元伯爵令嬢の結婚生活~幸せな繋がり~

日向 夜

文字の大きさ
15 / 53
婚約期

晩餐と

しおりを挟む
サロンで会話が盛り上がり、ミーシャへのプレゼントは日々起こることを書き込んで幸せに暮らしてほしいという思いを込めて『日記帳』にすることにした。

丁度決まったところでメイドが夕飯だと知らせに来た。
ホールに行くと長テーブルにズラリと椅子が並んでいる。
女性たちが各々の席の前へと立つ。
奥から伯爵家、子爵家、男爵家と座っている。
すぐにマリィアンナの父・クステルタ伯爵、父方の祖父・グラドン、叔父・グロッツ、従弟のディアン、母方の伯父アンドル子爵、従弟のドルンが並んで入室してきた。
そして既婚の男性陣が着席した後に夫人達が座り、未婚の令嬢達はカテーシーをし、未婚の令息達は右手の手のひらを胸にあて礼をして敬意を示した。
幼いタティとドルンも『親戚一同が集まる食事における始まりの挨拶』に緊張しながらもやり遂げた。

着席が住むとメイドが一斉に入室し、食事を運ぶ。
メイドが退出した頃合いをみて、父・クステルタ伯爵は祖父のグラトンに目配せをした。グラトンは軽くうなずいたのでクステルタ伯爵はワインを持った。
それを合図に皆、飲み物を持つ。
此度こたびはマリィアンナの為の集まり、感謝する。マリィアンナの人生に幸あれ!」
「幸あれ!」
一同が父の言葉の語尾を繰り返し、手に持ったグラスを前に軽く突き出し飲み物を揺らす。
マリィアンナは今日と明日の主役が自分だと実感して、照れ臭く感じた。

今日の夕食のメニューは
白いパン、チキンのパイ包み、牛肉のシチュー、ポテトソテー


牛肉なんて…あぁ!ホロホロと崩れていきますわ!美味しいわ!
チキンは…刺激的な味付けですこと。
ポテトはほくほくして美味しいですわ。
でもちょっとお肉、多いですわね。量も…


各々が食事をしながらマリィアンナに従弟のディアンが話しかけた。
「そういえばアルベルト様ってどんな方なんだい?」
「どんな方…」
マリィが食べる手を止めて考えていると、アンゼルが
「わたくしも気になりますわ!夜会であまりみたことなかったですもの」
と、答えた。
「アンゼルは夜会ですぐ帰るから見かけないだけだろう」
苦笑しながらディアンが答えた。
「確か見目麗しい方ですのよね」
サッシャがアルベルトの情報を話すと、祖父のグラドンが「ほう?」と会話に入った。
「そんなに容姿がいいのか?」
グラトンがワインを飲みながらサッシャへ聞くと
「えぇ、お姿絵すがたえが令嬢の間で人気があるとか」
サッシャはうなずきながら答えた。

「そうでしたの!知らなかったわ…」
マリィアンナは少々驚いた。

「それは…多少苦労するかもな。だがマリィは賢く美しいから大丈夫だろう」
グラドンはワインを軽く掲げ、マリィアンナに向かってにっこりと笑った。
マリィアンナは微笑みを返し、チキンを1口サイズに切り口へ黙々と運んで行った。


絵姿が出回るほど見目麗しい夫…なんだか問題が起こりそうで怖いわね。
政略結婚とはいえ、できれば波風立てないよう穏やかな関係を目指したいのだけど…

不安を振り払うように、テーブルに並んだ料理をマリィアンナは次々と胃袋に収めて食べ過ぎて苦しくなり、フラフラしながら自分の宿泊部屋へと戻って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、朝食を終えた後すぐにテリーナと雑貨屋へ向かった。可愛い便箋びんせんや小物が並ぶ中、数冊の日記帳が並んでいた。
花が描かれている可愛いものからシンプルなものまで色々あったが、テリーナとマリィアンナはそれぞれ気になるものを手に取った。
2人はお互いが選んだものを思わず見合った。
テリーナのは表紙に白いコスモスが描かれており、マリィアンナのは黄色いコスモスが描かれてたがどちらも薄い緑の日記帳であった。
どちらも捨てがたかったので、2冊とも購入することにした。

その後マリィアンナは買い物をするテリーナと別れて、早々に宿に戻り準備をし始めた。
手早く入浴を済ませ、メイドに手伝ってもらいウェディングドレスとして用意したドレスへ着替える。
いつもより重みのある豪華なドレスを身に付け、マリィアンナも緊張の色を見せる。背後にいる叔母達の視線に、メイドの手も若干震え気味だった。
長い髪に編み込みをし、パタパタと化粧を施して唇に紅を引き、青い宝石のネックレスを付け、最後にキラキラと光る髪飾りを付けた。

「その宝石でいいの?少し小さいのではないかしら」
叔母・マグリアがネックレスを見ながら言うと、マリィアンナは
「これでいいのですわ。初めてアルベルト様が下さったものですもの。それに特別な技術が施されてましてわたくしも気に入ってますの!結婚式の記念にもしたいのですわ」
「そうだったのね、マリィアンナが言うならそれがいいわね」
マグリアは何度も頷きながら微笑んだ。


そこへコンコンとノックする音が聞こえた。
入室を許可されたメイドは老人を支えながら部屋へと入ってきた。

「お祖母ばあさま!」
マリィアンナはすぐに立ち上がりカテーシーをして敬意を示した。
「マリィアンナ、お食事に参加できなくて昨日は申し訳なかったわね」
「いえ!お祖母様、長旅でお疲れでしょう。お加減いかがですか?」
「ずいぶん楽になったよ。みなの負担にならないよう、式だけ参列してその後はわたくしは宿で休ませてもらうことにするわ」
「えぇ、お祖母様が参列してくださるなんてわたくし嬉しいですわ!」

祖母のミリアはメイドに支えてもらいながらマリィアンナに近づき、手をとって
「大きくなったわね…メリアンの結婚式を思い出すわ…綺麗よマリィ…」
笑いしわをよせてにっこり笑った。
「お祖母様…」
「貴族としての矜持きょうじを忘れず穏やかな人生を送るんだよ…」
「…はい」
祖母の目をまっすぐ見て微笑みながらマリィアンナは答えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

親戚一同、それぞれのメイドに手伝わせてドレスや礼服へ着替えていく。
女性はベルベット生地の様々な色味のドレスを身に付けていた。
男性はふんわりとしたクラバットと呼ばれるタイを首元に着け、胸に家門が掘られたブローチを付け、ローブを片方の肩に固定して貴族男性の公の衣装を身に付けていた。

親戚が1台また1台と次々と馬車に乗り込み発車していき、ガタガタと馬車の行列が続く。
最後尾の馬車には父・クステルタ伯爵とマリィアンナが乗り込む。
道すがら馬車とすれ違う人々は馬車の行列を珍し気に眺めている。

馬車の中では親子は終始無言であった。
親子が2人きりで話す機会はこれで最後であった為、お互い言葉が出なかった。

ガヤガヤと外から声がして次々と教会の中へと吸い込まれるように人が入っていく。
教会の前に付くとクステルタ伯爵が馬車から降りる為、ステッキを持ち換えドアをあける。
マリィアンナの手を優しく支えてエスコートをしながらポツリとクステルタ伯爵が呟いた。
「幸せになれる。マリィなら大丈夫だ」

そのままカツカツと靴音を鳴らしながら礼拝堂へと入って行った。
マリィアンナは泣きそうなのをこらえながらつぶやいた。
「わたくし、幸せになります。…お父様」

マリィアンナは決意を新たにドレスをつまみ上げながらメイドに誘導されながら控室へと入って行った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い

雲乃琳雨
恋愛
 バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。  ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?  元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。

完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。

梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。 16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。 卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。 破り捨てられた婚約証書。 破られたことで切れてしまった絆。 それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。 痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。 フェンリエッタの行方は… 王道ざまぁ予定です

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...