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5話:スズナリ様(2)
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「ここにいたんだな」
そう話すコウスケの顔は少し寂しそうであった。
こんなに早くみんなを集めて神社にやってこれた時点で、家を出る時には意識があったのだろう。
「みんな、ユメセカイでの出来事は……」
「分かっていたわ」
と、話すユイ姉は右手で左腕をぎゅっと押さえて、苦しそうな顔をする。
「村にいれば教わることだから。スズナリ様を輩出した家系は、神社に記録されて、その家系は豊かになる。だからね、それを悲願する家が多いの。
私のところも……そう」
俺が呆然としているとコウスケは俺に渡すように赤い鈴を投げた。
「アキラ、最後にあえてよかった」
そう告げるコウスケに手を伸ばすが、俺は宙を舞う鈴の音を聴きながらそのままユメに潜った。
ちりんちりん。
鈴の音が鳴り響く。
あぁ、体がユメに溶けて馴染んでいく。
これが五度目のユメセカイ。
目の前にいたのは一度目に会った少女であった。
黒を基調とするゴスロリ姿の彼女は、紫の長い髪の毛を揺らして、顔を傘で隠している。
「お前は……フジヒコなんだな?」
少女は傘を傾けて俺に顔を見せた。現実とも変わらない柔らかい笑みを浮かべている彼は、フジヒコであることを肯定していた。
ユメセカイへ初めて来た時に見た顔とは変わらない。けれど、一度目の時にはセカイの異質さに気を取られては、スカートを履いてるから少女と決めつけて、中性的な彼と同一の顔であるところまで気が回っていなかった。
「どうしてそんな姿をしているんだ」
フジヒコはんー、と悩む。
「スズナリ様がボクに母の面影を感じるのでしょうね」
そんなことを言いながら、フジヒコは手に持っていた傘を放り投げると、傘は回転しながら姿を変えて薙刀となる。
薙刀を掴み構えたフジヒコは、見た目が獲物とそぐわない。
彼は距離を詰めて、刀の間合いより遠くから薙ぎ払ってくる。
後退しながら間合いを詰める機会を伺い、攻撃を受け止めて軽く攻撃を仕掛けてみるが相手もまた刀を払い、攻防が続く。
──けど、フジヒコの軌道はよく見える。
距離はコウスケより近く、速度はリンより遅く、手に感じる力はユイ姉やタクヤより弱い。
──ここか。
フジヒコが水平に薙ぎ払おうとしたところを刀で下から斜め上へ弾く。フジヒコの腕は上がり隙が産まれた。
一気に間合いを詰めようとした瞬間、フジヒコは薙刀を手放して丸腰で詰めて、俺の刀を持つ手を抑える。
「なにを……っ」
気がつけば、フジヒコに押し倒されていた。
腹で馬乗りにされていて、刀は手から滑り落ちて伸ばせば掴める距離に落ちているが手はフジヒコに止められて動かせない。
「ねぇ、ボクたち……またひとつに戻ろうよ」
「は……?」
ユメセカイの俺の心であるというフジヒコの手足をよく見ると俺のように模様が描かれている。
「ボクらは二人で一つの心なんだ。
ボクはキミのユメセカイの心をはめ込んだだけの欠陥品だからスズナリ様になることはない──このままだと、キミはスズナリ様になってこの世から──」
フジヒコの表情はいつもと違って真剣で、俺に対して重要な何かを必死伝えようとしている。
しかし、言葉が聞こえない。
鼓動が早くなる。
身体が熱い。
『俺が、スズナリだ』
頭がおかしくなりそうだった。
「……っぁ……」
「アキラく……んっ!?」
抑えられていた腕を力ずくで解放すると、馬乗りになっている腕を引っ張りフジヒコを地面に転ばせる。起き上がる前に刀を手にしてフジヒコの身体に突き刺すと、フジヒコは苦痛な表情を浮かべながら手を伸ばしてくる。
「アキ……ラ……」
刀を抜いて、再び突き刺す。
「ぅあっ……ア……」
『余計なことをするな』
何度も何度も何度も……。
何をしている?
曖昧な意識の中で絶え絶えになりながら名を呼ぶ声だけがこだましていた。
そう話すコウスケの顔は少し寂しそうであった。
こんなに早くみんなを集めて神社にやってこれた時点で、家を出る時には意識があったのだろう。
「みんな、ユメセカイでの出来事は……」
「分かっていたわ」
と、話すユイ姉は右手で左腕をぎゅっと押さえて、苦しそうな顔をする。
「村にいれば教わることだから。スズナリ様を輩出した家系は、神社に記録されて、その家系は豊かになる。だからね、それを悲願する家が多いの。
私のところも……そう」
俺が呆然としているとコウスケは俺に渡すように赤い鈴を投げた。
「アキラ、最後にあえてよかった」
そう告げるコウスケに手を伸ばすが、俺は宙を舞う鈴の音を聴きながらそのままユメに潜った。
ちりんちりん。
鈴の音が鳴り響く。
あぁ、体がユメに溶けて馴染んでいく。
これが五度目のユメセカイ。
目の前にいたのは一度目に会った少女であった。
黒を基調とするゴスロリ姿の彼女は、紫の長い髪の毛を揺らして、顔を傘で隠している。
「お前は……フジヒコなんだな?」
少女は傘を傾けて俺に顔を見せた。現実とも変わらない柔らかい笑みを浮かべている彼は、フジヒコであることを肯定していた。
ユメセカイへ初めて来た時に見た顔とは変わらない。けれど、一度目の時にはセカイの異質さに気を取られては、スカートを履いてるから少女と決めつけて、中性的な彼と同一の顔であるところまで気が回っていなかった。
「どうしてそんな姿をしているんだ」
フジヒコはんー、と悩む。
「スズナリ様がボクに母の面影を感じるのでしょうね」
そんなことを言いながら、フジヒコは手に持っていた傘を放り投げると、傘は回転しながら姿を変えて薙刀となる。
薙刀を掴み構えたフジヒコは、見た目が獲物とそぐわない。
彼は距離を詰めて、刀の間合いより遠くから薙ぎ払ってくる。
後退しながら間合いを詰める機会を伺い、攻撃を受け止めて軽く攻撃を仕掛けてみるが相手もまた刀を払い、攻防が続く。
──けど、フジヒコの軌道はよく見える。
距離はコウスケより近く、速度はリンより遅く、手に感じる力はユイ姉やタクヤより弱い。
──ここか。
フジヒコが水平に薙ぎ払おうとしたところを刀で下から斜め上へ弾く。フジヒコの腕は上がり隙が産まれた。
一気に間合いを詰めようとした瞬間、フジヒコは薙刀を手放して丸腰で詰めて、俺の刀を持つ手を抑える。
「なにを……っ」
気がつけば、フジヒコに押し倒されていた。
腹で馬乗りにされていて、刀は手から滑り落ちて伸ばせば掴める距離に落ちているが手はフジヒコに止められて動かせない。
「ねぇ、ボクたち……またひとつに戻ろうよ」
「は……?」
ユメセカイの俺の心であるというフジヒコの手足をよく見ると俺のように模様が描かれている。
「ボクらは二人で一つの心なんだ。
ボクはキミのユメセカイの心をはめ込んだだけの欠陥品だからスズナリ様になることはない──このままだと、キミはスズナリ様になってこの世から──」
フジヒコの表情はいつもと違って真剣で、俺に対して重要な何かを必死伝えようとしている。
しかし、言葉が聞こえない。
鼓動が早くなる。
身体が熱い。
『俺が、スズナリだ』
頭がおかしくなりそうだった。
「……っぁ……」
「アキラく……んっ!?」
抑えられていた腕を力ずくで解放すると、馬乗りになっている腕を引っ張りフジヒコを地面に転ばせる。起き上がる前に刀を手にしてフジヒコの身体に突き刺すと、フジヒコは苦痛な表情を浮かべながら手を伸ばしてくる。
「アキ……ラ……」
刀を抜いて、再び突き刺す。
「ぅあっ……ア……」
『余計なことをするな』
何度も何度も何度も……。
何をしている?
曖昧な意識の中で絶え絶えになりながら名を呼ぶ声だけがこだましていた。
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