意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei

文字の大きさ
23 / 27

23 驚き

しおりを挟む
さほど長い時間ではなかったと思う。馬車が止まり扉が開いた。

「すまなかった。もう目隠しを外しても大丈夫だ」

グリードの声を聞き、エミリアが自分の目隠しをとったあとレイラの目隠しもとってくれた。

「すぐに外に出ると眩しいからゆっくりと…」

目を慣らしてから外に出た。平屋の扉が開いておりそこへ案内される。護衛のエミリアはここで待つように指示されレイラだけが反対側の扉から外へ出る。窓から見ることができるのでエミリアは後ろから見守っている。


「不便を強いて申し訳なかった。さあどうぞ」

案内されて目の前に見えたのは湾と呼ぶには小さい入り江のような場所で、今まで見てきた海と大きな違いはなかった。

「殿下…?」

ここが何かと見上げると、グリードは小さな笛を出しピッと短めに高い音を出した。

瞬間海から鳴き声が聞こえ海面に何かが出てきた。

「あっ…」

「ヒュー」

グリードが名前を呼ぶと嬉しそうに泳いで海面から高くジャンプした。

「俺の守り神」

「本で読んだ気がします…本当だったんですね」

学園に入る前、父親の書斎で読んだ中にエルンテ国王族に関する憶測として表記されていたことを思い出す。
王族が産まれると同時イルカが現れ生涯を共にすると。

「このような大切な事を私に見せて良かったのですか?」

国家秘密を目の前にして小さく震える。
半身とも言えるこのイルカにもしものことがあると、死にはしないが極端に弱くなると仮定ではあったが書かれていた事も思い出す。

「ヒューの存在は知れ渡っているし、この場所は厳重に管理されているから大丈夫だ」
「ですが…」

「あなたに見てもらいたかったし、ヒューにも紹介したかった」

爽やかに笑うグリードを見てもまだどうしていいか分からないレイラは自分でもどんな表情をしていいのか、しているのか…とりあえず複雑な顔をしていた。

「レイラ嬢?」

グリードがレイラの顔を覗き込もうと海を背にしてレイラの前に立った時、海にいたヒューが尾びれを動かし海水を巻き上げた。

後ろから大量の海水を被る形になり二人ともすぶ濡れになった。

「ヒュー!!」

グリードが怒って海に叫ぶと、イタズラをしたヒューは笑っているように楽しそうに泳いでいた。

「あいつ!!」

振り返りレイラにすぐに声をかける。

「大丈夫か?本当にすまない。まさかこんな事に…」

慌てているグリードと全身ずぶ濡れになっている自分と本当に笑っているように見えるイルカを交互に見て、なんだかおかしくて声を出して笑ってしまう。

「レイラ嬢?」

「笑ってしまい申し訳ございま…ふふっ」

言い終えることなくまた笑ってしまう。

「とっ…とりあえずすぐに着替えを」

急いで戻ろうとレイラの手を取り平屋へ向かう。




「レイラ様!!大丈夫ですか?」

すぐに外に出ようとしたのを止められていたエミリアが真っ先にレイラの元に駆け寄る。

「殿下これはいったい…」
「エミリアいいのよ。私イタズラされてしまっただけなの」
「しかし…」

正式に抗議したいところだがそれよりも濡れているレイラを着替えさせたいとぐっと堪え、グリードの側近が持ってきたタオルでレイラを包んだ。

「すまない!少しだけ待っていてくれ」

グリードも濡れては板がタオルを使うことなく平屋から出ていき、ほんの数分で着替えを持ってきた。

「とりあえずこれを…いやあの俺はドレスは選んだがその他はうちのメイドが…いやあの…とりあえずこれを」
 
焦りすぎて同じことを繰り返すグリードからエミリアが包みを預かり二人で奥の部屋に向かう。

「一旦全員外に出るので支度終われば知らせてくれたら…その…」
「殿下、着替えありがとうございます。しばらくお待ち頂けますか?」

「本当にすまない。外で待っている」

そう言ってグリードは外に出た。




「レイラ様お早く着替えないと…海水はベタつきますので」
「ありがとうエミリア」

奥の部屋に入り、エミリアが用意したタオルで身体を拭き渡して貰ったドレスを着た。南国の1枚仕立てのドレスで腰紐を結びとても着心地のよい服であった。腕が出てたが薄手の羽織ものもあったのでさほど気にしなくても大丈夫だった。
髪はエミリアが簡単にまとめあげてくれたが、帰ってからすぐ洗わないと痛みそうである。

ある程度の支度が終わり外に出るとグリードも上着のみ着替えて待っていた。

「殿下お待たせしました」

「…ああ」

グリードは自国の服を着たレイラに目を奪われていた。ラフな服ではあったがレイラの気品は失われずとても似合っていたからだ。

「殿下?」

「また目隠しはしてもらうが、街まで戻ろう」
「はい」 







行きと同じように馬車に乗り護衛達が待っている場所まで戻ってきた。

「王宮で食事を用意したからそちらに向かうが構わないか?」
「そこまでご用意頂かなくても…」
「いや…本当に今日は申し訳なく…」
 
「殿下。王子がそう何度も謝ってはいけません。ふふっ私今日久々に声を出して笑えました」




「本当に楽しかったです。なのでもう謝らないで頂けませんか?」

そう言って笑うレイラは確かに今まで見た笑顔の中ではとびきり楽しそうに笑っていた為、グリードは自然と手を取ろうとして慌てて引いた。

「では…お腹が空いたので一緒に食べてくれないか?」 
「はい。喜んで」



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

婚約破棄のお相手は

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。 幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。

処理中です...