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結婚 中間期
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元ゾンダルア村の皆が冬の生活に慣れた頃、ドランジェ伯爵が視察に来た。
村民は口々に伯爵を称えて、中には拝みだす老人もいた。
ドランジェ伯爵はそんな村民達を最初、困った顔をしていた。
だが、次第に表情はやわらぎ、微笑みを浮かべるようになった。
マリィアンナから見るドランジェ伯爵は、優しく、領主として責任感がある人だ。
自分の『命』と息子の『時間』を消費して領民が不安なく生活できるよう身を粉にして働いてきた人だ。
ドランジェ伯爵が視察から帰ってきてサロンで視察話を聞いた時にマリィアンナは、ふと思った。
わたくしがアルベルト様を支えることが、ひいては義父であるドランジェ伯爵を支えることにもつながるのよね。
この優しい方がもっと楽になれるようがんばらないと…
マリィアンナは頬を緩ませながら紅茶を優雅に飲む義父を眺めながら、今後の予定を思案した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マリィアンナはドランジェ伯爵の視察後、改善点を見つけ、様々な事を変更することにした。
まず、元村民達の語学勉強を独自の『単語のみの教育』に変更した。
文章を編むよりも、単語のみの方が覚えるのが早かったからだ。
一部、暗号のようになったが、互いがわかっていればいいので、物覚えがよくない元村民にはさらに単語数をしぼった。
おかげで全ての村民そこそこの個数の単語を覚えることができ、当初の目的を達成できるようになった。
さらに、教える側の人間が『教えるの上手な人』を中心にした。
マリィアンナとアルベルトが視察に赴いた時にチェックをして、教えるのが上手だった人を元村民の教育係とした。
教えるのが下手な人は、先に今後の業務内容の理解や準備、仕事の基本的な仕方などを学ぶことになった。
そして、元村民がある程度学び終わった後の復習段階に入った時に教育係を交代させた。
これにより、元村民達の勉強も滞りなく終わり、面接で集めた人々も十分に仕事の準備や仕方などを学ぶことができた。
そして、元村民を数個のチームに分けて個々の能力をほんの少しだけ伸ばした。
個々の能力とは、歌だったり、聞き語りだったり、小物づくりだったり、商才だったりと様々だった。
しかし、どの村民も能力がズバ抜けてうまいわけでもないし、下手でもない。
丁度いいぐらいの程度にまで伸ばした。
元村民にとって、その能力はずば抜けていては邪魔になるからだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
冬が過ぎ、領民の皆が待ちに待った春が来た。
寒すぎる季節から解き放たれた人々は、顔を綻ばせて次第に街や村は活気があふれるようになった。
そして、元ゾンダルア村の住民と、面接をした男性達にも新しい生活が到来した。
マリィアンナとアルベルトは、元村民と面接をした男性達を一堂に集めた。
そして今後について、話をした。
面接をして集めた男性達は、半分は『領分管理者』の元で働き、不正などを見張る仕事をすること。
もう半分は領地を転々と移動し、情報を領主であるドランジェ伯爵の元へ届ける『伝達係』を任せるとのこと。
元ゾンダルア村の村民は、体が不自由なご老人たちや、幼児を領地の中心拠点に残して、夫婦・恋人・兄弟・友達など2~3人単位で領地を転々とし、領地で起こる『噂話』や『困り事』をほんの少し伸ばした技能や能力を生かしたり酒場や宿などで見聞きし、伝達係に伝えること。
『領分管理者』の元で働く者は3年の任期の後、次の指定した領地へ移動すること。
元ゾンダルア村の村民は1ヶ月をめどに次の村へ移動すること。その際は伝達係と連絡をすること。
そして、商売ごとなどに必要以上に打ち込まないこと。
あくまでも物を作ったり歌を歌ったりして路銀を少しばかり得るのは、村や街に滞在していても不自然でないためのカモフラージュで、全ては街で得る情報を収集するためだけのものだと釘をさした。
そして、毎月決められた路銀を渡すのでそのお金で1ヶ月を過ごすこと。
全てを話し終え、男性達はやる気に満ちていた。
元村民達は、驚きを隠せなかった。
文字を覚えるということは何か特別な仕事を任されると思っていたが、転々と住処を変えるなど初めてのことだった。
ざわざわと声がする中、元村長はスッと前に出てマリィアンナとアルベルトの目を真っ直ぐに見据えた。
「わかりました。精一杯がんばります」
元村長が凛々しい声で言うと、村民達は佇まいを直して、皆前を向いた。
冬の間、十分に栄養を蓄え、温かい寝床で休養をしっかりとった元ゾンダルア村の村民達は見違えるようになっていた。
食べるものに困る生活をせずにすむという安心感や、自分達の役目を全うすべくやる気に満ちて自信がうかがえた。
そんな元村民達を見つめながら、マリィアンナは心から安心をした。
春の中ほどから、マリィアンナとアルベルトには夫婦になって初めての社交の場である王都へと向かわなければならない。彼らの力があれば今よりも情報収集や領地管理がスピーディに運び、義父も少しは楽ができるはずだ。
ふと横を見やると、アルベルトと目が合った。
アルベルトは、マリィアンナに優しく微笑んだ。
思わずマリィアンナも微笑み、二人は頬を緩ませて今後の未来に思いをはせた。
村民は口々に伯爵を称えて、中には拝みだす老人もいた。
ドランジェ伯爵はそんな村民達を最初、困った顔をしていた。
だが、次第に表情はやわらぎ、微笑みを浮かべるようになった。
マリィアンナから見るドランジェ伯爵は、優しく、領主として責任感がある人だ。
自分の『命』と息子の『時間』を消費して領民が不安なく生活できるよう身を粉にして働いてきた人だ。
ドランジェ伯爵が視察から帰ってきてサロンで視察話を聞いた時にマリィアンナは、ふと思った。
わたくしがアルベルト様を支えることが、ひいては義父であるドランジェ伯爵を支えることにもつながるのよね。
この優しい方がもっと楽になれるようがんばらないと…
マリィアンナは頬を緩ませながら紅茶を優雅に飲む義父を眺めながら、今後の予定を思案した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マリィアンナはドランジェ伯爵の視察後、改善点を見つけ、様々な事を変更することにした。
まず、元村民達の語学勉強を独自の『単語のみの教育』に変更した。
文章を編むよりも、単語のみの方が覚えるのが早かったからだ。
一部、暗号のようになったが、互いがわかっていればいいので、物覚えがよくない元村民にはさらに単語数をしぼった。
おかげで全ての村民そこそこの個数の単語を覚えることができ、当初の目的を達成できるようになった。
さらに、教える側の人間が『教えるの上手な人』を中心にした。
マリィアンナとアルベルトが視察に赴いた時にチェックをして、教えるのが上手だった人を元村民の教育係とした。
教えるのが下手な人は、先に今後の業務内容の理解や準備、仕事の基本的な仕方などを学ぶことになった。
そして、元村民がある程度学び終わった後の復習段階に入った時に教育係を交代させた。
これにより、元村民達の勉強も滞りなく終わり、面接で集めた人々も十分に仕事の準備や仕方などを学ぶことができた。
そして、元村民を数個のチームに分けて個々の能力をほんの少しだけ伸ばした。
個々の能力とは、歌だったり、聞き語りだったり、小物づくりだったり、商才だったりと様々だった。
しかし、どの村民も能力がズバ抜けてうまいわけでもないし、下手でもない。
丁度いいぐらいの程度にまで伸ばした。
元村民にとって、その能力はずば抜けていては邪魔になるからだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
冬が過ぎ、領民の皆が待ちに待った春が来た。
寒すぎる季節から解き放たれた人々は、顔を綻ばせて次第に街や村は活気があふれるようになった。
そして、元ゾンダルア村の住民と、面接をした男性達にも新しい生活が到来した。
マリィアンナとアルベルトは、元村民と面接をした男性達を一堂に集めた。
そして今後について、話をした。
面接をして集めた男性達は、半分は『領分管理者』の元で働き、不正などを見張る仕事をすること。
もう半分は領地を転々と移動し、情報を領主であるドランジェ伯爵の元へ届ける『伝達係』を任せるとのこと。
元ゾンダルア村の村民は、体が不自由なご老人たちや、幼児を領地の中心拠点に残して、夫婦・恋人・兄弟・友達など2~3人単位で領地を転々とし、領地で起こる『噂話』や『困り事』をほんの少し伸ばした技能や能力を生かしたり酒場や宿などで見聞きし、伝達係に伝えること。
『領分管理者』の元で働く者は3年の任期の後、次の指定した領地へ移動すること。
元ゾンダルア村の村民は1ヶ月をめどに次の村へ移動すること。その際は伝達係と連絡をすること。
そして、商売ごとなどに必要以上に打ち込まないこと。
あくまでも物を作ったり歌を歌ったりして路銀を少しばかり得るのは、村や街に滞在していても不自然でないためのカモフラージュで、全ては街で得る情報を収集するためだけのものだと釘をさした。
そして、毎月決められた路銀を渡すのでそのお金で1ヶ月を過ごすこと。
全てを話し終え、男性達はやる気に満ちていた。
元村民達は、驚きを隠せなかった。
文字を覚えるということは何か特別な仕事を任されると思っていたが、転々と住処を変えるなど初めてのことだった。
ざわざわと声がする中、元村長はスッと前に出てマリィアンナとアルベルトの目を真っ直ぐに見据えた。
「わかりました。精一杯がんばります」
元村長が凛々しい声で言うと、村民達は佇まいを直して、皆前を向いた。
冬の間、十分に栄養を蓄え、温かい寝床で休養をしっかりとった元ゾンダルア村の村民達は見違えるようになっていた。
食べるものに困る生活をせずにすむという安心感や、自分達の役目を全うすべくやる気に満ちて自信がうかがえた。
そんな元村民達を見つめながら、マリィアンナは心から安心をした。
春の中ほどから、マリィアンナとアルベルトには夫婦になって初めての社交の場である王都へと向かわなければならない。彼らの力があれば今よりも情報収集や領地管理がスピーディに運び、義父も少しは楽ができるはずだ。
ふと横を見やると、アルベルトと目が合った。
アルベルトは、マリィアンナに優しく微笑んだ。
思わずマリィアンナも微笑み、二人は頬を緩ませて今後の未来に思いをはせた。
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