのは恐怖心だった。
「俺が……?」
確かに村を出た後、どこも悪くないのに病院に入院して検査を受けさせられた時はあった。しかし、それはコウスケにすら話してない。
──なぜ、ユイ姉が知っている?
「……どうして、そのままいなくなっちゃったの?」
ユイ姉は背中をとんっと押す。
飛ばされた勢いで前に出て、後ろを振り返ろうと身体を捻るとユイ姉は大きな斧を振りかざしていた。
降ろす瞬間、咄嗟に後退して抜刀する。
「どうしてスズナリ様の元から離れてしまったの?
どうして、私たちを──私を置いていったの?」
「ユイ姉、落ち着いて……」
ユイ姉の独白は止まらない。
いつも前向きで、明るくて、村の太陽であるユイ姉は、今は泣きそうな声で叫びながら、体が遠心力で持っていかれそうなのを無視して感情のままに、斧を振り回している。
──刀じゃ、斧には近寄れない。
「──いつまでも村に縛られたくない」
「え」
俺の足はその言葉に足を掬われて参道の傍らに敷き詰められている石の上に尻餅をつく。
「お姉ちゃんはずっと言われてた。女は笑え。こどもを産め。家のために尽くせって。頑張って抗ったけど、結果は無駄。
村から逃げれないなら意味が無い」
村から逃げたらいいじゃないか、なんて無責任な言葉は言えなかった。
「お母さんやお姉ちゃんみたいになりたくない。
私は好きでもない誰かと結婚したい訳じゃない」
ユイ姉の独白を聞きながら、胸の痛みをごまかしながら間一髪のところを避ける。
「どうしてアキラはいなくなってしまったの。
私は、私は……アキラのことが好きだったのに。
寂しいよぉ……」
ユイ姉の頬に、一粒の涙が流れ落ちる。
ユイ姉はその場に座り込み、まるで幼子のように泣きわめく。
「ユイ姉……」
ユイ姉の傍に寄ろうと、少しでも慰めになってくれればいいなと。
ユメのセカイがユイ姉が現実世界とは違うこともすっかり忘れて、不意に近寄ってしまったのが間違いだった。
「俺はユイ姉の傍にいるから……」
ユイ姉の肩に手を置いた瞬間だった。
「……ホント?」
ユイ姉は顔を上げると先ほどまでの涙は枯れて、歪んだ笑みを浮かべていた。
その瞬間だった。右腕側に大きな反動を感じて視線を向けると、ユイ姉の持った斧で右腕と右脇腹を切断されていた。
「ぁ……ぐっぁぁああ」
時間差で激痛が走り、嫌な汗がにじんでくる。
コウスケの痛みもこんな感じだったのだろうか。
──夢なのに、こんなにもはっきりと痛みを感じるなんて。
「アッハッハッハ!!!!」
ユイ姉は歓喜が混ざる高笑いと共に立ち上がる。
参道に芋虫みたいに這いつくばっている俺を見下ろして、ユイ姉は斧を再び構えた。
「このままだとね、スズナリ様に供物を捧げられない。
私がスズナリ様に選ばれないの。我が家の悲願と私の逃避という夢が叶えられない。
だから──ごめんね?」
悠長に語っているユイ姉はついに斧を振り下ろした。
しかし、振り下ろした──いいや、ユイ姉の斧が落ちた先は、参道の石畳だけだった。
「ごめん、ユイ姉」
ユイ姉に落とされた右腕の元へ転がって、左手で持った刀でユイ姉の両腕を切り落とした。
バランスを崩したユイ姉を左腕で受け止めるように刀で胸を刺した。
「アキラ……」
「ユイ姉、置いていってごめん」
ユイ姉の亡骸を抱きしめながら、ゆっくりと目を瞑った。
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