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七つの悪と深紅の姫
七つの悪と深紅の姫Ⅳ
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オレンジ色の蛍光灯に照らされる工場内。
中から広がってくる黒い影は工場全体を包み込むように一気に広がり、亮人達は息を飲む。
六人の後ろで佇むマリーも目の前に光景に一番驚いていた。
広がっていたはずの影は収束していき、工場内から響き渡る破壊音や金属音は衝撃となって、地面を揺らす。そして、奥から聞こえてくる雄叫びは亮人たちの額から冷や汗を流させる。
『分身が戻れば情報収拾が出来ますけど…………おかしいですわ』
「マリー、どうかしたの?」
『分身の感覚がなくなりましたの…………こんなこと、初めてですわ』
「もしかしたら、分身が倒されたんじゃないか?」
『だとしても、私に記憶が入るはずですわ…………』
「…………………………どうなってんだ?」
鋭い目つきで工場の奥を見据える麗夜の横、そこには麗夜の炎で生まれた猛々しい一匹のライオンが佇んでいた。燃える鬣たてがみを揺らしながら、周りを警戒するライオンは先頭を歩いていく。ライオンが歩くたびに揺らぐ鬣は道を作るかのように火の粉を散らしていく。
「レグルス、先に行ってこい」
麗夜の指示に従い、工場内へ疾走していくライオン、レグルスは姿を消した。
「あのライオンに名前があったんだ」
「まぁ、名前がないと指示も出しづらいからな」
『でも、一人で行かせていいの? 一緒にいた方が安全じゃない?』
すでに憑依化を済ませていた氷華は氷の翼を折りたたみ、腰には氷刀を携える。亮人も同じように氷刀を二本納める。
「あいつは俺の炎だからな、死にはしないから大丈夫だ。マリーの分身みたいに記憶の共有はできなくても、倒されれば俺に戻る」
『あなたの能力もだいぶ応用が利いてますわね』
『あの子も凄く努力してますから。そばで見てる私がいうのもあれですけど』
「まぁ、お前らを守れるだけは強くいないとな」
工場へと歩み進める亮人たち七人。
先頭へと自ら移動した麗夜は亮人と初めて出会った時と比べて、大きくなった印象を与える。彼が六人へと向けられる背中は安心感を与える。
『今の麗夜くん見てるとシャーリーも、もっと頑張らないとって思う』
「僕も…………何も出来ないけど、少しでも手伝いができるようになりたい」
最後尾を歩く守護の前にいるマリー。
『私達と来てくれてるだけでも、助かってますわよ』
物腰優しく言葉を紡ぐ姿も変化していた。
「マリーもだいぶ変わったね。最初はもっと冷たかったのに」
『あなた達と出会ったからですわよ。じゃなかったら、もっと殺し合ってたと思いますわ』
牙を剥き出しに笑うマリーと隣り合うように礼火も笑みを浮かべる。
マリー同様に牙を剥き出し、片目が獣のように鋭い状態。
地面にある自分の影を揺らめかせれば、マリーと共に影の範囲を広げていく。
『私達も私達で索敵をしときますわ』
「私も手伝うね」
二人で広げる影は工場内から広がって来た影と同じように広げていく。そして、そこから伝わってくる数人の足音と振動は急速に七人へと向かって来ていた。
想像以上に速い振動はレグルスが向かっていた方向へと向かっている。
「麗夜くんっ!! レグルスと相手が戦うよっ!!」
「わかった、俺らもレグルスを追うぞ」
同時に亮人たちは工場奥へと突き進んでいく。
奥から流れてくる熱風と共に流れてくる異臭が七人の鼻を曲げる。
「レグルスのやつ、なんとか持ちこたえてるみたいだな」
爆風と共に聞こえるレグルスの咆哮。
けたたましい咆哮は時間が経過すると共に弱まり、奥から流れ込んでくる熱は治っていく。
「言ったそばで倒されたな」
麗夜は手をかざせば、レグルスを再召喚する。
申し訳なさそうに小さく唸るレグルスは七人の後に追従していく。
悪臭が漂う空間へと近づくと、
『目の前にいますわよっ!!』
広い空間へと足を踏み入れた七人の視線の先。そこで佇む三人、ヘイグ、ファーベナ、オグレスはマリーへと視線を向けた。
「やっときたようですね……退屈でしたよ」
ガスマスクをつけた男、ヘイグは首の骨を鳴らしながら嘲笑するように言葉を口にする。
ヘイグの手は人の形をなくし、液体のように地面へと滴る。
地面に落ちていた鉄骨へとヘイグの手が触れれば、徐々に鉄骨を溶かしていく。
鉄を溶かすたびに異臭を放ち、水のように地面へと広がる手は亮人達へと近づいていく。
『気色が悪いものを私達に近づけないでくれる?』
地面を凍らし、流れてくるヘイグの腕は凍らされる。
「いやはや、挨拶に握手しようとしただけなんですが…………断られてしまいました」
「それは…………そうだろう」
「あなたは…………遊ぶのが、多いからダメです」
「これは困ったものだ…………ねぇ」
凍りついていた腕は熱量をあげ、氷華の氷を溶かし、腕の形へと原型を取り戻す。
「オグレス、ベファーナ、ヴァンパイアを捕らえますよ」
「あぁ…………わかってる」
「一度、動きを…………止めるわ」
指先を動かすベファーナ。その瞬間、マリーと礼火は空中へと何かに捕まるかのように浮かび上がり、ヘイグたちの元へと移動していく。
工場一帯を支配していた影は消え、地面に映る二人の影がもがき苦しむ。
『そう簡単に連れて行かせないよっ!!』
誰よりも早く、ヘイグ達の目にも止まらない速さでシャーリーはベファーナを吹き飛ばす。
工場の壁に衝突する寸前、ベファーナは空中で浮遊し、獣化したシャーリーをフード越しに睨みつける。
少しだけ見えたベファーナの顔は瘦せこけ、骨が浮き彫りになっているかのようなものだった。
「ヴァンパイアが必要なの…………邪魔な奴は殺す」
『シャーリー達の邪魔をするなら、こっちもお前を殺すっ!!』
普段の優しい声音は消え、怒気を孕んだ言葉と逆立つ全身の毛で覆われたシャーリーはベファーナへと疾走する。
宙へと浮かび上がるベファーナは再び指を振ると、シャーリーの動きが止まる。
『っ!!』
「相手の能力も分からないのに…………突っ込むなんて、愚の骨頂」
『それはお前も同じっ!!』
逆立つ全身の体毛は強風に吹かれるように揺らぐ。そして、シャーリーの体毛の所々は淡い緑色へと変色していく。シャーリーを中心に渦巻く風は速度をあげていき、ベファーナへと一直線に解き放たれる。
それは横に放たれた竜巻のように、周囲の鉄くずを巻き込みながらベファーナを襲う。
急いで回避と口を動かしたベファーナの周囲には吹き飛ばされた鉄くずが球体を描くように浮遊していた。
「っち…………生意気な狼」
『この女の能力は厄介だから、シャーリーが相手するっ!!』
亮人達へと振り向き、口にしたシャーリーは次の瞬間にはベファーナへ再び竜巻きを放ち、その場からいなくなった。
中から広がってくる黒い影は工場全体を包み込むように一気に広がり、亮人達は息を飲む。
六人の後ろで佇むマリーも目の前に光景に一番驚いていた。
広がっていたはずの影は収束していき、工場内から響き渡る破壊音や金属音は衝撃となって、地面を揺らす。そして、奥から聞こえてくる雄叫びは亮人たちの額から冷や汗を流させる。
『分身が戻れば情報収拾が出来ますけど…………おかしいですわ』
「マリー、どうかしたの?」
『分身の感覚がなくなりましたの…………こんなこと、初めてですわ』
「もしかしたら、分身が倒されたんじゃないか?」
『だとしても、私に記憶が入るはずですわ…………』
「…………………………どうなってんだ?」
鋭い目つきで工場の奥を見据える麗夜の横、そこには麗夜の炎で生まれた猛々しい一匹のライオンが佇んでいた。燃える鬣たてがみを揺らしながら、周りを警戒するライオンは先頭を歩いていく。ライオンが歩くたびに揺らぐ鬣は道を作るかのように火の粉を散らしていく。
「レグルス、先に行ってこい」
麗夜の指示に従い、工場内へ疾走していくライオン、レグルスは姿を消した。
「あのライオンに名前があったんだ」
「まぁ、名前がないと指示も出しづらいからな」
『でも、一人で行かせていいの? 一緒にいた方が安全じゃない?』
すでに憑依化を済ませていた氷華は氷の翼を折りたたみ、腰には氷刀を携える。亮人も同じように氷刀を二本納める。
「あいつは俺の炎だからな、死にはしないから大丈夫だ。マリーの分身みたいに記憶の共有はできなくても、倒されれば俺に戻る」
『あなたの能力もだいぶ応用が利いてますわね』
『あの子も凄く努力してますから。そばで見てる私がいうのもあれですけど』
「まぁ、お前らを守れるだけは強くいないとな」
工場へと歩み進める亮人たち七人。
先頭へと自ら移動した麗夜は亮人と初めて出会った時と比べて、大きくなった印象を与える。彼が六人へと向けられる背中は安心感を与える。
『今の麗夜くん見てるとシャーリーも、もっと頑張らないとって思う』
「僕も…………何も出来ないけど、少しでも手伝いができるようになりたい」
最後尾を歩く守護の前にいるマリー。
『私達と来てくれてるだけでも、助かってますわよ』
物腰優しく言葉を紡ぐ姿も変化していた。
「マリーもだいぶ変わったね。最初はもっと冷たかったのに」
『あなた達と出会ったからですわよ。じゃなかったら、もっと殺し合ってたと思いますわ』
牙を剥き出しに笑うマリーと隣り合うように礼火も笑みを浮かべる。
マリー同様に牙を剥き出し、片目が獣のように鋭い状態。
地面にある自分の影を揺らめかせれば、マリーと共に影の範囲を広げていく。
『私達も私達で索敵をしときますわ』
「私も手伝うね」
二人で広げる影は工場内から広がって来た影と同じように広げていく。そして、そこから伝わってくる数人の足音と振動は急速に七人へと向かって来ていた。
想像以上に速い振動はレグルスが向かっていた方向へと向かっている。
「麗夜くんっ!! レグルスと相手が戦うよっ!!」
「わかった、俺らもレグルスを追うぞ」
同時に亮人たちは工場奥へと突き進んでいく。
奥から流れてくる熱風と共に流れてくる異臭が七人の鼻を曲げる。
「レグルスのやつ、なんとか持ちこたえてるみたいだな」
爆風と共に聞こえるレグルスの咆哮。
けたたましい咆哮は時間が経過すると共に弱まり、奥から流れ込んでくる熱は治っていく。
「言ったそばで倒されたな」
麗夜は手をかざせば、レグルスを再召喚する。
申し訳なさそうに小さく唸るレグルスは七人の後に追従していく。
悪臭が漂う空間へと近づくと、
『目の前にいますわよっ!!』
広い空間へと足を踏み入れた七人の視線の先。そこで佇む三人、ヘイグ、ファーベナ、オグレスはマリーへと視線を向けた。
「やっときたようですね……退屈でしたよ」
ガスマスクをつけた男、ヘイグは首の骨を鳴らしながら嘲笑するように言葉を口にする。
ヘイグの手は人の形をなくし、液体のように地面へと滴る。
地面に落ちていた鉄骨へとヘイグの手が触れれば、徐々に鉄骨を溶かしていく。
鉄を溶かすたびに異臭を放ち、水のように地面へと広がる手は亮人達へと近づいていく。
『気色が悪いものを私達に近づけないでくれる?』
地面を凍らし、流れてくるヘイグの腕は凍らされる。
「いやはや、挨拶に握手しようとしただけなんですが…………断られてしまいました」
「それは…………そうだろう」
「あなたは…………遊ぶのが、多いからダメです」
「これは困ったものだ…………ねぇ」
凍りついていた腕は熱量をあげ、氷華の氷を溶かし、腕の形へと原型を取り戻す。
「オグレス、ベファーナ、ヴァンパイアを捕らえますよ」
「あぁ…………わかってる」
「一度、動きを…………止めるわ」
指先を動かすベファーナ。その瞬間、マリーと礼火は空中へと何かに捕まるかのように浮かび上がり、ヘイグたちの元へと移動していく。
工場一帯を支配していた影は消え、地面に映る二人の影がもがき苦しむ。
『そう簡単に連れて行かせないよっ!!』
誰よりも早く、ヘイグ達の目にも止まらない速さでシャーリーはベファーナを吹き飛ばす。
工場の壁に衝突する寸前、ベファーナは空中で浮遊し、獣化したシャーリーをフード越しに睨みつける。
少しだけ見えたベファーナの顔は瘦せこけ、骨が浮き彫りになっているかのようなものだった。
「ヴァンパイアが必要なの…………邪魔な奴は殺す」
『シャーリー達の邪魔をするなら、こっちもお前を殺すっ!!』
普段の優しい声音は消え、怒気を孕んだ言葉と逆立つ全身の毛で覆われたシャーリーはベファーナへと疾走する。
宙へと浮かび上がるベファーナは再び指を振ると、シャーリーの動きが止まる。
『っ!!』
「相手の能力も分からないのに…………突っ込むなんて、愚の骨頂」
『それはお前も同じっ!!』
逆立つ全身の体毛は強風に吹かれるように揺らぐ。そして、シャーリーの体毛の所々は淡い緑色へと変色していく。シャーリーを中心に渦巻く風は速度をあげていき、ベファーナへと一直線に解き放たれる。
それは横に放たれた竜巻のように、周囲の鉄くずを巻き込みながらベファーナを襲う。
急いで回避と口を動かしたベファーナの周囲には吹き飛ばされた鉄くずが球体を描くように浮遊していた。
「っち…………生意気な狼」
『この女の能力は厄介だから、シャーリーが相手するっ!!』
亮人達へと振り向き、口にしたシャーリーは次の瞬間にはベファーナへ再び竜巻きを放ち、その場からいなくなった。
応援ありがとうございます!
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