転生した先は乙女ゲーム?私は登場しないモブだったので従兄弟をヒロインとくっつける為に奔走します!!

Hkei

文字の大きさ
36 / 44

36 代役

しおりを挟む
声で誰に呼ばれていたのか分かっていたが、振り向かないわけにもいかずゆっくり向きを変える。
距離をとって頭を下げる。そのまま再度声がかかるのを待っていると笑いながら名前を呼ばれる。

「シルヴィ、今日は控えめだね」

声が自分に近づいて来るので一歩下がると足音が早くなり目の前に立たれたのが分かった。さらに下がろうとすると腕を掴まれた。

「顔をあげてシルヴィ」

逃げられる状況ではなく渋々顔をあげると、満面の笑みのフレデリックと目が合った。

「ちょっと来てくれるかな?」
「え?」

「殿下…どちらへ…」

逃げる事もできずグイッと引っ張られたまま歩かされる。食堂から出て反対側の教室に連れていかれると生徒会のメンバーが揃っていた。中にいたマルクがシルヴィに気がつき、目を見開いて驚いている。

「殿下!なぜシルヴィを…」
「代役を頼もうと思ってね」
「代役?」

先程見ていた生徒会の劇で、午後から出演する予定だった生徒が、急遽招待客の案内をすることになり一人足りなくなっていた。
しかし役的にいなくてもストーリーに問題はなくそのまま進めようとなっていたはずなのに、フレデリックが代役を連れてきたのだ。
生徒会メンバーが驚くのも無理はない。

「立ってるだけでいいからお願いできる?」
「え?は?私ですか?」
「殿下…代役は立てなくてもいいと先ほど決めたのでは…」
「私クラスの当番が…」
「そちらには既に連絡してある。いいよね?シルヴィ」

嫌ですとは言えない圧力ある笑顔で、シルヴィは頷くしかなかった。
マルクがシルヴィの腕を掴み

「どうしてこうなった?アランは?」
「いきなり連れてこられて今こうなっているの!私も分からないわよ!アランは委員の仕事に行っちゃったし…」

──アランに怒られる!!でも断れる感じじゃないし…

マルクがフレデリックから見られないようにアランに知らせに行こうとそっと抜け出そうとしたら、いつの間にか扉の前にフレデリックがいて塞がれた。

「マルク今から準備もあるのにどこに行く?」
「いえ、あの…戻ります」

今日のフレデリックは誰にも逆らえない雰囲気が漂っていた。



一度見た劇とはいえ細部まで覚えてはいないので軽く説明を受ける。
シルヴィの役はセリフもなく、舞台上でも一人になることはないようで、2年生の役員と常に一緒らしい。本当にいなくてもいい役ではあった。

マルクは何回か抜け出そうとしたが全て見つかり既に諦めていた。
少し休憩させてもらっていたシルヴィがマルクのそばまで行きコソコソと話をする。

「マルク様!早くどうにかしてくださいよ」
「いやもう立っているだけだしシルヴィ…諦めたら?」
「裏切り者ーー!」

招待客の案内の為急に抜けることになった生徒がシルヴィに頭を下げる。

「本当にすみません。私が出れなくて…」
「立っているだけですし大丈夫です。案内も大変だと思いますので頑張ってくださいね」
「ありがとうございます。ではよろしくお願いいたします」


──あーもうやるしかないわ…

シルヴィも諦めることにしたが、立っているだけとは言え出るからには失敗して迷惑かけないようにと前向きに考えるようにした。





劇が始まる直前、ものすごく緊張していたシルヴィだったが始まってみるとあっという間に終わりほっと脱力した。
最後のカーテンコールには出るつもりなかったが一緒に舞台にたっていた2年生に一緒にと端ではあったが出させてもらった。
その時後ろの方にローズがいたのが見えた。拍手をしながらシルヴィを見て何しているの?と表情が訴えていたが横に年配の方がいたのでシルヴィが驚いた。

──侯爵様いらしたのね。

後ろに引いてからすぐにローズの元に行こうと扉へ向かおうとするシルヴィの腕をフレデリックが掴み引き止めた。

「どこに行く?」
「あの…ローズのところへ行こうかと」

にっこりと笑いながらも掴んでいる手は離さない。

「殿下…あの…」
「シルヴィはこのまま私のフォローをお願いできるかな?」
「え?でも私この後…」
「頼むね。シルヴィ」

ゾクッと背中に緊張が走る。
断ろうとするもシルヴィは声を出せなかった。
それほどにフレデリックの低く 力のこもった声と目線にそのまま座り込んだ。

マルクがそのすきに抜け出しアランの元に向かう。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

処理中です...