魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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精霊の村(3)

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「ギル。土の精霊がいるのって、どんな場所なんですか?」

 まだ頭の後ろに手をやったままなギルに、私は聞いてみた。
 その問いにギルが「どんな……」と口にしながら、眉間に皺を寄せる。

「目的地自体は、綺麗な場所だ。ただ、道が厄介で。そこへ辿り着く道順が、毎回変わるんだ。前は左に曲がって次に右で着いたのが、今回はその逆だとか、そんな感じで。だから正解に当たるまで、うろうろするしかなくて――いや、うん。何言ってるのかわからないよな。どう説明したらいいんだ、これ……」

 後半はギルの独り言になっていて、ギルがますます難しい顔になる。
 が、どう説明すればというそのギルの苦悩……私には、バッチリ理解できました!
 ある。あった。『迷いの』とか『惑わしの』とか、そんな前置詞が付く森だの塔だの、そういう仕様のマップが。
 そういったマップは、何らかの対処をしない限り同じ場所を延々巡る羽目になる。ってことで、ミニマップを確認、と。
 じっと宙を注視して、私はミニマップに意識を集中させた。

(見慣れないアイコンがあるから、それがワープアイコンかな)

 現在地――村の中心から東西南北に向かう四つの小道。それらはマップの端まで延びていて、それぞれの終点に色違いのアイコンが光っていた。
 きっとこの四種類のアイコンを正しい順序で踏めばいいのだと思う。そして、こういうものは大抵近くにヒントがあるのがお約束だ。
 私はマップから意識を外し、村をグルッと見回してみた。

(あ、多分これだ)

 小道の敷石が、数秒ごとに色を変えながら光っているのが目に入る。その色は四色。十中八九、間違いないだろう。

「ギル。適当にというなら、私が道順を選んでもいいですか?」
「ああ、構わない」
「じゃあ、こっちの道を行きましょう」

 ギルの承諾を得て、私は彼の手を取って歩き出した。
 コツッコツッ
 カラフルに光る敷石の道を、ギルと並んで歩く。幻想的ということを除けば、後は寂れた集落といった印象しかない。

(集落……そうだ、どうして集落なんだろう)

 精霊の村といっても、彼らは祠に住んでいるわけだから、ここで生活しているわけじゃない。だとしたらこの辺りに見える家には、誰が住んでいるのだろう。
 ――あ。

「ギル。もしかして、ここって限られた者しか入れないけど、元からいる人は住んでいるんですか?」

 村には街灯があり、石を切り出して作ったと思われるモニュメントらしきものもある。何より問題となっている祠を造ったのも、人間のはず。私たちが歩いている敷石の道だって、精霊には必要無い。
 この集落は、『人間の集落』だ。
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