伯爵令嬢は婚約者として認められたい

Hkei

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「はぁ…」

自室のソファーで、メイドのマギーがいれたお茶を飲みながら、ソフィアは大きなため息をつく。

「明日のお茶会で今度こそ殿下に認めていただけるかしら…」

「ソフィア様大丈夫ですよ!毎日ものすごく努力されてるじゃありませんか」

「私は毎日殿下のことを考えるけど、殿下はそうではないわよね…きっと…私まだまだですし…」

持っていたカップをおろし、ちょっと拗ねるように頬を膨らませ緩く巻かれた栗色の毛先を自分の指に巻き付けながら
深い緑色の瞳を閉じて下を向く。
15歳にしては少し幼く思わず撫でたくなるような小動物的な可愛さのソフィアに

「ソフィア様もっと自信をもってください!ソフィア様は素晴らしくとても可愛いいです!」

マギーは抱きしめたくなるのを我慢しながらすぐ自分を卑下する言い方のソフィアに言葉をかける。

「ありがとうマギー。嫌われてはないと思うけど…」

と今度は口を少し突き出して拗ねた表情になる。はぁと軽く息を吐き、そのまままた大きなため息をつく。





スタンリー伯爵の1人娘であるソフィアとエドワード第2王子の婚約は、ソフィアが産まれた時に決められてはいたが
15年たった今でも正式発表はされていない。
ソフィアの母親である伯爵夫人が出産の際亡くなってしまった為、
スタンリー伯爵の落ち込みが激しく忘れ形見のソフィアへの溺愛もあり
もう少し後で2人の気持ちが決まったらとの国王陛下からのお言葉もあって延び延びになっている状態である。


ソフィアは初めて会った時から手を差し出してくれ、母を無くした自分をいつも優しく慰めてくれたエドワードが大好きで、婚約者と認めてもらえるようにできる限りの努力を重ね伯爵令嬢として恥ずかしくない淑女に成長した。

しかし、凝った刺繍入のハンカチをプレゼントしても
外国語の難しい本を読み切った時も
一緒に行った夜会で華麗なダンスを踊っても
未だエドワードからの特別な言葉も、褒めてもらったこともない。
決められた月1回のお茶会を楽しみにしてた時期はすぐにすぎ、今では試練に立ち向かう心境で毎回過度の緊張で前日はため息しか出ない。
それでもソフィアはエドワードが大好きなのだ。

「明日この前のお祭りの話をされてはいかがですか?お嬢様がお手伝いしたことをお聞きになれば必ず認めていただけると思います!」

マギーは目を輝かせながらソフィアにお茶のおかわりを入れる。
そうね…とお茶を飲みながら先日の出来事を思い出す。

──大変だったけれど、お祭りを成功させたのは褒めて頂けるかしら


フフフっと笑い、久しぶりにお茶会前に楽しい気分なったソフィアは飲みきったカップをテーブルに置いた。

◇◆◇



王宮の奥にあるエドワード専用庭を眺めながら2人は向かいあってお茶を楽しんでいる
テーブルに並べられたお菓子はソフィアが好きなものばかりだった。

「お祭りがあったそうだね」

金髪碧眼整った顔のエドワードを真っ直ぐに見つめると恥ずかしいので俯いていたソフィア。


──殿下から語りかけてくれるのは久しぶりですわ。でもなんだか少し声がいつもより低くてらっしゃる?

それでも声をかけてもらえたのが嬉しくて急いで顔をあげ笑顔で

「はい。お父様の管理する領地でしたので私も準備をお手伝いさせていただいて無事終えることができました」

「…そう…」

エドワードはソフィアの目をしばらく見てから
そのまま沈黙してしまった。


──ここで頑張った私を褒めてもらわないと!!

「はじめは規模も小さかったのですが、教会のシスターやお祭りを主に準備してくれたトマス商会のダン様や他の方たちと話してるとあれもこれもと話が膨らみまして」

「…」

「劇団の方に来てもらったり、食べ物も店先で出してもらうようにしたり」

「気軽にダンスもできるように音楽も奏でてもらったり」

「でも予算はきっちりと決めてましたから調節しながら収めることもできました!それから…」


──私頑張ったんです!これなら認めてもら…





「かなり楽しかったんだね。僕は後で報告聞いただけで関係ないけど」




ソフィアがこれでもかと自分が頑張ったことを報告してると、にっこりと微笑んではいるけれど表情とは違う冷たい声でエドワードが話を遮った。

「…え?」

「婚約が発表されてないとは言えほとんどの人が僕とのことは知ってるはずだし、立場ある伯爵令嬢がそこまでするのが正しいことかな?
話し合ったトマス商会ダン会長って僕と同じ歳の男性だったよね?」


「…!!」


ズキっと胸が痛くなる。
褒めてもらえると思ってたソフィアは今まで聞いたことのないエドワードの冷たい声に体は固まり、問にすぐに答えることが出来なかった


──私何か間違った…?


しばらくして震えだした両手をぎゅっと握り


「で…ですが、と…当然他のものもいましたし私だけでは何もできず、みんなでお祭りを成功させたくて…」

震える声を必死に抑えて顔をあげると
しばらくまっすぐソフィアを見てたエドワードが目を細め視線を外す。


「…!!」


ソフィアは胸が苦しくて握ってた両手を胸に当てる。



「反論して大変申し訳ございません。私が軽率でございました…」



──泣いては泣いてはダメ…我慢しなく…ては…


ばっと立ち上がり顔を見られないように頭を下げおじぎをするソフィアに
一瞬眉間に力を入れ苦しそうな表情で手を伸ばそうとするも


「今日はここまでにしよう」


とエドワードはやや乱暴に席を立って足早に入口に向かって歩いて出ていってしまった。
入口で控えていた側近がソフィアに慌てて一礼した後エドワードの後を追って出ていった。



「ソフィア様!!」

すぐにマギーがそばまで駆けつける。



「どうしましょう…私…私殿下に嫌われてしまいました…」



エドワードがいなくなるまで我慢していたソフィアの目から一気に涙が流れ
その場に座り込んでしまった。







◇◆◇



「ソフィア!!どうした!!何があった!!」

「…お父様申し訳ございません。私今は話したくないんです。そっとしておいてください」

ベッドに潜り込み顔も隠してしまっているソフィア。

愛する娘が夜食事もせず部屋にこもってると聞き、部屋まで急ぎやってきたスタンリー伯爵はオドオドしてなおも声をかける。

「しかし…ああ!どうにかその可愛い顔を見せておくれ!心配で私も倒れそうだ!殿下とのお茶会は今日だったかな、そこで何があったんだ?」

「ですから今はほっといてください!」

「ソフィアー!!」

明らかな拒否にスタンリー伯爵が崩れそうになった時
扉を叩く音がして

「お嬢様にお届け物がございます」

と花束を持って執事が部屋の前に立っていた

「エドワード殿下からでございます」


カバっとベッドから飛び起きたソフィアに
執事から預かった花束をマギーが渡す。

「カードがございますよソフィア様」


受け取った花束は黄色の花で、カードは青色のリボンを添えて差し込まれてあった

─殿下の瞳の色のリボン…

そう思いながらそっとカードを開くと




『 来月もまた会おう』



とエドワード直筆でメッセージが書いてあった。


「また来月も会ってくださるってことは…嫌われてはない?私まだ大丈夫?」

弱々しくはあるものの少し笑顔で、でもポロポロと涙を流すソフィアにマギーは

「大丈夫です!ソフィア様」

内心は声に出せない怒りでいっぱいだったが
そこは表に出さずソフィアに寄り添った。



そのやり取りを横目で見ながら
完全に忘れられた存在のスタンリー伯爵が
肩を落とし執事に背中を押されながら部屋を後にした。




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