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2話:幼馴染のお姉ちゃん(2)
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「うまい……!」
「ふふーん、口に合ったようでなにより」
見た目は何の変哲もない、夏野菜を使ったチャーハンだった。しかし、作業を終えた空腹も相まってか、チャーハンを掬う手が止まらない。
ユイ姉は確かに昔から料理が上手かった。
記憶にあるのはお菓子ばかりだが。
「最近はオバサンに代わってユイ姉が料理してるんだっけ?」
「そう!お母さんもお姉ちゃんの子育て手伝ってるし、将来の花嫁修行兼ねてね!」
「ユイ姉のお姉ちゃん……メイさんが?!」
驚きあまり思わず噎せた。
「高校で知り合った隣町の旦那さんが婿に来てね。
赤ちゃんって可愛いんだよ~」
メイさんは、ユイ姉とは違って非常にしっかりしている人だった。無口寄りではあるが、村の年上のお姉さんって感じで、ユイ姉とはまた違う姉のタイプだった。
「こどもは女の子だっけ?」
「そう!親ってば、また女の子……って感じだったのに、今じゃすっかりメロメロ」
月日の経過はやはり残酷だ。
「そういえば、タクヤとリンも遂に付き合い始めたんだよ~」
「えっ」
タクヤとリン。
あの二人は幼馴染の中の二人で、二人とも独特なペースを持つ子だった。
でも、だからこそ馬があっていたのか、お互いに異常な程に懐いていて、小学生の頃から、親に唆されて将来結婚しようなんて言ってたのに──。
「まだ、付き合ってなかったのか……?」
「ま、そういう反応になるよなぁ」
チャーハンを食べ終えたコウスケは、口を拭いて外の様子を見ながら話す。
「でも考えてみてよ。あの二人だよ?
私たちがませてたとして、あの二人はピュアピュアなわけで、付き合うとか恋愛感情とか、そういうのを自覚しないまま、結婚しそうな勢いじゃない?
あくまで友達、幼馴染の延長戦で~、みたいな?」
「いや、ないない。リンはさておき、タクヤは男だぞ?
パッと見ピュアではあるが、中高の時は周りに牽制してたよ、アイツは」
──牽制してるタクヤとか想像できない。
そのくらい、小学生の頃はぽやぽやしてる男。それがタクヤだった。
「タクヤも男だったんだなぁ……」
「本当、みんなと同じ学年だったら楽しかったのになぁ~」
そんなぼやきをしながら、ユイは話途中で空になった食器を回収していき、洗ってくるからのんびりしてて、と告げて姿を消した。
ユイがいなくなり、コウスケと二人きりの落ち着いた空気になると眠りが浅かったのもあり、自然と眠気が誘発される。
あくびを誤魔化しつつ深呼吸すると、眠気覚ましにコウスケに話しかけた。
「タクヤとリンは家業継いだりしてるのか?」
「いいや、二人とも同じ大学へ進学したよ。
んで、今日までサークルの合宿だってさ」
「サークル?」
「バードウォッチング」
「納得」
コウスケは呟いた。
「俺もユイも……お前の中では変わってたか?」
何かを確かめるような問いだった。
俺は素直に答える。
「久々に会って姿形は変わっても、中身はずっとあのままだなって思った」
コウスケはそっか、と笑う。
「俺らは村から出られない……と言ったら語弊があるか。
村から出る意思がないからさ。
俺たちの関係性が、人間性が、変わっているのか、止まっているのか、曖昧になる時がある」
「例え、村の外へ行っても変わらないものだってあるさ。
な?親友」
「……あぁ!」
少しばかりしんみりしてた空気は、一人の登場で打ち消される。
「お待たせー!」
俺たちはユイ姉も引き連れて、神社へ向かった。
夏の朝に訪れる神社は、みずみずしかった。
緑が生い茂り、セミの鳴き声が木霊する。
「…………」
神社。
分かってはいたが、大きな鳥居の下をくぐって参道に足を踏み入れると呼吸が浅くなる。
少女の死に顔。
コウスケの心臓を貫く生々しい感触。
「アキラ、大丈夫か。顔色が悪いぞ……」
コウスケは俺の顔を覗いた。
「だい……じょうぶ……」
ユメセカイとやらにいた時と違って、コウスケの声色は優しいし、最後の瞬間とは違って血が通っている、普通通りの色である。
ゆっくり呼吸を整えて神社の中で前を向けるようになると、隣から物音が聞こえる。
昨日も聞いたような、人の倒れる音。
横を向くと、ユイ姉が参道のど真ん中で倒れていた。
「こちらです」
コウスケが神社の裏手にいたフジヒコに声をかけて、ユイ姉を神社の真後ろにあるフジヒコの家に運ぶ。
通された部屋は畳が敷き詰められている部屋で、フジヒコは手際よく一人用の布団を敷くとそこにユイを寝かせるように誘導した。
「ユイさん、これを飲んでください」
フジヒコは瓶に詰められた錠剤を手にして砕くと、意識が混濁しているユイ姉の口に粉末と共に水を流し込む。ユイの喉は上下し、飲み込んだことが分かる。
「……なんだ、それは」
目線は、フジヒコの傍らに置いてある瓶に向けたまま、フジヒコに尋ねる。
フジヒコはゆっくりと俺の顔を見つめる。
「これは神社で代々引き継がれている栄養剤です。
効き目がいいので、村の方々にも渡しているものですよ。アキラくんも飲みますか?」
「いや、俺は……」
「アキラも疲れているようだったし飲んでみたらどうだ?
俺もよく飲むけど、市販の栄養剤よりいいと思うぞ」
コウスケに勧められる。
純粋に気を遣って勧めてくれていることが分かるばかりに、断りづらい。
渋々フジヒコの目の前に手を出すと包み紙の上に錠剤が置かれ、水が注がれた紙コップを手渡される。
栄養剤を口に含み、水で流し込むと身体の内側からふつふつと暖かいものが上がってくる。
そして、まっすぐ座っているはずなのに、目の前のフジヒコが増殖しているように見える。
「あ……れ……?」
視界がぐるりと回り、そのまま暗くなった。
「ふふーん、口に合ったようでなにより」
見た目は何の変哲もない、夏野菜を使ったチャーハンだった。しかし、作業を終えた空腹も相まってか、チャーハンを掬う手が止まらない。
ユイ姉は確かに昔から料理が上手かった。
記憶にあるのはお菓子ばかりだが。
「最近はオバサンに代わってユイ姉が料理してるんだっけ?」
「そう!お母さんもお姉ちゃんの子育て手伝ってるし、将来の花嫁修行兼ねてね!」
「ユイ姉のお姉ちゃん……メイさんが?!」
驚きあまり思わず噎せた。
「高校で知り合った隣町の旦那さんが婿に来てね。
赤ちゃんって可愛いんだよ~」
メイさんは、ユイ姉とは違って非常にしっかりしている人だった。無口寄りではあるが、村の年上のお姉さんって感じで、ユイ姉とはまた違う姉のタイプだった。
「こどもは女の子だっけ?」
「そう!親ってば、また女の子……って感じだったのに、今じゃすっかりメロメロ」
月日の経過はやはり残酷だ。
「そういえば、タクヤとリンも遂に付き合い始めたんだよ~」
「えっ」
タクヤとリン。
あの二人は幼馴染の中の二人で、二人とも独特なペースを持つ子だった。
でも、だからこそ馬があっていたのか、お互いに異常な程に懐いていて、小学生の頃から、親に唆されて将来結婚しようなんて言ってたのに──。
「まだ、付き合ってなかったのか……?」
「ま、そういう反応になるよなぁ」
チャーハンを食べ終えたコウスケは、口を拭いて外の様子を見ながら話す。
「でも考えてみてよ。あの二人だよ?
私たちがませてたとして、あの二人はピュアピュアなわけで、付き合うとか恋愛感情とか、そういうのを自覚しないまま、結婚しそうな勢いじゃない?
あくまで友達、幼馴染の延長戦で~、みたいな?」
「いや、ないない。リンはさておき、タクヤは男だぞ?
パッと見ピュアではあるが、中高の時は周りに牽制してたよ、アイツは」
──牽制してるタクヤとか想像できない。
そのくらい、小学生の頃はぽやぽやしてる男。それがタクヤだった。
「タクヤも男だったんだなぁ……」
「本当、みんなと同じ学年だったら楽しかったのになぁ~」
そんなぼやきをしながら、ユイは話途中で空になった食器を回収していき、洗ってくるからのんびりしてて、と告げて姿を消した。
ユイがいなくなり、コウスケと二人きりの落ち着いた空気になると眠りが浅かったのもあり、自然と眠気が誘発される。
あくびを誤魔化しつつ深呼吸すると、眠気覚ましにコウスケに話しかけた。
「タクヤとリンは家業継いだりしてるのか?」
「いいや、二人とも同じ大学へ進学したよ。
んで、今日までサークルの合宿だってさ」
「サークル?」
「バードウォッチング」
「納得」
コウスケは呟いた。
「俺もユイも……お前の中では変わってたか?」
何かを確かめるような問いだった。
俺は素直に答える。
「久々に会って姿形は変わっても、中身はずっとあのままだなって思った」
コウスケはそっか、と笑う。
「俺らは村から出られない……と言ったら語弊があるか。
村から出る意思がないからさ。
俺たちの関係性が、人間性が、変わっているのか、止まっているのか、曖昧になる時がある」
「例え、村の外へ行っても変わらないものだってあるさ。
な?親友」
「……あぁ!」
少しばかりしんみりしてた空気は、一人の登場で打ち消される。
「お待たせー!」
俺たちはユイ姉も引き連れて、神社へ向かった。
夏の朝に訪れる神社は、みずみずしかった。
緑が生い茂り、セミの鳴き声が木霊する。
「…………」
神社。
分かってはいたが、大きな鳥居の下をくぐって参道に足を踏み入れると呼吸が浅くなる。
少女の死に顔。
コウスケの心臓を貫く生々しい感触。
「アキラ、大丈夫か。顔色が悪いぞ……」
コウスケは俺の顔を覗いた。
「だい……じょうぶ……」
ユメセカイとやらにいた時と違って、コウスケの声色は優しいし、最後の瞬間とは違って血が通っている、普通通りの色である。
ゆっくり呼吸を整えて神社の中で前を向けるようになると、隣から物音が聞こえる。
昨日も聞いたような、人の倒れる音。
横を向くと、ユイ姉が参道のど真ん中で倒れていた。
「こちらです」
コウスケが神社の裏手にいたフジヒコに声をかけて、ユイ姉を神社の真後ろにあるフジヒコの家に運ぶ。
通された部屋は畳が敷き詰められている部屋で、フジヒコは手際よく一人用の布団を敷くとそこにユイを寝かせるように誘導した。
「ユイさん、これを飲んでください」
フジヒコは瓶に詰められた錠剤を手にして砕くと、意識が混濁しているユイ姉の口に粉末と共に水を流し込む。ユイの喉は上下し、飲み込んだことが分かる。
「……なんだ、それは」
目線は、フジヒコの傍らに置いてある瓶に向けたまま、フジヒコに尋ねる。
フジヒコはゆっくりと俺の顔を見つめる。
「これは神社で代々引き継がれている栄養剤です。
効き目がいいので、村の方々にも渡しているものですよ。アキラくんも飲みますか?」
「いや、俺は……」
「アキラも疲れているようだったし飲んでみたらどうだ?
俺もよく飲むけど、市販の栄養剤よりいいと思うぞ」
コウスケに勧められる。
純粋に気を遣って勧めてくれていることが分かるばかりに、断りづらい。
渋々フジヒコの目の前に手を出すと包み紙の上に錠剤が置かれ、水が注がれた紙コップを手渡される。
栄養剤を口に含み、水で流し込むと身体の内側からふつふつと暖かいものが上がってくる。
そして、まっすぐ座っているはずなのに、目の前のフジヒコが増殖しているように見える。
「あ……れ……?」
視界がぐるりと回り、そのまま暗くなった。
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