元伯爵令嬢の結婚生活~幸せな繋がり~

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結婚 中間期

新しいやり方

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次の日、朝の食事を済ませ3人はさっそく執務室にこもった。

マリィアンナは、まず、床に置かれた資料から手を付けた。
家令に命令をして地域ごとに分け、陳情の深刻さのレベルごとに分けた。

陳情のレベルは落差がひどかった。
盗賊が出たというものから、民家取り壊しの許可、管理地の不満など、早急に取り掛かるべき人命に関するものから愚痴のようなものまで様々だった。

マリィアンナは次々と仕事をこなしていった。
そして、家令に命じて必要な案件順にアルベルトやドランジェ伯爵へと書類を渡していった。

1人増えるだけで、アルベルトとドランジェ伯爵の執務に余裕ができるようになった。

「マリィのおかげでゆっくり昼をとれる。ありがとう」
ドランジェ伯爵は微笑みながら食後の紅茶をコクリと飲みながら言った。
「ふふっ!お役に立ててよかったですわ」
マリィアンナは嬉しそうに答えた。
「マリィは無理していないか?」
アルベルトは、不安そうにマリィアンナの顔を見た。

「大丈夫ですわ。わたくし、こう見えて強いのでしてよ?」
マリィアンナの言葉に2人は微笑んだ。


アルベルト様もお義父様もクマをつくった顔で…
お辛いのにわたくしの心配までしてくださって…
わたくし、この家に嫁いできてよかったですわ!



そして、マリィアンナは1日の終わりに領地管理の新たなるやり方を相談した。
マリィアンナのさらなる提案に、アルベルトとドランジェ伯爵と家令達はとても驚いた。


領地に関する区分は大きく分けて4つあった。

領の税収の規律や管理をして赤字の出ないようする『経営』
税収を何にどれくらい使うか考える『運営』
領民がどれほどの人数いて、どこの土地に滞在しているのかの『管理』
領民を守る為、騎士と警備兵・警ら隊の管理する『守護』


今までの問題点は『経営』と『運営』の問題による『癒着』だった。

領地が広大な為、分割した領地を管理する『領分管理者』を置き、抜き打ちでアルベルトとドランジェ伯爵が行く形をとっていた。

領地へ視察する時間が延びれば他の地域の執務が遅れたり、邸宅に残った方が負担するしかなかった。

それをマリィアンナは解決するために案をひねり出した。

「領主や嫡子が視察する回数を減らせばいい」と。

しかし、替わりの者を寄こしてもその者が癒着しては意味がない。
長く仕事を任せるのが思わしくないのならば短くすればいい、と。

「短期間就労にすればいいのだ」と。

任期を3年とし、区切られた領地をあちこち回って仕事場を変える。
3年たったら別の地へ行き仕事をこなして、また3年たったら別の地へ…。
引き継ぎさえしっかり行えれば問題はないだろう。

そしてさらにマリィアンナは言った。
「情報を常にこの邸宅へ届ければ、不正が起こることも低くなるかと」

常に新しい情報が入ってくれば異変に気づきやすくなる。
そうなれば、領地を任された『領分管理者』は、今よりも不正や癒着と縁遠くなるだろう。


「人手不足が考えられますが、すでに手を打っています。面接ではおよそ30人未満の成人男性が確保できるかと」
マリィアンナの声に、2人はポカンと口を開け、目を丸くした。

「なるほど…30人か…」
ドランジェ伯爵は顎に手を当て真剣な目で考え込んだ。

「しかし、人数は足りません。ですので…」
マリィアンナは目を伏せ、2人に自分の考えを話した。

その考えは、ある一方で『救い』であり、ある一方で『横暴』ともとれるものだった。

「今、斡旋所にて調べています。あと数日で結果がわかるかと…出過ぎた真似をして申し訳ありません」
マリィアンナは目を伏せ、頭を深く下げた。

ドランジェ伯爵は
「いや、この領を支えていくのはアルベルトとマリィだ。よく、考えてくれたな」
と、微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕食後、部屋へ戻るとノックの音がした。

入室許可を出すと、マリィアンナは驚いた。
「アルベルト様!」
うっすらクマのあるアルベルトが夜着を着て立っていたからだ。

「マリィ、この前…夜伽の時にアルって呼んでほしいと言ったはずだが?」

マリィアンナは顔を真っ赤にした。
「え…そうでした…か?」
「ああ。あんなに言ったのにもう忘れたのか?」
マリィアンナをソファーに座らせて髪をなでながら、アルベルトはマリィアンナを見つめた。
「え…はい…いえ…その…アル様」
マリィアンナは動揺しながらも愛称を呼んだ。

アルベルトは整った顔で破顔した。


うっ!顔面が美しい!
整った顔も時には凶器になりうるのね…


思わず横をフイっと向いてしまったマリィアンナを、アルベルトは後ろからギュウッと抱きしめた。
「!?」

動揺したマリィアンナをよそに、アルベルトは
「マリィはすごいな…。私なんて敵わない…」
と、つぶやいた。
「アルベルト様?」
不思議そうなマリィアンナに、アルベルトはなおも続けた。

「私は今をやり過ごすので精一杯だった。マリィは先々を考えていたんだな」

沈む声を聞きながらマリィアンナは、眉をひそめた。


「わたくしが未来を考えられたのは、アルベルト様とお義父様が今を頑張っているからですわ。お二人が頑張られていなければわたくしなんて何にもできませんわ」

マリィアンナは首だけ後を向いてアルベルトへ告げた。

アルベルトは、困ったような嬉しいような顔で微笑んだ。
その顔はマリィアンナの庇護欲をかきたてた。

そして思わずマリィアンナが微笑みを浮かべると、アルベルトは口を真一文字にキュっとしめて、マリィアンナをうしろから抱きしめたまま持ち上げて、ベッドへと向かった。

ふわっと体が急に浮いたマリィアンナは思わず
「きゃぁっ」
と声をあげたが、アルベルトは構わずベッドへとおろしてマリィアンナの上に覆いかぶさった。
「え?あの?」
と、うつ伏せ状態で動揺するマリィアンナには見えなかったが、アルベルトの目はすっかり情欲に染まっていた。


マリィアンナはアルベルトの愛を一身に受け、翌朝アルベルトに起こされるまでこと切れたように眠り続けた。

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