魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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百年花(3)

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「魔王城の気配りはピカイチよね。いつもあやしてくれる魔王城に、うちの子たちもとっても懐いているのよ」

 ミアさんが「そうそう」といった感じで、会話に参加してくる。
 城が子供をあやす、とは。私の固い頭では、まったく想像つかないのですが。
 ふと、中庭に来る前に見せてもらった、ミアさんのお子さんの様子を思い返してみる。
 一人が人間の女の子でイベリスちゃん、もう一人は竜な男の子でアルトくん。私が見た二人は、寄り添って眠っていた。イベリスちゃんは四歳、アルトくんは三歳。イベリスちゃんの見た目は、人間の四歳相応だ。
 ただ、見た目が違っても、どちらも体質は竜寄りだそうで。特に体重が生まれて数ヶ月でミアさんの体重を超えてしまったそうで。お世話は基本、ルル(リリと同じ呪いの人形らしい)にお任せとのこと。
 以前、寝返りを打った我が子とベッドとの間に手を挟まれ、シナレフィーさんが戻ってくるまで身動きが取れなくなったこともあったとか。シナレフィーさんが部屋にいる時しか存分に触れ合えないと、ミアさんは嘆いていた。ある程度成長してしまえば、体重調整する技を習得するらしいけれど。何とも切ない話だ。

『おっと、街の方で喧嘩のようだ。ちょいと仲裁に行ってくるか。じゃあな』

 異種族夫婦の子育て事情に思いを馳せていたところを、魔王城からの退席の挨拶で現実に呼び戻される。

「え? あ、はい。行ってらっしゃい?」

 城が喧嘩の仲裁をすることに突っ込めばいいのか、「行ってくる」発言に突っ込めばいいのか。よくわからないまま返事をした後、私は視線でミアさんに助けを求めてみた。

「本当、魔王城って不思議よね」

 ミアさんにも、わからないようだ。
 うん、まあそうだよね。原理がわからなくてもスマホは使うし、電車にも乗るもの。そういうものだ。
 ミアさんと互いに「うふふ」と、誤魔化し笑いをし合う。

「サラ様~」

 その直後に離れた場所から名前を呼ばれ、私は反射的にそちらを振り返った。
 中庭と通路の境は柱が並ぶだけなので、すぐに声の主の姿が目に入る。
 声の主――リリは、ブンブンと手を振りながらこちらに向かって駆けてきた。

「魔王様からの伝言です」

 側まで来たリリが、上げた手をそのままに話し出す。

「シナレフィー様が人間の王都に行くので、サラ様もミア様と一緒に行ってみてはどうかとのことです!」

 元気よく言い切った彼女は、やはり元気よくシュパッと上げていた手を下ろした。
 王都かぁ。王都なら、『ザ・RPG in人間側』な街を拝めような予感。ちょっと惹かれる。

「ミアさん、私も同行していいですか?」
「ええ、勿論よ。レフィーの背中は大きいから、全然問題ないわ」
「え、シナレフィーさんに乗るんですか」

 まさかの交通手段。

「最寄りの馬車止めの近くまでは、レフィーに乗って飛んで行くの。それじゃあ、前庭に移動しましょうか。レフィーが竜の姿で待っているはずよ」

 言って、ミアさんが歩き出す。
 ギルもシナレフィーさんも竜だと聞いてはいるけれど、実際どんな感じなんだろう。

「よろしくお願いします」

 私はワクワクしながら、ミアさんの後に続いた。
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