魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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精霊の村(2)

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「しかし、最近世間が騒がしいの。人間が暴れてほこらは壊しまくるわ、エセ精霊は侵入してくるわ」

 光の精霊が一息に喋って、またレタスにかじり付く。

「人工精霊がここに来たのか。どんな奴だった?」
「白い鷹じゃったな」
「王家が飼ってるあれか」
「あ、王都で見かけました。伝書に使われているみたいでした。あれが人工精霊だったんですね」

 私の目には何かの白い物体にしか映っていなかったが、シナレフィーさんがそう言っていたので間違いないだろう。

「正確には、器に人工精霊が入ってる形だろうけどな。精霊なら千里を飛んでも疲れ知らず、加えて余程のことがない限り死なない。重要な連絡役として最適だ」
「ワシらと似ておるあやつらは、ここの結界に干渉できてしまう厄介な存在よ。ところで魔王は、祠の代わりを造りに来たのじゃろ? ついでに、エセ精霊が穴を空けた結界も直して行け」
「サラ」

 光の精霊の食事風景に釘付けになっていた私は、呼ばれてギルを振り返った。
 途端、あごを指でくいっと持ち上げられ、
 ギルの唇がチュッと来て、
 ムチュッとなって、
 最後にペロっと舐められて、それは離れた。

「キスの時間だ」
「自由か!」

 光の精霊による秒のツッコミに、「同感です」と私は心の中で頷いた。
 でも、ギルとそうしたくて私は付いてきたわけで。同感の前に同罪ですね、はい。

「で、結界の穴って、どの辺りなんだ」
「涼しい顔で会話を再開しよって。――闇がいる森のどこかじゃな」
「あそこか」

 ギルが一度、ちらりと遠くを見遣る。

「あそこは日が暮れないと本当の姿を現さないから、後回しだな」
「祠じゃが、風のと水のは壊される前から出掛けたきり帰って来とらんので、急がなくて良いじゃろ。土の奴を見舞ってくれるか。あやつは祠が気に入っておったから、しょげておる。ワシたちは本来、特定の住処など必要としないが、それでも長くいると愛着は湧くんじゃ」
「土のは、祠があった場所の近くにいるのか?」
「多分の」
「あの行くのが面倒なところか……」

 見るからに嫌そうな顔をしたギルが、片手でガシガシと頭を掻く。
 飛べるギルがその反応なんて、一体どれほどの悪路なのか。同行が彼の負担になりそうなら、私は大人しくお留守番をした方が良さそうだ。

「暴れ回っておるのが勇者の子孫なら、ワシの祠には手を出さんはずじゃ。あれはワシの力の影響が大きいからの。だからこっちは気にせず、存分にうろうろしに行くがよいわ」

 ちょっと悪い顔になった光の精霊が、巨石の上でピョンピョン跳ね回る。それから彼(?)は藁の寝床に飛び降り、そこで丸くなった。
 すやぁ
 一瞬でおやすみである。あなたも自由か。
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