魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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百年花(2)

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「竜の体液で、老化が緩やかに……」

 落ち着くために、ひとまずミアさんの言葉を繰り返した私に、ミアさんが「そう」と相槌を打つ。

(……あ、うん。あったあった、そういうアイテム)

 体液と言われたから、すぐにはピンと来なかった。けれど、『竜の血』だったならよく見かけるアイテムだ。
 蘇生薬であったり、ステータスUPであったり。神話でも木の葉のせいで浴びなかった一点を除いて、竜の血で不死身になった英雄の話があった。竜由来のアイテムに、奇跡を起こす効果は確かにありそうだ。

「でも寿命が延びるだけで、身体自体が丈夫になるわけじゃないから。きっと私たちは彼らを遺して逝く方になってしまうのでしょうね」

 ミアさんが悲しげな表情で、百年花の花びらを指先で撫でる。
 それからスクッと立ち上がった彼女の顔からは、もう悲しみの色は見えなくなっていた。

「この話題はレフィーの前では禁止ね。ああ見えて繊細な人だから」
「わかりました」

 口の前で人差し指を立てたミアさんに、私は頷いてみせた。
 ほんの数日見ただけでも、シナレフィーさんのミアさんに対する溺愛は見て取れた。彼女が言うように、『死』の話題は彼にとって禁句中の禁句にあたるだろう。
 ミアさんに続いて、私も立ち上がる。

「そう言えば、サラさんはもう魔王城と話してみたかしら?」
「えっ、ミアさんは話せるんですか?」

 てっきり、魔に属する者だけのテレパシーだと思っていたのに。

「キスした後、数時間くらいは魔力を帯びているから、その時なら私たちも念話できるのよ」
「なんと」

 竜の体液が万能過ぎる件について。

「今の時間ならまだできるかも。呼び掛けてみてはどうかしら。こちらから話すのは、普通に声に出していて大丈夫よ」

 ああ、あの。ギルが私の目から見て、一人でしやべっているように見えていたアレですね。
 でもミアさんにも念話が聞こえるわけだから、私がそうしても変には見えないのよね?
 それなら、やってみたい。

「えっと……魔王城さん、聞こえてますか?」

 どこに向かって話せばいいのかわからないので、ギルがよく見ている方向を真似て話し掛けてみる。

『ん? お妃さんか』

 本当に反応が返ってきた!
 青年男性な感じの声だ。城に性別があるのかは知らないけれど。

「はい。沙羅です。あの、素敵な部屋をありがとうございました」
『初日にもお礼を言ってくれてたよな、こっちこそありがとう。コタツだっけか。飛び付いてくれて、用意し甲斐があったよ。記憶をちょちょっと覗いた時に、寛ぐといえばコレみたいに出てきたから、選んだんだけど。そんなに良いなら、オレも入ってみたいもんだ』

 城がたつにどうやって。残念ながら、それは無理かと。
 というか、今サラッと「記憶をちょちょっと覗いた」とか言われたよ。魔王城の能力高過ぎやしませんか。
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