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恋敵

恋敵Ⅱ

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 妖魔を従えた小さな少年は亮人が家から出てくるのを近くの家の屋根から見ていた。

「あそこに住んでんのかよ……何で見当たらなかったのか不思議に思ってたけど、俺みたいに妖魔が見える奴の家にいるなら見つからないわけだ。まったく……本当に面倒くさい事になっちまったな……」

『大丈夫よ。私が捕まえてくるから』

 九本の尾を携えた狐は少年を背負いながら家の屋根を転々と飛び移って行く。

『でも、やっと見つけたんだから確実に捕まえに行く……この前みたいに逃げられたら、たまったもんじゃないもの』

 九本の尾の先端。そこには青く燃える炎と赤く燃える炎の二種類を燃え滾たぎらせ、横目で家の中へと入って行く金色の狼であるシャーリーを見つめた。

『絶対に逃がさない……上位種の私から逃げられるなんて思ってる妖魔は絶対に逃がさない……』

 屋根の上を飛び移っている最中、家と家の間に小さな公園を見つけた九尾は公園に植えられている木々に青い炎を飛ばす。
 公園で遊んでいる子供がまだいない時間帯だからいいものの、公園の木々は赤く燃え上がるのではなく、普通の人からも木が青く燃えて見えてしまう。
 お構いなしに公園の木々を燃やしていく九尾は満足したように公園の上から次の家の屋根へと飛び移り、まるで青き煉獄れんごくの炎が燃えている公園を見て頬を綻ほころばせた。
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