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結婚 中間期
廃村の決定
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「ゾンダルア村の住民に拒否権はない。廃村は決定事項だ」
アルベルトの言葉に、村長のベンドは頭を抱えた。
調査によると、ベンドはこの村に生まれ育って老いた、生粋の『ゾンダルア村民』だ。
彼はこの貧しい村から出ずに村を支え続けてきたのだろう。
今までなんとか踏ん張ってきたが、ついに今年になって税収が落ち込み存続すら危うくなったのだ。
そんな彼に『廃村』の決定を告げるのは心苦しい。
しかし、彼らの生活よりも優先すべきことがあるのだ。
傲慢だとも横暴だと言われても、権力者として優先すべきものは譲れなかった。
アルベルトはベンドへさらに告げる。
「この村を廃村にし、健康な住民全てを我が領内の為の強制労働にあてることにする」
アルベルトの言葉に、ベンドは絶句した。
「強制労働と言ったが、これは領地改革の一端で働くことを意味する。鉱山やらで罰として労働をするのではなく、職を選ぶ権利を取り上げて住居と仕事と賃金を与える…強制労働だ。」
ベンドはポカンと口を開けた。
「つまり、一切の自由は与えないが、仕事をこなし食うもの・寝るところに困らない生活をさせるということだ。」
ベンドは涙をポロポロと流した。
「村を無くすかわりに…皆、冬を…越せるんで…?」
「ああ。…今、父上が急ぎ領地の中心部に準備をしている。皆、冬が到達する前に必要な物を用意して移動を開始せよ」
ベンドはアルベルトへ涙ながらに言った。
「ありがとうございます!ありがとうございます…ありがとうございます!!」
礼を聞きながら、アルベルトとマリィアンナは悲しい顔をした。
村が豊かであったら、こんな強制はしなかった。
もっと時間があれば、村を丸ごと1つつぶす必要はなかった。
貧しい村をつぶすのは人材を確保するために効率的だったからだ。
義父が病気でなければもっと時間をかけて人材を集められた。
お礼を言う必要などないのだ。
彼らはマリィアンナの提案により、生活の為に仕事を強制され、ひとところに住めなくなるのかもしれないのだから。
村長のベンドは急いで村民の全員を村の中心部に集め、事の成り行きを話した。
村人の反応は最初はまちまちだった。
皆、アルベルトやマリィアンナに不満や責めを口にすることはなかった。
しかし表情は雄弁に語っていた。
ある者は生気をなくしたような顔色から希望を抱いた顔で。
ある者は悔しそうな顔をして不満そうな顔で。
ある者は廃村により不安を抱きつつも、新しい暮らしを受け入れようとする諦めの顔で。
しかし最終的に、皆一様に冬を越せない不安を抱えていたため、アルベルト達の『強制』を受け入れた。
マリィアンナとアルベルトは、1週間のちに事前に用意していた場所に引っ越すよう命令して昨日泊まった宿へと戻った。
宿に戻った2人は領主代理としての慣れない話合いに疲れ、食事もそこそこにベッドへともぐりこんだ。
マリィアンナは昨日と同じようにアルベルトに抱きしめられながら横になった。
すると、瞳から涙が次々とあふれた。
マリィアンナは必死に涙を止めようとした。しかし涙は止まらず、小さい嗚咽が口からもれてしまった。
わたくしに泣く権利なんてない。
彼らからしたら、住み慣れた土地から離すきっかけを作った者なのだから。
住み慣れた場所から無理やり切り離し、好きでもない仕事に従順させるのだ。
彼らからすれば自分達の決定は理不尽極まりない行為なのだ。
しかも本格的に冬が来る前に準備をするために、彼らには1週間という短い時間しか与えられない。
彼らが村を出たら、住み慣れた家々は盗賊などの根城にされないよう順次壊されて更地にされていく予定だ。
権力者側の立場から彼らの生活をそのまま守ってやれない事は、マリィアンナの心に暗い影を落とした。
そんな泣き声を我慢していたマリィアンナの頭をアルベルトはやさしく撫でた。
「マリィが傷つくことない。決定したのは私だ。大丈夫だ。マリィ」
やさしいアルベルトの声と撫でられる温かさにマリィアンナは涙が止まらず、そのまま泣き続けて疲れ果てて寝てしまった。
アルベルトは、マリィアンナが寝息をたて始めても撫でる手を止めずに、夜深くまで愛おしそうに見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、マリィアンナは起きると一人だった。
鏡をみやると、鏡の中の自分はなんともひどい顔をしていた。
マリィアンナは苦笑しながら鏡に映った自分を見つめた。
わたくしは何にもわかっていなかった。
領民には領民の生活があるってことを。
わたくしはとてもひどいことを提案してしまった。
けれど…後悔はしていない。
わたくしは次期領主のアルベルト様を支える為ならなんだってできるのだから。
だから、昨日のことは忘れず心に刻むわ。もうつらい事がないよう今できることを精一杯やるって。
そう決めたの。だから…そんな辛い顔をしちゃだめよ。
しっかりしなさい、わたくし。
鏡の自分はひどく引きつった、悲しそうな顔で笑っていた。
邸宅までの帰り、アルベルトはマリィアンナと共に馬車に乗った。
アルベルトは顔色が曇って元気のないマリィアンナに、常に寄り添い、時には抱きしめてキスをして慰めた。
そして何度も「大丈夫だ、マリィ。私がついている。決めたのは私だから」
と優しく声をかけ、頭を撫でた。
アルベルトの献身的な愛はじっくりとマリィアンナの心へと沁み込んでいった。
そして徐々にマリィアンナは元気を取り戻し、馬車は邸宅へと無事に到着したのだった。
アルベルトの言葉に、村長のベンドは頭を抱えた。
調査によると、ベンドはこの村に生まれ育って老いた、生粋の『ゾンダルア村民』だ。
彼はこの貧しい村から出ずに村を支え続けてきたのだろう。
今までなんとか踏ん張ってきたが、ついに今年になって税収が落ち込み存続すら危うくなったのだ。
そんな彼に『廃村』の決定を告げるのは心苦しい。
しかし、彼らの生活よりも優先すべきことがあるのだ。
傲慢だとも横暴だと言われても、権力者として優先すべきものは譲れなかった。
アルベルトはベンドへさらに告げる。
「この村を廃村にし、健康な住民全てを我が領内の為の強制労働にあてることにする」
アルベルトの言葉に、ベンドは絶句した。
「強制労働と言ったが、これは領地改革の一端で働くことを意味する。鉱山やらで罰として労働をするのではなく、職を選ぶ権利を取り上げて住居と仕事と賃金を与える…強制労働だ。」
ベンドはポカンと口を開けた。
「つまり、一切の自由は与えないが、仕事をこなし食うもの・寝るところに困らない生活をさせるということだ。」
ベンドは涙をポロポロと流した。
「村を無くすかわりに…皆、冬を…越せるんで…?」
「ああ。…今、父上が急ぎ領地の中心部に準備をしている。皆、冬が到達する前に必要な物を用意して移動を開始せよ」
ベンドはアルベルトへ涙ながらに言った。
「ありがとうございます!ありがとうございます…ありがとうございます!!」
礼を聞きながら、アルベルトとマリィアンナは悲しい顔をした。
村が豊かであったら、こんな強制はしなかった。
もっと時間があれば、村を丸ごと1つつぶす必要はなかった。
貧しい村をつぶすのは人材を確保するために効率的だったからだ。
義父が病気でなければもっと時間をかけて人材を集められた。
お礼を言う必要などないのだ。
彼らはマリィアンナの提案により、生活の為に仕事を強制され、ひとところに住めなくなるのかもしれないのだから。
村長のベンドは急いで村民の全員を村の中心部に集め、事の成り行きを話した。
村人の反応は最初はまちまちだった。
皆、アルベルトやマリィアンナに不満や責めを口にすることはなかった。
しかし表情は雄弁に語っていた。
ある者は生気をなくしたような顔色から希望を抱いた顔で。
ある者は悔しそうな顔をして不満そうな顔で。
ある者は廃村により不安を抱きつつも、新しい暮らしを受け入れようとする諦めの顔で。
しかし最終的に、皆一様に冬を越せない不安を抱えていたため、アルベルト達の『強制』を受け入れた。
マリィアンナとアルベルトは、1週間のちに事前に用意していた場所に引っ越すよう命令して昨日泊まった宿へと戻った。
宿に戻った2人は領主代理としての慣れない話合いに疲れ、食事もそこそこにベッドへともぐりこんだ。
マリィアンナは昨日と同じようにアルベルトに抱きしめられながら横になった。
すると、瞳から涙が次々とあふれた。
マリィアンナは必死に涙を止めようとした。しかし涙は止まらず、小さい嗚咽が口からもれてしまった。
わたくしに泣く権利なんてない。
彼らからしたら、住み慣れた土地から離すきっかけを作った者なのだから。
住み慣れた場所から無理やり切り離し、好きでもない仕事に従順させるのだ。
彼らからすれば自分達の決定は理不尽極まりない行為なのだ。
しかも本格的に冬が来る前に準備をするために、彼らには1週間という短い時間しか与えられない。
彼らが村を出たら、住み慣れた家々は盗賊などの根城にされないよう順次壊されて更地にされていく予定だ。
権力者側の立場から彼らの生活をそのまま守ってやれない事は、マリィアンナの心に暗い影を落とした。
そんな泣き声を我慢していたマリィアンナの頭をアルベルトはやさしく撫でた。
「マリィが傷つくことない。決定したのは私だ。大丈夫だ。マリィ」
やさしいアルベルトの声と撫でられる温かさにマリィアンナは涙が止まらず、そのまま泣き続けて疲れ果てて寝てしまった。
アルベルトは、マリィアンナが寝息をたて始めても撫でる手を止めずに、夜深くまで愛おしそうに見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、マリィアンナは起きると一人だった。
鏡をみやると、鏡の中の自分はなんともひどい顔をしていた。
マリィアンナは苦笑しながら鏡に映った自分を見つめた。
わたくしは何にもわかっていなかった。
領民には領民の生活があるってことを。
わたくしはとてもひどいことを提案してしまった。
けれど…後悔はしていない。
わたくしは次期領主のアルベルト様を支える為ならなんだってできるのだから。
だから、昨日のことは忘れず心に刻むわ。もうつらい事がないよう今できることを精一杯やるって。
そう決めたの。だから…そんな辛い顔をしちゃだめよ。
しっかりしなさい、わたくし。
鏡の自分はひどく引きつった、悲しそうな顔で笑っていた。
邸宅までの帰り、アルベルトはマリィアンナと共に馬車に乗った。
アルベルトは顔色が曇って元気のないマリィアンナに、常に寄り添い、時には抱きしめてキスをして慰めた。
そして何度も「大丈夫だ、マリィ。私がついている。決めたのは私だから」
と優しく声をかけ、頭を撫でた。
アルベルトの献身的な愛はじっくりとマリィアンナの心へと沁み込んでいった。
そして徐々にマリィアンナは元気を取り戻し、馬車は邸宅へと無事に到着したのだった。
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