魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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魔界へ帰ろう計画(4)

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「初めて会った時のレフィーったら、「湖と結婚出来るくらいなら、竜でもいいでしょう」なんて言ってきて。開いた口が塞がらなかったわ」

 大仰に溜息をついてみせるミアさんに、シナレフィーさんが「ミア……」と少しおろおろした様子を見せる。

「ふふっ、虐めてごめんなさいね、レフィー。今はちゃんと幸せよ。あ、そうそう。子供がどちら似かは、今のところ半々なんですよ。一人目が人間の赤ちゃんで産まれて、二人目は卵で出て来たの! 何だか得をした気分だわ」

 ミアさんが弾む声で言い、幸せそうに笑う。

「二人もお子さんがいるんですか!」

 見えない。彼女が若いというのもあるが、それ以上に体型がそんな感じじゃない。華奢だ。スリムだ。あ、でも胸は大っきい……。

「幸い人間の生殖については、記された書物が多数あったので助かりました」

 ミアさんに替わりの紅茶を注ぐシナレフィーさんは、もう無表情に戻っていた。
 ミアさんがにこにこながら、シナレフィーさんが淹れた紅茶を飲む。
 エロ本を読み漁ったと言ったも同然の夫に、まったく動じないミアさん。やはり、すごい。
 ところでミアさんが、さっきからシナレフィーさんを『レフィー』呼びしてるの。やっぱりこれなんだろうな、ギルが『ギル』呼びに固執する理由は。
 羨ましかったんだね。そう思って、ギルをちらりと見る。

「ん? 竜の知識欲についてか? 俺は謎を解くより、探す方が好きだ!」

 ドーンという擬音が付きそうな程、どや顔でギルが言う。
 そう言えば、ギルも古代竜で竜族だった。謎を解きたい派のシナレフィーさんとなら、良いコンビになっていそうだ。

「シナレフィー。明日、街に行って、サラが話していたような店がないか調べてきてくれ」
「かしこまりました」

 ボーンボーン……
 シナレフィーさんがギルに返事をしたところで、食堂に置かれた巨大な柱時計が鳴った。

「キスの時間だ」
「キスの時間ですね」

 その音に、同時に反応する男二人。
 でもって、

(うはぁっ!)

 シナレフィーさんが涼しい顔で、めっちゃ濃厚なキスをミアさんに仕掛けた。
 それを常日頃からやってるわけですか。そうですか。

「ひゃっ」

 ギルから私へは、額にチュッと。
 ニッと笑ったその表情、やっぱり好きです。

(キスの時間て、私からギルにしてみてもいいのかな)

 もしそれをやったならと想像してみて、慌てた彼を思い浮かべて口元が緩む。

(そ、そのうち勇気を出して……!)

 元の世界に帰れるのだから、旅の恥は掻き捨てということで!
 良い笑顔のまま私の頭を撫で始めたギルに、私は密かな決意を胸にした。
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