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新婚期
新たなる使用人達
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予想外の人物が登場して、マリィアンナは動揺した。
反対に、プティは喜びを顔に滲ませた。
アルベルト様…なんてタイミングで帰って来るのよ!
面倒な事になる前に終わらせたかったのに!
マリィアンナは舌打ちしたいぐらいアルベルトの登場にイラっとした。
「皆を集めて何をしているんだ?」
アルベルトはマリィアンナを見つめながら問いかけた。
マリィアンナは眉をひそめながら
「それは」
と答えようとしたが、プティの声に遮られた。
「私達をクビにするって!」
「そう!そうです!若旦那様!若奥様が私達を!」
一斉に言い出す使用人達をマリィアンナは無表情を決めて眺める。
「どういうことだ?」
マリィアンナをじっと見つめながらアルベルトは再度問いかけた。
マリィアンナはふぅっとため息を吐きながら
「こちらの使用人達は、わたくしへの不敬が過ぎます」
「不敬?」
不思議そうにアルベルトはマリィアンナを見つめた。
「えぇ。不敬極まりないですわ。」
「そうか…」
「嘘です!そんな不敬だなんて!」
「そうです!そうです!」
使用人達はすぐさま言い返してきた。
「む?使用人はこのように言ってるが…」
「アルベルト様、わたくしは使用人達にされた『不敬な事柄』を全て話さなければならないのですか?」
「…す…すまなかった」
バツが悪そうにアルベルトはマリィアンナを見つめる。その目は反省の色がみてとれた。
貴族が自分にされた『不敬な事柄』を言うなど、恥辱であることはアルベルトにも容易に理解できた。
「ふ…不敬だからって!そんな!こんな人数を一気にやめさせるなんて!」
「そ…そうです!おかしいです!」
「その…若奥様の我儘で邸宅の維持ができなくなります!」
アルベルトはピクリと眉をあげ
「我儘だと…?」と不満げな顔をして使用人達を見た。
しかし、使用人達はそんなアルベルトに気づかずにさらに言い募った。
「そうです!私達は使用人ですが!私達のように教養を兼ねそろえて邸宅で仕事をできる人なんて、そうそういないですからー」
勢いよく使用人達が言いたいことを言う中、マリィアンナは使用人の言葉をさえぎって
「最低限の礼節や教養すらないあなた方はこの邸宅には不用です。邸宅の心配をする必要はありません」
と、言い放った。
アルベルトは目を丸くしてマリィアンナを見つめた。
マリィアンナはさらに
「このドランジェ伯爵邸宅に必要な使用人とは…主人に礼節を尽くし、仕事を真面目に全うし、この邸宅を支えることのできる人達です。貴方達では話になりませんわ」
と、マリィアンナは微笑みながら言った。
そんなマリィアンナを見て、アルベルトはホゥっとため息をついた。そして…
「マリィアンナの言う通りだ。この邸宅の女主人に不敬を働く使用人は不要だ」
と、はっきり言った。
マリィアンナは思わずアルベルトを見つめ返した。
アルベルト様がわたくしの味方をした…。
え?なんで?
てっきり、何か文句を言われると思っていたマリィアンナは大変驚いた。
使用人達はマリィアンナの肩をもったアルベルトに絶句した。
そして絶望した。
マリィアンナは「ンンっ」と咳払いをしてから、微笑みながらアルベルトの顔を見返した。
「アルベルト様、この邸宅の使用人不足についてはもう『準備』はしておりますわ」
そういって、マリィアンナはテーブルに置いてあるベルを鳴らした。
ドアの外からプリマ・ティナ・テレズに続いて、ぞろぞろと人々がダンスフロアへと入ってくる。
ダンスフロアにて先ほど名を呼ばれて一列に並んでいた『邸宅に残る使用人達』は後ずさりして、入ってくる人々の並ぶスペースを開けた。
入ってきた人々は子供・成人女性・老人と年齢がバラバラだった。
使用人達が目で追う中、マリィアンナは微笑んで
「この方々を雇いますので」
と答えた。
「は?」
「え?」
「なっ!」
皆、驚きの表情でいっぱいだった。
もちろんアルベルトも。
「そんな!こんな人達じゃ仕事なんてできるわけないじゃない!!こんな人達より私達の方が仕事がデキるでしょ!」
プティは思わず叫んだ。
マリィアンナはスッと目を細めた。その目はすでに微笑んでいない。
ただ冷たい軽蔑をした目だった。
マリィアンナは子供の集団に近寄った。その中には街の『ゲーテカフェテリア』で働いていた少女2人がいた。
マリィアンナは肩を抱いてにっこり笑った。
「この子は孤児です。こちらの子は片親で経済的に貧しい子です。街の孤児院が本来の収容人数を超えているので、ベッドや食料が足りない現状を鑑みて、メイド見習いとして子供を受け入れることにしました。もちろん子供ですので休憩時間は通常より多くとり、庭園の一部を開放して自由に遊べるようにする予定となっておりますわ。子供たちはまずテレズに基礎教養教育・基礎技術を教わってから、それぞれ担当の先輩メイドをつけて1人前になるまではペアで仕事をさせる予定です」
マリィアンナの説明に、テレズはアルベルトへ向けてスッと頭を下げて礼をした。
「こちらのご婦人方は育児がひと段落した方々という条件で、斡旋所で求人を出しましたの。家事の経験がある方達なので、応用技術・メイドの教養についてをティナに教育してもらい働いてもらう予定ですわ」
今度はティナがアルベルトへ向けて頭を下げて礼をした。
「こちらのお歳を召した健康なご婦人方には、主に食事メイドについてもらいます。長年の知恵を駆使していただき、この邸宅を健康が続く限り支えていただく予定です」
「なるほど…」
アルベルトはマリィアンナの案に理解を示した。
「使用人の職につける人材が足らないのは事実ですわ。ですから、未来ある人材、それぞれの分野に特化した優秀な人材を…邸宅で教育して育成することにしましたの!」
マリィアンナは新しい使用人達の顔を見まわして言った。
新しい使用人達は誇らしげにマリィアンナを見つめ返していた。
「そんな…」
「…うそでしょ…」
使用人達はがっくりと肩を落とした。
自分たちは不要だと…仕事を完全に無くしたのだと、ただただ絶望した。
そんな使用人達の中でただ一人、プティだけはアルベルトを見つめていた。
「アルベルト様!私は!そんな不敬なことなんてしてません!だから私はクビになんて嫌です!」
「プティ?」
アルベルトはびっくりしてプティを見返した。
「アルベルト様は私をクビになんてしませんよね!ね!」
「?」
アルベルトは不思議そうに眉をあげた。
「だって!私を可愛がってくれてましたよね!私の事好きですよね!」
「好きって…」
マリィアンナはアルベルトの顔を見たが不思議に思った。
なんだか意味がわからないって顔してるわ。
プティは『親しい』って言ってたけど…この顔をみるとそうでも…ない?
それとも女を捨てる事に躊躇しないクズってこと?
クズな旦那様なんて…嫌だわ~
マリィアンナは心の中で言いたい放題言いつつ、淑女の仮面を付けたまま静観していた。
「私の方が好きですよね!身分の関係で正妻にはできないけど!そばにおいてくれますよね!だってその女より私を愛してー」
プティが息巻いてしゃべり倒していたが、さえぎるように強い口調でアルベルトは
「何を言っているんだ!?マリィアンナよりお前を愛してるわけないじゃないか!馬鹿も休み休み言え!」
と目を見開いて、普段のアルベルトでは考えられないくらい険しく怒りでゆがめた顔でプティに言い放った。
「…は?え?」
プティはポカンとあっけにとられていた。
「何を言ってるんだ!?意味が分からない!お前を好きだと?何のことだ!?」
「え?え?」
「可愛がっていた?馬鹿な!亡くなった俺の乳母がお前の母だったというだけでそれ以外、何にも関係ないじゃないか!だいたい俺がいつお前を可愛がった?愛しているなんて言った!俺が愛してるのは……ンンっ。ともかくお前なんて何にも思ってないに決まってるだろう!」
アルベルトの言葉に、皆が言葉を失った。
プティはことあるごとにアルベルトと自分は特別な関係にあると言っていたのだ。
だからこそ、プティに文句も言いにくかったし、一目置かざるを得なかったのだった。
親しいって思ってたのは貴方の独りよがりだったのね。
皆を見るに、周りにも迷惑をかけていたようね。
マリィアンナはため息をつきながプティを見ると、マリィアンナを憎々し気に見ていた。
目は血走って、拳をぶるぶるふるわせて今にもこちらを殴ってきそうだ。
こういう人は何をしでかすかわからないわ。
仕方ないわね…。
マリィアンナが「お入り下さい」とドアの方へ声をかけた時、プティはマリィアンナにとびかかってきた。
マリィアンナの顔はサッと血の気が引いた。
プティの手がマリィアンナの顔に平手打ちをしようと振りかぶった瞬間、マリィアンナは初めてさらされる暴力に対して、体を固くし目をギュッとつぶった。
しかし…いつまでたっても衝撃はこなかった。
おそるおそる目を開けると、信じられない光景がマリィアンナの目に映った。
視界いっぱいにアルベルトの整った顔面。
まさに今にも唇が触れそうな至近距離にいきなりアルベルトの顔があったのだ。
アルベルトは眉間に皺をよせて、目をギュッとつぶってマリィアンナを抱きしめて、プティから身を挺して守っていた。
アルベルトはそっと目を開け、マリィアンナと目が合うと頬を思わず緩めた。
マリィアンナはその顔を直視して、息を止めた。
そして、アルベルトはマリィアンナをギュッと胸に抱いたままプティへと向き合った。
マリィアンナもアルベルトにならってプティの方を見た。
プティはアンデルに右手を掴まれて床に押さえつけられていた。
マリィアンナはドキドキする胸を押さえながら
アンデルの反射神経、すごい…などと思うことで、このドキドキから自分の意識を無理やりそらしたのだった。
反対に、プティは喜びを顔に滲ませた。
アルベルト様…なんてタイミングで帰って来るのよ!
面倒な事になる前に終わらせたかったのに!
マリィアンナは舌打ちしたいぐらいアルベルトの登場にイラっとした。
「皆を集めて何をしているんだ?」
アルベルトはマリィアンナを見つめながら問いかけた。
マリィアンナは眉をひそめながら
「それは」
と答えようとしたが、プティの声に遮られた。
「私達をクビにするって!」
「そう!そうです!若旦那様!若奥様が私達を!」
一斉に言い出す使用人達をマリィアンナは無表情を決めて眺める。
「どういうことだ?」
マリィアンナをじっと見つめながらアルベルトは再度問いかけた。
マリィアンナはふぅっとため息を吐きながら
「こちらの使用人達は、わたくしへの不敬が過ぎます」
「不敬?」
不思議そうにアルベルトはマリィアンナを見つめた。
「えぇ。不敬極まりないですわ。」
「そうか…」
「嘘です!そんな不敬だなんて!」
「そうです!そうです!」
使用人達はすぐさま言い返してきた。
「む?使用人はこのように言ってるが…」
「アルベルト様、わたくしは使用人達にされた『不敬な事柄』を全て話さなければならないのですか?」
「…す…すまなかった」
バツが悪そうにアルベルトはマリィアンナを見つめる。その目は反省の色がみてとれた。
貴族が自分にされた『不敬な事柄』を言うなど、恥辱であることはアルベルトにも容易に理解できた。
「ふ…不敬だからって!そんな!こんな人数を一気にやめさせるなんて!」
「そ…そうです!おかしいです!」
「その…若奥様の我儘で邸宅の維持ができなくなります!」
アルベルトはピクリと眉をあげ
「我儘だと…?」と不満げな顔をして使用人達を見た。
しかし、使用人達はそんなアルベルトに気づかずにさらに言い募った。
「そうです!私達は使用人ですが!私達のように教養を兼ねそろえて邸宅で仕事をできる人なんて、そうそういないですからー」
勢いよく使用人達が言いたいことを言う中、マリィアンナは使用人の言葉をさえぎって
「最低限の礼節や教養すらないあなた方はこの邸宅には不用です。邸宅の心配をする必要はありません」
と、言い放った。
アルベルトは目を丸くしてマリィアンナを見つめた。
マリィアンナはさらに
「このドランジェ伯爵邸宅に必要な使用人とは…主人に礼節を尽くし、仕事を真面目に全うし、この邸宅を支えることのできる人達です。貴方達では話になりませんわ」
と、マリィアンナは微笑みながら言った。
そんなマリィアンナを見て、アルベルトはホゥっとため息をついた。そして…
「マリィアンナの言う通りだ。この邸宅の女主人に不敬を働く使用人は不要だ」
と、はっきり言った。
マリィアンナは思わずアルベルトを見つめ返した。
アルベルト様がわたくしの味方をした…。
え?なんで?
てっきり、何か文句を言われると思っていたマリィアンナは大変驚いた。
使用人達はマリィアンナの肩をもったアルベルトに絶句した。
そして絶望した。
マリィアンナは「ンンっ」と咳払いをしてから、微笑みながらアルベルトの顔を見返した。
「アルベルト様、この邸宅の使用人不足についてはもう『準備』はしておりますわ」
そういって、マリィアンナはテーブルに置いてあるベルを鳴らした。
ドアの外からプリマ・ティナ・テレズに続いて、ぞろぞろと人々がダンスフロアへと入ってくる。
ダンスフロアにて先ほど名を呼ばれて一列に並んでいた『邸宅に残る使用人達』は後ずさりして、入ってくる人々の並ぶスペースを開けた。
入ってきた人々は子供・成人女性・老人と年齢がバラバラだった。
使用人達が目で追う中、マリィアンナは微笑んで
「この方々を雇いますので」
と答えた。
「は?」
「え?」
「なっ!」
皆、驚きの表情でいっぱいだった。
もちろんアルベルトも。
「そんな!こんな人達じゃ仕事なんてできるわけないじゃない!!こんな人達より私達の方が仕事がデキるでしょ!」
プティは思わず叫んだ。
マリィアンナはスッと目を細めた。その目はすでに微笑んでいない。
ただ冷たい軽蔑をした目だった。
マリィアンナは子供の集団に近寄った。その中には街の『ゲーテカフェテリア』で働いていた少女2人がいた。
マリィアンナは肩を抱いてにっこり笑った。
「この子は孤児です。こちらの子は片親で経済的に貧しい子です。街の孤児院が本来の収容人数を超えているので、ベッドや食料が足りない現状を鑑みて、メイド見習いとして子供を受け入れることにしました。もちろん子供ですので休憩時間は通常より多くとり、庭園の一部を開放して自由に遊べるようにする予定となっておりますわ。子供たちはまずテレズに基礎教養教育・基礎技術を教わってから、それぞれ担当の先輩メイドをつけて1人前になるまではペアで仕事をさせる予定です」
マリィアンナの説明に、テレズはアルベルトへ向けてスッと頭を下げて礼をした。
「こちらのご婦人方は育児がひと段落した方々という条件で、斡旋所で求人を出しましたの。家事の経験がある方達なので、応用技術・メイドの教養についてをティナに教育してもらい働いてもらう予定ですわ」
今度はティナがアルベルトへ向けて頭を下げて礼をした。
「こちらのお歳を召した健康なご婦人方には、主に食事メイドについてもらいます。長年の知恵を駆使していただき、この邸宅を健康が続く限り支えていただく予定です」
「なるほど…」
アルベルトはマリィアンナの案に理解を示した。
「使用人の職につける人材が足らないのは事実ですわ。ですから、未来ある人材、それぞれの分野に特化した優秀な人材を…邸宅で教育して育成することにしましたの!」
マリィアンナは新しい使用人達の顔を見まわして言った。
新しい使用人達は誇らしげにマリィアンナを見つめ返していた。
「そんな…」
「…うそでしょ…」
使用人達はがっくりと肩を落とした。
自分たちは不要だと…仕事を完全に無くしたのだと、ただただ絶望した。
そんな使用人達の中でただ一人、プティだけはアルベルトを見つめていた。
「アルベルト様!私は!そんな不敬なことなんてしてません!だから私はクビになんて嫌です!」
「プティ?」
アルベルトはびっくりしてプティを見返した。
「アルベルト様は私をクビになんてしませんよね!ね!」
「?」
アルベルトは不思議そうに眉をあげた。
「だって!私を可愛がってくれてましたよね!私の事好きですよね!」
「好きって…」
マリィアンナはアルベルトの顔を見たが不思議に思った。
なんだか意味がわからないって顔してるわ。
プティは『親しい』って言ってたけど…この顔をみるとそうでも…ない?
それとも女を捨てる事に躊躇しないクズってこと?
クズな旦那様なんて…嫌だわ~
マリィアンナは心の中で言いたい放題言いつつ、淑女の仮面を付けたまま静観していた。
「私の方が好きですよね!身分の関係で正妻にはできないけど!そばにおいてくれますよね!だってその女より私を愛してー」
プティが息巻いてしゃべり倒していたが、さえぎるように強い口調でアルベルトは
「何を言っているんだ!?マリィアンナよりお前を愛してるわけないじゃないか!馬鹿も休み休み言え!」
と目を見開いて、普段のアルベルトでは考えられないくらい険しく怒りでゆがめた顔でプティに言い放った。
「…は?え?」
プティはポカンとあっけにとられていた。
「何を言ってるんだ!?意味が分からない!お前を好きだと?何のことだ!?」
「え?え?」
「可愛がっていた?馬鹿な!亡くなった俺の乳母がお前の母だったというだけでそれ以外、何にも関係ないじゃないか!だいたい俺がいつお前を可愛がった?愛しているなんて言った!俺が愛してるのは……ンンっ。ともかくお前なんて何にも思ってないに決まってるだろう!」
アルベルトの言葉に、皆が言葉を失った。
プティはことあるごとにアルベルトと自分は特別な関係にあると言っていたのだ。
だからこそ、プティに文句も言いにくかったし、一目置かざるを得なかったのだった。
親しいって思ってたのは貴方の独りよがりだったのね。
皆を見るに、周りにも迷惑をかけていたようね。
マリィアンナはため息をつきながプティを見ると、マリィアンナを憎々し気に見ていた。
目は血走って、拳をぶるぶるふるわせて今にもこちらを殴ってきそうだ。
こういう人は何をしでかすかわからないわ。
仕方ないわね…。
マリィアンナが「お入り下さい」とドアの方へ声をかけた時、プティはマリィアンナにとびかかってきた。
マリィアンナの顔はサッと血の気が引いた。
プティの手がマリィアンナの顔に平手打ちをしようと振りかぶった瞬間、マリィアンナは初めてさらされる暴力に対して、体を固くし目をギュッとつぶった。
しかし…いつまでたっても衝撃はこなかった。
おそるおそる目を開けると、信じられない光景がマリィアンナの目に映った。
視界いっぱいにアルベルトの整った顔面。
まさに今にも唇が触れそうな至近距離にいきなりアルベルトの顔があったのだ。
アルベルトは眉間に皺をよせて、目をギュッとつぶってマリィアンナを抱きしめて、プティから身を挺して守っていた。
アルベルトはそっと目を開け、マリィアンナと目が合うと頬を思わず緩めた。
マリィアンナはその顔を直視して、息を止めた。
そして、アルベルトはマリィアンナをギュッと胸に抱いたままプティへと向き合った。
マリィアンナもアルベルトにならってプティの方を見た。
プティはアンデルに右手を掴まれて床に押さえつけられていた。
マリィアンナはドキドキする胸を押さえながら
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